エンターテイルズ   作:セカラボ

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第5章 妖精達の再会

……あれ、俺は何を……?

 

 

気がつくと、俺はぬいぐるみの置かれたベッドの上で寝ていた。俺は確か、遊園地に行ってそこからラミィを探して……。

 

「やぁ、起きたかい?」

「!?」

 

唐突に聞こえた声に俺は驚き、辺りを見渡す。見渡すまでもなく、その声の主は目の前に居たのだが、寝起きで気が付かなかった。

 

「青髪の勇者さん、おはよう。よく眠れたかい?」

 

こいつは、あの遊園地で怪人ネメアと名乗った奴ではないか。

何故そいつがここに。

 

「て、てめぇは!ラミィを攫ったやつ!!」

 

俺は反射的に顔面に拳を飛ばす。だが、それは奴の掌でパシッと音を立て止められてしまう。寝起きで力が入らなかったからだろう。しかし、寝ているところを襲わなかったのは何故だ?あんなにあいつに殴りかかってたのに、自分の生命の危険を感じなかったのか?

 

「っと。君、ほんとに危ないよ?僕、君ほどじゃないけど顔は綺麗な方だと思うんだ。せめて身体にしてくれないかい?」

「……気にするとこそこかよ」

「ん? 他にあった?」

「いや、良い。テメェには関係ねぇよ」

「ふ~ん。僕に隠し事、ねぇ」

そう言って奴は俺の顔を、眼を見つめる。暗い部屋にも関わらず澄んでいることが分かる様な、全てを見透かす様な眼だった。咄嗟に顔を横に向け、視線を逸らす。

 

「ふふふ、なるほどね。君の考えている事は分かったよ。君の持つその怪力、そうだろう」

「……」

「別に、僕は気にしないよ。何てったって僕の周りにはもっとすごいのがいるからねぇ」

「……そうなのか?」

「うん、吸血鬼と魔女がいるよ」

「は?」

 

俺は言葉を失う。何を言ってるんだこいつ。俺を和ませる言葉のつもりか?だとしたらだいぶふざけている様にしか聞こえないが。

 

「彼らと一緒にアンチエンターを倒したんだ。フフフ、だから君の力を見ても何とも思わないよ。それに、僕は異世界の主だからねぇ。不思議な事に身の周りにそんな者達を惹きつけちゃうんだよねぇ。はっ、もしや!これがオーラ、ってコトォ!!?」

「???」

 

話についていけない。同じ人類なのか疑う程に奴の言っている事が理解できない。現代に吸血鬼、魔女、異世界の主? 最後のやつに至っては全くもってわからない。

 

「さて、そんな僕のオーラに惹きつけられた君を是非!打倒アンチエンターを掲げる僕らの組織『RAMICA』にスカウトしたい」

「お、おい、待て!待ちやがれ。さっきから何を言ってるか分からねぇんだが」

「あれ?アンチエンターがどうこうって遊園地に居た時言ってなかったっけ?てっきり全部知ってるのかと思ってたけど」

 

確かに、ジョートからアンチエンターの話は少し聞いたが、組織だかの話は知らねぇし。そもそも聞きたいのはそこじゃなくてその前のところなんだが……

 

「分かった。じゃ、ラミィを呼んでこよう。話はそれからって事で」

「あっ、そうだ!あいつはどこだ!?」

「あいつ?あぁ、ラミィに似た……ジョート?だったかな?」

「そうだ、あいつは?」

「今、姉との、ラミィ再会で色々話し込んでるよ」

「そ、そうか。それなら良かった」

 

俺が他の奴の心配をするなんて、柄じゃないな。そんな事を思っていると、奴は俺のいる部屋を後にし、ラミィとジョートを呼びに行く。

 

「ラミィ、今大丈夫かい?」

「マター君、呼んだかミィ?」

「あぁ、青髪の勇者のお目覚めだ。時が来たってやつさ」

「……ミィ?」

「あ、弟君も交えて今ここにいる全員で話そうって事だ」

「分かるかミィ!」

 

別の部屋でそんなやりとりが聞こえる。

(あいつ、頭おかしいのか……?)

