エンターテイルズ   作:セカラボ

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第6章 仲間探し

ある日の昼下がり、いつものように大学のふれあい広場で俺とマターさんは話していた。今日はマターさんと一緒に打倒アンチエンターのメンバーを増やす、そのために集まった。

 

「マターさん、メンバーを増やすにしても何か宛はあるんですか?」

「あるにはあるんだが、昼間は寝ていてね。基本、夜にしか会うことが出来ないんだ」

「その人、昼間は寝てるって大丈夫な人なんですか?」

 

月代は、胡乱げに目を先輩に向けながら告げた。

 

「なに、大丈夫さ。僕よりよっぽど頼れる、大事な友人だ。僕と同じような態度は取るんじゃないぞ」

マターは失礼なことがないように、と俺を窘めるようにそう言った。

 

「マターさんの古い友達と言うだけで不安になるんですが」

 

月代は、1つ溜息を零しながらそう呟いた。

「あいつとの出会いは、そう……3年ほど前、ある古本屋で欲しかった本を見つけ、手に取ろうとした時だ。あの時私は、探していた本をやっと見つけ少し舞い上がっていた」

先輩は、懐かしそうにあいつと呼んだ者との出会いを話し始めた。

 

 

 

回想ー3年前ー

 

「ふっふっふ。ようやく見つけたぞ。僕が追い求めしこの本!!運命とは、この時を言うのだな」

マターは顔を綻ばせながら、やっと見つけた本に手を差し伸ばした。

マターの手が本を掴むと同時に、もう一つの手がその本を掴んだ。

 

「うん?」

「え?」

 

マターが差し出された手の方向を向くと、そこには、身長が高く、見るからに女性の理想を体現したかのような体格をした、

黒く長い長髪と、赤い目をした20代前半位の女性が立っている。

 

「あっ、もしかしてあなたもこの本が欲しいの?」

 

女は本を手にしたまま、マターにそう言った。

 

「そうだな。僕はそれをずっと探していた」

「そうなんだ、実は私もこの本をずっと探しててね、やっと見つけたんだ。だから、あなたに譲ることは出来ないの」

 

女性は、申し訳なさそうにしながらも目には譲る気がないという目をしていた。

今こうしてる間にも、彼女は本を握る指に力を入れている。

 

「そういうことなら僕も同じ。その[[rb:本 > ソウル]]は僕が先に見つけ、触れたものだ。早い者勝ちという言葉が[[rb:辞書 > アポカリプス]]にも書いてあるだろう?後から来た者は譲るというのが筋というもの、疾くその手を離すがいい」

「いやいや、私の方が早く見つけたよ! その証拠に、私の方が早く本に指が触れていたからね!」

「ほぅ、あくまで僕に楯突くというか」

 

2人は一冊の本を握ったまま暫く硬直状態に入る。

2人の間には稲妻が迸り、虎と龍が威嚇し合うイメージさえ見えるほど気迫が出ていた。

 

「それじゃあ!どっちがよりこの本を欲しいのか言い合いっこ決めようよ」

 

このままでは埒が明かないと思った女性は、そうマターに提案した。

 

「言い合い?」

「そう!本当にこの本が好きで欲しいのなら、その欲しいって気持ちを話すことが出来るはずでしょ?その気持ちを言い合いっこして相手を言い負かした方がこの本を買うの。どう?」

 

女性はとても自信があるのか、顔に笑顔を称え自信ありげにそう言った。

 

「面白い!それこそが僕の魂(ソウル)である所以、思い知れ!」

 

マターも彼女のその雰囲気に当てられたのか、挑戦的な笑みを浮かべながらそう言った。

 

「望むところよ!」

 

ー回想終了ー

 

 

 

「と、これが僕とあいつとの出会いだ」

 

先輩は懐かしそうに、あいつと呼んだ女性との昔話を俺に話し終わったあと、ふぅっと一つ息を吐いてそう締めくくった。

 

「いや!マターさんとその人、お店の中でなんてこと始めてるんですか!?絶対!お店の人や他のお客さんたちに迷惑がかかったでしょ!」

俺は先輩の思い出話を聞き終わると同時にそう全力でツッコんだ。

 

