「……」
なんなんだ、一体。最近、妙な夢ばかり見ているような気がする。疲れているのか?時計を見ると朝4時。今日は午後からの講義で助かったが、いかんせん寝た気がしない。だが、かと言ってまた寝ようとも思わない。あんな夢を見てまた寝ようと思えるほどの精神は持ち合わせていない。
(とりあえず、顔洗うか。目覚めがわりぃ)
部屋の明かりを付けて洗面所へ向かい、水で顔を洗う。冷えた水でも俺の眠気を飛ばすのは不可能だった。あぁ、ねみぃ。
「起きたは良いが、する事がねぇや」
とりあえず、風に当たるか。今の時期の風は暑くもなく、かと言って冷たくもない。ちょうど良いくらいの涼しさだ。欠伸を1つして窓を開け、ベランダへと出る。
「……」
「……あ」
眠気のせいで見間違えたのか。夢で見たような白くて丸いのがベランダにいるような気がする。目を擦ってみたり、頬をつねったりしたが、確かにこれは夢ではない。現実のものだった。
「ね、寝込みを襲うつもりではなかったでござる! あれから拙者、考えたのだが妖精探知機が作動したのはもう一つ要因があったのでござる! それとやはり謝罪をせねば拙者の気が済まない故……!」
「……」
「実は、この妖精探知機。一度妖精国に来た事のあるものにも反応するのでござる。試しに自分の持ってた物をこの近くに置いてみて反応を試したが……それが反応したのでござる」
「んで?」
「故に、貴女は一度妖精国に来た事があるのではないでござる
か?」
寝起きで考える事も面倒くさかったが、何故か今はこいつの話を聞いても良いと思えた。
「……知らねぇ」
「そ、そうでござるか」
「けど」
「?」
「さっきてめぇに似た赤い帽子の奴が夢に出てきた。それが関係してんのか」
「赤い帽子!もしやそれは、ラミィ姉!!」
「そのラミィってやつを探せば良いんだな?」
「い、良いのでござるか!?」
「それが終わればもう俺とは関わるな。分かったな?」
「有難いでござる!何と礼を言えば良いか」
白くて丸い奴はそう言うと、何度も俺に向かって顔を下げた。手か耳か分からないがその部分で器用に体を支え、何度もペコペコする様子は何だか滑稽だ。
「けど、あんま良くねぇ夢だったな。檻にぶち込まれてた夢だったし」
「な、なんと。それは真か!?」
「まぁけど、誰かが助けに行ってたなぁ」
「ど、どんな者だった?」
「ん~、そこで目覚めちまったんだよな。けど何か人形を持ってた気がすんなぁ」
「人形、とすると幼子の可能性が高いな」
「ちっちぇガキどもが集まる場所、か」
そう言えばと思い、俺はテレビを付け、録画画面に切り替える。たまたま指定時間を間違えて録画してしまったニュース番組。そのニュースに出ているキャスターが明るい声色でリポートを行なっている。
「本日は〇〇県胡桃市の遊園地に来ております~!見てください、この来場客の数!入り口から人で既に溢れかえっております!」
「遊園地でござるか。そこならば確かに幼子が集まりそうでござるな、ん?」
テレビの画面に張り付くように見ているジョート。何かあったのか、俺に話しかけてきた。
「ナガレ殿、先ほどの場面まで遡れるか?」
「ん? あぁ、巻き戻しか?出来るが、どうした」
「気になるものが映り込んでいた故……あ、そこで大丈夫でござる」
その場面はカメラがリポーターの指した方向にカメラを向ける場面。気になるものって、何も無いじゃないか。
「この下に映り込んでる物、姉さんのベレー帽では?」
「……お前、マジで言ってる?」
「大真面目でごぞる!この赤い突起物の着いた帽子、これは姉さんの物に違いないでござる!やはり近くにいたのでござるね!し、しかし、帽子の先しか見えない、と言うことは、攫われているのでござるか!?ナガレ殿、ここに行くでござる!」
こいつ、馬鹿なんじゃないのか?赤で、突起のついた物なんていっぱいあんだろ。例えば、コーンとか。しかもこれ、何日か前の録画画面だぞ。
「一応近くだけどさぁ、ここ確か数ヶ月暗い前に出来て、録画も2日前とかのだぞ。今更行っても遅ぇんじゃねぇか?」
「探知機は使用者以外の妖精の物で検出するのでござる。妖精のものであれば、足跡だって羽の一部であっても検出する。行く価値はあるでござる」
「何だって俺が」
「協力する、と言ったのはナガレ殿でござるよ?」
こいつに力を貸すとは言った覚えはないが、見つかるまでの辛抱と腹を括ったのは間違いなくこちらだ。
「だーっ、もぅ!わーった。準備すっから待っとけ」
「有難い。それまで拙者も準備がある故、15分ほど失礼するでござる」
「へーぃ」
朝の支度はほとんど済ませてあるから、後するべきは着替えとメイクぐらいか。しかし、15分であいつ何するんだ? そう思いながら、俺は化粧台へと向かった。