エンターテイルズ   作:セカラボ

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第9章 傀儡宣うパラノイア

「あらためて あいさつを。わたし は くぐつ の ゆーぎ。あんちえんたー の ひとり」

「アンチエンター! 傀儡のユーギと申すでござるね! この拙者ジョートとナガレ殿が、お主をけちょんけちょんにしてやるでござる!」

「おい待て。アンチエンターってのは何か、能力があんだろ? それを探りながらってのがマターが言ってた戦い方だって」

「まずは なにが いい? おちゃかい? おひるね? それとも おゆうぎ のほうが いい かしら?」

「は? 何言って……」

 

戦い、なのに戦いらしくない言葉が飛んでくる。お茶会にお昼寝に、お遊戯だと?戸惑っていると、微笑みながら人形は話す。

 

「クスクス。わかっては いたけど やっぱり あなたは かぞくに ふさわしく ない。だから」

「来るでござる!」

「ぶっこわす!」

 

不意に目の前に飛び込んでくる白く鋭利な物体。間一髪でそれを避けて、見てみる。それは、ユーギの頭から生えた髪の毛であった。それが、槍のように鋭く、鞭のようにしなり、鎌のようにながら俺たちを襲う。

 

「あははは!! どう? どう! どう!? あなたの ため だけに よういした とくちゅうひん。たんと あじわって?」

「チッ……! めんどくせぇ!!」

 

ブンッ!

 

俺は拳に力を込め、真っ直ぐに突く。ユーギの振り乱された真っ白の髪がバサバサと靡きながら、床に散乱する。

 

「……やばんな ひと」

「はっ。なんとでも言いやがれ。俺は元からそんなタチなんだ、よっ!」

 

メキュ‼︎

 

人形の、ユーギのみぞおち辺りに拳がめり込む音がする。腹のあたりに拳の跡がくっきりと残っている。ユーギはその白い肌とは相反する黒い靄を口から吐き出して、仰向けの状態で地面に倒れ込む。

 

「あ が……っ!」

「……へっ、効くだろ…!って、何だぁこれ!?」

 

口から溢れた黒い靄が俺の腕にまとわりつく。口元を拭いながらよろよろと立ち上がり、ユーギはこちらに叫ぶように話しかける。

 

「ふ ふふ。ふふふ。わたしは のろいの にんぎょう!すてられた おんねんの かたまり! ばちあたりよ ナガレ!」

「ナガレ殿っ!」

「わたしの おんねん! そいつを やっつけて!!」

 

その声と同時に、俺の拳が俺の顔面に飛んでくる。

 

「グッ……!?」

 

一発でも気が遠くなりそうな一撃を顔に受けた。利き手で殴ったせいか、威力も凄まじい。続け様に今度は、腹部に拳がヒットする。

 

「ゴハァッ!?」

 

(こいつ、怨念を形にして操ってんのか……!?)

 

「ぷっ。あっはははは! ぶざまね ナガレ」

「っ……はぁ、なあ」

「……」

「てめぇ、何もんだ? 俺の何なんだ?」

「……わたしのかぞく を くるしめた やつには もっと くるしんで もらわなきゃ!」

 

ドゴッ!バキッ!

 

絶え間なく襲いかかる自分の怪力。

 

(まずい、意識が……)

「ナガレ殿っ!ナガレ殿ぉっ!!」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「▲▲▲。貴女には、もう一つ謝らないといけないことがあります」

「どうしたの?国王様?」

……こんな時に、俺はまた夢を見ているのだろうか?或いは、走馬灯か。今回はあの影はおらず、手に白い何かを持った少女と、金髪の女性が話している

 

 

「現世に戻る際、貴女にはどうしても耐えていただかないといけないものがあるのです」

「?」

「この世界と、現世とでは大いに違うのです。その、また難しい話になってしまうのですが、身体の作りが」

「……」

「貴女は長くここにいた影響で、一般の現世の人と比べて貴女は超人と呼ばれる域の運動能力を持って現世に戻ってしまうでしょう。恐らく人は貴女を見て怖がることでしょう。離れてしまうことでしょう。それを」

「なんで怖がるの?」

「え?」

 

金髪の女性は、青髪の少女の言葉に呆気にとられたのか戸惑いの表情を見せる。

 

「そんな力があれば、✖️✖️✖️を守れるよ?安心してよ、国王様! 現世に言っても、しっかり私が守るよ! それに、この子も一緒に!」

「……えぇ、そうでしたね。貴女はそんな子でしたね。では、よろしくお願いしますね?」

 

「お人形(家族)を持った勇者、『ナガレ』」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

バサァッ!!

