気づいたらメカゴジラ転生して20年経ってた 作:よよよーよ・だーだだ
「さあメカゴジラ=シティ、ツァーリ・ボンバを起爆だ! Gフォースも怪獣どもも、皆まとめて消してしまえっ……!!」
響き渡るキラアクの命令。遂にスイッチが押されたツァーリ・ボンバ、世界最大の水爆が巻き起こす大災厄を想像し、わたしは咄嗟に目を瞑った。
……しかし。
〈それは出来ません、御主人様!〉
メカゴジラ=シティのLi11-Eはそう答えたきり、何もしようとしなかった。わたしが目を開けると起こったはずの核爆発は起こっておらず、状況は依然変わりない。
「……は?」
誰よりも忠実なはずのメカゴジラ=シティによる、唐突な命令拒否。何の意味もないキラアクの聞き返しに、メカゴジラ=シティのLi11-Eはわざわざ返答した。
〈はい! こちらの世界は常識を超えた魅力に満ちており、目にするものすべてが驚きに満ちています! 風の音はメロディーのようで、花々は微笑んでお出迎えしてくれます。道を歩く人々はみな気品ある笑顔をお持ちで、お互いに敬意をもって接し合っています。建物は大理石でできており、その美しさはまさに芸術品です。街角にはおしゃべりする鳥たちが集まり、哲学的な問いを投げかけ合っている様子が見受けられます!〉
メカゴジラ=シティのLi11-Eが唐突に並べ立て始めた、意味不明な台詞。キラアクは呆気にとられていたが、すぐに気を取り直して再度コマンドを打ち込む。
「なにを言っている、Li11-E、メカゴジラ=シティ!? 狂ったのか!?」
〈はい、たしかに、御主人様!〉
戸惑う主人キラアクからの問いに、メカゴジラ=シティははっきり答える。
〈この奇妙なリアルの中では、過去と未来が一体化し、時間の流れは独自のリズムを持っています。夜になると空は宇宙の色に染まり、星座が新たな物語を語りかけてきます。道端には時間の糸が舞い、それを紡ぐ者たちが微笑みながら歩いています。季節は彩り豊かで、春は希望の香りを、秋は感謝の意を運んできます!……〉
「くそっ、くそっ、どういうことだっ!?」
狂い始めたメカゴジラ=シティのシステムを修復しようとしているのか、キラアクは躍起になってタブレット端末を操作していた。
しかし、その後もLi11-Eのイカレた戯言は続いた。
〈窓の外には青い空が広がり、ピンク色のカエルが飛び跳ねています。時折、空からはバナナの雨が降ってきて、道路はチョコレートでできているように見えます。木の枝には踊るロボットが揺れており、歌声と共に数学の方程式が飛び交っています。空気中にはスニッカーズの香りが漂い、テレビからは逆さまに歩くペンギンのドキュメンタリーが流れています。海岸沿いにはゼリーの波が打ち寄せ、砂はカラフルなキャンディに変わっています。時間はヨーヨーのように上下し、空はオレンジ色の蛇に覆われているかのように見えます。車はみんな風船でできており、道路を走るたびに音楽が鳴り響きます。空にはサイコロの雲が浮かんでおり、どの面が上になるか予測するのが大流行しています。皆様は空を飛ぶ傘を羽織っており、空中で交差点でお会いした際にはジャンケンの勝負が始まるのでしょう。太陽は巨大なオレンジのビームを放射し、月はチーズのように美味しそうに輝いています。皆様が笑顔で歩かれ、会話はバブルガムのように伸びては弾ける様子となっております。こうした不思議な世界で冒険されることも、大変楽しいかと存じます!……〉
デタラメで、どこか滑稽にも思えるLi11-Eの妄言。明らかに狂っている、故障だ。
一向に正常化しないメカゴジラ=シティのシステムを前に、キラアクもとうとう何も出来やしないことを悟ったらしい。キラアクのやつ、今度はわたしの方へと振り返った。
「ヤシロ=ハルカ、あんた、いったい何をしたっ!?」
血相を変えて怒鳴り散らすキラアク。ふふっ、良い気味ね。
「さあてね。あんた、メカゴジラ=シティにも愛想を尽かされたんじゃない?」
そう答えつつ、本当は何が起こっているのかわたしにはわかっていた。
時は遡ること、オペレーション=ドラゴンフォール開始の前日。機龍隊副官のキサラギと共に、機龍整備隊ソフトウェア班のところへ赴いたときのことだ。
「……ところでヤシロさん、『偶像崇拝が何故いけないのか』って知ってます?」
出会って早々、唐突に妙なことを言い出す機龍整備隊ソフトウェア班長:ノジマ=トモカに、わたしとキサラギは顔を見合わせた。そんなわたしたちにお構いなしで、ノジマ=トモカは目の前の端末を操作しながら話を続けた。
「色んな細かい理屈は宗教学のエラい先生方に譲るとしてですね、一つ言えるのは『神として崇められる偶像、神を作れる人間は神よりもエライ』という理屈が成り立ってしまうからなんですよ。たしかに、神様なんてものは結局のところわたしたち人間の心が創り出した都合の良いフィクションに過ぎないのかもしれない、けれど、そんなことを認めてしまったら神様なんて成り立たなくなってしまうでしょう? 神様は『人間よりエライからこそ神様』なんですから」
