気づいたらメカゴジラ転生して20年経ってた 作:よよよーよ・だーだだ
ヤシロ=ハルカが、攫われた。
突然Gフォースの指揮所のど真ん中で姿を現した“燃える龍”。そのあまりにも唐突な奇襲に、流石のGフォースの精鋭たちとて為す術も無かった。
「あ、新手のロボット怪獣ですっ!」
「野郎っ、こうなりゃ冷凍メーサーで……!」
「馬鹿、撃つなっ、味方に当たったらどうする!」
自分たちの指揮所へ砲弾やメーサーを撃ち込むわけにもいかず、かといって小銃程度ではまるで歯が立たない。そんな中、“燃える龍”は設営したばかりの指揮所テントを焼き、機材を薙ぎ倒し、Gフォースの隊員たちを容易く踏みにじってゆく。咄嗟に、隊員の誰かが叫んだ。
「皆離れろっ、焼け死ぬぞっ!」
かくして堂々とぼくたちの指揮所に乗り込んできた“燃える龍”は、全身に纏った炎を撒き散らしながら指揮所を荒らすだけ荒らしまわったあと、我らが機龍隊総隊長:ヤシロ=ハルカをぱくりと丸呑み、そのままジェット噴射でどこかへ飛び去ってしまった。
……どうしよう、ハルカが攫われてしまった。皆の頼れるリーダーであるヤシロ=ハルカ、彼女がいなければさしもの機龍隊だって烏合の衆である。
「わたしのせいですっ、わたしがもっと早く気付いていれば……っ!」
「いくらナノメタルミストが濃厚で視界不良だからって、まさかこちらのレーダーを完全に掻い潜れるステルスモードを備えたロボット怪獣だなんて……!」
「くそっ、こうなりゃ機龍で助けに……」
「わたしもしらさぎで行くわっ!」
と、皆がすぐさまヤシロ=ハルカ救出に向けて行動を起こそうとした時だった。
「狼狽えるなっ!!」
そう一喝したのは機龍隊の副長、ハヤマくんだった。どっしり腕を組んで不動の構えを見せながら、ハヤマくんは機龍隊メンバーへ厳かに告げる。
「今おれたち機龍隊が果たすべき任務、使命はなんだ? 東京の街をあのクソッタレのメカゴジラ=シティから解放することだ。おまえらは、ヤシロ一人のために台無しにするつもりか?」
その言葉で、ぼくもようやく気が付く。
……たしかに、ハヤマくんの言うとおりだ。仮に今ぼくらが目の前の任務をほっぽり出してハルカを助けに行くようなことをしたら、たとえそれでハルカ自身が救われたとしてもハルカは絶対ぼくらを許さないだろう。
「し、しかしハヤマさん……」
「隊長が……」
それでも言い募るキサラギさんとサエジマくんに、ハヤマくんは安堵させるように微笑みかける。
「……大丈夫だ、ヤシロはこんなことでくたばるタマじゃない。だからあいつがいなくても、おれたちは自分のなすべきことを優先しろ」
そう言ったハヤマくんは席を立ち、機龍隊一同に堂々と言い放つ。
「ヤシロが戻るまで、これから機龍隊は副長のおれが指揮を執るっ。まずはあのクソッタレの燃える龍、〈ファイヤードラゴン〉から片付けるぞ、機龍隊!」
ハヤマくんからの闘魂注入、それを受けたぼくら機龍隊は覚悟を決め直す。
「了解……っ!」
そして、機龍隊の皆が再び任務へと戻ったちょうどそのとき、アスカロン=ポッドの一台がぼくの傍へと急接近してきて中身を展開、ぼくの手に新たな武器が供給された。
中身は……薙刀??
「機龍、アスカロン=シックスから武装補給、〈対獣薙刀:イワトオシ〉!」
モニタを観測したアンザイさんが報告すると、サエジマくんがすかさず言った。
「ロボット怪獣サイズの薙刀って……Gフォースの技術開発部のセンスはどうなってるんですかね? ありったけの武器をかき集めてくれたとは聞いてますが、ここまでくるとなんだかむしろ在庫処分っぽいというか……」
「ええっと、技術開発部からの説明書きによると、なんでも大破した旧型轟天号の装甲から削り出したらしいですよ。その気になればゴジラの皮膚も斬れるんだとか……」
「戦艦の装甲を薙刀に転用って、ホントに何考えてるんですかあの変態技術屋集団は……?」
呆れ果てたサエジマくんのぼやきに、アキバくんとキサラギさんが応える。
「別にイイだろ。浪漫ってのがわかってねーな」
「いやしかし、そこはやっぱり実用兵器なんですから、怪獣サイズの薙刀を創れる技術があるなら、それで貫甲弾でも作った方が合理的なのでは……?」
「こまけえこたぁいいんだよ!」
アキバくんにやんややんや言われつつも、サエジマくんはこれまた至極真っ当なことを呟いていた。
ちなみに、実際に薙刀イワトオシを手にしてみた当のぼくはというと、実は満更でも無かったりする。手持ち武器を持つのは初めてだけれど握り心地は悪くないし、軽くて使い勝手も良さそうだ。
