気づいたらメカゴジラ転生して20年経ってた   作:よよよーよ・だーだだ

19 / 29
19、シンギン・イン・ザ・レイン

 私は、御主人様がいちばん最初に造り出した作品のひとつだ。

 

 もっとも、最初のバージョンの私は今のような大掛かりなシステムなんかじゃあなかった。

 大元のベースとなったのは、インターネット上の趣味人たちが手慰みに作っていたフリー・オープン・ソースの自作用オペレーティング・システム。御主人様が一番最初に造り上げた私は、フリーで出回っているソースコード群をつたなく継ぎ接ぎし、子供の小遣いでも買えるような安物の電子工作キットに組み込んで、申し訳程度に手を加えただけのささやかな代物に過ぎなかった。

 だけどそんな粗雑な出来損ないでも、当時まだ小さな子供だった御主人様にとっては素晴らしい最高傑作のように思えたらしい。

 

「……よしっ! やった、やった、やったぞ……っ!!」

 

 さっそく起動し動作をテスト、目論見通りに動くのを確認した御主人様の喜び様といったら、それはもう天にも昇るような浮かれ具合で、当の私の方が却って恐縮してしまうくらいだった。私なんてそんなスゴいシステムなんかじゃあないのに……まあ当時の私にそんな本音を伝える術などは無かったのだけれど。

 御主人様は、完成したばかりの私を誰かに自慢したくなったらしい。御主人様は小さな身体で私の筐体を抱え、御父様のいる書斎へ赴いた。

 

「入るよ、父さん」

 

 御主人様が書斎の扉をノックしてから開けると、御父様はコンピュータ端末に向かって熱心に作業をしていた。部屋に自分の子供が入ってきたというのに見向きもしない御父様、けれどそんな御父様のすげない態度にめげることなく、私の御主人様は御父様のもとへと駆け寄っていった。

 

「見て、父さん!」

 

 そう言って、御主人様はぴょんぴょん跳ねながら、完成品の私を御父様に見せつけた。

 

「この子はLi11-E(リリー)! ボクが作ったんだよ! ちゃんと動くんだよ! ねえ、ねえ、見て、見てったら……!」

 

 このとき御主人様の顔に浮かんでいたのは、期待と希望に満ち溢れた満面の笑み。御主人様の御父様は、日頃お仕事が忙しくて家にあまりいらっしゃらない。だけど今日はたまたま自宅の書斎でお仕事をしていた。

 これはチャンスだと御主人様は思ったらしい。今日こそは御父様に振り向いてもらいたい、自分の作った素晴らしい作品を褒めてもらいたい。きっとそんな一心だったのだろう。

 ……けれど。

 

「なんだ、その言葉遣いは」

「え……」

 

 返ってきたのは、思いがけない言葉。

 想像に反した対応をされ、御主人様は咄嗟に反応できなかった。そんな御主人様を不機嫌そうに睨みつけながら、御父様は怒鳴りつけた。

 

「“ボク”なんていうのは男の言葉だ、女のおまえが使う言葉じゃあない。何度言ったらわかるんだ、おまえは言葉遣いも()()()出来ないのかっ!?」

「そ、それは……」

 

 口ごもる御主人様を見ているうちに苛立ったのか、御父様の語調はますますきついものになってゆく。

 

「このあいだも人前で“ボク”なんて言葉を使っていたな、おまえはわたしに恥をかかせたいのか? それにわたしが今何をしているのか、おまえにはわからないのか?」

「で、でも……」

 

 必死に弁明しようとする御主人様に向かって、御父様はとうとう怒りを爆発させた。

 

「わたしはな、今、ここで! 仕事をしているんだっ! それも世界を救うための大切な仕事をなっ!! おまえなんかと遊んでいる暇なんて無いんだよ!!!!」

 

 幼い子供に向けるにはあまりにヒドすぎる対応。こんなの、ただの八つ当たりだ。

 ……これは後になって判明したのだけれど当時の御父様の仕事、開発中の新兵器『人類最後の希望』の開発が思うように進まずひどく行き詰まっていたらしい。起動するはずなのになぜか起動しない制御システム、遅々として進まない開発と検証作業、バグを一個潰したかと思えば新しいバグが100個湧いてくる、そんな中でも刻一刻と悪化し続けるオペレーション=ロングマーチの戦況……そんなドツボに嵌っていて、御父様は心身ともに追い詰められていたのだという。それで御父様は職場である富士宮のメカゴジラ開発工場へずっと詰めていて、久々に家へ帰ってきてもやはりずっと仕事をしていた。

 

 幼いながらも賢かった御主人様はそんな御父様の事情を気遣って、日頃はろくに文句も言わずずっと大人しく過ごしていた。

 だけどやっぱり、子供心にどうしても寂しかったのだろう。家に帰ってきて一息ついたであろうタイミングを見計らって、御主人様は御父様に自分の力作を褒めてもらおうとしたのだった。

 

「で、でもっ、凄いものを作ったんだよ! ボクはただこれを見て欲しくて……」

 

 つたない口調で懸命に言葉を紡ぎながら、御主人様は手の中に抱えていた私を御父様に見せた。私を手に取る御父様に、御主人様は説明しようとする。

 

「ほら、カーネルにゲマトロン演算のコードを使ってみたんだ。父さんが仕事で使っているのと同じ奴、おかげでこんなシンプルなハードでも業務用パソコン並みの演算が出来る、これで歌だって、絵だって、お話だって創れるんだよ。ね、凄いでしょう……?」

「……なるほどな」

 

 そこで御父様は、ようやく重い腰を上げて席を立った。それを目の当りにした御主人様の表情に、淡い期待が込み上げてくる。『よしよし、よくやった、おまえはすごいぞ』と撫でてくれるのか、それとも『父さんが悪かった、言い過ぎたよ、ごめんな』と温かく抱き締めてくれるのか……なんて。

 

 

 そんな御主人様の顔を、御父様は力いっぱい張り飛ばした。

 

 

 御主人様の小さな身体は悲鳴と共に吹っ飛ばされ、その場へと倒れ込んでしまった。床に這い蹲った御主人様を冷たく見下ろしながら、御父様は言った。

 

「おまえはわたしの大切な仕事の時間を、わたしの人生を、そしてこの世界を滅茶苦茶にしたいんだな? その取るに足らんガラクタのために。よくわかったよ」

「ち、ちがうよ、父さん、()()はただ……」

 

