エンターテイルズ   作:セカラボ

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第8章 真祖降臨

「え~、目的地に到着します。目的地に到着します」

 

静かだったバスの中に運転手のアナウンスが流れる。

 

「もう着くのか。意外と早かったな」

俺は読み終えたライトノベルをバックへ入れる。続編が気になるところだが、発売は未定とのこと。気長に待っておこう。

 

「さてと、降りる準備と」

って言ってもこの教材が入ってるバッグぐらいだろうけど。と思い隣の座席を見る。隣には大きなお荷物がスースーと寝息を立てている。俺としたことが、この大きなお荷物を忘れるところだった。

 

「マターさん、起きてください。着きますよ」

「zzz……」

 

何だかこのやり取りどこかでした覚えがあるぞ。思い当たる節がありすぎてもはや分からないほどだが、とりあえず目の前で無防備な体勢を晒しているこいつをなんとかしなければ。

 

「でもなぁ、マターさん。見た目がなぁ」

 

この発言も何度したか。もはやこの部分だけ時間が繰り返されているとさえ感じられる。あれこれ考えている内にバスが停まった。

 

「さぁ、着きましたよ。マター様、月代様。と、おや?」

 

運転席から運転手がやって来た。俺らの様子を見て、状況を理解する。

 

「なるほど、マター様、お眠りになられているのですね」

「あぁ、すみません。すぐ起こしますので」

「いえ、大丈夫です。ワタクシがやりましょう。こういうのにはコツがいるのです」

「?」

 

何をするのかと俺は2人の様子を窺う。運転手がマターさんの耳元で何かを囁いた。すると、

 

「ん……あれ? 運転手さん?」

「はい、ワタクシです。おはようございます、マター様。気持ちよくお眠りになっているところ申し訳ございません。目的地へと到着したので起こしに参りました」

 

マターさんの目がゆっくりと開き、目覚める。あの運転手、一体何をしたんだ?

 

「いつもごめんね?ありがとう」

「いえ、マター様もお疲れなのでしょう」

「ううん、そんなことはないよ。運転手さんと比べたら全然だよ。さて、時間も惜しいし、行こうか。目覚まし君」

 

寝ぼけ眼でこちらへと視線を向ける。

 

「はい、そうですね。生憎とツッコミはしませんよ。ここ、山奥ですし夜なんで」

「目覚ましがないのは残念だけど、仕方ない。運転手さん、すぐ戻ってくるよ」

「はい、かしこまりました。お気をつけていってらっしゃいませ」

 

俺たちは荷物をまとめてバスを降りる。

 

「それで、ここからどうするんですか?」

「少し歩くよ」

「そうですか。暗いし道とか大丈夫なんですか? まぁ、スマホのライトでなんとか見えそうですけど」

「抜かりはない。こんなこともあろうかと懐中電灯を常備している」

「どんなこと想定してんすか、あんた!」

 

まぁないよりはマシだろう。マターさんはバックを漁り、懐中電灯を咥えたラミィを取り出す。

 

「ミィ! ボクがライトミィ!」

「どうしよう。心配になってきた」

「ちょっと! どういうことミィ!!」

「まぁまぁ、歩く距離はそんなに無いから心配する必要はないよ。では、先陣を行く名誉を与える! 頼むぞ、ラミィ!」

「任されたミィ! 照らすミィ!!」

 

マターさんは先を行くラミィに道を支持しながら進んでいく。俺もそれについて行く形で歩く。しばらく進むと人1人がやっと通れるくらいの細道があった。

 

「ここを通ったら着くぞ」

「よっしゃー! 行くミィ!!」

「ここ通れるんすか?服とか絶対汚れますって」

「ここじゃなきゃ通れないからね、仕方ないね」

「なんでこんな山奥に。大体、俺ついてくる必要ありました?これ」

 

普段こんな所を通らないからであろう、自然と口から文句が出てくる。

 