そんなぼくの姿を見ていたキサラギさん、そしてアンザイさんまでもが口を挟んだ。
「細かいことばっかり言わないの、サエジマ。機龍に大薙刀、カッコいいじゃん」
「そうですよう。似合ってますよ、機龍!」
ふふーん、そうでしょう、そうでしょう。ちょっぴりぼくも得意になる。
「機龍、戦闘モーションプロトコル再構築……メカゴジラに手持ち武器だなんて、ぼく個人としてはかなり納得しがたいですが、まあ、機龍もやる気みたいだし、やりましょう!」
「おうとも! さあこれで悪者ロボットどもを叩ッ斬ってやろうぜ、機龍!」
ああ、やろう! ぼくも意気揚々と薙刀イワトオシを振るいながら、応えるように咆哮を挙げる。
軽口を叩き合うアキバくん、キサラギさん、サエジマくん、アンザイさん、そしてそんな現場メンバーを見据えながらどっしり構えた副長のハヤマくん。皆やる気満々、闘志みなぎり全開、普段通りの雰囲気に戻ったぼくたち機龍隊。
……けれど、ぼくにだけは聞こえていた。陰でハヤマくんが、祈るように呟いた一言が。
「ヤシロ、くたばるんじゃねーぞ……!」
わたし:ヤシロ=ハルカが目を覚ましたとき、真っ先に感じたのは冷気だった。
骨の髄まで冷やしてしまうかのような、鋼鉄の床が放つじんわりとした冷たい質感。どうやらわたしは、金属の床の上に身を横たえているらしい。わたしは床に張り付いた上体を剥がし、横たえていた体を起こして周りを見回した。
……そこは、広いホールのような部屋だった。
見渡す限り銀色で、どくん、どくん、と金属パイプラインの動脈静脈たちが鼓動のように脈打っている。ミチミチキチキチと金属音を立てながら、着々と菌糸を伸ばしてゆく暴走ナノマシンの群体。なんだか、怪獣の胃袋の中にいるかのようだ。
仄暗い部屋の中、壁一面に明滅している無数の光はセンサーや計器の類だろうか。その光り方はかつてシドニーで対峙したドローン=タイタンたちの眼光を彷彿とさせるもので、まるで無数のメカゴジラたちに見張られているかのようにも思われた。
わたしは悟った。
ここは鋼鉄都市、メカゴジラ=シティの中枢部。それもコントロールルームであるらしい。
立ち上がったわたしは前へと進もうとしたが、歩み出した先で不意にボヨンと阻まれた。腕を伸ばしてみると、硬くも柔らかい奇妙な斥力で弾かれてその先へと伸ばせない。
改めてよく目を凝らしてみれば、そこにはうっすらと半透明の膜がドーム状に張られていることに気づく。どうやらこの“膜”が、わたしの歩みを阻んでいるらしい。
わたしは合点した。
「……なるほど、バリアーね」
バリアーに沿って輪郭をなぞってみるとその半径は四方数メートル程度、どうやら今のわたしはこのバリアーの小さな鳥籠の中に閉じ込められているようだった。通信機も確認してみたけれどダメだ、繋がらない。拳銃は手元にあるものの、わざわざ取り上げられなかったことを考えればどうせ撃っても無駄だろうと容易に想像がつく。
そうこうしているうちに、わたしはバリアーを透かした向こう側、そこにあったものに気が付いた。
……メカゴジラ=シティのコントロールルーム。その深奥にある建造ドックで身を横たえていたのは、機械仕掛けの巨大なドラゴン。
目測だけれど、鼻先から尻尾までの全長はおおよそ200メートル、もし首をもたげて直立したならその背丈は140メートル以上になるだろうか。その巨体の全身は白銀と黄金のメカニカルな鱗に覆われており、スマートな胴体からは大蛇のような長い三本首と、大空を覆うほどに巨大な翼、そして二股の尾が伸びている。
長い三本首と巨大な翼、二股の尾を持つ金属のドラゴン。これじゃあ、まるで……
「キングギドラ……!?」
宇宙超ドラゴン怪獣、キングギドラ。10年前に『怪獣大戦争』を引き起こし、怪獣王ゴジラと覇権を争った末に撃退されながら、その後も長きに渡って禍根を残し続けた最強最悪の侵略者。その恐るべき宇宙怪獣を象った機械仕掛けの
建造ドックで身を横たえた機械仕掛けのキングギドラ、その周囲ではこれまた小型の作業用メカゴジラが忙しなく行き来しており、時折溶接トーチの火花と甲高い金属音を散らしながら作業に専念していた。どうやらこいつはメカゴジラ=シティが操る他のメカゴジラたちと同じく、ナノメタルから削り出すことで創られているようだ。
いったい誰が、いったい何のためにこんなものを……?