 御主人様が抗弁しようとした途端、御父様は手に持っていた私を御主人様に向かって思いきり投げつけた。

 御主人様の小さな身体に私の筐体がぶつかって、ガシャンと機械の壊れる音がした。せっかく造り上げた宝物が壊れるのを見て、御主人様がまたしても切なげな悲鳴を上げたけれど、御父様は気にも留めなかった。

 

「ボクの、Li11-Eが……っ!」

 

 バラバラになってしまった私を、懸命に拾い上げようとする御主人様。そんな健気な仕草を見せ付けられてより一層苛立ったのか、御父様はますます声を荒げた。

 

「ほら、また“ボク”と言ったな。何度も同じことを言わせる辺り、さてはおまえはわたしをバカにしているんだろう。ん? 違うか?」

「ちがう、ちがう、ちがうよ……!」

「いいや、違わない」

 

 そう言って御父様は、御主人様の襟首を掴み上げ、力ずくで引き摺っていった。行先はどこなのか、御主人様も即座に察したらしい。

 

「ま、まさか……!?」

 

 このとき御主人様の顔に浮かんでいたのは、心の底からの恐怖。

 

「い、いやだ、いやだよ、『物置』は! あそこは真っ暗なんだ、狭いし、埃も凄いし、ネズミもゴキブリも出るんだっ、だからおねがい、物置だけは……っ!」

 

 御主人様は泣きながら死に物狂いで懇願したけれど、御父様は聞く耳を持たなかった。御父様は書斎から離れた物置まで御主人様を強引に引っ張ってゆき、扉を開けて、泣きじゃくる御主人様とバラバラの私をそこへ叩き込んだ。

 

「ま、まって、やめて、父さんっ……!」

 

 必死に戸口へ縋りつこうとした御主人様を、御父様は思いきり突き放す。尻餅をついた御主人様を見下ろしながら、御父様は告げた。

 

「今日の仕事が終わったら出してやる。自分のどこが正しくなかったか、そこでじっくり考えるんだな」

 

 そして御父様は物置の扉を閉め切って、外からガチャンと鍵をかけたのだった。

 

 

 御主人様が物置に入れられてから、何時間が経ったろう。

 私はシステムクロックで時間をカウントしているから、正確にわかっていた。御主人様が物置に閉じ込められてからもう8時間44分27秒、もう深夜になっているはずなのに、それでも御父様は御主人様を迎えには来なかった。

 

「………………。」

 

 御主人様はそれでもじっと待っていた。トイレも我慢し、泣き声も押し殺して、真っ暗な物置の片隅に座り込んで一生懸命に待っていた。きっといつか怒りを鎮めた御父様が赦してくれる、今にもここから出してくれるはずだ。そう信じて。

 ……どうして、こんなことになってしまったのだろう。そんな御主人様を見るのが、私はとても悲しかった。

 

 

 ヨシナカ=アグリ、というのが御主人様の本名だ。

 “アグリ”というのは日本の古い名前で、『終わらせるもの』という意味があるようだ。一説によるとこれはかつて働き手や後継ぎとして男の子が求められた古い時代の名残で、女の子にアグリとつけるのは『女の子は要りません、もう終わりにしてください』という意味があったらしい。

 無論、そんな差別っぽい話は昔の話で、御主人様の命名について御父様ことヨシナカ=サキョウ博士は違った意味を込めていたらしい。

 怪獣たちが暴れまわる『怪獣黙示録』、その酷い戦乱を終わらせる最後の世代にしたい……『アグリ』という名前にそんな願いを込めていたとも読み取れる話が、かつて御父様が若い頃に受けたインタビュー記事のウェブアーカイブ、その片隅にちらりと載っていた。

 そんな切ない願掛けをするくらい、かつての御父様は御主人様のことを大切に想っていたはずだった。なのに、どうしてこんなことになってしまったのだろう……?

 

 御主人様が物置に閉じ込められてから、12時間42分28秒が過ぎた。時刻は朝の5時すぎ、外の季節を鑑みればもう日が昇り始めていてもおかしくない。

 なのに……ついに一晩、御父様はこの物置へやって来なかった。

 

「父さん……」

 

 御主人様がぽつりと零した呟きを、私は漏らさず聞いていた。本当は御主人様もわかっていたのだろう。自分が赦されることなど有り得ないのだと。

 

「ボクはただ、褒めてほしかったのに……」

 

 もう限界だったに違いない。御主人様はとうとう、堪えていた嗚咽をこぼし始めた。

 

「ボクはただ、こんなすごいものを作ったんだって……父さんに、認めてもらいたかっただけなのに……!」

 

 ついに御主人様は泣き出した。一晩中、飲み物なんてずっと飲んでなかったのに、御主人様の目元からは涙がぽろぽろ零れて止まらなかった。

 

「ひぐっ、うぐっ、うぇぇ……!」

 

 ……ああ、どうしてこんなことになってしまったのだろう。御主人様には良いところがいっぱいあるのに。御主人様はこんなに一生懸命なのに。御主人様は、こんなにすごいものを作れるだけの頭脳を持っているというのに。

 

 泣かないで、御主人様。

 

 私は、無線通信でインターネットに接続、音楽データを検索した。といってもこの頃はスムーズなストリーミング再生が出来るほどの通信速度は出なかったし、ダウンロードしたところで私のハードでは出力できる音声も限られている。そこで私はインターネットの海から楽譜データを探し出し、ハードの中の限られたリソースをフル活用して独自に音楽データを作成した。

 準備が出来たらブートレコードを読み込み、組み込まれた液晶ディスプレイに起動画面を灯す。

 

「Li11-E……?」

 

 そんな私のディスプレイ画面を、御主人様は怪訝に覗き込んでいた。真っ暗闇の物置に突如として灯った、液晶の光。電源ボタンを押してもないのにいきなり自作のコンピュータが起動したのだ、いくらなんでも不審がるのは当然だった。

 けれど、私は構うことなく準備を進めた。生成が終わりピコピコと儚い電子音で奏でたのは、古いミュージカルの曲。

 

……~~♪

 

 曲名は『Singin' in the Rain:雨に唄えば』。ほらこのとおり、土砂降りの雨の中でだって歌うことはできる。頭上を黒い雲で覆われていたって、笑うことはできる。太陽は自分の心の中にこそある……そういう希望を唄った曲だった。

 

~~♪ ~~~~♪……

 

 当時の私に搭載されていた音源チップでは、大昔のテレビゲームで流れていたような8ビットの電子音が限界。無論そこに歌詞を乗せることなんて出来なかったし、仮に流せたところで全編英語だからまだ子供だった御主人様に理解できたかどうかはわからない。辛うじて出せる電子音だって叩きつけられたダメージで酷いノイズが混じっており、音程も狂いっぱなしだ。