「実はその通りでね。店員さんにあいつと共にお説教をくらってしまった。他のお客様のご迷惑になりますからこのようなことは二度となさらないでください! とね」

「そりゃそうですよ。逆に出禁にならなかっただけまだマシですって」

「出禁にならなかったんだから、いいじゃないか」

 

マターは、唇を尖らせまったく反省してないといった風に俺にそう言った。

 

「まったく、それで? その人とはその後どうなったんですか?」

 

俺は、全く反省してないといった雰囲気の先輩に呆れながらも、話が先に進まないと思い、話を促した。

 

「あぁ、そうだね。そのあと、口論とは違った勝負をしようということになってね。無難にじゃんけんで決着をつけることに

なった。…結果は、僕が負けた。昔からそういう運は悪くてね。なんで僕はあの時、グーを出さずにチョキを出さなかったんだろうな?」

「知りませんよ、そんなこと。でも、古い友達ってことはその後も何か繋がりがあったんですよね?」

「うん、その通り。どうしてもその本を読みたかった僕は勝負の後、一度で良いから読ませてくれないかと頼んだ。そした

ら、あいつは了承してくれてな、「今まであそこまで私と言い合えた子はいなかったよ」とな。」

 

だんだんと声色が明るいものになっている先輩。どこか嬉しそうにしているのは気のせいではないであろう。

 

「そして、あいつの家に行って様々な作品について語り合っているうちに友人とも言える間柄になったんだ」

「へ~、マターさんもそういうところがあるんですね」

俺は本当に珍しいと言った顔をしていたと思う。マターさんの行動は基本的に、周囲を顧みない、危なっかしいを体現化した

存在だったから。そんな先輩についていく俺も俺だけど。

 

「なら、そんなに色々な作品が好きなら俺たちの仲間になってアンチエンターと戦ってくれるかもしれませんね」

俺は、彼女なら仲間になってくれる可能性が高いと思い、明るくそう言った。

 

「そうだね、僕としては必ず仲間になってくれると考えてはいるんだが、さっきも言った通り。あいつは昼間ほとんど寝ていてね、夜から明朝までしか外に出られないんだ」

「てかなんなんですか? その人、まるで吸血鬼みたいな生活してるじゃないですか。日光に当たるとやられちゃうみたいなそんなんじゃあるまいし」

 

なんて生活をしてるんだと呆れ顔をしながらそう言った。先輩から返ってきた言葉は意外なものだった。

 

「その通りだよ」

 

少し眉をひそめ、声を小さくしながらそう言ってきた。

 

「……は?」

「うんうん、その反応!その通りだと言ったんだよ。目覚まし君」

「だ・れ・が・! 目覚まし君だ! いや! そんなことより吸血鬼ってどういうことなんですか?」

 

俺は最初いつものような大声でツッコミを入れていたが、話の後半部分は声を小さく先輩に聞いた。

 

「言葉の通り、あいつは正真正銘、吸血鬼だ。う~ん『真祖』と言う方が正しいかな?」

 

真面目な顔をしながら、そう俺に答えた。

 

「はぁ、そんなこと言っても俺は騙されませんよ。吸血鬼とか言っといて、本当は昼夜逆転した生活送ってる人なんでしょ?それで、恥ずかしいから自分は吸血鬼だ~とか言って昼間は寝てるんでしょ。どっかのマターさんみたいに」

 

俺はマターさんの冗談だと思い、伬しげな目を向ける。

 

「むっ、最後の一言は余計だぞ。だが、相変わらずの現実主義者。まぁ確かに、いきなり吸血鬼だとか言ってもはい、そうですか。と頷けるわけもないか」

 

少し考える素振りを見せた後、俺に振り向き直ってこう言った。

 

「よし、じゃあこうしよう。今日の夜8時にあいつの家に行こう。百聞は一見にしかずと言うしな」

「ええ!? 今日いきなりですか!? それも夜の8時に!? さすがに急に押しかけるのは相手にも悪くないですか?」

 

今日の夜に行くと言い出したマターさんに、俺は驚いてそう言った。

 