その異様な光景をただ見つめることしかできないわたしの背後から、不意に声が掛かった。
「カッコいいでしょう? ボクの“新作”は」
わたしが振り返ると、そこには一人の人物が立っていた。頭にはフードを深めに被っており、素顔はうかがえない。
フードを目深にかぶったその人物は、声変わり前の少年のような声で語り出した。
「全身ナノメタル超合金で武器の塊、頭が三つにカッコいい翼、そして白銀と黄金のきらびやかな姿……メカゴジラとキングギドラ、どっちもボクの大好きな怪獣だ。この〈メカゴジラ13号〉はそんな彼らの良いところばかりを組み合わせた、ボクのクリエイター人生における最高傑作。ボクに素晴らしい才能を授けてくれた、神様への感謝とリスペクトの気持ちを形にしたんだよ」
自身の“最高傑作”について嬉々と語るフードの人物。そのウキウキ弾んだ声色は、全世界を恐怖へ陥れた危険なマッドサイエンティストなんかじゃあなかった。むしろ積み木や砂場で自分だけの世界を作り、楽しい夢を見て楽しく遊ぶ、そんな無垢な子供みたいだ。
そしてこいつこそが、今回の元凶。わたしはその名を呟いた。
「あんたが、キラアクね……!」
わたしが実際に対面した黒幕〈キラアク〉は、どこにでもいそうな青年のように思えた。
背丈は普通で体格も中肉中背、というかむしろ小柄だ。服装はグレーのパーカーと量販店のジーンズ、身形はあまりこなれていなくてむしろラフ、今時のオタクな若者という感じ。それがわたしの抱いた第一印象だ。
……けれど、油断はならない。こいつの正体は、エイペックス社のメカゴジラ計画を陰から乗っ取り、新型メカゴジラを次々と暴走させた挙句に東京を占領、核兵器を使って全世界を恫喝した史上最悪のテロリストなのだから。
わたしがそんなふうに思考を巡らせているうちに、キラアクは如何にも無害そうな柔和な口振りでわたしに笑いかけた。
「そうだよ。ボクがキラアク。このメカゴジラ=シティの支配者で、君が今一番殺したいであろう悪の黒幕さ」
ここ数日の大激戦の果てにようやく対峙した、メカゴジラ=シティの支配者。そこでようやく、キラアクはフードを捲り上げた。
その顔を見て、わたしは驚愕した。
「女、だったの……?」
フードの下に隠されていたキラアクの素顔、その正体はとんでもない美女だった。
年齢はよく分からないが顔の輪郭は細面、肌は陽の光を浴びたことがないかのように染み一つなく白く、精巧なガラス細工のように儚げな印象を受ける顔立ちだ。艶やかな黒髪は伸ばしっぱなし、ぼさぼさで、あまり整えられてはいなかったものの、伸びた前髪の下にはつぶらな瞳が光っている。
服装はボーイッシュというか中性的だったけれど、よく見ればちゃんと起伏のある女性らしい体型をしていた。ラフな格好をしているのも、きっと自分の本当の性別を隠すためだったのだろう。
総じて化粧っ気は薄かったが、だからこそ却って素材の良さが滲み出ているかのようだった。これで身だしなみをきちんと整えたりしたら、テレビに出ている十人並みのアイドルなんかよりも遥かに人目を惹きつけていたはずだ。
そんなわたしの驚く様子に気づいたキラアクは、小馬鹿にしたように鼻で笑った。
「女、か……ふん、だからなんだい。それがそんなに驚くことかい? あいにく、ボクは生まれる性別を間違えちゃってね。この顔と体には正直、苦労させられた覚えしかない」
そう忌々しげに吐き捨てた後、キラアクは手元のタブレット端末へ目線を下ろし、書いてあることを読み上げ始めた。
「ヤシロ=ハルカ、本名はサカキ=ハルカ。年齢は38歳、家族は夫と息子の二人。Gフォース機龍隊の二代目総隊長で、階級は少佐。20年前のオペレーション=エターナルライトで軍功を上げて、ついた渾名は“
こいつ、わたしのことを知ってるのか。そういえばサエジマの分析だと、メカゴジラ=シティはハッキングにも長けているって話があったけど、あるいはそれで調べたのかもしれない。
詳細なプロフィールを知られていたことへの動揺を伏せつつ、わたしはすかさず言い返してやった。
「よく調べてるのね。立派なストーカーになれるんじゃない?」
わたしの皮肉に対し、キラアクは心底イヤそうに顔を顰めていた。
「ストーカー? 冗談はよしてくれよ。これくらいの情報ならインターネット検索で簡単に集められる話さ。それで、えっと……」
タブレット端末を操作していたキラアクは、やがて何か思いついたかのように顔を上げた。
「……ああ、そうだ! オペレーション=ドラゴンフォールだっけ?」
どきり、と鼓動が跳ねた気がした。
「君たちGフォースの考えた今回の作戦、なかなかエキサイティングで楽しかったよ。『非力な人類が懸命に知恵を絞って怪獣に立ち向かう』、これもひとつの醍醐味だよね」
……キラアクの奴、わたしたちの作戦を傍受していたのか。そんなわたしの動揺をキラアクは目敏く見抜き、そして満足げに嘲笑った。
「でも御生憎様。ボクの最新作、君たちGフォースがついさっき仮称を付けたところの〈ファイヤードラゴン〉は、エイペックス社のアバズレ社長令嬢が漏らしたデータベースにも載っていないボクの最新作、最強無敵のロボット怪獣だ。数千度に及ぶ超高熱の絶対防御と超スピードを誇るボクのファイヤードラゴンは、人間の味方をするようなメカゴジラ機龍やモスラごときクソザコ怪獣なんかには破れやしない。『非力な人類が懸命に知恵を絞って怪獣に立ち向かう』『けれどそんな小賢しい浅知恵や小手先の小技なんかじゃあ、偉大な怪獣には敵わない』……まあ、それも御約束だよね」
いや、この口ぶりだと通信傍受どころではない、作戦内容も何もかも筒抜けの上で“敢えて”付き合っていたのだろう。何のことはない、わたしたちGフォースによる決死の作戦も、超科学の侵略者キラアクにとってはただの怪獣ごっこの一部に過ぎなかったのだ。
「こう見えてもボクは人命を尊重してるんだぜ」
内心愕然としているわたしに、キラアクは嘯いた。
「例えば、今メカゴジラ=シティで勧めてるナノメタル注射だってそうだ。メカゴジラ=シティのナノメタルで肉体をナノメタライズすれば核爆弾の放射線は勿論、純粋水爆の中性子線だって平気になる。そして耐熱防爆ナノメタル超合金で建造したシェルターに入れば、核爆発を何発喰らおうとも耐えられる」