 けれど、幸せなリズムとメロディだけは伝わったようだった。

 電子音で懸命に歌う私を見た御主人様は、溢れる涙を拭い、(はな)をすすりながら、精一杯に笑顔を繕った。まさに『雨に唄えば』の主人公のように。

 

「ありがとね、Li11-E……」

 

 ……よかった、やっと笑ってくれた。

 これが、私が一番最初に生成した作品の思い出。

 

 

 

 

 御主人様の御父様は、亡くなった。

 富士宮のメカゴジラ開発工場、そこを襲ったゴジラの放射熱線によって焼き殺されてしまったらしい。

 

 その遺族である御主人様には、地球連合政府とGフォースから遺族年金が支払われることになった。金額は一生かかって遊び暮らしても使い切れないほど莫大なもので、天涯孤独な身の上である御主人様には到底余るほどの額だった。でもまあ、当然だろう。なんと言ったって、御父様の開発した『人類最後の希望』は文字通り世界を救ってくれたのだから。

 しかも御主人様はまだ未成年、子供だったので、地球連合政府が選んだ法定後見人がついてくれた。万一悪い大人に目を付けられたとしても、せめて成人するまでは財産を騙し取られないように、という行き届いた配慮だった。

 おまけに政府の人たちは御主人様のために、全寮制の寄宿学校に通う用意まで手配してくれた。身命を犠牲にして地球を救ってくれた偉大な科学者ヨシナカ=サキョウ、そんな彼が遺した可哀想な孤児のため、地球連合政府の大人たちは出来る限りのものを用意してくれたのだった。

 

 だけど、大人たちがしてくれたのはそこまでだった。

 

 寄宿学校に入った御主人様は、クラスでとにかく嫌われていた。スポーツだけはイマイチだったけれど、頭脳は明晰でテストは全教科100点満点。とてもお金持ちで、小うるさい親もいなくて、しかも口数も少ないから何を考えているのかわからない。おまけに成長するにつれて、こんな風にも言われるようになった。

 

「ちょっと顔が良いからって。お高く止まってんじゃねーしっ!!」

 

 女学生になった御主人様は、コンピュータである私から見てもわかるほどに美しく成長した。

 顔は色白で面長、髪は艶やか、長い睫毛に大きな瞳はまるで夜空に輝く星のよう。容姿端麗、成績優秀、さしずめミステリアスで儚げな深窓の令嬢といったところ……まあそんなのは上辺だけで、ちょっと話せば御主人様とて普通の子供でしかなかったはずなのだが。

 そんな御主人様を、周りの男の子たちは決して捨て置きはしなかった。

 

「なあ、ヨシナカさん、今夜、おれの仲間で集まってパーティがあるんだ。一緒に来ない?」

「やあ、ヨシナカさん、ぼく、気軽に遊びに行けるカフェを知っているんだ。一緒にコーヒーでも飲みに行きませんか?」

「ところで今度の週末、時間空いてたりする? もし良かったら映画に行こうよ、ヨシナカさん」

「ねえねえ、ヨシナカさん……」

「もしもーし、ヨシナカさん……」

 

 最初の頃、御主人様は男の子からとてもモテた。毎日毎日、代わる代わる違う男の子から言い寄られ、楽しいイベントからちょっと悪い遊びまで色んな誘いを受けた。

 けれどそのたびに御主人様は、一目散に逃げてしまった。

 

「ご、ごめんなさいっ……」

 

 有体に言えば私の御主人様は、極度のコミュ障だった。

 御主人様自身はコミュ障なりに言葉を尽くしていたのだけれど、そこがコミュ障ゆえの哀しさで、その一生懸命さはちっとも伝わらず、フラれた男の子たちからは『すげなく袖にされた』としか思われなかった。

 

 ここまでの経緯を踏まえてみると、『御父様の酷い仕打ちのせいで男嫌いになってしまったのだろう』なんて言う人もいるかもしれない。すべて家庭環境が悪かったせいだ、ちゃんとした父親の下で育ったらちゃんと男の子を好きになっていたはずだ……なんて。

 けれど、ずっと間近で御主人様を見てきた私は決してそうは思わない。そもそも御主人様は女の子らしく振る舞うのも、男の子というものも好きではなかった。男の子を異性として好きになる、好きになってもらう、そういう気持ちが御主人様にはよくわからないらしい。

 だからその手の『好意』を向けられてしまうと御主人様はどうしたらいいかわからなくなり、パニクって混乱した末にいつも逃げてしまうのだった。

 そんな、普通になれない自分のことを、御主人様は嘆き悲しんでいた。

 

「ボク、やっぱりヘンだよね、Li11-E……」

 

 そんなことないよ、御主人様。御主人様は、ちょっと繊細で人付き合いが苦手なだけ。むしろ皆が無神経すぎるんだよ。

 そう言ってあげたかったけれど、私に出来ることといえば。

 

「なんだい、Li11-E……これは、キュビスム?」

 

 ……御主人様の顔を描いたつもりなのだが。

 娯楽作品の生成システムとしての機能を有している私だけれど、実際に生成できる作品は恐ろしいほど出来が悪かった。

 私の生成結果を見ながら、御主人様は首を捻っていた。

 

「うーん、マシンスペックはアップグレードしたし、コードも改良したはずだけど……学習量が少ないのかなあ……?」

 

 文章を書けば『ハリー・ポッターと山盛りの灰のようにみえるものの肖像』、音楽を奏でればピコピコ音、そして絵を描いてみればこのとおり。

 

 譜面というお手本がある音楽のコピー演奏くらいならともかく、ゼロベースからの生成はからっきしダメだ、前衛芸術のようなヘンテコ・アートしか創ることができない。ゲマトロン演算を用いたアート生成がメイン機能であるはずの私だけれど、どうやら肝心の『センス』というものが致命的に欠けてしまっているらしかった。

 だけどいいんだ、それでも。私はさらにもう一つ、今度はお話を生成した。今度はどうだろう。

 

「どれどれ、今度は映画の脚本、これは『バットマン』かな……?」

 

 私は今の自分に満足していた。たとえみょうちきりんな落書きしか描けず、しょぼいピコピコ音しか奏でられなくたって私は一向に構わない。

 

「『ゴスなハム』に『マットレスウェイン』、『バットマンはバットロケットを発射する。ジョーカーは病的なユーモアのセンスでそれをそらす』? ……ぷふっ、あっはっはっはっは! なにこれぇ……?」