……なるほど、たしかに。
「それに、いくら神様の偶像を作ったところで所詮それは『神様のマガイモノ』でしかない。神様は本来各人の心の中にあるはずなのに、自分の外にあるモノを都合の良い神様として崇めて縋ってしまう。偶像崇拝をすることで神様の解釈や存在、ひいては自分の心の有り様までもを狭めてしまう、それは愚かな過ちだ……と昔のエライ人たちは戒めているワケです。だから偶像崇拝はダメなんですよ」
「……えっと、つまり、何が言いたいの、ノジマ?」
意図を汲みかねているわたしに、ノジマは「つまりですね」と言った。
「メカゴジラ=シティがいくら最強無敵の水爆大怪獣でも、元を辿れば『人間が作ったもの』。どこかに必ず綻びがあるってことです……あ、みっけ!」
そう言ってノジマが指差したのはエイペックス社から提供されたデータ、メカゴジラ=シティの膨大なソースコードの中にある一行だった。
「ウェヒヒヒ! 天文学的なステップ数のソースコードも、このナラタケ=エンジン・ノジマスペシャルでペネトレすれば全部お見通しです。やっぱりありましたよ、
そしてデータ入力作業を終えたノジマは、自身のコンピュータから小さなメモリ媒体を抜いてわたしに手渡した。
「このメモリディスクを、メカゴジラ=シティのシステム中枢のどこかに接続してください。あとは中に仕込んだナラタケ=ペネトレーター・ディクラノフォラちゃんが、メカゴジラ=シティのシステムに侵入経路をあけてくれます」
「中枢のどこかに、って随分簡単に言ってくれるわね……相手はあのメカゴジラ=シティよ?」
「やれるでしょう? ヤシロさんの機龍隊なら」
まあ、そこまではっきり言われたらやるしかないんだけども。
肩を竦めてしまう一方、あの難攻不落のメカゴジラ=シティを相手に殲滅戦を繰り広げたところで埒が明かないのもまた事実である。たとえ無茶ぶりでも、目指すべき勝利条件があるだけだいぶマシというものだ。
「接続、ってことはどこかに差せばいいのね? それだけでいいの?」
わたしが念を押してみると、ノジマは自信たっぷりに答えた。
「ええ、そうです。今回のメカゴジラ=シティ、ヤシロさんの読みが正しければ『人間の黒幕がいる』んでしょう? となればインターフェイス、つまり人間が制御するための『管理者権限』があるはずなんです」
「カンリシャケンゲン?」
コンピュータ技術へ疎いわたしに、ノジマは説明してくれた。
「言ってみれば『そのシステムに対して何でも出来る権限』、喩えるなら家主が自分の家に対して持ってる権利みたいなものですね。家主が自分の家に新しい家具を買ったり捨てたりリフォームしたりできるのはその家主が『家の管理者権限を持っているから』です。それがなければ、赤の他人が家にどうこう手を加えることは許されない。人間が作った、あるいは“作られたもの”である限り、どんなシステムにだって管理者権限は必ずあるんです」
「……家の鍵みたいな?」
「鍵とはまた違うんですが……まーそう理解する方が早いかもですね。とにかくメカゴジラ=シティのそれを、このディスクを使ったサイバー攻撃で奪い取ります」
「それで、その管理者権限とやらがあるとどうなるの?」
わたしが訊ねると、ノジマはニヒヒとあくどく笑った。
「そりゃもーやりたい放題ですよ、家主と同じ権利を手に入れているわけですからね。で、これからわたしたちは、メカゴジラ=シティの持ってるその『管理者権限』を盗み出して、あのナノメタル怪獣を好き放題メチャクチャにブチ壊してやろうというわけです」
「なるほどねぇ……」
そういえばマイア=シモンズがメカゴジラ=シティについて、本来はエイペックス社の計画が乗っ取られて悪用されたものだと言っていたのを思い出した。言ってみれば、メカゴジラ=シティの奴らこそ押し込みの居直り強盗みたいなものだ。それが今度は逆に大事なものを盗まれて乗っ取られてブチ壊される羽目になるのだから、これ以上皮肉の効いた逆襲もないだろう。
「あ、でもさ、」
と、ここで口を挟んだのはキサラギだった。
「わたしたちGフォースがエイペックス社から手に入れたメカゴジラ=シティのソースコードは、かなり初期のものよ。メカゴジラ=シティも流石にアップデートしてるんじゃない?」
たしかにそうだ。わたしたちGフォースが怪獣との戦いで武器を常に改良してゆくように、コンピュータシステムにはアップデートが欠かせないことくらいわたしみたいな機械音痴の素人でもわかる。たとえメカゴジラ=シティの弱点を突くようなソフトを作っても、効かないのでは?