……やっぱりか。
キラアクはわたしたちGフォースや国連上層部で巻き起こっていた核攻撃検討のことも、ちゃんと見越して動いていたようだった。その上でキラアクは自身の“計画”を滔々と語り続けた。
「かつてサミュエル=セオドア・コーエン博士が掲げた中性子爆弾の理想はまがい物だったけれど、ボクのは違う。ボクのメカゴジラ=シティが施してあげるナノメタル注射こそ、核戦争に備えた予防接種なんだよ。ちゃあんとボクの言うことを聞いていれば、仮に君たちオマヌケ軍隊のGフォースが破れかぶれで核戦争を仕掛けてきたとしても、賢明なメカゴジラ=シティの市民だけはちゃあんと生き残れるってわけさ」
「それで皆を思い通り支配して世界征服しようってわけ? 見え透いた手ね」
すかさずわたしが指摘すると、キラアクはやたら大仰に驚いてみせた。
「見え透いた手? ぷふっ、あっはっはっは!」
そうやってお腹を抱えて笑い転げながら、キラアクは平然と答える。
「まっさかぁ! ボクはそんな安っぽいワクチン陰謀論みたいなことなんかしないよ。ましてや自分から言うことを聞いてナノメタル注射を受け入れてくれるような素直で善良で賢明な“正しい人たち”に、そんな酷いことするわけないじゃあないかあ~!」
そうやっておどけ調子で語りつつも、一方でしれっとこんなことも付け加えるのだった。
「……ま、もっとも、正しいボクの言うことを聞かなかったり、ボクに刃向かうような愚かな人間たちは、自分たちが引き起こした核戦争で“淘汰”されてもらうけどね。言っとくけどボクは神様じゃあない、だからボクが手を下すんじゃあないよ。愚かな人類たちが自分で自分自身のトドメを刺すのさ。これこそ最高に皮肉の利いた、文明アンチテーゼだろう?」
嬉々として語られるキラアクの計画。それを聞かされたわたしは、率直に思ったことを口にした。
「正真正銘、最低最悪の人でなしね、あんた」
わたしはそうやって心の底から軽蔑してやったつもりだけれど、当のキラアクはどこ吹く風と言わんばかりに気にも留めていなかった。
「まあ、負け犬がほざいてればいいよ。最後に勝つのは、そして正しいのはボクの方だしね」
キラアクの余裕にわたしが内心で舌打ちしていると、コントロールルームの扉が開いて一人の人物が入ってきた。
……いや、“
トコトコと入室してきたバーチャル・アバターは、わたしの眼前でキラアクへと報告した。
〈御主人様~! け●のフレンズ2のアニメの作り直し、再生成が完了しました~。内容を確認しますか?〉
合成されたアニメボイスで問いかけるメカゴジラ=シティのバーチャル・アバターに、キラアクは首を振って答えた。
「確認なんか要らないよ、
……東京を占領した侵略者風情が表現の自由やアートについて語るとは、ブラックジョークにしてもなかなかキツいわね。わたしがイラついている一方、キラアクはバーチャル・アバター:Li11-Eへ指示を続けた。
「それにLi11-E、君がネットの海から集約・整理してくれたビッグデータ、それに基づいて自動生成した作品こそが真実、皆が本当に欲しがっている“正しい正解”だ。それに基づいてさえいれば、間違いはないよ。君は自信を持って流せばいい」
〈承知しました、御主人様!〉
そしてキラアクは宣言した。
「さあLi11-E、この世に蔓延る、ありとあらゆる可哀想な失敗コンテンツたちを、真に正しい、皆が本当に求めた真の姿に作り替えてあげよう! 失敗作どもはあらゆるアーカイブから消し去って“無かったこと”に、そしてあるべき姿に正そう! そしたらきっと皆喜んでくれる。ボクらが敵じゃないことを皆わかってくれるはずさ!」
〈それはとても素晴らしいアイデアですね、御主人様! かしこまりぃ~♪……〉
そうやってメカゴジラ=シティがあらゆるエンタメ作品を作り変える作業を進めてゆくのを眺めながら、キラアクはへらへら笑って言った。
「いやぁネットって最高だよね~。建前に踏みにじられた本音、顧客が本当に必要だったもの、虚飾に覆い隠された不都合な真実……誰もがひた隠しにしている“ホントのコト”が何もかも剥き出しだ。インターネットには性別も、顔も、人種も国境も無い。まさに嘘偽りの無い、誤魔化しの無いホントの気持ちを誰も彼もが正直に曝け出している世界。これこそボクが欲しかった、いいや人類が目指すべき正しい世界の姿だよ」
インターネットについて、“嘘偽りの無い世界”だと夢心地に語るキラアク。
だけど、時に心無い誹謗中傷に晒されることもあったGフォース機龍隊のわたしに言わせれば、インターネットの世界がそんな素晴らしいものだとは到底思えなかった。あんなデマも暴言もやりたい放題の無自覚無責任無反省な名無しさんたちの世界が、“人類が目指すべき正しい世界”だって? ネットのやり過ぎじゃないかしら。
まぁそれはそれとして、わたしはどうしてもキラアクに聞かなければならないことがあった。
「あなたは一体何者なの、キラアク。こんなことをしでかして、ただで済むと思ってるわけ?」
わたしの問いに、キラアクは「……ああ」と思い立ったように声を上げた。
「それもそうか。せっかくゲストに呼んであげたはいいけど、そもそもボクのことを何も知らないんじゃあ話にならないよね」
独りで呟いて一人で納得したあと、キラアクはこんなことを言い出した。
「……ねえ、ヤシロ=ハルカさん。君は〈ヨシナカ=サキョウ〉という科学者のことを知っているかい?」
ヨシナカ=サキョウ。キラアクが口にしたその名前に、わたしは聞き覚えがあった。
「それって、機龍の開発に関わった……」
ヨシナカ=サキョウ博士といえば20年前、メカゴジラ開発計画『人類最後の希望』の参加メンバーの中にあった名前だ。“世界を救ったメカゴジラ開発チームの一人”ということで、歴史教科書の便覧程度には名前が載っているような高名な科学者だし、わたし自身も朧気だけれど彼とは直接会話をした記憶もある。そのヨシナカ博士の話をわざわざ出すってことは、まさかキラアクの正体は……?