「まあまあそう言わずにさ。きっと月代君とも話は合うと思うし」

「はぁ、ったく。ブツブツ」

暗い細道を横歩きになって進んでいく。そうかからない内に目の前から光が差し込んでくる。

「サングラス、いるかい?この先の目へのダメージは計り知れないぞ」

「いらないです。横歩きなおかげで少しは軽減されてますし」

「そうかい? じゃあ到着だ」

 

細道を抜けて、正面へと向き直る。視界に映った物に俺は呆気に取られる。

 

「な、なんすかこれ」

「何って、誉れ高き真祖様のお屋敷だぞ」

「いや、分かってますけど。確かにサングラスつけた方が良かったかもしれないっすね」

目の前にあるのは、外装が眩い程に白く輝く屋敷とその庭園。上を見上げると確かに、木々に遮られ日光も月光も届かない。その為かより一層白を際立てている。

「時間は~っと。よし、まだ間に合うな。いざ、突撃ぃ~!!」

颯爽と駆け出すマターさん。庭園を颯爽と走り抜けていく。俺もそれに続こうとした。が

 

 

バチッ!!

 

 

「!? 痛っ!」

 

何かにそれを阻まれてしまった。前後左右あらゆる方角を見渡すも何もない。

 

「あれ? 月代君~! どうしたんだ~い」

 

既に扉の前まで行っているであろうマターさんが声をかけてきた。

 

「なんか俺こっから通れないみたいっす! なんかこう、静電気みたいなのがバチッてきて」

「僕も通れなかったミィ!! 割と痛かったミィよ!」

「静電気?」

 

ラミィも通れなかったのか。何でマターさんだけ通り抜けれたんだ?しばらく考えてみるが、わからない。

 

「あっ!」

 

遠くでマターさんが何か思い出したかのような声がした。

 

「なんか分かったんすか?」

「おそらくだけど!ちょっと待ってて~!」

 

そう言うと屋敷の方へ振り返り、扉をノックする音が微かにだが聞こえる。

 

「はい、どなた様ですか?」

「やぁ、啊魔傘。元気だったかい?」

「げっ、あんた! 何しに来たのよ!?」

「そう驚くことでもないだろう?ユウに会いに来ただけだぞ」

 

そう告げても目の前に立つ啊魔傘と呼ばれたメイド服の女性は顔を顰めたまま、警戒体勢を崩さない。

 

「……ここで会ったが幾星霜。マスターの為に、お前を倒す!!」

「よしなよ、啊魔傘。冗談は顔だけにしときな。綺麗な顔が台無しだよ?」

「うるさい! 気安く啊魔傘と呼ぶな!!」

「でも良いのかなぁ~? 僕とこうしている間にも愛しの主人との時間は減っていくよ?それに、僕を倒したらきっと悲しむだろうなぁ~」

「チッ」

 

明らかに不服そうな、怒気の篭った舌打ちをされた。思えば昔、というか出会いたての頃からこうだった。特に何かした覚えとかないけれど、明らかに僕と「マスター」との対応の差が違う。僕以外だとどうなんだろう?と、少し気になったのもあ

り後輩、月代君を呼んだわけだ。まぁ、そんなこと本人には言えないけど。

 

「さっさと入りなさいよ、気に食わないけど。用が済んだらすぐ出てって」

「はいは~い。言われなくてもそうしますよ~。ありがとね~」

「おいお前! 感謝の気持ちが伝わらないぞ!」

「ん? 僕からの感謝が欲しいって?」

「そんなものいらない! とっとと帰れ!」

「あ、それと入口のあれ。外しといてよ。僕の連れ達が入れないからさ」

「……それが人に物を頼む態度か」

「君、人だったの?」

「いい加減うるさい。殺すぞ、お前」

 

あまり歓迎されてないような出迎えをされているように見えるのだが、大丈夫なのだろうか?そう考えているとマターさんがこちらに向かって走ってくる。

長らく待たされていた時間が終わりを告げる。

 