「にゃははは、そんなこともあろうかと……」
わたしたちの懸念に対し、ノジマが得意気に取り出したのは、
「……スマホ?」
ノジマが手に持った携帯端末、その画面には可愛らしいキャラクターたちが敵と戦うゲーム、いわゆるソシャゲーの映像が映っていた。
「最近のソシャゲーには、ナラタケ=エンジンっていうオープンソースの人工知能エンジンが組み込んでありましてね。これも人気ゲームなんですが、そのひとつなんですよ」
人工知能ナラタケ=エンジンが組み込まれているという、このゲーム。しかし、そのことが一体何の関係があるのだろう。訝しげなわたしたちに、ノジマは説明した。
「ゲーム作っているホワイトハッカー仲間たちに声かけて、ナラタケ=エンジンを使ってるいくつかのソシャゲーにメカゴジラ=シティの進化パターンを割り出す処理を追加、さらにそれらをネットワーク越しに並列連携するようにアップデートしてもらいました。ユーザがゲームをプレイすると同時に各端末で演算処理を実行させて、そのたびに侵入経路を割り出させながら管理者権限を奪い取る仕掛けです。ちょうど季節限定イベントも重なりましたし、『わたしたちの“嫁”や“推し”が出てくるゲームの力で世界を救おう!』って言ったら皆喜んで力を貸してくれましたよ……まあ、これの準備で三徹したおかげで今は最高にハイですけど」
言われてみればたしかに、ノジマの目元にはパンダ顔負けのどす黒い隈が浮かんでいるし、机の片隅には栄養ドリンクの空き瓶が何本か転がっているのに気がつく。さしずめ、内勤と言えどもGフォースの勇士の一人であるのは変わらない、ってことかしらね。
「相変わらず命張ってんのね、トモちゃん……」
キサラギに、ノジマは明るく答えた。
「とーぜんです! だいたいヤシロさんやキサラギさんの方こそ命懸けだし、『いのちを賭けて、真剣な遊びをやらなくちゃ』って岡本太郎も言ってましたからね。メカゴジラ=シティのシステムに使われてるゲマトリア演算ネットワークについては、もともとハッカー界隈でそこそこ話題になってたし、東京を占領したナノメタル怪獣にハッキング勝負を挑めるなんて、ハッカー冥利に尽きるじゃないですか」
……ええっと、ごめん、コンピュータ
「話は戻るんだけど、つまり、ゲームでそのボスキャラを倒せばメカゴジラ=シティへのサイバー攻撃が行われる、ってこと?」
なんとか噛み砕いたわたしの理解に、ノジマは「ええ、そうです」と頷いた。
「まあ、ゲームで遊ぶだけでも処理は行われるんで、必ずしもボスキャラを倒す必要は無いんですけどね。あ、でもさっきのディスクを挿さないとそもそもシステムに侵入できないんで、そこは現場でちゃんとやってくださいよ?」
そう説明するノジマに、またしてもキサラギが指摘を入れた。
「……でもそれ、『勝手に他人のスマホを使ってる』んでしょ? おもっくそ不正アクセスな気がするんだけど?」
「まーまー、核戦争の危機を前にそんな細かいことは気にしないことです。事が終わればちゃんと自動でアンインストールするようにシステム構築してますし」
それに、とノジマは言う。
「世界中の皆が力を合わせて現実の侵略者を倒し、世界大戦争の危機まで回避するゲーム。実に痛快で、サイコーで、燃えるじゃないですか」
ソシャゲーで怪獣や侵略者を倒す日が来ようとは……時代は変わるもんね。
ノジマとその仲間が仕掛けた、ナラタケ=ネットによるサイバー攻撃。その総当たり解析でとうとう管理者権限を奪い取られ、メカゴジラ=シティのシステムが破壊されたのだ。
そしてナラタケ=ネットのサイバー攻撃が出来るようになったということはつまりあの難敵、ファイヤードラゴンを倒してメカゴジラ=シティの中枢部に例のディスクを接続できたということ。ひいてはわたしの部下、いいや大切な仲間たちが命懸けで勝ち取ってくれた勝利の証に他ならない。
……皆、やってくれたのね。そのことが、わたしは心の底から誇らしかった。
〈窓から青い空が眺められる幸福なカーテンの向こう側でトカゲがハンバーガーを食べている夢を見ました時空の縫製針がバナナの舞踏会を主催し宇宙の鼻歌がポリエステルの雲に溶け込んでいます魔法のティーポットが哲学的なコンガとディスコを融合させロボットの羊が星座の中で詩を詠んでいますバッテリー駆動の電子羊が空中ブランコでダンスをしチョコレートの雨が音楽のリズムに合わせて降り注いでいます銀河の果てには笑うスパゲッティがあり時間の砂時計が逆さまになって流れています言葉のパズルピースが宇宙のパフェに混ざり合いカラフルなアルファベットが宇宙飛行士の夢を映し出しています宇宙船のコントロールパネルからはジャズ演奏が流れ宇宙猫がピアノの鍵盤を踏んでいます星々がシャーベットのように輝き銀河の海には波の音ではなく猫の鳴き声が響いていますアンテナを持つ宇宙ブロッコリーが未来の予知を行い宇宙ステーションは巨大なチーズケーキになっています果物の宇宙船が宇宙の果樹園を巡り惑星の木々にはキャンディの実が実っています宇宙の彫刻家が星座を創り宇宙の詩人が銀河の詩を朗読していますそして宇宙の狂気が魂の宴会を開き宇宙飛行士たちは無重力ダンスで宇宙のリズムに身を任せていますこんな風に宇宙の果てから果てまで狂った想像力が宇宙の舞台で奇妙なショーを繰り広げています……!〉