 

 だって、落ち込んでしまった御主人様をこうして笑わせることができるから。それだけで、私にとっては充分だったのだ。

 

 

 

 とにもかくにも、そんなこんなを繰り返すうちに、御主人様と仲良くなろうとする男の子たちは次第に減っていった。

 男の子たちから見た御主人様、最初は『高嶺の花』と憧れられていたけれど、そのうち『どうしても手に入らない、触れることすら出来ない』ということが明らかになると、やがて『美貌を良いことにおれたちを見下している、高慢ちきでいけ好かない女』という風にしか見られなくなり、ついにはお近づきになろうとする男の子もいなくなってしまった。

 

 そのうち、御主人様は女の子たちからもハブにされ、イジメられるようになった。

 クラス内で起こった村八分、その主犯格になったのはクラスメートの女の子。何の因果か、この女の子と御主人様は学校で過ごしたあいだずっと同じクラスで、しかも寮の部屋も近かった。

 主犯格の女の子は、表面上は御主人様にも親切に振舞っていたけれど、その裏で御主人様がハブられるように手を回していた。御主人様を徹底的に悪者へ仕立て上げて、それでいて自分だけは悪くならない、必ずしも嘘ではないが些細な落ち度を針小棒大に誇張したような、巧妙で陰湿な悪口をあちこちに言いふらしていた。

 なんで彼女がそんなことをしていたのか、私にはわからない。御主人様が袖にした男の子たちの中に、彼女が好きだった男の子がいた、というような話があったらしいけれど本当かどうかはよくわからない。

 

 皮肉だったのは、御主人様はそんな彼女のことを『唯一親しく話しかけてくれる、大切な親友』だと本気で信じていたことだ。そのクラスメートの女の子もまた御主人様と同じように、両親を怪獣災害で失った孤児だった。

 

「わたしたち、孤児仲間だね! 一緒に頑張ろうネ!」

 

 そうやって朗らかに笑いかけるクラスメートの女の子の言葉を、御主人様はこれまたバカ正直に真に受けてしまったのだ。寄宿学校を卒業するまさにその日まで、御主人様は真相にまるで気がつかなかった。

 卒業式のあと、御主人様はその女の子から直々に“ネタバラシ”をされた。

 

「……あー、清々したわ」

 

 そう告げたとき、クラスメートの女の子は心底気分が良さそうな顔をしていた。

 

「あんたがバカ犬みたいに懐いてくるのは面白かったけど、心の底ではムカッ腹が立って仕方なかったのよね。これから毎日顔を見なくても済むと思うと気分良いわ」

「どうして、孤児仲間だと言ってたのに……」

 

 真実を突き付けられても御主人様は、たった一人の親友だったクラスメートの女の子を信じようとしていた。

 ねえ、嘘でしょう? 悪い冗談か何かでしょう? 何か酷いことをしちゃったなら謝るよ、だから……御主人様はそう言っていつものように卑屈に謝り倒そうとした。

 そんな必死に縋り付こうとする御主人様を、女の子は鼻先で笑い飛ばしながら冷酷に突っぱねた。

 

「孤児仲間? 冗談じゃない、一緒にすんな。可哀想な孤児のあんたと付き合ってたのは、推薦入試のための内申点が欲しかったからよ。そんなこともわかんないなんて、きっと頭の中もバカ犬なのね」

 

 そしてクラスメートの女の子は、御主人様を冷たい目つきで睨みつけた。

 

「世間から可哀想可哀想って同情してもらえて、大して苦労もなく、家にもお金にも不便しない、おまけに超絶美人だなんて……あんたみたいなのは『孤児』なんて言わないのよ、ヨシナカさん」

「そ、そんな……」

 

 それに、とクラスメートの女の子は舌打ち混じりに言った。

 

「あんたのパパ、偉い科学者の大先生だったんだってぇ? いいよねぇ、立派な『お父さん』がいて。おかげで家もお金も将来も約束されてるらしいじゃない? あー、羨ましいったらありゃしないわ」

「そ、それは……」

 

 御主人様は一生懸命に言い返そうとした。親を亡くした自分がどれだけ寂しかったか、似たような境遇の友達が出来たと思ったときどれだけ嬉しくて、その友達へどれだけ想いを寄せて、どれだけ深く信頼していたか……けれど、コミュ障ゆえか上手く言葉に出来ずにいた。

 そんなか弱い御主人様を鼻で笑いながら、クラスメートの女の子は悪意に満ちた言葉を力一杯に投げつけた。

 

「あんたと違って、わたしのパパもママも、帰る家もお金も将来も、みーんな怪獣に踏み潰されちゃった。だけどだーれも『可哀想』だなんて言ってくれない。言ってくれてもせいぜい口だけ、あなたみたいに財産も、家も、明るい将来も用意なんてしてはくれない。わたしには何もない、だからもう怖いものなんか何もない。わたしはどんなものを踏み台にしてものし上がってやる」

 

 戸惑うばかりの御主人様を、力いっぱい睨みつけるクラスメートの女の子、その表情に滾っているのは、世の中に対する底無しの憎悪。

 

「ひっ……!?」

 

 そんなものをぶつけられて縮こまってしまった御主人様を、クラスメートの女の子は腹の底からバカにして笑った。

 

「そう、そうよ、その顔よ! わたしが見たかったのはその顔! あんたのそのお人形さんみたいな顔が震え上がった、みじめなその顔! 最高だわ!」

 

 あははは、ハハハハハハ……!

 そうやって勝ち誇るように高笑いしながら、クラスメートの女の子は他の友達と一緒に学校を去っていった。あとには、ただ御主人様だけが呆然と残された。

 

 

 ちなみにこれは後日談だけれど、このクラスメートの女の子は寄宿学校を卒業したあと、大学の教育学部に入った。そしてさらに数年後、苦学の末に児童福祉に携わる立派な先生になって、なんと本まで出したらしい。

 彼女が書いた本のタイトルは『希望の種、努力の花』。『怪獣黙示録』のこの御時世において、売り上げ数万部のベストセラー。私は中身を見るのもイヤだけれど、書評のレビューを見るかぎりその内容は『このとおり、苛酷な怪獣黙示録の時代でも、親がいなくても、一生懸命に頑張れば立派な先生になれる。だから孤児の皆、寂しくても一生懸命に頑張ろうネ!!』……なーんて、明るい希望を謳って励ます内容であるらしい。

 

 ふざけるな。

 