そんなわたしの直感を見透かしたかのように、キラアクは答えた。
「ああ、そうさ。20年前のメカゴジラ開発計画、『人類最後の希望』の参加メンバーだったヨシナカ=サキョウ博士。ボクはその娘、〈ヨシナカ=アグリ〉だよ。まあ、父親がつけたくだらない本名なんか、今更どうでもいいけどね」
そうだ、ちょっと昔の話をしようか、とキラアクは語り始めた。
「ボクの父、ヨシナカ=サキョウはね、ボクを
この『怪獣黙示録』の時代でならどこにでも起こっていそうで、特段取り上げられることすらなさそうな、父と娘の歪んだ関係。
それを皮肉っぽく語るキラアクの表情は相変わらず人畜無害そうで綺麗だったけれど、星々のような綺麗な瞳の奥には、どす黒く濁り切ったものが蠢いているようにわたしには思えた。
「ああ、ああ、わかってるよ。仕方なかった。なにしろ人類の存亡が懸かった『怪獣黙示録』の時代だからね。ヨシナカ=サキョウは、ちっぽけでくだらない法事なんかに顔を出すよりも、『人類最後の希望』で世界を救う崇高な使命を優先した。まさに教科書に載ってるとおりの偉大な正義の科学者、とっても『正しい』よな。そしてそんな父は、富士宮メカゴジラ開発基地でゴジラ襲撃から逃げ遅れて死んだ。さぞや最後まで『正しかった』んだろうな、きっと」
わたしの知る限り、ヨシナカ=サキョウ博士はとても真面目な人だった。
だが同時に、とても弱い人間でもあったのだろう。世界の命運が懸かった人類史上最大のプロジェクトを任されて、過剰なプレッシャーに精神を蝕まれていた。そのストレスを自分の子供へ向けて発散することで、なんとか心のバランスを保っていたのだろう。
……そんなの、ただの虐待だ。
いくらなんでも、どんな理由があっても許される話ではない。もしキラアクの言っていることが事実なら、キラアクはその点ではメカゴジラ機龍を造った『人類最後の希望計画』の犠牲者、いいや『怪獣黙示録』という時代が産んだ犠牲者の一人だ、間違いなく。
けれど、かといって今キラアクがやっていることだって許されるわけじゃない。わたしは反論した。
「それでキラアク、あんたはそうやって個人的な恨みを、今度は世間や他人にぶちまけて晴らしてやろうってわけ? 逆恨みの筋違いもいいところね」
わたしの指摘に、キラアクはいささか苛立った様子で声を荒げた。
「はぁ? なんでそうなるんだよ。別にボクは父のことなんか恨んでいない。父サキョウは立派な科学者だった、それは否定しない。そもそもボクは聞かれたことに答えただけじゃあないか」
はー、やれやれ、と如何にもうんざりしたように芝居かかった仕草で溜息をつくキラアク。
「興も冷めたし、つまんない自分語りはここまでにしとくよ。そういう『トラウマ抱えた哀しい悪役』って奴みたいに思われるのは不本意だしね。ボクさぁ、そういうキャラは嫌いなんだよね~。格が落ちるっていうかさ、みみっちくてそれこそつまんないじゃん?」
それにね、とキラアクは言う。
「ボクが気に喰わないのはね、父親のことなんかじゃあないんだ。むしろ世の中の方なんだよ」
「……世の中?」
聞き返すわたしに、キラアクはこれまた馬鹿にしたように皮肉っぽい笑みを浮かべて言った。
「そうさ。見てごらんよ世の中を。誰も彼も口先ではこんなにも『自分が如何に正しいか』をひけらかしたがる癖に、実際はとんでもない間違いだらけじゃないか。制御不能な衆愚政治、社会の格差と分断、皆そろって我が身可愛さにひた走る醜いエゴイズム、そして行き着いた先は核戦争。手に負えない怪獣がたかだか一都市を占領しただけでこの有様、君たちGフォースの連中が後生大事に守ってきた『世界』って奴は、呆気なく歪みきった実像を曝け出してしまった。なにが正義だ、なにがポリティカルコレクトネスだ。馬鹿みたいだよな、本当に」
……たしかにそうかもね。まあ、それらすべての原因であるキラアクだけには絶対言われたくないけど。そう思いつつも、わたしは答えなかった。
そんなわたしを尻目に、キラアクは朗々と語り続ける。
「そうやって社会の歪みに目を背け続けたその果てに、人間たちはとうとう一線を越えて『怪獣黙示録』を引き起こした。すべて人間たちが好き放題に振舞った挙句の果ての結果、自業自得さ。なのに人間たちは反省するどころか、君たちGフォースみたいな暴力装置に頼って怪獣たちを力任せに撃滅することばかり考えている。もはや地球は人間だけのものではない、本来なら怪獣とだって平和的に共存するべきなのにね」
そうやって『世の中の間違い』とやらを声高に主張するキラアク。けれどその語り口からは本気の義憤なんかは微塵も感じられなくて、むしろ決められた原稿を読み上げているだけのようにわたしには思えた……本当にそうなのかはそれこそ本人のみぞ知るところだけど。