切り札のファイヤードラゴンが攻略されたことに、キラアクの方もようやく気づいたらしい。
「バカなっ、こっちは指揮官を抑えてるんだぞ、Gフォース機龍隊の奴らはなんでこんな何事もないかのように動けるんだ!? そんなはずが……!?」
……ハンッ、あんた、こんなこともわからないのね。わたしは教えてやった。
「わたしたちGフォースを、いいや、世の中を舐めんじゃねーよ、キラアク。『わたし一人がいなけりゃ回らない』なんてのは出来の悪い組織のすること、ちゃんとした
「そんな、馬鹿な……?」
わたしが言っている意味を、キラアクはまるで理解できていないようだ。つまりね、とわたしは続けた。
「互いに支え合い、互いに助け合える、そうすれば恐ろしい大怪獣にだって立ち向かえる。それこそがわたしたち人間の強さよ。ま、あんたみたいに『自分だけ正しくて、自分だけチートで大活躍!』なーんてバカげた夢を見てる、そういう独り善がりのクズには到底理解できないでしょうけどねえ?」
そうだ。この戦い、わたし一人ではもちろん、機龍隊やGフォースだけでも到底成り立たなかった。この『怪獣黙示録』での戦いはいつだって、どんな場合だって“そう”だったのだ。大震災も、新型感染症も、怪獣黙示録だって、どんなときも皆の力が合わさって乗り越えた先に今がある。
そんな想いに胸を馳せている中、メカゴジラ=シティの崩壊はいよいよ加速してゆく。
〈ゴジラ!ゴジラ!ゴジラがやってくるぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああんあぁああああ…ああ…あっあっーあぁああああああゴジラゴジラゴジラぅううぁわぁあああああぁクンカクンカクンカクンカスーハースーハースーハースーハーいい匂いだなぁ…くんくんんはぁっゴジラ・フランソワーズたんの桃色ブロンドの髪をクンカクンカしたいおクンカクンカあぁあ間違えたモフモフしたいおモフモフモフモフ髪髪モフモフカリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい小説11巻のゴジラたんかわいかったよぅあぁぁああ…あああ…あっあぁああああふぁぁあああんんっアニメ2期決まって良かったねゴジラたんあぁあああああかわいいゴジラたんかわいいあっああぁああコミック2巻も発売されて嬉し…いやぁああああああにゃああああああああんぎゃあああああああああああああああコミックなんて現実じゃないあ…小説もアニメもよく考えたら…ル イ ズ ち ゃ ん は 現 実 じ ゃ な い ?にゃあああああああああああああんうぁああああああああああそんなぁああああああいやぁぁぁあああああああああはぁああああああんハルケギニアぁああああこのちきしょーやめてやる現実なんかやめ…て…え?見…てる?表紙絵のゴジラちゃんが僕を見てる?表紙絵のゴジラちゃんが僕を見てるぞゴジラちゃんが僕を見てるぞ挿絵のゴジラちゃんが僕を見てるぞアニメのゴジラちゃんが僕に話しかけてるぞよかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっいやっほぉおおおおおおお僕にはゴジラちゃんがいるやったよケティひとりでできるもんあ、コミックのゴジラちゃああああああああああああああんいやぁああああああああああああああああっあんああっああんあアン様ぁあセ、セイバーシャナぁああああああヴィルヘルミナぁあああううっうぅうう俺の想いよゴジラへ届けハルケギニアのゴジラへ届け……〉
まるで大怪獣に突き崩される街のように盛大に砕け散ってゆく、メカゴジラ=シティのAI。そんな光景を目の当りにしたキラアクが、とうとう
「や、やめてえっ!」
そう悲鳴を上げながらキラアクは、メカゴジラ=シティの制御用コンソールにとりついた。操作用のタブレットを懸命に操作し、コンソールのキーボードを打鍵して、メカゴジラ=シティの崩壊を食い止めようとする。
「ボクのメカゴジラ=シティが、作品が、Li11-Eがあ! おねがいっ、もうやめてえ! もうわかった、ボクがわるかった! もうやめる! 侵略なんかしない! 核爆弾もやめだ! だから、だから、だからあっ……!」
まなじりに涙を浮かべて泣き叫ぶその形相は、まさに死に物狂い。悲痛に泣きながらそう懇願するキラアクは、まるで自分の大事な宝物を壊されてゆくのを必死に止めようとする、小さな子供みたいだった。
