エンターテイルズ   作:セカラボ

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第2章 再会、そして邂逅

「目覚まし君、いや月代君には少しばかり意地悪をしてしまったかな」

 

帰りのバスの中、揺られながらそんなことを考える。夢か……。

そんなもの、本来覚えてなくても良いものだ。なんせ幸せなものであればあるほど自然と忘れゆくもの。

そして辛いものほど脳裏に焼き付いて離れない。

 

「嫌な、夢だったのかな……」

 

誰にも聞こえないような声で呟く。ついつい考え過ぎてしまうのは僕の悪い癖だ。

首を左右に振り、思考を強制的に停止させる。そう、僕は「異世界の主」。

この夢一つに左右されるような者ではないとも!

そう自分に言い聞かせながらバスを降りる。 

さて、後は歩くだけで家までたどり着けるが、近道をするため人通りの少ない道へと足を向けた。

吸い込まれる様に路地裏へと入ると、入り組んだ道の先であからさまに不自然すぎる段ボールが置いてあり、微かに動いているように見える。

 

「この時期にペットの放棄か? いや、時期は関係ないか」

 

セルフ突っ込みをした後、耳を澄ませると微かに鳴き声が聞こえる。

ミィと鳴いているし恐らくは猫だろうか?こんな人通りのないに等しい道に置いておくのは可哀想だし何しろ……放ってはおけない。

そう考えた僕は、密閉されている段ボールに近づいていく。鳴

き声が徐々に鮮明に聞こえてくる。その刹那……僕は耳を疑った。

 

「出してくれミィ。誰かいないかミィ」

 

聞き間違いではない。確かに段ボールの中から聞こえる何かの喋り声。

何と言うことだろうか。中に入っているのはペットではなく、

人間だと言うのか!? 通報先が動物愛護団体から警察機関にランクアップしたかと焦る。

ザリッと道路に足を擦らした音が人気の無さを顕著に表す。

 

「……! 足音がしたミィ! そこに誰かいるミィ!?」

 

僕の足音に反応してか、段ボールが大きく揺れ、僕のいる方向に傾く。急に語りかけられ改めて周囲を見渡す……やはり僕しかいないようだ。

少し戸惑いながらも返答する。

 

「あぁ、いるとも」

「誰でも良いからお願いするミィ!ここから出してくれミィ!」

 

普通に話せるのか……? だとしたら段ボールの大きさが小さすぎやしないだろうか。

色々な疑問が頭を過ぎるが……考えても仕方がない。

綺麗に閉じてあるガムテープを解き、恐る恐る声の主の姿を見る。

それは何とも__

 

ズキッ!

 

その瞬間、僕の頭の中に、この世界のあらゆる言葉を尽しても言い表す事の出来ないような激痛が走った。

(くっ、あ……。痛い……いたいイタイ)

言葉が出ない。

膝でしっかりと支えているはずなのに、足元が振らつく。

視界が急に歪み、色褪せ、狭まる。

____________________________

 

「僕はマター! 君は……そうだなぁ。ラミィ!ラミィにしよう!可愛いでしょ! どうかなぁ?」

「ラミィ。とても良い名前だと思います」

「じゃあそれで決まりだね!よろしく、ラミィ!」

「……ミィ……」

____________________________

 

(何だったんだ……?)

 

僕の脳内に電撃が走り、直に記憶を埋め込まれたかのように思えた。だが、目の前の段ボールに入っているものは夢で見た生物……いや、違う!!

僕が現実で描いた想像上の『妖精』。小動物のような見た目、青いリボンのついた赤いベレー帽を被り、ふわりとした尻尾、

長い耳、そしてその左側にある水色の星マーク。間違いない。

頭の上に?マークが見えそうな視線で僕を見つめている『彼女』に、よろめきながら呼びかける。

 

「……ラミィ?」

「!?そうだミィ!!ボクはラミィだミィ!!」

 

彼女はそう言うとぺこりと頭を下げた。一頭身の身体でそんな事をしてはコロンと転がってしまうと思い咄嗟に手を差し出そうとするが、ラミィは長い耳を器用に操り体制を崩すこと無く頭を下げた。

 

「でも、何でボクの名前を知ってるミィ? ボクとキミはじめましてのはずミィ」

「……あぁ、はじめましてだとも。僕は異世界の主だからね。何でもお見通しなのさ」

「異世界の……主? 良く分かんないけどすごいミィ!」

 

下げるタイミングを逃した右手は、いつの間にか彼女の耳を握っていた。

 

「フフフ。分からずとも良い。僕のことは、そうだね。皆からはマターさんと呼ばれている」

「マター君かミィ。助かったミィ!ありがとうミィ!」

 

この時、僕は察した。いや、思い出したという方が正しいか。

僕が夢で見たものを忘れていたように、彼女も僕と出会ったことを忘れたのだろう。今の一瞬で僕は思い出した。僕と彼女、ラミィは一度会っている。

いつ、どこでかまでは思い出せないが、会っていたことに間違いはない。しかし、ここは彼女に合わせておいた方が得策だろうと僕の直感が言っている。

 

「…!そうだミィ!」

 

何かを思い出したかの様にラミィは僕にこう告げる。

 

「ボクたちの国とこの世界が…大変なんだミィ!!」

「え?」

 

斯くして僕らは「再会」を果たした。お伽噺の冒頭にしては、些か『陳腐』な始まりだろう。この邂逅は定められた運命か、或いは過去からの必然か。

初めて聞くはずの懐かしい声に告げられた最初の難題。

どうやら世界は、終焉を迎えるそうだ。

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