ジュッ!!

 

「……ナ、レ。……ナガレッ!無事……では、なさそうか?」

「……その声は、マターか?」

「声は聞こえているのかい?目は? 鼻は? 痛いところは!?」

「あぁ、全身が痛ぇ。が、あぁ、思い出したぜ」

 

よろめく足で立ち上がる。腕に纏わり付いてた黒い靄は無くなっている。代わりに、足元に黒くざらざらしたものが落ちている。

 

「はぁっ、たく。思い出したぞ、俺。てめぇ、俺がガキん時に持ってた人形だな?」

「……!? そうなのかミィ!」

「ファミリードール、AlexelA(アレクゼラ)。そうだよな?」

「……だったら なに? わたしを すてた じしつは かわるの?」

「今、言っても言い訳にしかならねぇ。けど、俺は言わなきゃなんねぇ。あの時は、必死だった。あいつらを守らなきゃって思った」

「おとなは そうやって いいわけで! だまそうったって そうは」

「忘れてんのは、てめぇもそうだな」

「……!! わたし は わすれてなんかっ……!」

「てめぇが言ったんだろ。家族を助けろって」

 

「っ……!」

 

記憶の中のこいつは、ファミリードールの名に恥じない。家族を大事にする奴だった。人形が喋るなんて、あの世界じゃなかったら信用できなかった。でもこの世界でも、今ならば信用できる。

 

「うるさいうるさいうるさい!! おまえは! おとなは うそつきだ! みんなみんな うそつき! うそつきうそつき!!」

「捨てられたと恨みをぶつけた次は嘘つき呼ばわりか? あぁ、俺は嘘つきだ!だが、てめぇに対して嘘はついたことは、ねぇ!」

「ナガレ殿! やつは……」

「あぁ! とんでもねぇ呪物だ! だが、そんな呪いごと、俺がぶっ飛ばしてやらぁ!」

「だったら、これを受け取って! 描画召喚、黒水晶(ブラッククリスタル)! そして、描画刻印、聖火(トーチ)!)」

 

マターが描画召喚で俺の手に聖火の文字を刻む。俺の身体が炎に覆われる。が、不思議と暑さは感じない。それに、首に黒い水晶のネックレスが付けられている。

 

「呪いの勢いを軽減させるためのものだよ。この空間はどうやら、凄まじい呪詛で埋め尽くされているみたいだ……。ホラースポットみたいだよ」

「……んな事も分かんのかよ? ってかお前は大丈夫なのか?」

「ん? 僕?僕はいつでも健康体だからねぇ。呪いなんて効かないのさ!」

「んな根性論みたいな……」

「わたしと ナガレの たたかいに みずを さすな!」

「おっと! 可愛くも怖いお人形さんだ! でも君の相手は僕じゃあないよ。ナガレ!」

「あぁ、悪い子には躾が必要だからな! 喰らいなぁ!」

 

ブンッ!

ドゴォッ!

 

今までのやり返しと言わんばかりに拳を叩きつける。一発目で分かってはいたが、こいつは打撃にめっぽう弱いようだ。殴りつけた跡から黒い靄が発せられるが、その呪詛は炎により阻まれ、通り抜けたとしても、黒い水晶に引き寄せられていく。

 

「……っ! そんなっ! わたしの のろいが」

「じゃあ、そろそろ終いにしてやらぁ!くたばりやがれ!」

 

ボゴオッ!

 

全身を滅多打ちにされ、動かなくなったユーギ。黒い靄ももう出てこず、ギシギシと身体が軋む音しか発さない。

 

「や やっぱり あたしは あなたにとって すてられて とうぜん の そんざい って こと。だから こんなに……わるいこで」

「な訳あるか」

 

俺はユーギの頭を掴み語りかける。

 

「俺にとってお前は『家族』だ。俺は、こっちに戻ってきた後、お前がいない事に気付いた。だから、必死になってお前を探してたんだ。でも、いつしかそんな事考えられないくらい、自分のことで一杯になっちまってた。ごめん。でも、こんな形ではあったけど、会えて嬉しかったぜ。アレクゼラ。俺の、大事な、家族」

 

キコ……

 

全身を軋ませながら動くユーギ。

 

「そんな かんげん に ひっかかると でも……?」

「……」

 

こちらを一瞥した後、目を閉じ

 

「わた しも」

「…!」

「わたしも あえて うれしかった。」

「ま た わたしと あそぼう……ね?ナガレ」

 

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