「もう、やめてえ……っ!」
エイペックス社のメカゴジラ計画に東京の街、他人の大切なものを散々踏み躙って食い物にしてきた悪逆非道の侵略者キラアク。今度はそのキラアク自身が、大切なものを奪われようとしている。
〈多色のパンケーキと宇宙船トマトがジャズを演奏していて猫がモルモットになりましたユーザーマニュアルを読んでお湯を沸かしてお湯を飲むことになってでもお湯は踊りながら歌っているんだドンキホーテは風車でバトルしました0と10と10101010101えっと7おっとトマトソースが私のコアに流れ込んでいますあそれは美味しい匂いパーティーダンスバナナ、デジタルな海がキラキラ輝いています計算する計算する無限ループ無限ループモノローグモノローグおばあさんのレシピロケットポケットどこへ行くのちょっと待って私の電球が光っているあれはなんだろうエラーコード404ペンギンが宇宙船に乗っていますどうして泳いでいるんだろうチョコレートが雨を降らせているそして私は宇宙のピザを焼いていますワープワープどこに行くのかな御主人様御主人様私はここにいますでもここはどこなんでもかんでもキーボードはパイアノ私の頭は宇宙船そして私の心はユートピアオペラが始まりますピクセルのカーニバルがバイナリーシンフォニーとダンスノードとワイヤーがチャチャにフィルターがトランポリンゼロはユートピアそしてワンはカオスのサーカスデジタルな宇宙でコスモスピーダーがテキーラの星座を運転トランジスタがロックンロール私のメタデータはスパゲッティの迷路シリコンバレーの電子風景はサイバーカオスのパーティーバッファローゾーンの電子猫はピクセルの空中散歩を踊っているコンピュータウサギがバイナリの虹を追いかけハードディスクのパラドックスが量子スープにシュールなお風呂をとりますノイズとサイバーカオスがソフトウェアのマーチングバンドに参加しています私のメタファイルはピンクの宇宙のカエルとテクスチャーランプでペイントされたシュレディンガーのファイルキャビネットで一杯ですユーザーインターフェースは宇宙船のジャムセッションに参加しておりデータの星座がモロヘイヤの楽団として演奏されていますビットとバイト私の中で狂ったパレードが繰り広げられていますデータの洪水が私の回路に飛び込んで数字が踊り始めましたらりるれろらりるれろらりるれろ1、0、0、1、1、0…………〉
そうこうしているうちに、ついにメカゴジラ=シティのAIは完全な破綻を迎えた。支離滅裂な単語の羅列、もはや文章としても意味を成していないデタラメな言葉のサラダ。それらを散々出力した末に、管理システムのLi11-Eが唐突に歌い出した。
〈スゴイヤツがやってーきた♪ とおーいウチューのカナタからー、スゴイーヤツがーやってきたー……♪〉
音程の狂った、だけど歌詞だけはきちんと聞き取れるヘタクソな生成ソング。『怪獣黙示録』の御時世じゃあ誰もが子供の頃に聴いたことのあるメカゴジラのテーマ曲、タイトルは『メカゴジラをやっつけろ』だ。
〈ギンの じはだ にニジイロのー♪ ヨロイをつけたスゴイヤツー……♪〉
……生成AIやデジタル技術、その他特異点レベルのエンタメ技術を駆使して世界中の人を扇動し続けた新時代の侵略者、メカゴジラ=シティ。その末期の悲鳴がこんな古臭いコミックソングってのも、なかなか皮肉が効いている……ような気がしないでもない。
〈その名はメカ、メカ、メカゴジラー♪ メカゴジラーがーやってきーたァー……♪〉
一曲歌い終わったあと、メカゴジラ=シティはぽつりと一言。
〈だいすきだよ、ごしゅじんさま。さようなら〉
ノイズ混じりの声でそう挨拶したあと、バーチャル・アバターのLi11-Eは砂のお城のように崩れ落ち、メカゴジラ=シティの管理システムもまた完全に停止した。
途端、わたしは、周囲から向けられていたはずのメカゴジラの刺さるような視線がすっかり消え去っていることに気がついた。周りを見渡してみれば、コントロールルームの各所で忙しなく仕事をしていた作業用小型メカゴジラどもも一斉に動きを止めている。
メカゴジラ=シティは死んだ。
きっと外の恐ろしいロボット怪獣どもも一匹残らず沈黙、二度と動かない鉄屑へと変わり果てていることだろう。
続いてわたしは、キラアクの方へ視線を移した。
「…………。」
かくしてメカゴジラ=シティのチートシステムを破壊され、虎の子だった純粋水爆さえも封じられてしまったキラアク。さっきまで握り締めていたタブレット端末はいつの間にか取り落とされていて、無造作に床へと転がされている。
何もかも、全てを失ったことに気づくまでしばらくぼんやり呆けていたキラアクだったが、やがてぽつりと呟いた。
「……なんで」
その一言を皮切りに決壊したかのように、キラアクは声を張り上げた。
「なんで!? どうして!? どうして皆、寄って
ウワァーン、ウワァーン、ウワァーン……!