「大丈夫だ、目覚まし君。あいつからは、いつ来ても大歓迎だと言われている」

 

そんな月代の様子を見て、気にしなくていいといった風にマターさんはそう答えた。

「はぁ、相手がそう言っているならいいんですが」

 

俺は、少し怪訝な表情をしながらも相手がいいのならと納得した。

 

「では6時に大学前で待ち合わせをするとしよう」

「分かりました」

「では、僕はそれまで一眠r」

「ちゃんと講義には出てくださいね?」

「も、勿論だとも」

 

惰眠を貪ろうとするマターさんに喝を入れ、俺は講義を受けに指定されている教室へと向かう。

 

「マター君!僕も講義ってやつを見てみたいミィ!連れてってくれミィ!」

「むっ、そんな真っ直ぐな目をされては断れないな。仕方ない。僕も行くとしよう」

 

ラミィからの要望に応え、重い足取りで教室へと赴く。室内に入ると、目を閉じていると錯覚してしまうかのように視界が真っ黒に塗りつぶされる。

(うっ……)

以前、ラミィと出会った時の事を思い出す。頭痛はそれほどまで無かったが、足元はふらつく。歩みを進めようと足を動かすも、段差を踏み外し転びそうになる。しかし、入り口付近の壁に手をつき何とか倒れずには済んだ。視界も徐々に回復し、僕は周囲を見回す。先ほどまで雲一つない青かった空が、夕方でもないのに赤一色に染め上がっている。そして、教室の中心には見慣れない深緑色の機械が、両手に鋏のような武器を携え、地に横たわる物に視線を向けている。その光景に唖然とする僕らに気付いたのか、視線をこちらへと向けた。そして

 

「見ツケタゾ、妖精」

「「!!」」

 

その言葉を発し、一気に僕らの眼前へと迫る。

 

「標的確認、逃ガシハシナイ。憎キ妖精ドモ」

「マター君、避けてミィ!!」

 

刹那、僕に向かって振りかぶられる武器。

冷たい汗が首筋を伝う。そこに銀色に鈍く光る刃が。

 

「…おい、そこの君。大丈夫か?」

 

その言葉でハッと我に帰る。眼前にはいつもと変わらない教室の風景。

 

「……っ」

「具合でも悪いのか?」

「いえ、大丈夫です。先生。少し立ちくらみがして」

壁に寄っかかっていた体をサッと立て直す。周囲の冷ややかな視線が突き刺さる。

 

「ってなんだ、いつものお前か。気をつけろよ」

「……はい、すみません」

何事もなかったかのように着席し、いつものように講義を受け、無事に終了する。

 

「今日の講義はこれで終わりだ。気をつけて帰れよ」

 

僕はその声とほぼ同時に立ち上がり、教室を後にする。

 

「さて、待ち合わせ場所に向かうとしよう」

「マター君」

「なんだい? ラミィ」

「その、大丈夫かミィ? 講義の内容も興味深い内容だったミィけど、あんまり聞いてなかったように見えたミィ。もしかして、さっきのことが気になってたのかミィ?」

 

返答に困った。気にしていなかったのかと問われれば、無論否である。先程、僕が見たあの赤い風景。あの機械の言動や目線

の先に「僕」はいない。もちろん首元を狙っていたのも含めて。それは、ラミィが僕の肩に乗っていたからだ。そう、あの機械の行動は明らかにラミィに対してのものだ。

僕のことは遮蔽物ぐらいにしか思っていないであろう、妖精を憎む機械。ラミィはそれに気付いてはいないようだ。だが、ここは慎重かつ、冷静でいよう。顔に出してしまっては彼女に心配をかけてしまう。

 

「な~に、僕は異世界の主だ。何も心配する必要はないし、体調はすこぶる良い。何より」

「?」

「いや、何でもない。行こうか」

「? 分かったミィ!!」

勢いよくバッグから飛び出たラミィは本に乗ってフワフワと漂いながら、僕の隣に並ぶ。

 

「また月代君を待たせてしまっているな。急ごうか」

少しだけかけ足で待ち合わせの場所へと向かう。それは自分の保身のためか、大事な後輩のためか、はたまた隣で微笑む妖精のためか。

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