「待たせたね!もう大丈夫だと思うよ」

「そ、そうですか?なんかすごいよく思われてないみたいですけど」

「ん? あぁ、啊魔傘のことね。気にしなくても大丈夫だよ。僕だけにあんな態度をするだけだと思うから」

「それ、自分で言って悲しくないんですか?」

 

フフッと微笑んでまた俺たちの方に背中を向けるマターさん。気にしなければなんとやら~と言いながら歩いていき、扉を開けて中に入って行った。

 

「俺たちも行くか」

「そうミィね」

 

ーー

 

俺は肩に乗ったラミィと一緒に庭園内を歩き、キョロキョロと辺りを見回す。その様はまさに不審者のそれであろう。あちこち見ていると明らかに長いと感じた扉の前へとあっという間に辿り着く。

 

「お、お邪魔しますミィ」

「お邪魔します」

 

先に入って行ったマターさんに続き俺らもギィっと扉を開け、屋敷の中へと入る。入るとそれはまぁ絢爛豪華。よくドラマなどに出てくる豪邸って感じの内装だ。扉正面に階段が左右二つあり、左側の奥の部屋から談笑が聞こえる。

 

「あそこの部屋か。俺たちも行こう」

「ラジャーミィ! 突撃ミィ!」

階段を登り、左側の一番奥の部屋の扉の前に立つ。深呼吸を一つして、扉をノックする。

 

「お、来たかな」

「は~い。開けるから待ってて~!」

 

聞き慣れた声ともう一つ、女性の声がした後、ガチャっと扉が開かれる。

 

「いらっしゃい、月代君! ……だっけ?」

「は、はい。そうです」

 

見るからに普通の女性だ。今、俺の目の前に立っている彼女が吸血鬼。そう言われても全然分からないほど、物腰の柔らかそうな人。

 

「さ、入って入って!立ち話もなんだからさ!」

「は、はい。失礼します」

「そんなかしこまらなくていいのにぃ~」

 

何故だか、何となくではあるが、マターさんと仲が良い理由がこの短時間で理解できた気がする。

 

「座って座って~。せっかく来てもらったんだし、いっぱい話そうよ! 月代君もラノベが好きみたいだし。どんなのが好きなの?」

「えっと、今読んでるのがこれっすね」

「! それって最近出たやつだよね? 私も持ってるよ! 全部見たけど面白いよね!」

「面白いっすよね。まさか主人公が敵になるなんて思わなかったっす」

「だよねぇ~! 私もそう思ったの。ヒロインとかライバルじゃなくて主人公が敵でしたなんて」

 

柄にもなく、ものすごく話し込んでしまった。やはり趣味を誰かと語り合えるというのは、良い。

 

「楽しそうだねぇ~」

 

このマターさんの一言でふと我に帰る。

「ハッ!すみません。ついつい話過ぎちゃいましたよね」

「うぅん。大丈夫だよ! 私もこんなに語り合えるなんて思ってなかったし!」

 

相手も満足そうだ。良かった。

 

「これからバイトだろ、ハム子。大丈夫なのか?」

「そうだよ~。今からダッシュで行けば何とか間に合うかな?」

「近くにバスを手配してるんだ。良かったらバイト先まで送るよ」

「え、良いの!? 助かる~。やっぱ持つべきはマッちゃんだね」

「それほどでもないさ。焦っていくよりはゆとりを持った方が良いからね」

 

そう言うとマターさんと吸血鬼は立ち上がり、玄関へと向かう。そう言えば何か忘れてるような。それに、ラミィがいない!?

