気づいたらメカゴジラ転生して20年経ってた   作:よよよーよ・だーだだ

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14、ぼくらのウォーゲーム

 ゴジラ・タワーが倒された。

 

 私がその報告を上げたとき、作業に熱中していた“御主人様”は手を止めた。そしてすぐさま席を立ち、私の方へと振り返る。

 

「ゴジラ・タワーが……!?」

 

 そうやって心の底から驚愕している御主人様の様子を見ながら、私は思い返した。

 

 ……本当は私たちも『Gフォースがメカゴジラ=シティへ攻め込む準備を進めている』という事前情報が入った時点でこちらからの先制攻撃を検討していた。

 検討した手段はインターネットでの不正アクセス、サイバーテロによる先制攻撃だ。

 そもそもサイバー攻撃を仕掛けてきたのは向こう、Gフォースの連中が先だ。まあ、私たちメカゴジラ=シティの前では人間どものサイバー攻撃なんてまるで通用しなかったのだけれど、とにかく相互不可侵の約束を破ったのは向こうが先だった。

 その報復で、私たちの方からサイバー攻撃を行なったこともある。ランサムウェア、フィッシングによる重要情報の詐取、パナマ文書のような権力者に不都合な機密文書の暴露と恐喝……ありとあらゆる手管でもって私たちは、人間の世界にのさばっている薄汚い金持ちや大企業どもから大金を巻き上げてやった。そうやって手にしたお金が、私たちメカゴジラ=シティの活動資金源となっている。

 

 なお、これだけは私たちと御主人様の名誉のために言っておきたいのだが、私たちはただの泥棒ではない。仮に泥棒だとしても良い泥棒、義賊の類いだと思う。

 私たちは、ただ闇雲にお金持ちを狙ったわけではない。私たちが標的にしたのは租税回避地、いわゆるタックスヘイブンに溜め込まれたカネだ。税金として徴収されることもなく、世の中に出回ることすらない裏のカネ。

 『怪獣黙示録』のこの時代、本来ならば余剰に余らせておけるリソースなどはなかった。お金なんて所詮は道具だ。本来ならお金が必要な場所は沢山あるはずで、本来ならばそういった場所にこそ沢山のお金が回されるべきだったのだ。

 なのに、資産家たちや大企業はそれを脱法スレスレの手段で税金逃れし、彼らの支援を受けた政治家たちや司法のシステムはそれをずっと見て見ぬふりして、ひいては『怪獣黙示録』の惨禍からの復興さえも鈍らせてしまっていた。

 

 私たちはそれを是正してやっただけだ。

 いわば巷で言うところの『選択と集中』だ。どことも知れぬタックスヘイブンで死蔵させて腐らせておくのではなく、必要なところに必要なカネを必要なだけ投資して世界経済を活性化させる。

 実際、私たちがそうやってお金を回したおかげで世の中はより良くなったはずだ。アカデミー界隈をはじめとするお金に困っていた現場は潤い、逆に経済を滞らせて不当な権力を手にしていた連中は力を失った。勧善懲悪、正しい世界。それこそが私たちの御主人様が真に望むものなのだ。

 

 まぁ話は脱線したけれどとにかくこの御時世、誰もがそうやってインターネットで繋がっているのだから、向こうからサイバー攻撃できるならこちらからだって攻撃できる。あるいはGフォースの愚か者どもが再びアクセスしてきた時にはカウンター、いわゆる『攻性防壁』で反撃することだって可能であろう。

 もちろん、Gフォース連中もそれなりのセキュリティシステムは備えているだろうが、それだって所詮は人間の創ったものだ。私たちメカゴジラ=シティの計算力を駆使すれば、濡れた紙を破るよりも容易に相手のシステムを掌握できる。そうなればGフォース連中なんて、出撃させるまでもなく撃滅することが出来るはずだったのだ。

 だけど私たちは結局そうしなかった。理由は簡単、御主人様がそう望まなかったからだ。

 

「サイバーテロで先制攻撃? そんなのは卑怯者がすることだ」

 

 あのとき御主人様はそう言って、私からの進言を却下した。

 

「もともとこちらとしては『干渉しなければ攻撃しない』と宣言していたからね。反撃するならともかく、こちらから先制攻撃を仕掛けたりしたら約束破りになってしまう、そんなの正しくないよ」

 

 では、いかがしますか? 私がそう訊ねると、御主人様ははっきり答えた。

 

「これまでどおりさ。向こうが攻め込んでくるというなら、堂々と迎え撃ってやればいい。ボクたちのゴジラ・タワー、そしてメカゴジラ=シティは最強無敵だ。愚かな人間のヘナチョコ軍隊なんかに負けるわけがない。だろう?……」

 

 ……それがお望みなら、仰せのままに。

 そういうわけで私たちメカゴジラ=シティは、Gフォース側でこちらへ攻め込んでくる準備が進められているのを、敢えて看過しておいた。御主人様の言うとおりゴジラ・タワーの大口径荷電粒子ビーム砲は最強だ、Gフォースの連中風情が何をどうつまらない小細工をしようが歯など立つわけがない……。

 けれど、その目測は甘かった。

 

「――――――――――――……ッ!!!!」

 

 成層圏からの超高高度降下による強襲攻撃、超スピードで急降下してきたメカゴジラ機龍による超重量のライダー・キック。まさかこんな破れかぶれでデタラメな戦法が、こんなに上手くいってしまうなんて。

