「アレクゼラ……」
ユーギ。そう名乗った俺の家族は、黒い靄となって消えた。
「終わったでござるね」
「一件落着ミィ!」
「そう言えば、ラミィは分からんでもないが、マターはどうやってここに……?」
「あぁ、君を引き摺り込んだあの白い腕あったでしょ? あれの一本に上手いことワイヤーを召喚して引っ掛けて、ユーギの元に連れてってもらったよ」
「……お前、嘘だろ」
「すごいでござるね……幹部との戦いでも見事だったでござる」
「いやいや、たまたまだよ。呪いとか怨念とか、そんなのには聖なる力があるものをぶつけるんだよ! 理論でどうにかさ」
「あの時はびっくりしたでミィね……ナガレ君に清めの塩をぶっかけるなんて」
あぁ……俺が目が覚めた時に黒く変色してたざらざらしてたやつ。あれ塩だったのか……。改めてこいつの何でもありかよ感が強まった気がする。
「なぁ、ジョート」
「? なんでござるか?」
「あの、俺がユーギの呪いにかかった時、道具作成で何とかできなかったのか?」
「うっ。実はでござるね……拙者、あのような隔絶された空間などだと能力が発揮できないのでござる。あそこでは作成で作れる道具が限られていたでござる。邪を払う道具はあの空間ではできなかったのでござるよ」
「そうか……」
「だったら最初から作っておいてたら良いんじゃない? 持ち歩く必要は出てくるけど」
「確かに! それ良いんじゃないかミィ?」
「ある程度だったらいけるかもしれないでござる。今度はそうしてみるでござる! ありがとうでござるよ!」
なぜか自然と戦闘後の反省会が開かれている。だが、これで幹部の1人を倒した。ということになるのだろうか。意外と、何とかなるものだな。
「うっ……!?」
「ど、どうしたんだい、ナガレ!?」
「あ、頭がっ……われっ……!」
突如として訪れた頭痛。今までよりも大きく、何かに揺さぶられる感覚より、鈍器で殴られたような感覚と言った方が近いかもしれない。
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「あ、そうだ!僕の名前、教えてなかったね。僕の名前はね、『マター』!マターって言うんだ!よろしくね、ナガレ!」
「う、うん!よろしく……!」
「ねぇ! 見て見て、ナガレ!」
「どうしたの? マター」
「じゃーん! 僕が描いた絵! どう?」
「うわぁ……! 上手……!」
「今度ナガレの似顔絵描いてあげるね!」
「うん、ありがとう!楽しみにしてるよ!」
「駄、目……『連れてかないで』……!!」
「マター!」
「!?ナ、ナガレ……!?」
「マターに、手を出すなぁ!」
「……大丈夫?」
「大丈夫だよ……ってマターの方が大丈夫なの!? だって、血がっ……」
「僕は、へぇ……気だよ。ナガレの方が心配だよ。はぁっ、やく……王様のと……こに」
「マ、マター!? どど、どどどうしよう! マターが、マターが!!うわぁぁぁぁぁん!!!」
「ごめんね、ナガレ。心配、かけちゃった」
「ううっ、良かった。マター、死んじゃうかと思って……ズビ」
「言ったでしょ? 僕は大丈夫だよ。でも、ありがとう」
「お人形が言ってくれたんだ。家族を助けなきゃって」
「そうだったんだね。お人形にもお礼を言わなきゃ。ありがとう、アレクゼラちゃん」
「ここに居ては危険でしょう。私があなた達を現世まで送りましょう。しかし……ナガレ。あなたはもともと亡くなるはずだった身。この術を使えば、戻れはするでしょうが、あなたの肉体に異変が出てしまいます。それでも、あなたは戻るのですね?」
「うん、ママとパパと一緒に居たいけどここに居ないし、マターと離れるのも嫌だから」
「……分かりました。では、マター、ナガレ、そして、アレクゼラ。皆様、お元気で」
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今まで忘れていたはずの記憶が、あの時の記憶が流れ込んでくる。
そうか、思い出した。
あの夢の内容。
俺は、小さい頃妖精の国に迷い込んだ。
そこであいつに、マターと会ったんだ。
そして
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「あれが妖精国の王になるだと?」
「また、あの歴史が繰り返されるのか?そんなの、嫌だ!誰か、誰か、あの怪物を殺せ!今ならまだ間に合う!早く殺せ!殺すんだ!!」
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妖精国の妖精達が、マターに牙を剥き始めた。妖精から狙われないように、国王が俺が住む現世に送ったんだ。
通りで見覚えがあったんだ。
だが、全部を思い出したわけではない。
あの歴史。国王。そして、マター。こいつの正体。
だが1つ、こいつに言わないといけないことがある。
「マター。」
「? どうしたんだい、ナガレ。」
「すまない
「ふぇ?」
「最初に会った時、お前は分かってたんだな。俺が、あの時の奴だって。」
「……」
「なのに、俺は何も覚えてなくて。お前に殴りかかっちまった。だから」
「ふふふ」
「?」
何かおかしな事を言っただろうか。マターは子供のような無邪気な笑顔を見せ、こちらを向く。
「あの時と変わったんだね、ナガレ」
「……!」
「泣き虫で、臆病で、何かあればすぐ物陰に隠れる子だったのに。今じゃその影もないもん」
「……悪かったな」
「いや、やっぱ撤回。何も変わってないね、ナガレは」
「てめぇが変わりすぎなんだよ、バーカ!」
「あ、今僕のこと馬鹿って言ったな! 馬鹿って言う方が馬鹿なんだぞ〜ぅ」
ポカポカと効果音が出そうな勢いで肩を殴るマター。俺はそれを受けながら、話しかける。
「なぁ、マター」
「ん? どうしたの?」
「俺は、改めて誓おう。何があろうと、お前を絶対に守ると」
「……ありがとう、頼りにしてるよ。でも、無茶だけは許さないからね」
「あぁ」
「じゃ、帰ろうか。僕も、もう一つの目的を達成する事は出来たし」
「疲れたでござるねぇ」
「今日はマター君の作る豚キムチが食べたいミィ!」
「ふふふ、そうだね。今日は奮発しちゃおうか」
「なにぃ!?姉ちゃんだけずるいでござる!拙者も食べたいでござる!!」
「わがまま言うな。俺たちはコンビニ弁当にすんぞ」
「……じゃあ、今日はナガレの家でご馳走にしようか?材料は揃えてくるからさ」
「「やったミィ!(でござる)!」」
「ったく、こいつら」
「ふふふ、愉快で良いじゃない?」
俺たち2人と、2匹は遊園地を後にし、夕陽の照らす帰路に着いた。