 

「マターさん!大変です!ラミィがいません!」

「ん?ラミィ?ラミィは先程この部屋から出て行ったぞ」

「あれ、そうなんすか?」

 

話し込んでて気付かなかったが、その間に出て行ったらしい。

 

「ラミィって、あのぬいぐるみみたいな子?」

「あぁ、はいそうです。えとー」

「お姉ちゃんって呼んで!」

「!?」

 

そう言って目の前に立つ彼女は先程、楽しげに話していた雰囲気とは打って変わり、唐突に息遣いが荒くなり、ハァハァと吐息が漏れている。あまりの変わりように俺言葉が出ず、その場に立ちすくんでしまっていた。静寂の時が流れる。実際、その時は一瞬で終わったのだが、俺には永遠にも感じられた。

 

「あぁ、それは無視しても良いぞ。目覚まし君。無視したからと言って特に何をされるわけでもないし」

「え? そうなんですか?」

「現に僕はハム子と呼んでるだろう?」

「……確かに」

「好きなように呼んだら良いさ。ハム子はそんなことで機嫌を損ねるような奴ではないからね」

「そ、そうなんですか」

 

マターさんと話した後、再び吸血鬼の方へ向き直ると荒々しかった息遣いは消えており、こちらを微笑ましい表情で見ている。

 

「で、ではユウ、さん。と呼ばせていただきます」

「うん! よろしくね、目覚まし君!」

「なっ!?」

 

目覚まし君。そう呼ばれるのはマターさんだけでもいっぱいいっぱいなのに、彼女にも呼ばれることになるのか。

 

「め、目覚まし君はちょっと……その……」

「あれ? ダメだった? じゃあ月代君ね!」

「はい、それでお願いします」

 

案外スパッとやめてもらえた。俺は心の中で安堵するが、何やら横から視線を感じる。振り向くとマターさんがニヤニヤしながらこちらを見ている。

 

「目覚まし君は僕だけのあだ名だから、ね? 目覚まし君?」

「うるせぇぶち転がしますよ」

「ヒェッ」

 

マターさんもその呼び方やめてくれないかなぁと内心思いつつ、俺たちは部屋を後にする。何やら玄関の方から話し声が聞

こえる。ラミィらしき声と、どこかで聞いたような声が一つ。そういえばここに来た時、使用人らしき人を見かけた気がするが。

 

「ここに黄色の傘って置いてあったかミィ?来る時はなかったはずミィ」

「……」

「傘立てがあったのにここにあるのは不自然ミィ。僕が直すミィ!」

そうして傘に触れるラミィ。その直後

 

バシッ

 

傘が1人でに動き、ラミィを突き飛ばす。ラミィは勢いよくコロコロと転がり、反対側の壁に後頭部?をぶつけた。

 

「い、痛いミィ!? な、なんで傘が動くのかミィ?」

「ちょっと! 触らないでくれる!? 私を触って良いのはご主人だけなんだから!」

「うぇ……? なんで傘が喋ってるのかミィ? ご、ごめんなさいミィ」

 

耳で頭をさすりながら涙目で謝っているラミィ。そこにすかさずユウとマターさんが駆け寄る。

「ちょっと、『アン』!? 何してるの!! その子はお客様でしょ!?」

「ラミィ、大丈夫かい? おい、啊魔傘。流石にやりすぎだろ?」

 

黄色の傘は二人に詰め寄られるも、毅然とした態度を保っている。

 

「知らないわ。そいつが私に触ろうとしたから突っぱねただけだし」

「あのなぁ、啊魔傘。いくら僕のことが嫌いだったとしても他に当たるのは良くないよ?ましてや、僕の仲間に当たるなんて持っての他だ」

「マッちゃんの言う通りだよ、アン。ほら、ごめんなさいは?」

 

主人に言われたからなのか、アンは不機嫌そうながらも誤った。

 

「まぁ、少しはやり過ぎたかもしれないし。謝っておくわ、ごめんなさいね」

「ぜ、全然大丈夫ミィ」

「気持ちが篭ってないぞ、啊魔傘」

「っ!」

一瞬マターさんを鋭い目で睨むも、ユウの悲しそうな表情で察したのだろう。今度は素直に謝ってきた。

 

「ごめんなさい。やり過ぎたわ。今度からはあいつにするから」

「大丈夫、じゃないミィ!?」

「はっはっは。いつでも歓迎するぞ。啊魔傘。僕はフィジカルだけは強いからな!」

「多分そういうとこですよ、マターさん」

「はぇ? 何が?」

 