そんな事を考えながら、俺は奴らの到着を少しばかり待っていた。

 

「やぁ、お待たせ」

「ナガレ殿! 無事だったでござるね!!」

「あ、あぁ。まぁな」

「あの遊園地での事の後、こちらのマター殿から聞いたのでござる!姉ちゃんは攫われたんじゃなくて、戻れなくなってたのでござる」

「おぅ、そうか。って、ん?お前、ネメアじゃねぇのか?」

「あ、そう言えばそうだったね。改めて自己紹介をしよう」

 

コホン、咳払いを一つした後、ミディアムボブの黒髪を揺らし、ポーズを決めてそいつは名乗った。

 

「僕は異世界の主、マター!怪人ネメアってのは咄嗟に思いついた名前だったんだ。あの時、どう誤魔化そうかなって考えた時に、ショーっぽく仕立てようと思ってそう名乗ったんだよ」

「そうだったのか」

「それで、君はナガレ。セイリュウ・ナガレだね。ジョートから聞いたよ」

「あぁ、そうだ。俺はナガレ」

「ふふふ、よろしくね」

 

そう言って笑顔を見せるマター。何故だろう。この顔、どこかで。

 

「さて、全員揃った事だし少しばかり情報共有をしようじゃないか!」

「するミィ!」

「おい、俺、情報共有ったってそんなもん持ってねぇんだが」

「ん?あぁ、大丈夫だよ。君は聞いておくだけで大丈夫だから」

「お、おぅ」

「さて、じゃあどこから話そうか」

 

顎に手を当て、考え込むような仕草をするマター。しばらく経った後、口を開く。

 

「うん、そうだね。まずはラミィとジョートを元の場所に返す方法だね」

「そうでござるね」

「一番手っ取り早く済むのが杖の奪還。ってところかな」

「でもそれは難しいと思うミィ」

「……そうだよね。あの子が持ってるってなると、現実的ではないよね」

「……」

 

話についていけない俺は、何とか会話に入り込もうとする。何やってんだろうな、俺。最初あんなに面倒くさがってたのに。恐らく、この時の俺は早く面倒事を終わらせたかったんだろう。

 

「なぁ、その……杖があれば良いのか?そしたらこいつらも元の世界に戻れてアンチエンターも倒せるって事か?」

「うん、そうだね。ただ、その杖を持ってる子がとても厄介でね。近付くものを拒む冷気の使い手、少し動くだけで言葉通り万象を凍てつかせて即終了の理不尽極まりない子が持ってるんだ。」

「子? ガキなのか?」

「あぁ、子。年齢が僕よりも幼く見えたから子って表現したんだけど。まぁそこは置いといて。だが!それから杖を奪取するための秘策を考えついたから、あの場所に居たんだよね!」

「あ、それでニュースに映ってたんでござるね」

「勿論秘策だから言わないけどね!」

「ミィ!ボクだけにも教えてくれミィ!」

面倒な事に、俺はもう少しこいつらと居ないといけないらしい。俺にはごめんだ。最初こそそう思っていたが。

 

「……」

 

無言でやつを見る。あいつの、マターの事が気になって仕方がない。何故だろうか、あいつを見てると胸騒ぎがする。もしかしたら、俺のこの産まれもった、怪力の秘密が分かるのかもしれない。俺には家族がいる。いや、いたの方が正しいか。父と母と俺の3人家族。俺は両親に愛情を注いでもらっていたように思う。

 

がしかし、ーーーーーー

 

両親は他界した、俺1人残して。交通事故だった。飲酒運転の車に正面から追突され運転席と助手席は大破、当時、後部座席に座っていたらしい俺も強い衝撃を受け、意識不明だったそうだ。目を覚ました時、俺は医師から

 

「あり得ない、信じられない。まさに奇跡だ」

 

と言われるほどの回復を見せた。意識を取り戻した時、一年経過していたと後に祖母から聞いた時には驚いた。だが、そこからだ。俺は目を覚ました時に何か、違和感を感じた。自分の身体が、自分の身体じゃないような、そんな感覚。俺はこれが普通なのかと思っていたが、世間は違った。拳1つで壁に穴を開けてしまうほどの力を、4歳の時に手にしていた。周りからは忌避され次第に孤立、小、中、高とひっそりと過ごしていた。

そんな過去。だが、そんな事気にしないと言う奴が、目の前に現れた。俺は、そんな存在を求めていたのかもしれない。

 

「なぁ、マター」

「ん?どうしたんだい?」

「俺も、テメェらに協力する。アンチエンターをぶっ飛ばせば良いんだろ?」

「そうだね。君が居てくれれば百人力だ。改めてよろしくね、ナガレ」

「あぁ、こちらこそ」

 

俺に微笑みかけるやつを、マターの笑顔を守る。俺はこの日、そう誓ったのだ。

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