ホワイトスノー
「あちっ」
とある屋敷、用意されたカップに口をつけた私。しかし、そこに入った紅茶があまりにも熱く、反射的に口を離してしまう。
その衝撃で着ている着物に少しばかりお茶が溢れてしまった。
「あぁっ!?大丈夫ですか、お姉様!?じ、じぃや!何か拭きものを持ってくださいまし!」
「はっ、承知しました」
「お姉様、大丈夫ですか?火傷してませんこと?」
「あ、うん。大丈夫」
「もう、お姉様ったら。最近調子がよろしくないんですの?」
「そんな事は、ない。……と思う」
いけない。私としたことが、瑠花に心配をかけてしまっている。最近、私の能力の使いすぎのせいか、自分の感覚が狂ってきている様な気がする。周囲を拒む冷気。発動すれば、視認できていたものが靄の様にしか感じる事が出来ない。自分もそれに含まれているのだが、発動していない今でも偶に、自分の身体が靄の様に見える時がある。
「近頃は物騒なニュースばかり聞いてるからでしょうか……。お姉様は少しその、神経質な所がありますし」
「そう、かな?」
「えぇ、それに加えてここ数日、外出する度にお召し物を汚して帰ってきて……。私、心配なんですよ?」
顔を逸らした私の顔をしっかり見つめ、そう言う妹。そんなに心配させてしまっていたのか。だが、私には彼女の心配を拭い切る方法がわからない。私の正面に立つ彼女をこちらに抱き寄せる。
「……へ?」
「これで、心配いらない?」
「お、お姉様!?な、何を……」
「答えて」
「……し、心配、いらないですわ」
「そ、良かった」
「と、とにかく!これから出かける時は私も一緒に行きますからね!?一体どこで汚れているのか突き止めなければなりませんからね!!」
そう言う妹の顔は火照って真っ赤になっている。良かった。こんなに冷たい私でも、彼女を温める事が出来るんだ。気付けば私の視界の靄も晴れ、眩しいくらいの瑠花の顔を見れた。彼女は私の世界に色をくれた存在、私の太陽なのだ。
「そう言えばじぃや、遅いですわね。少し様子を……ってじぃや!?」
様子を見に行こうとした瑠花が部屋を出てすぐに、驚きの声を上げる。そこにはスーツを着た初老の男性が血を吐き、倒れている。
「じぃや!?誰にやられたの!?」
「あぁ、いと尊きお嬢様方……我が一生に、一片の悔いも、な、し」
「いやぁ~~!!じぃや~~~!!?」
「……それ、ほっといても大丈夫じゃ」
はぁ、これからはあまり外出できそうにないな。
(私以外に異能を持つ者達の詮索は……暫くお預けね)
そうだ、私は妹の、彼女のために。
異能を持つ者を殺す。そう、あの日決めたのだから。
傀儡
「ねぇ ぱぱ。わたし いいこ?」
くらやみに といかける わたし。ぱぱ は わたしが いいこにしてると なでてくれる。
「ふふっ、ぱぱのて、あったかい。わたし、もっといいこになるから、まっててね?」
すべては ぱぱのため。そのために。
「かーねいとおねえちゃんも できなかった わたしたちの じゃまをするやつ らみか こわす」
(その声、聞き届けたーーーーー)
真っ白な瞳で黒い空間を見つめる白い人形が1つ、ポツリポツリと語っていた。