頭に?のマークが浮かんで見えるような表情で突っ込んだ俺の方を見るマターさん。少々溜め息混じりに

 

「早くしないと間に合わないんでしょ? とっとと行きますよ」

 

と全員に声をかける。

 

「あっ、本当だ! もう20分もない! 急がなきゃ!」

脱兎の如く玄関まで走り去るユウ。それを追いかけるようにして俺たちも屋敷の外へと出て、乗ってきたバスの待つ場へと向かう。が、彼女の姿はどこにも見当たらない。

 

「結局自力で行ったんだな、ハム子」

「伴、大丈夫なんすかね。閉めてかなかったですけど」

「ここに来るまでが一苦労だし大丈夫でしょ、多分。それより、どうする?ハム子のバイト先、本屋なんだけど」

「もちろん行きます」

 

俺はマターさんの本屋という言葉に食い気味に反応し、即答する。

 

「あ、あぁ、そうかい。では行くとしよう」

しばらく歩き、俺たちの乗ってきたバスが見えた。

「お待ちしておりました、マター様、月代様」

「ごめんね? 思ったより遅くなっちゃった」

「いえいえ、大丈夫ですよ」

「それともうひとつ、今から連れてって欲しいところがあるんだけど、大丈夫かい?」

「えぇ、大丈夫ですよ。マター様が行きたいと言う場所なら何処へなりとも」

「ありがとう、じゃあここまでお願い出来るかな?」

「ふむ、なるほど。近くなのですね。かしこまりました」

 

バスの扉が開き、マターさんと運転手はそれに乗車する。俺とラミィもバスに乗り込み、目的地へと向かう。その道中、俺はすっかり忘れていたことを思い出す。

 

「あっ、そう言えばマターさん。」

「ん? どうしたんだい?」

「ユウさんに協力を仰ぐ話、しませんでしたよね?」

「あぁ、その件かい? その話は月代君が屋敷の庭園を見て回っている時に済ませておいたよ」

「そんな早く終わったんですか?なら協力してくれるってことで大丈夫そうですね」

 

俺がそんな風に言うと、マターさんは目を閉じ、首を横に振る。

 

「まぁ、ある程度は予想してたんだけどね。ハム子は争いごとが嫌いなんだ。だからこの話をした時も少し、嫌そうな顔をされてね」

「そうだったんすね」

「あれだけ仲間になってくれるだろうとか言ってたけど、期待に添えなかったな。申し訳ない」

「まぁ、仕方ないですよ。人にも得意不得意がありますしそんなものでしょ」

 

珍しく、マターさんから少し弱気な発言が飛び出した事に驚きつつ、フォローする。

 

「断られたんなら他探しましょうよ。他に誰かいないんですか?」

「残念ながら。僕が誘えるのはユウまでが限界だ」

「そう、ですか」

「これからも僕とラミィと、月代君との3人でやっていくことになりそうだ。協力者は多ければ多いほど良い。けど」

「その見込みがないならこの数で賄うしかない。ってことですね」

「その通り。最初からそうだったけど、これからも長く険しい道になりそうだ。今はどうにか相手があの影達だけだからね。そこに幹部が加わるとなると、僕でも対処しきれるかどうか」

「……そうですね」

 

俺たちは暗い山道で、表情も暗くなるような話を続けている。疎に設置されている電灯に照らされて見えるマターさんの横顔

から、どこかもの悲しさが伝わってくるような気がした。

 

「ま、その時はその時で対応しよう。何てったって僕は異世界の主だからね」

「それ、いつまで言い続けるつもりですか。それで解決したことあります?」

「もちろんだとも。あれは、そうだな。僕がまだ異世界の主になりたての時」

 

バスに揺られる中でマターさんの話を聞かされる。俺が振った話ではあるが、内心返ってこず、慌てふためくものだろうと見

たのが甘かった。だが、暗い話から脱線したのは俺もマターさんも、そしてラミィも良かったと思っているはずだ。今は仕方

なく、マターさんの話を聞いてやろう。そう思えるくらい、先輩の話は滑稽であった。

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