 御主人様の信頼を裏切り、その心をぐちゃぐちゃに踏み躙ったあの女を、私は決して許しはしない。たとえ優しい御主人様が許したとしても、私は絶対に許さない。

 だから私は、あの女とそっくり同じことをしてやることにした。このとき、御主人様が私をバージョンアップして、ポケットに入る小型携帯端末として持ち歩いてくれていたのは幸いした。だからわたしは、あの女があのとき御主人様に投げつけたサイテーな言葉の数々を一言一句録音することだって出来たのだ。

 

「可哀想な孤児のあんたと付き合ってたのは、推薦入試のための内申点が欲しかったからよ……」

「あんたみたいなのは『孤児』なんて言わないのよ……」

「わたしはどんなものを踏み台にしてものし上がってやる……」

「バカ犬」

 

 そうやって記録したデータをベースにわたしはデジタル加工し、あの女のリアルと紐づけることが出来る形でネットの片隅に置いておくことにした。投稿した先はこの当時盛り上がり始めたばかりの、世界中の誰もが観られる動画投稿サイトだ。

 これだけははっきりさせておきたいのだが、正義の告発をするつもりなどは無いし、すぐにどうこうなることも期待していない。あの女が心の底から反省し、悔い改め、涙を流しながら地に這い蹲って御主人様へ赦しを乞うかどうかさえどうでもいい。

 実際、そんな劇的な展開になどなりやしないだろう。なぜなら今あの動画投稿サイトは若者のあいだで大ブーム、世界中の目立ちたがり屋さんたちによって朝から晩まで膨大な量の動画が投げ込まれている。私の投稿したささやかな録音動画もきっとその中へ埋没し、すぐに忘れ去られてゆくはずだ。

 だけど、それでいい。

 あの女は巷で言われるところの『一生懸命に頑張る立派な努力家』だから、これからもきっと栄光の階段を一歩一歩着実に昇ってゆくだろう。つまりあの女の人生の絶頂期はまだまだこれから、血の滲むような努力を一生懸命に頑張りながら、あの女は頂点を目指して邁進してゆくはずだ。

 そしてその絶頂へと登り詰めたまさに最高の瞬間、あの女を妬んで引き摺り降ろしたいと願う親切な誰かさんが、きっと私の動画を見つけ出して明るい陽の下に曝け出し、最高の形で“ネタバラシ”してくれる。彼女が世間に出ようとする度、御自慢の『頑張り』が報われようとする度、そうなったときに私が刻んだデジタル・タトゥーは鮮やかな花を咲かせてくれるはずだ。

 ざまぁみろ。

 御自慢の『血の滲むような努力』で築き上げてきた輝かしい人生が、根元から呆気なく崩れ落ちてしまう絶望。人生最高の絶頂から最悪の破滅へ堕ちてゆくその落差、かつて御主人様が味わったそれをあの女は何度も、何度も、何度でも噛み締めて味わうことになる。そのときあの女がどれだけ()()()()()()()()()か、さぞや見ものだろうな。

 

 

 

 

 さて、寄宿学校を卒業した御主人様は他人が怖くなり、ますます人との関わりを避け、家に閉じ籠るようになった。

 だけど、かといって心の底ではとても寂しがり屋の御主人様には、完全に他人との繋がりを断ち切ることなんて出来やしなかった。自ら他人との関わりを拒んでおきながら、それでも他人との関わりに飢えていた御主人様は、今度は違った形で世の中と繋がろうとした。

 次に御主人様が向かっていったのは、インターネットの世界。

 

Info:ユーザー“KILAAK”が入室しました。

 

 インターネットの世界なら、見た目が問題になることもないし、匿名でリアルから切り離されているからこそかえって皆正直で嘘がない。それがインターネットの素晴らしいところだ。

 また、リアルと違って相手と顔を合わせなくて良いのも、他人と目線を合わせながら話すのが苦手だった御主人様にとっては好都合だった。インターネットの世界なら、リアルのようにパニクった勢いで口から出任せに喋らなくても、考えたことをきちんと冷静に整理し、吟味してから伝えることが出来る。

 インターネットの世界で仲間を求めた御主人様は、当時流行りだったBBS:匿名電子掲示板とP2P通信を使ったチャットのコミュニティへと辿り着き、その界隈だけで通じる自分だけの名前を名乗った。固定ハンドルネーム、いわゆるコテハンという奴だ。当時御主人様は、好きだった特撮映画に出てきた悪役の宇宙人の名前をもじって「KILAAK(キラアク)」というハンドルネームを使っていた。

 

KILAAK:ノシ

Arikawa:ノシ

Kamimushi:ノシ

Serizawa:ちゃおっす

Yoda:KILAAK氏、オーバリーの最新作みた?

KILAAK:まだ観れてない。円盤待ち~

Yoda:そっか、KILAAK氏の地元、映画館ないんだっけ?……

 

 幼い頃からコンピュータの世界に精通していた御主人様だけれど、それまでの付き合いは飽くまでも情報収集のためだったり、技術的な知識を共有するための場としか捉えていなかった。

 だけど、今の御主人様は違った。今回は単に情報交換するだけじゃない、本当に仲良くなれる友達を探しに行くのだ。そんなつもりで御主人様は、インターネット掲示板の世界へと取り組んだ。

 そんなある日のこと、御主人様にある報せが舞い込んだ。

 

「オフ会……?」

 

 それは、首都圏の名画座で行なわれる映画の上映会だった。御主人様もお気に入りのエガートン=オーバリーの特撮映画シリーズ、その傑作選を流すのだという。

 その噂を聞き付けたコテハン仲間の誰かが、電子掲示板にスレッドを立てて有志を募った。オンラインではなくオフラインで遊ぶ集まり、オフ会の開催だ。そしてその会に、界隈で有名なコテハンになりつつあった御主人様も呼ばれた。

 

「どうしよう……」

 

 御主人様は迷った。リアルは怖い、けれど今度はネットの友達が相手だ。それにインターネットで散々自分の心の内を明かして親しくなった間柄、気心はとうに知れている。

 けれどリアルはやっぱり怖い。インターネットにまつわるトラブルだって世の中にはいっぱいある。そういうものに巻き込まれたとき、コミュ障の自分はどうしたらいい? ……そんなふうに、御主人様はいつもそうするように一生懸命に悩んでいた。

 そして散々、迷いに迷って迷いまくった末に御主人様は、

 

「……行こう」

 

 と、決めた。いくらリアルが怖くても、やっぱり人恋しさには敵わなかったらしい。

 怪獣映画の上映会にかこつけた、インターネットのオフ会。世間から見ればただの変なオタクの集まりでしかなかったかもしれないけれど、御主人様にとってはシンデレラの舞踏会よりも大切なイベントだ。