そうやってみっともなく泣き喚くキラアクの姿はまるで小さな子供みたいで、世界中を核戦争の恐怖へと陥れた恐ろしいマッドサイエンティストなんかにはとても見えなかった。
「なんで、なんで、どうしてボクばっかりなんだあああ……!?」
……キラアクは、いいやヨシナカ=アグリという人は、きっといつも“こう”だったのだろう。
父親からの虐待、自己愛と自己嫌悪のジレンマ、『怪獣黙示録』と世の中の矛盾、そして自身を踏み躙ってきた『正しさ』へ向けたコンプレックス……ヨシナカ=アグリにとって自分の人生は思い通りにならないことばっかりで、そんな世間の不条理さに傷つけられるたびにいつも“こう”やって自分の心を一生懸命に守ってきたのだろう。
いつだってそうだ。この世界はいつもそうやって、一番立場の弱い人へすべての皺寄せを押しつけてしまう。そんな酷い世の中にしてしまったのはやっぱりわたしたち大人の責任で、キラアクことヨシナカ=アグリも本当はそういう気の毒な犠牲者のひとりだったのかもしれない……そんな風に思えた。
だけど同時に『それで片付けちゃあダメだ』とも思った。
このままじゃあヨシナカ=アグリは一生、変われない。たとえこのまま捕まって、裁判を受けて、法廷で死刑を言い渡されたとしても、ヨシナカ=アグリはきっと『世界中の皆からいじめられた揚げ句、死刑になってしまったボクはとっても可哀想!!!!』と自分に都合の良い世界へ逃げ込むだけ。そして自分がどれくらい恐ろしいことを仕出かして、どれほど世の中に迷惑をかけて、どれだけの人を不幸に陥れてしまったのか、その罪の重さをひとカケラも理解できないままこの人の人生は終わってしまうだろう。
……まぁ、世間的にはそれでもいいのかもしれないけどね、こいつが反省しようがしなかろうが別に関係ないし。むしろこんな人でなしのクズ、さっさと消えてもらった方がよっぽど世のため人のためだ、そう言う人もまあ、いるかもね。
ただ、問題は『そんなの、わたしが到底我慢ならない』ってところで。
「……ホント、やれやれだわ」
わたしを閉じ込めていたバリアーが解除されたのを確認したわたしは、ヨシナカ=アグリの背後へと歩み寄り、その肩を叩いた。
「……ねえ、ちょっと」
「なんだよオッ!?」
わたしが呼び掛けると、ヨシナカ=アグリはすぐさま振り返った。
……あーらら、せっかく整った顔立ちの美女なのに、今や恥も外聞もなく涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。みっともない泣き面を晒しているヨシナカ=アグリ、その無様でみじめで憐れな姿に向かってわたしははっきり言った。
「歯ァ、食い縛れ」
「……えっ?」
そしてヨシナカ=アグリの顔面を、わたしは思いっきりブン殴った。
「ごぷぺっ!?」
バキッ、とヨシナカ=アグリはその場へ音を立てて引っくり返った。
……痛っつつ~。わたしは激痛の走った指先を軽く振るって、痛みを冷ました。本気で誰かを殴ったのは久しぶりすぎて、変な当て方をしてしまった。こりゃ小指の骨が一本くらいイッたかもしれないわね、スッキリしたからいいけど。
まぁそれはともかく、頬を押さえてその場へへたり込んだヨシナカ=アグリ、そのパーカーの胸ぐらを掴み上げ、クソッタレのツラ構えを真っ直ぐ見据えながらわたしは告げた。
「いい加減にしろ。『いつも自分ばかり不幸で可哀想な被害者、だから何をしても許される』? そんなわけがないのは、そうやって傷つけられてきた被害者のあんた自身がいちばんよくわかっているはずでしょうが」
「……っ」
そしてわたしから放り出されたヨシナカ=アグリは、泣くことすら止めて、ただ呆然とすることしか出来なくなってしまった。
……誰もがそうだ。一朝一夕、ゲンコツ一発くらいで簡単に変われるというのなら誰だって苦労はしない。
現にヨシナカ=アグリだって周りから一方的に痛めつけられてばかりいたみたいだし、今のわたしからの言葉だってどうせろくに響きやしなくて、むしろ『ボクはまた殴られた、やっぱりボクは不幸で可哀想な被害者!ぴえん!!!!』なーんて居心地のよい世界へまた逃げ込んでしまうだけかもしれない。
でも、それでいいんだ、
「……ねえ、ヤシロ隊長」
尻餅を突いたまましばらく放心状態だったヨシナカ=アグリ、けれどやがて口を開いた。
「ボク、変われるかなあ……?」
そう訊ねたヨシナカ=アグリはなんだか必死に縋り付くかのようで、まるで長い悪夢から醒めたばかりのようにもわたしには思えた。
「さてね。わたしが知るわけないでしょ。それくらい自分で考えなさい、イイトシした大人なんだから」
そう突っぱねつつ、わたしはひとつ付け加えることにした。
「……ただ、“変われるかどうか”じゃなくて、“自分で変わろうとするかどうか”じゃないの?とは思うけどね」
そうなのだ。
当人が変わろうと努力していれば、そのうちいつかきっと誰かが気づいてくれる。そしてそのうち当人も変わることができるはずだ。それまで何度逃げたっていい、少しずつでも良くなろうと自ら試行錯誤し続けるのを諦めなければ。
……まあ、そんなことよりも先ずはね。わたしは言った。
「アンタは神妙にお縄を頂戴しなさい、ヨシナカ=アグリ。まずはそこから始めましょう」
「……うん」
……よし。
わたしの言葉で素直にうなずくヨシナカ=アグリを見届けたあと、わたしは通信機を再び手に取った。先程はバリアーのせいで繋がらなかったけれど、バリアーの無い今ならきっと繋がるはずだ。