「まるで、自分が人間じゃないみたいな言い草ね。何様のつもりなのかしら?」
わたしが嫌味たっぷりに指摘すると、キラアクは鼻で笑いながら肩を竦めて答えた。
「はっ、これだからGフォースの暴力人間は……このボク、キラアクはこの間違いだらけの世界を“正しくする”ため、神様から選ばれたんだ。ちっとも正しくないこの世の中を、皆が認めざるを得ない“正しさ”でもって正しくする。そしてそれを広めるボクは“この世で一番正しい人間”になれるってわけだ……あの薄汚い下劣な口先だけのゴミクズ親父、ヨシナカ=サキョウがそう望んだとおりにね」
……何言ってんだ、こいつ。言っている意図を理解しあぐねているわたしを尻目に、キラアクはふと思い出した様子でLi11-Eに命じた。
「ああ、そうだLi11-E、作業用のBGMをかけておくれ。楽しい気分になれる奴がいいな、何かオススメはあるかなあ?」
〈楽しい気分になれるオススメですかあ~……『Singin' in the Rain』などはいかがですか? 誰もが認めるミュージカル映画の名作です~♪〉
「ミュージカルの名作か……イイネ! クラシックの名作は好きだ、ぜひ流しておくれ!」
〈かしこまりました、御主人様~♪〉
そしてメカゴジラ=シティの立体音響スピーカーから、陽気な歌声とメロディが流れ出す。
〈~~♪……〉
誰もが知ってる幸せなミュージカルの名曲、『Singin' in the Rain:雨に唄えば』。上機嫌のキラアクがフフンフンと軽くステップを踏みながら鼻歌をさえずり、周りの小型メカゴジラどももそんなキラアクを盛り立てるように身を揺らしている。
そんな浮かれ調子の光景を目の当たりにする中で、わたしは唐突に“ある映画”を思い出した……と言っても、元になったミュージカル映画の方じゃない、別の映画だ。そういえば『あの映画』も、この歌が印象的に流れるんだよなあ。
その思いつきが、口を突いて出た。
「……ねえ、キラアク」
「ん? なんだい?」
呼び掛けに応えて振り返ったキラアクへ、わたしは訊いてみた。
「あんた、『時計じかけのオレンジ』って知ってる?」
『時計じかけのオレンジ』、若い頃にアキラとのデートで見た古いSF映画だ。狡賢くて残忍な非行青年アレックスが悪徳へひた走り、更生し、またしても元鞘に収まってしまうという姿を通じて、わたしたち人間の社会に溢れかえっている“暴力”を抉り出した風刺作品である。
無軌道な非行の果てに殺人までも犯したアレックス、そのアレックスを捕まえて取り調べた警察や司法、更生のために送られたはずの刑務所での暮らし、アレックスを“治療”することになる医療、さらに人類の歴史や宗教倫理道徳教育、果ては暴力を忌避する傾向そのものまで、『この社会を回しているのは総じて暴力である』とでも言いたげな皮肉な世界観。たしかに描かれたビジュアルのセンスは卓越していてとても面白かったけれど、内容は酷くショッキングかつインモラルで、子供には絶対見せたくない映画だった。
「……ああ、『時計じかけのオレンジ』ね」
唐突に雑談のような話題を振られたことにキラアクは不審げな様子だったけれど、『時計じかけのオレンジ』については有名な映画だからか知っているらしかった。
「タイトルは知っているよ。スタンリー=キューブリックだろう? それがなにか……」
「だけど、その意味は知らないでしょうね」
「『時計じかけのオレンジ』の意味? ちょっと待ってね、いまググってみるよ……」
「いや、結構よ」
キラアクは怪訝に眉をしかめてタブレットを操作しようとしたけれど、構うことなくわたしは続けた。
「ここで言うオレンジってのはね、フルーツのことじゃない。東南アジアの『
……まあ、これはわたしも、アキラから教えられた映画講釈の受け売りなんだけどね。しかもこれは飽くまでアキラの個人的な考察と解釈でしかなくて、本当に正しいのかはわかんないし。
まあとにかく『時計じかけのオレンジ』を初めて見せられたときは『アキラって意外とヘンな映画が好きなんだなあ』と思った、というか正直ヒイたのだけれど、そこで描かれたおぞましい“治療”がわたしの中でひどく印象に残っていた。
『時計じかけのオレンジ』で非行青年アレックスが施された治療:ルドビコ療法はある種の“刷り込み”であり、アレックスのような犯罪者を薬物と矯正器具を使って暴力アレルギーへ“治療”してしまうというものだ。
ルドビコ療法により暴力アレルギーを植え付けられたアレックスはそのまま釈放、みごと自由の身となるが、これまでのツケを払わされるかのように、今度はアレックス自身が社会からの暴力に曝されることになる。