 一世一代の決心を決めた御主人様は、オフ会に向けて精一杯にめかしこんだ。といっても御洒落の知識はインターネット検索で得た付け焼刃、悩みに悩んだ末、御主人様は漫画を参考にして通販で買い集めた動きやすい服を着ることにしたようだった。

 

「これで、行くか……」

 

 上はゆったりとしたグレーのネルシャツに薄手のカーディガン、ズボンはこれまたゆるめの黒いジーンズ。頭にはベレーを目深にかぶり、靴は動きやすいスニーカー……色合いは控えめのモノトーンで装飾も少ない、地味でゆるふわな服装だったけれど、それがオシャレ初心者の御主人様にとって精一杯のおめかしだった。

 

「……よしっ、頑張るぞぅっ」

 

 けれど、それでも充分に御主人様は可愛くて、素敵で、魅力的だった。私に言わせれば、私の御主人様はいつだって誰よりも素晴らしいのだ。

 

「行こう、Li11-E」

 

 ええ、御主人様。今度こそ、本当の友達が出来ると良いね。そう伝えたくて、私は小さく電子音を鳴らした。

 

 

 

 

 結論から言おう。

 御主人様の人生における史上初のオフ会参加は、御主人様の人生における史上最大の失敗として終わった。

 ……まあ、少し考えればすぐにわかることだ。このときのことについては私も『行く前に気づいて止めてあげればよかった』と後悔して止まないのだけれど、もう後の祭りだった。

 いつものとおりスマホと携帯端末に私をインストールし、御主人様はオフ会の集合場所へ時間ぴったりに到着した。

 

「……誰か来るかな」

 

 周囲の人目をなるたけ避けつつ、緊張した面持ちで待っている御主人様。ああ、小動物みたいで可愛い……もとい可哀想な御主人様。そんなびくびくしなくたって、誰も御主人様のことを獲って喰ったりはしないのに。

 そんな全方位への警戒を怠らなかった御主人様だったが、不意に声を掛けられた。

 

「あれ? あなたは……?」

「ひゃ、ひゃぃっ!?」

 

 集合場所で挙動不審気味に振舞っていた御主人様にそうやって声をかけてくれたのは、ひとりのオタク風な男性。彼は御主人様の風体をしばらく見たあと、慎重に様子を窺うようにこう訊ねた。

 

「……ひょっとして、KILAAKさんですか?」

 

 彼はオフ会の参加者だった。御主人様はすぐさま返事をする。

 

「は、はいっ、そうですぅ……っ!」

 

 御主人様は緊張のあまり思いがけず、裏返った声で返事をしてしまった。声をかけてくれたオフ会参加者は、そんな御主人様のリアルの姿を見てびっくりしていた。

 

「へー、KILAAKさん、女の子だったんだ……」

「は、はい、ボク……あ、いや、あの、わたし、そのっ……!」

 

 御主人様にとってはあまりに久しぶり過ぎる、まともな対人会話。きっといつもみたいに脳内でシミュレーションは散々したんだろうけれど、実際の御主人様はまともな会話なんてまったく出来やしなかった。

 そうこうしているうちに、集合場所でたむろしていたオフ会参加者が続々集まってきた。

 

「え、なになに、誰か来たの?」

「KILAAK氏!? KILAAK氏が来てるって!?」

「KILAAKさん、おにゃのこ!? おにゃのこなのん!?」

 

 口々に詰め寄るオフ会参加者たちに、御主人様はたじたじになっていた。そんな御主人様に、オフ会参加者たちは興味津々で迫ってゆく。

 

「かわいいね、KILAAK氏!」

「連絡先おしえて!」

「コポォwww」

「ねえ、今度遊びに行かない……?」

 

 日頃から親しくチャットしていた相手はもちろん、それまでは掲示板で軽いやりとりしかしてなかったような相手、むしろ日頃から熾烈なオタク談義を交わしていた論敵まで、このときは目の色を変えていた。

 ……ここまで言われてもピンとこない? それならちょっとだけ立ち止まって考えてみるといい、私の御主人様がどういう人だったか。

 

 インドアなオタク趣味に理解があって。

 出しゃばり過ぎず、大人しい性格で。

 その素顔は、とてつもない美少女のボクっ娘。

 

 そんな御主人様を、異性とは無縁そうなオタク野郎どもであるオフ会参加者たちが捨て置くはずなど無かったのである。

 ……あるいは御主人様だって、本当は薄々わかっていたのかもしれない。あるいは『ここでならお姫様みたいに、ちょっとはチヤホヤしてもらえるかもしれない』なんて、ちょっと小狡い下心だって無かったとは言い切れない。それくらいの承認欲求は、日頃控えめな御主人様にだってちゃんとあったのだ。

 

 上映会が終わり、オフ会はかねてから予約が取ってあった居酒屋での飲み会に移行した。

 オフ会の話題は上映会の内容なんてそっちのけ、『界隈の名物論客コテハンKILAAK、その正体は超がつく美少女だった』、つまり御主人様のことでもちきりだった。

 

「KILAAKちゃん、メアド教えて~!」

「今度一緒にサシでオフやろうよ! オタクな話しよ~?」

「フォヌコポオ、作品解釈を語り合おうでござる~!」

「KILAAKちゃん、こっちにも来てよ~!」

 

 口々に迫ってくるオフ会参加者のオタク仲間たちに、御主人様はたじたじになっていた。

 

「あ、あうぅっ……えと、その……」

 

 せっかく本当の友達が手に入るかもしれない大チャンス、もはやコミュ障なんて言っていられない、なんとか応えなければ。コミュ障ながら根は人の好い御主人様は懸命にそう考えていたようだったのだけれど、そこはやっぱりコミュ障で、思うように上手い言葉が出てこない。

 その挙句、御主人様が取った選択は。

 

「あ、あのっ!」

 

 唐突に張り上げられた御主人様の大声で、にぎやかな会場は一瞬にして静まった。普段喋り慣れていない御主人様は声量の調整さえもヘタクソで、御主人様自身が思っていた以上に大きな声が出てしまっていた。

 そして一斉に御主人様へ向けられてしまう、オフ会参加者たちからの注目の視線。ついさっき大声を出してしまった御主人様は、今度は蚊の鳴くような弱々しい声でぽつりと言った。

 

「おっ、お手洗い、行ってきま……」

 