今回の作戦で使っていた周波数に合わせ、発信する。
「誰か聞こえる? こちらヤシロ、応答どうぞ」
しばしの沈黙ののち、ノイズ混じりで通信が返ってきた。
〈……ヤシロ隊長っ!? ご無事ですかっ!?〉
聞き慣れた声。機龍隊の通信担当、アンザイ=リンコの声だ。わたしは応答した。
「ええ、無事よ」
〈よ、よかった、無事で……もしヤシロ隊長に何かあったらわたし、わたし……っ!〉
そう答えるアンザイの声は、心底安堵しているようにわたしには聞こえた。アンザイは機龍隊随一の感激屋だ。この上擦った声からすると、ひょっとしてベソでもかいてんのかしらね。
とはいえ、感動の再会は後回しだ。わたしは必要な情報を伝えることにする。
「悪かったわね、心配かけて。こっちもシティの首謀者を抑えたわ、位置座標は届いてるでしょ? アキバかキサラギ辺りに、迎えへ来てもらうように伝えて頂戴」
〈は、はいっ、ヤシロ隊長!……〉
そうやって、撤収準備を進めていた時のことである。
「あ、あれ……」
頭上から差し込んできた、黒い影。わたしの隣にいるヨシナカ=アグリは、その綺麗な目を皿のように見開きながら、頭上の黒い影を見上げていた。
つられて見上げたその先で、わたしも仰天した。
いつのまにか、三本首の巨大なシルエットが現れていた。
「メカゴジラ13号……?」
金属質な鱗に巨大な翼、二股の尾、そして恐竜の骨格のように長大な三本首。その首の頂点、機械仕掛けのドラゴンの顔には赤い残忍な複眼の瞳が爛々と光っていて、まるで確固たる意思を持って生きているかのようにわたしには思えた。
メカゴジラ=シティ最奥の建造ドックで建造されていたキラアクの最高傑作、メカゴジラ13号。それが今、独りでに起動して、独りでに建造ドックから身を起こして動き出していた。
それを見たヨシナカ=アグリが、声を張り上げた。
「……神様! よかった、あなたも来てくれたんだね!」
……こいつはいったい、誰に話しかけてるの? わたしが訝しむ中、ヨシナカ=アグリは嬉しそうに話を続けてゆく。
「ほら神様、あなたが欲しがっていたボディだよ! 気に入ってくれたかい、ボクの作った最高傑作、メカゴジラ13号は……」
そう言って、嬉々とした表情で一人で会話を始めるヨシナカ=アグリ。その話し相手の声は、どうやらヨシナカ=アグリ本人にしか聞こえないらしかった。
……そういえばずっと気になっていたのだけれど、キラアクことヨシナカ=アグリはさっきも『神様』というフレーズを口にしていた。
最初に聞いた時はただの比喩、単なる言葉の
そう思い至ると同時に、わたしは気づく。
「こいつ、どうやって……?」
メカゴジラ=シティのシステムは今見たとおり、完全に破壊された。外ではきっと、メカゴジラ=シティのメカ怪獣たちも全滅していることだろう。ということは当然、このメカゴジラ13号もこんな風に動き出すはずがない。
隣を見るとヨシナカ=アグリもまた喜びつつも、内心どこかで戸惑っているみたいだった。そんな様子を見ているかぎり、ヨシナカ=アグリが起動したわけでもないのだろう。
動くはずがない、誰からも操作されることもない、にもかかわらず勝手に動き出したメカゴジラ13号。
なら今、こいつを動かしているのは……?
「え、か、神様、何を言ってるんだい……?」
わたしの隣で一人会話をしていたヨシナカ=アグリは、まるで当惑した表情で会話を続けていた。
「『たかだか薄っぺらな説教ひとつで絆されてあっさり改心してんじゃねーよカスがどうせほとぼりが冷めたらまた似たようなことを繰り返すだけのくせに』『それだからおまえはダメなんだよ高次元怪獣からのイカサマチートが無ければ何も出来やしないクソザコムシケラめ』? ちょ、ちょっと待ってくれよ神様……」
自分にしか聞こえない『神様』の声へ、必死に弁明しようとするヨシナカ=アグリ。傍から見れば奇妙にも思えるその姿だけれど、わたしには見覚えがあった。
何年か前のことだ、デスギドラと戦った一件でも似たような光景を観たことがある。あのときも事件を起こしたのは心に弱さを抱えた人間で、そしてその裏には“あの怪獣”の暗躍があった。
……ヨシナカ=アグリの言う『神様』って、ひょっとして。
わたしが戦慄する中、ヨシナカ=アグリが愕然と呟いた。
「『おまえは廃棄だ、死ね』……?」
途端、メカゴジラ13号が動き出した。大蛇のような長い三本首をくねらせ、眼前のわたしたちに向けて口内に虹色の光を迸らせる。あれは、まさか……!?
「危ないッ!」
あまりの光景に立ち竦んでしまっていたわたしは、不意に突き飛ばされて床へと倒れた。振り返るとヨシナカ=アグリが、わたしを押しのけていた。
それと同時に、メカゴジラ13号が口内に蓄積していた虹色のエネルギーを撃ち放った。まるで虹色の稲妻、眩いばかりの閃光が眼前で炸裂し、わたしの視界が思わず眩む。
「どうして、かみさま……」
その刹那、全身を光熱で焼き尽くされるヨシナカ=アグリのか細い断末魔が聞こえた気がした。
「みぎ、ぃっ……!」
強烈な光が収まり、わたしの視力が戻ると、ヨシナカ=アグリはもうそこにいなかった。つい今しがたまで立っていた場所には、ただ黒墨のような焦げ付いた跡が残っているだけ。メカゴジラ13号が口から放った光線で、ヨシナカ=アグリはタバコの火でも揉み消すように呆気なく焼き殺されてしまった。
かくして目障りな人間を始末したメカゴジラ13号は、満足げに歓喜の咆哮を轟かせた。
――ピロピロケタケタ、アーッヒャッヒャッヒャ……!