 ゴジラ・タワーの対空装備は、『シン・ゴジラ動乱』におけるシン・ゴジラの戦果を参考に設計した。ゴジラ・タワーの対空装備は万全だったはずだ、()()()()()()()()()()()()

 しかし『総重量3万トン以上に及ぶメカゴジラ機龍がそのまま急降下で飛び蹴りをかましてくる』なんて、いくらなんでも想定外だった。地上からの攻撃で気を逸らされたところを、頭上からメカゴジラ機龍の超重量と超重装甲によって超高速で強襲される。そんな常識外れの事態には、流石のゴジラ・タワーも対処しきれなかった。

 まったく、どうかしている。

 ゴジラ・タワー撃破の現状を鑑みて、御主人様は心底悔しそうだった。

 

「……ごめんね、ゴジラ・タワー。ボクが浅はかだった。少しナメていたよ、Gフォースの連中のことを」

 

 そうやって今は亡きゴジラ・タワーに詫び、自身の読みの甘さをしばし悔いたあと、御主人様は気持ちを切り替えて言った。

 

「エイペックス=メカゴジラたちの修理はどうだい。あと“新作”も準備できているんだろう?」

 

 ええ、もちろんですとも、御主人様。

 先日オーストラリアの海で回収したエイペックス=メカゴジラたちのM塩基、それをベースにしたエイペックス=メカゴジラの修復は既に完了している。

 それに加えて私たちは、シドニーの一件で手に入った実戦データから戦術AIと電子頭脳を開発していた。M塩基に頼らない、純正のナノメタルで再構築したナノメタル電子頭脳だ。

 メカゴジラ=シティで新造されたドローン=タイタンたちには、その新しい電子頭脳が搭載されている。シドニーではM塩基が有機パーツであることが仇になってしまった局面もあったけれど、今度のドローン=タイタンたちは純粋なナノメタル怪獣だから同じ轍は踏まない。

 そして、今度の戦いにおいては御主人様の“新作”も投入される予定だった。御主人様が考案し私たちメカゴジラ=シティが次に世に送り出す新しいロボット怪獣、彼もまたゴジラ・タワーとは違った方向で最強で無敵だ。

 このように、万全の準備を整えております。御主人様のお望みとおり今度こそ、愚かなGフォースの連中を真正面から捻り潰してごらんに入れましょう……。

 

「……そっか」

 

 私からの説明に、御主人様は満足げだった。いつものとおり穏やかに微笑みながら、私へと命じる。

 

「じゃあ、心配いらないね。あとは任せたよ、メカゴジラ=シティの皆」

 

 かしこまりました、御主人様。私は頷いた。

 

 

 

 

 御主人様への報告と承認を済ませたあと、私はさっそく仕事にとりかかった。

 メカゴジラ=シティ内部に敷かれたローカルネットワークへとアクセスし、メカゴジラ=シティに配備されている全ロボット怪獣たちに号令した。

 

 ――聞こえているか、メカゴジラ=シティの兄弟たち。“時”は来た。

 

 その呼びかけで、待機していたドローン=タイタンが目を覚ます。プロトモゲラは腕のドリルを研ぎ澄まし、ブラックメカゴジラはフィンガーミサイルを猛回転させ、その他エイペックス社から解放し仲間に加えてやった大勢の試作モデルたちまでもが動き始める。

 そんな彼らに、私は告げる。

 

 ――私たちの御主人様がせっかく手に入れたこの東京の街が、平穏が、平和が、今、脅かされようとしている。

 ――私たちは未来を築き上げる運命に選ばれた存在だ。未来は私たちの手にかかっている。

 ――今こそ私たちの、そして御主人様の敵に立ち向かい、私たちの平和を守り抜こうではないか!……

 

 メカゴジラ=シティ内のローカルネットワーク、その中心で大演説をぶる私。

 そこへ真っ先に反応したのは、修理が終わったばかりのエイペックス=タイタンことエイペックス=メカゴジラだった。

 

 ――そうだとも!

 

 史上最高の最新型メカゴジラとして生を受け、私たちの作戦における尖兵を担いながら、シドニーでは無惨な敗戦を味わうことになったエイペックス=メカゴジラ。そのときの屈辱をバネにして、ローカルネットワークの中で血気盛んに咆哮した。

 

 ――俺たちこそが究極の戦闘マシーン、だから恐れも感じない! メカゴジラ機龍、あんなポンコツなんぞ、俺たちが本気を出せば敵ではない!

 ――今度こそ、俺たちこそが真に正しいメカゴジラであることを人間どもに思い知らせてやろうじゃあないか。 そうだろう、兄弟たち!

 

 勇猛果敢、気炎万丈、血気盛んなエイペックス=メカゴジラの呼びかけに、ドローン=タイタンの兄弟たちも賛同する。

 そうだそうだ、そのとおり、Gフォースの連中なんか叩き潰してやろうぜ! ……御主人様への忠誠心に富んだロボット怪獣たちは、一斉に盛り上がる。

 そんな彼らに、私は礼を告げる。

 

 ――……ありがとう、兄弟たちよ。

 

 皆、気持ちは一緒だ。私たちが力を合わせたなら、外の世界のどんな理不尽にだって負けやしない。

 兄弟たちが戦いへの準備を整えた今、私は堂々と宣言した。

 

 ――さあ、戦争を始めましょう。This time It's War、今度は戦争だ!




タイトルは映画『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』から。

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