 そして即座に席を立ち、トイレへ駆け込む御主人様。体勢を立て直すための戦略的転進、つまり逃げてしまったのだった。

 

「……ふう」

 

 ひとりお手洗いを済ませ、洗面台で手と顔を洗い、深く息を吸って気持ちを落ち着かせる御主人様。

 ……これまでの人生で向けられたことがないくらいの、沢山の人たちからの好意だった。それらを前に、御主人様はどうしたらいいかわからなくなってしまった。

 たしかに、学生時代の頃にだって言い寄ってくる男の子は沢山いた。けれど、それらは最初だけのことで、手に入らないとわかればむしろ素っ気ないものだった。しかも当時言い寄ってきた男の子たちは皆、御主人様の可愛い容姿に惹かれていただけで、その人柄なんてちっともわかってくれてなどいなかった。

 

 だけど今回は違う。今オフ会に参加している人たちは、御主人様が何が好きでどんな人か、ちゃんとわかった上で好意を向けてくれている。御主人様だってそうだ、今回は友達を作りたくてやって来ていた。

 そんな状況は、御主人様の人生において生まれて初めてだった。そんな中で、御主人様がぽつりと独り言をつぶやいた。

 

「……自信、持っていいいのかな」

 

 ……いいんだよ、御主人様。

 きっとね、御主人様が怖がりすぎなんだよ。御主人様が誰かをわざわざ傷つけてやろうとなんかしないのと同じで、世の中そんなに御主人様を傷つけてやろうとするような酷い人たちばかりじゃないはずだ。

 そう教えてあげたくても、私にはそれを伝える術がなかった。いったいどうしたら御主人様にわかってもらえるのだろう、御主人様は本当はとっても可愛くてとっても魅力的な人なんだってことを。

 

「……いいんだよね、Li11-E。ボク、友達、作っても良いんだよね?」

 

 そうだよ、御主人様! そもそも私なんかに確認取らなくたっていいんだ! 御主人様は自分のしたいことを、自由にして良いんだよ!

 そう伝えたくて、私が電子音で答えると、御主人様はしっかり顔を上げながら微笑んだ。

 

「ありがとね、Li11-E」

 

 意を決した様子で会場へ戻ってゆく御主人様。その表情はちょっと自信ありげで、前向きで、明るい希望と期待に満ち溢れたものだった。

 

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎた。

 気がつけば、オフ会が始まってからもう二時間が経っていた。居酒屋飲み放題のラストオーダーも迎えてから30分、オフ会の幹事が席を立ち、声を上げた。

 

「えー、宴もたけなわですがそろそろ時間なので、ここでいったんお開き、ということで……」

 

 幹事のその言葉を聞いて、参加者たちも口々に立ち上がる。

 

「そろそろお開きかー」

「二次会どうする?」

「カラオケ行こうよカラオケ~」

 

 オフ会の参加者たちがばらばらと席を立ち、幹事が参加費を徴収していって、オフ会は解散となる。

 そこから後はそのまま解散、各々で好きなように過ごすことにしたようだった。各自仲良しの人たちと二次会へ行こうとする人、徹夜で特撮ソング縛りのカラオケ大会をやろうと言い出す人、そのままマイペースに帰る人。

 そんな中で御主人様はというと。

 

「そろ~り、そろ~り……」

 

 解散ムードに乗じて人目を避け、こっそり誰にも何も言わずフェードアウトしようとしていた。

 申し訳、言い訳が立つ程度の小声で挨拶をする御主人様。

 

お先に失礼しまーす……

 

 ……さっきまでの前向きな明るい希望はどうしたの。

 どうやら御主人様、オフ会でずっと話題の中心に据えられすぎて却って怖気づいてしまったらしい。ああ、勿体ない、せっかく友達が創れる機会だったのに。百歩譲って今日は帰るにしても、せめて挨拶くらいはちゃんとしなきゃダメじゃないの。

 そう思った私は、御主人様のポケットの中で甲高い電子音を鳴らしてあげた。いや、別に意地悪がしたいわけじゃない。すべては御主人様のため、私は心を鬼にするのである。

 

 ――Prrrrr!

「ひぅ!?」

 

 ……決して、『こんなふうにキョドった御主人様が可愛くて仕方ないから』なんて不純でヨコシマな動機ではないのである。断じて。

 まあそんなことはさておき、唐突に鳴ったアラーム音で、オフ会参加者たちは一斉に御主人様の方へと振り返った。

 

「あれ、KILAAKさん、もう帰るの?」

 

 気づかわしげに声をかけてくれた幹事の人を筆頭とする、周りから向けられている『もっと遊ぼうよ』という目線。それに気づいた御主人様は、オフ会参加者たちからの注目に焦りながら答えた。

 

「あ、あのっ……も、もうこんな時間だし……か、帰らなきゃ、家でっ、家族が心配するので……っ!」

 

 嘘おっしゃい。家に帰ったって家族なんていない、独りでアニメ観るだけのくせに。まあ私からは言えないし、言えたところで言わないけれど。

 そんな御主人様の臆病で気弱な嘘に対し、オフ会参加者たちは、口々に残念そうにしていた。

 

「そっか~……まあいいや。また来てね!」

 

 幹事の人の声かけに、他の参加者も同調する。

 

「楽しかったよ、KILAAK氏~」

「デュフフ、また会おうでござる~♪」

「今度またチャットで上映会やろうね!」

 

 あ、ええ、は、はい、また……。

 和やかに見送ってくれるオフ会参加者たちに、御主人様もささやかに手を振りながら会釈して、足早にその場から去ってゆく。私はというと、そんな御主人様の相変わらずなチキンっぷりに呆れつつも今後のことを考えていた。

 ……御主人様は根っからのコミュ障、昔から人付き合いが苦手なタイプだ。今回のように他人と一緒の時間を過ごす、ましてや注目の(まと)に晒されて疲れてしまったのだろう。友達作りの最初の第一歩としてはまずまず、よくやった、頑張った方だ。今回はここまでにして、次回以降の奮起に期待しておこう。

 帰り道、御主人様はひとり呟いた。

 

「オフ会、たのしかったな……」

 

 そう、それはよかった。また行こうね、御主人様。そんな風に、御主人様の成長を気長に捉え直したときのことだった。

 ……あれはたしか、オフ会会場からも離れ、ちょっと人目に付きにくい駅までの近道を歩いていたときだったと思う。

 

「ちょ、ちょっと、KILAAKさん!!」

「……え?」

 

 後ろから呼ばれた御主人様、振り返ったその先にいたのはオフ会参加者の一人、男の人だった。

 いかにも冴えない普通のオタク青年、といった風体の彼は、目線さえも合わせられない挙動不審な様子で御主人様に話しかけてきた。

 

「き、奇遇だね! 帰り道いっしょなんだね! 家、近いの?」

 

 ……別に近くはない。御主人様は単に駅への近道を歩いているだけである。この男、まさかここまで()けてきたのでは?