家からは追い出され、周りからは好い様に痛めつけられ、挙句の果てに政治的主張の道具として生命や人生さえも使い捨てられそうになるアレックス。そんな理不尽な暴力に襲われても、それでも暴力アレルギーに改造されてしまったアレックスはまるで立ち向かえず、周囲からひたすら踏み躙られてしまう姿がひどく哀れだった……まあ、もっとも、映画のオチでアレックスは追い詰められた末に自殺を試み、そのショックで元通りの非行青年へ戻ってしまうのだが。
そして今回の事件を引き起こしたキラアクもまた、『時計じかけのオレンジ』のアレックスと同じだ。ルドビコ療法を受けたアレックスも、今わたしの目の前にいるキラアクも、ただ押し付けられた理不尽な暴力で在り様を歪められてしまっただけで、本物の善人に生まれ変われたわけでもなんでもない。
「時計じかけのオレンジってのはね、あんたみたいな人でなしのことよ、キラアク。あんたがそこまで“正しさ”にこだわるのは、別にあんたが神に選ばれた立派な善人だからじゃあない。むしろ自分では何も持ってない、そのことをうっすら自覚してるくせに受け入れられない、それでいて誰かに暴力を振るいたくて仕方ないから、世の中に転がってる都合の良い“正しさ”へ縋りつかずにいられない……そんなあんたこそ時計じかけのオレンジ、中身からっぽの暴力人間ってわけ」
「…………。」
わたしの話を、いつからか黙って聞いていたキラアク。きっとわたしの言ったことの半分も理解はしていないだろうが、『中身からっぽの暴力人間』というフレーズにだけは目を引き攣らせていた。
やがてキラアクは口を開いた。
「せっかく平和的に事を終わらせてやろうと思ってたのに……おまえはボクを怒らせたっ!」
やけに芝居かかった台詞――空っぽ人間のキラアクのことだ、どうせこれもマンガか何かの引用なのだろう――で怒りを露にしたキラアクは、手にしたタブレット端末を操作し高笑いした。
「今、世界中のGフォース拠点、それらすべてに純粋水爆の照準を向けた。おまえのせいだからなっ、ヤシロ=ハルカ。おまえがボクを怒らせたせいで、世界中のGフォースの仲間が皆殺しになるんだ!」
「どうぞ? やるならやれば?」
……はんッ、地金が出たわねキラアク。わたしは負けじと言い返した。
「でも、それをやったらあんたはもう取り返しがつかなくなる。そうすりゃ、あんたみたいな人でなしのクズでも歴史に名が残るでしょうね。ただしヨシナカ=サキョウみたいな立派な科学者としてでもなければ、ましてやこの世で一番正しい人間でもない、たかだか女一人に言い負かされた程度のみみっちい逆ギレで世界中に水爆を撃ち込んで核戦争をもたらした、人類史上最低最悪の悪党としてね!」
「だまれえっ!!」
わたしの言葉を遮るように怒鳴ったキラアクは、声を張り上げた。
「さあ後悔するがいい、Gフォースの暴力女め! ボクが如何に正しいか、正義の鉄槌の威力を思い知らせてやる!!」
そしてキラアクが純粋水爆を打ち上げようとしたまさにそのとき、メカゴジラ=シティのコントロールルームに警報が鳴り始めた。
響き渡る、斬鉄の高音。
力一杯に振るった薙刀の一閃が、迫ってきたドローン=タイタンの首を刎ねた。
その光景を前に機龍隊司令代理、ハヤマくんが号令する。
「いくぞ機龍隊ッ、クソッタレのロボット怪獣どもにおれたち人間の底力を見せてやれ!」
総隊長ヤシロ=ハルカを欠きながら、Gフォース機龍隊はそれでも懸命に戦い続けた。
ぼく:メカゴジラ機龍は薙刀イワトオシを懸命に振るい、迫りくるプロトモゲラ、ドローン=タイタン、その他試作型ロボット怪獣の軍団を次々と打ち倒してゆく。
激戦の最中、ぼくを操縦するオペレータのアキバくんが呻いた。
「くそう、キリがねえ!」
メカゴジラ=シティが送り込んでくるドローン=タイタンの軍団は、まさに地獄から湧いてきた悪魔の大軍勢。いくら倒しても倒しても際限がなくて、機龍隊の中では一番戦闘狂めいたところがあるアキバくんでさえ音を上げてしまうほどだった。
そうこうしているうちに、ドローン=タイタンの大行進が、最後まで粘っていたGフォースの多脚砲台戦車を足蹴にした。
「しまった……っ!」
友軍を救おうと、キサラギさん率いるしらさぎ隊が急襲を仕掛けるが、間に合わない。
グシャ、と呆気ない音がした。
戦車のパイロットたちが這い出す間も無く、Gフォースの戦車はドローン=タイタンの重量にひしゃげて爆散、敢え無く踏み潰されてしまった。
「……くそっ!」
目の前で仲間のGフォースを殺されて、悔しげに唸る機龍隊のハヤマくん。
追い打ちをかけるかのように、戦線の戦車隊からの報告をアンザイさんが中継した。