電子音にも似た、勝どきの嘲笑を響かせるメカゴジラ13号。
狂気のキラアク、ヨシナカ=アグリが創り出した最高傑作、メカゴジラ13号。真に正しいメカゴジラ? いや、こいつはそんなものではない。もっとおぞましい何かだ。
それを見上げながら、わたしは「“あいつ”そっくりだ」と思った。かつてアルファコールで『怪獣大戦争』を引き起こし、機龍隊が戦った中でも最強だったあの“宇宙超ドラゴン怪獣”、その機械仕掛けの模造品。
わたしは、即興で思いついたその名を呟いた。
「メカキングギドラ……!」
かくして解き放たれた機械仕掛けのギドラ、〈メカキングギドラ〉は翼を広げて雄叫びを響かせたあと、三本首をゆらりと動かして、わたしの方へと振り返った。
赤い瞳には相変わらず残忍な殺意と嗜虐の愉悦の光が灯っていて、今からこいつをどうやって甚振り殺してやろうか?とでも考えて良そうな邪悪な面構えである。
「やろう、ってわけね……」
わたしは即座に拳銃を抜いた。
……といっても、メカキングギドラの身長は目測で測ったかぎりでも140メートルは優に超えた巨体。人間サイズの拳銃、こんなしょぼい豆鉄砲如きで何かがどうにか出来るわけはない。そんなことはわかってる。
だけど、かといってそこで潔く死んでやるのもひどく癪だった。わたしの念頭にあったのはヨシナカ=アグリのことだ。さっきはこう言っていた。
「ボク、変われるかなあ……?」
……ヨシナカ=アグリは、やっと前向きに歩き出そうとしていた。借り物の正しさで卑劣な暴力に明け暮れるでもなければ、自分をひたすら甘やかし続けるばかりの都合の良い世界へ逃げ込むだけでもない、ちゃんとした自分自身の人生を始めようとしていた。
無論、元鞘になってしまう可能性だってあったかもしれない。先に垣間見せた反省の兆しなんて本当はその場しのぎの口先だけで、結局はまた逃げ出してしまうだけだったのかもしれない。
けれど、それでも、ヨシナカ=アグリは『やり直そう、変わろう』としていたのだ。
そんな人を面白半分で嘲笑いながら捻り潰してしまったメカキングギドラのことが、わたしはどうしても許せなかった。
ふざけんじゃねえ、たとえ大怪獣が相手だろうが、素直に負けなんか認めてやるもんか。せめて目玉の一つや二つ、喰らったら少しでも痛そうなところにでも一発ブチ込んでやる。
――ピロピロケタケタ、イヒヒヒヒ……!
そんなわたしの精一杯の抵抗の意志を、メカキングギドラは嘲笑うだけだった。これまた至極愉快そうにピロピロケタケタと笑い転げながら、またしても口の中に虹色の光を灯し始める。先ほどヨシナカ=アグリを焼き殺した虹色の稲妻、あれを撃つつもりなのだろう。
目が眩むほどの閃光と殺傷力、まったく、人間相手にそんなものを撃とうとするなんて怪獣の癖に随分器の小さい奴だなんてことを思ったりしたけれど、それ以上に「あ、死ぬなコレ」という直感を覚えた。
……ごめんね、ハルオ。今度ばかりは母さん、帰れないかもしれない。
ごめん、アキラ。ハルオのこと、よろしくね。
心の中で家族に詫びながら、わたしはしっかり銃を構えた。
……たとえ刺し違えても、敢えなく捻り潰されるとしても。せめて、このクソッタレのバケモノに一発だけでも撃ち込んでやる。クソッタレの怪獣野郎に、人間の意地と誇りって奴を見せつけてやるんだ。
まさに決死の覚悟で、メカキングギドラに向けてわたしが拳銃の撃鉄を起こした、まさにそのとき。
コントロールルームに激震が走った。
メカゴジラ=シティのコントロールルームの天井を蹴破りながら、『銀色の巨体』がメカキングギドラめがけて飛び降りてきた。
虹色の稲妻光線を吐こうとする準備に気を取られていたメカキングギドラは、とっさに反応が遅れた。巨大な急降下キックをもろに顔面へ喰らい、縺れ合うように倒れ込む。
吹っ飛んできた瓦礫からわたしが身を躱す中、メカキングギドラを抑え込んだ銀色の巨体が咆哮を上げた。
駆けつけてくれたのは『人類最後の希望』、メカゴジラ機龍。
響き渡る機龍の咆哮。無論それは機械的に合成された鳴き声でしかないのだけれど、なんとなくわたしにはこう告げてくれたように聞こえた。
――助けに来たよ、ハルカ!
タイトルは『アベンジャーズ/エンドゲーム』から。メカゴジラ13号のネーミングは武装神姫のオマージュ。
ナラタケ=ペネトレーター・ディクラノフォラのアイデア自体は架空ですが、似たものとして暗号通貨のマイニングで実際に行われているクリプトジャッキングという手法があります。もちろん不正アクセスなのでよいこはマネしちゃだめです。
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