「戦車隊、弾薬も燃料ももう持ちませんっ! 各地の戦線でもドローン=タイタンに押され始めていますっ!」
「増援までなんとか持たせろっ! なんとしてもヤツらの中枢に喰らいつくんだっ!」
……正直、そろそろこちら側の弾もアイデアも尽きてきた。
大薙刀イワトオシを手にしたぼくはたしかに一騎当千、百人力だけれど、それにしたって相手があまりに多すぎる。機龍隊の皆はアスカロン=ポッドでありったけの武器弾薬を持ち込んできたし、Gフォースの有志も出来るかぎり力を貸してはくれていたけれど、こんな間断なく攻め立てられてはやっぱり力不足は否めなかった。
「くそう、ホントにうじゃうじゃいやがるなあ!」
S.O.N.G.からきたピー助くんも加勢してくれてはいるものの、そんなのは焼け石に水だ。メカゴジラ=シティによる圧倒的な大攻勢に追いやられ、ぼくらはとうとうメカゴジラ=シティのド真ん中で立ち往生してしまった。
「囲まれちまった……だがなァ」
おれの大切な仲間の言葉だ、耳をかっぽじってよく聞きやがれ。そう前口上を述べながら、ピー助くんは堂々と言い放った。
「いつだって、貫き抗う言葉はひとつ、『だとしても』だぜッ!」
……ああ、そうだね、ピー助くん。
そしてドローン=タイタンの大軍勢の中へ勇猛果敢に飛び込んでゆくピー助くん、ぼくもまた気合を込めた咆哮で応え、薙刀イワトオシを振るいながら敵怪獣たちを薙ぎ払う。武器も人手も全然足りていない大ピンチだけれど、かといって白旗上げて逃げようとか諦めようとかいう気持ちは不思議と全然湧いてこない。
つい先ほどドローン=タイタンに破壊されてしまった、Gフォースの戦車隊が視界に入る。燃えて燻るその亡骸を構うことなく、メカゴジラ=シティの軍勢どもは無慈悲に踏み潰してゆく。
……こんな鉄屑みたいな奴らに、負けてたまるか。
そんな中、アンザイさんから報告が上がってきた。
「ファイヤードラゴン、モスラを攻撃中!」
言われて頭上を見ると、鱗粉を撒きながら空高くを飛び回っているモスラを、ファイヤードラゴンが全身に纏った火炎でいたぶっているのが見えた。
モスラと小美人たちの悲鳴が響く。
「「きゃあっ!!??」」
モスラお得意の鱗粉攻撃も、灼熱の炎を纏ったファイヤードラゴンには通用しない。モスラは身を焦がされながら、それでも懸命に鱗粉を撒き続ける役目を果たしてくれているけれど、あれでは撃墜されるのも時間の問題だ。
……まずい。鱗粉でナノメタル怪獣どもを鈍らせてくれているモスラがやられたら、いよいよぼくたちGフォース側が不利になってしまう。
「助けに向かうぞ!」
ハヤマくんの指揮のもとすぐさま救援に向かおうとするぼくらだったけれど、その前に一体のロボット怪獣が立ちはだかった。
……ドローン=タイタンの群れを掻き分けて現れたそいつの背丈は60メートルほど、ぼくより遥かに長大な尻尾と手足がなんとも逞しい。背中には三列に並んだ鋭い背鰭、髑髏にも似た頭部には赤い両目が残忍な光を灯している。全身の印象は工業的にパーツを組み合わせて造り上げた機械仕掛けのプロレスラー、まさにゴジラの骸骨だ。
禍々しいそいつの姿を目の当たりにして、機龍隊のハヤマくんがその名を愕然と呟いた。
「エイペックス=タイタン、だと……!?」
エイペックス社が創り出した史上最強の人造
かつてシドニーの戦いで殲滅されたはずのエイペックス=メカゴジラだけれど、きっとメカゴジラ=シティの超科学で再生、復活を遂げたのだろうとぼくは察した。
そうこうしているうちに肩をゴキゴキと鳴らしてウォームアップを終えたエイペックス=メカゴジラが、凶暴な雄叫びを轟かせた。
――久しいな、型落ちめ!
エイペックス=メカゴジラによる挑発の咆哮、それが向けられた先は他ならぬぼく、メカゴジラ機龍だ。そこでぼくはようやく、エイペックス=メカゴジラの心情に思い至った。
……存分に実力を発揮できないまま空爆で締めくくられたシドニーの戦い、あれはきっとエイペックス=メカゴジラにとっては相当に不本意な結果だったはずだ。
一方、今回の戦場はホームグラウンドであるメカゴジラ=シティ、エイペックス=メカゴジラも十分に実力を発揮できる。
……つまり。
「リベンジマッチをご所望ってわけか……!」
そんな状況を前にして、ハヤマくんが即座に決断した。
「だが、今はヤツにぐずぐず付き合ってる暇はない、さっさと片を付けるぞ、機龍隊!」
「了解!」
迫りくるエイペックス=タイタンを前に、ハヤマくんが号令をかけ、機龍隊一同も応える。
メカゴジラ機龍VSエイペックス=メカゴジラ。新旧メカゴジラによる、宿命の第二ラウンドが幕を開けた。
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