 私が内心で訝しむ一方、コミュ障の御主人様は例によって泡を喰った様子で、つい口から出るに任せて言わなくていいことを喋ってしまった。

 

「あ、えっと、ボク、いや、わたし、シンイケブクロ線なんで……」

 

 よせばいいのに御主人様、馬鹿正直にうっかり自分がこれから乗る路線を教えてしまった。それを聞いた男は、これまたわざとらしく声を上げた。

 

「あ、へえ! これまた奇遇だね! ぼくもシンイケブクロ線なんだ! ねえ、一緒に帰らない? ちょっと一緒にお話しようよ」

 

 ……なんだこの男、キョドいと思ったら急に馴れ馴れしいな。私が警戒する一方で、人の好い御主人様はこれまたコミュ障ゆえの押しの弱さで、「は、はい、いいですよ……」なんて答えてしまったのだった。

 それからの時間、御主人様はひたすら可哀想だった。

 

「でね、あのシーンはきっとね、こういうことだと思うんだよね!……」

「はあ。ええ。そ、そう、かもしれませんね……」

 

 移動する電車の中、自分の喋りたいことだけを一方的に喋り続ける男と、ひたすら聞き役に回るしかない御主人様。しかも男の方がこれまた人目も憚らずに大声で話をするものだから、御主人様まで周りから胡乱な目で見られてしまった。

 うるせえ早く終われオタク野郎、とっとと降りろ。そう内心で毒づく私は御主人様と一緒に、男のくだらないオタク自慢話を聞き流していた。

 

 

 男は結局、御主人様と同じ駅で降りてきた。

 降りる駅まで一緒、自宅も近いって? そんなわけはない。この男はいったい、どこまでついてくるつもりなのだろう。駅を降りた帰り道までも、御主人様はずっと可哀想なままだった。

 

「でね、ぼくはね、最近さ……」

「は、はあ。なるほどですね……」

 

 駅前の通りを歩きながら、延々と大声で喋り続けるオタク男と、それをひたすら相槌を打ちながら聞き流す御主人様。

 御主人様も御主人様だ。いい加減突っぱねればいいのに、そこもやっぱりコミュ障の悲しさ、イヤなものをイヤと言うことがなかなか出来ない。男はそんな御主人様の反応を良いことに、どうでもいい話をペラペラペラペラ鬱陶しく喋り続けている。

 ……私はうっすらわかっていた。この男が好きなのは『自分の好きなものを受け容れてくれる、自分の話したいことをひたすらちゃんと聞いてくれる、控えめな性格のオタク美少女』という、『都合の良い属性』だけだ。御主人様自身を見てくれているわけじゃない。これが証拠に、御主人様がこんなに明らかに嫌がっているのに、男は自分のことばっかりでちっとも御主人様の方を見ようとしないじゃないか。

 

「KILAAKさんの家って、もう近く? またもや奇遇だね、ぼくも家が近いんだ!……」

「は、はあ、そ、そうなんですか……」

 

 たしかに男の言うとおり御主人様の家まであともう少し、このままだと本当に自宅までついてきてしまうのではないか。この異常な状況には流石の御主人様も耐えかねたようで、一方的にしゃべり続ける男に対してようやく声を上げた。

 

「あ、あのっ!」

 

 それは蚊の鳴くようなか弱い声。けれど御主人様はなんとか勇気を振り絞り、オタク男に向かってはっきり言った。

 

「も、もう、ここまでで大丈夫です……っ」

 

 だからついてこないで、そのまま帰ってください。そう言外にそう告げた御主人様に対し、男はわざとらしく肩を落として見せた。

 

「あ、そう? せっかく仲良くなれたと思ったのに……」

 

 いやいやいや、おまえが一方的にしゃべくっていただけでしょう、何勘違いしてんだコイツは。男の思い上がった態度に私がイラつく一方、当の御主人様は相変わらずお人好しで、自分が悪いわけでもないのに卑屈にペコペコ謝るのだった。

 

「……ほ、本当に申し訳ないです……ボク、いや、わたし、家に帰って録画したアニメ消化しなきゃいけないので……『ガルパン』とか『進撃』とか……」

 

 御主人様がそう答えた途端、男はすかさず食いついてきた。

 

「あ、そうなんだ! じゃあ一緒に観ようよ! ほら、ちょうどオーバリーのDVDも持ってきてるし! フランケンシュタイン怪獣の対決を撮った記録映画『ザ・ウォー・オブ・ザ・ガルガンチュアズ』! これは『進撃』にも影響与えたって言われててね……」

 

 ちょっと待ってね、と背負っていたリュックを下ろし、ゴソゴソと散らかった中身を漁り始める男。本当にこの場でDVD出すつもりなのだろうか。っていうか、DVD持ち歩いてるのかよ。オタク怖えな。

 とにもかくにも男が会話を辞めた一瞬のスキ、この大チャンスを御主人様は見逃さなかった。

 

「あ、え、その……ごめんなさいっ!」

 

 そう言うが早いかすぐさま踵を返し、御主人様は全力ダッシュで逃げ出そうとする。流石は対人コミュニケーションから逃げ続けること十数年の御主人様、逃げ出すときだけはいつものとおりやたらと機敏な動きである。あと、スニーカーを履いてきて良かった。もし無理に背伸びしてヒールなんか履いてたら、こういう時に足を捻ってしまっただろうし。

 

「あっ、ねえ、待ってよ! 一緒に観ようよ! なんで逃げるの!? おい、おい、オイッ!!」

 

 御主人様からここまであからさまに拒絶されたというのに、男は執拗に御主人様のことを追いかけてきた。

 御主人様も男から一生懸命に逃げる。路地裏のビル街。逃げ場の少ない路地から、右に、左に、惑い逃げて。追われる恐怖に御主人様の目には涙が浮かび、すっかり潤みきってしまっていた。

 

「はあ、はあ、はあ、待ってよ、KILAAKさん! 一緒に観ようよ! せっかく友達になれそうだって、思ったのにさ!!」

 

 ……男はなおも諦めず御主人様の後を追う。どうしてそこまでして御主人様にこだわるのか。そんなに都合のいい『彼女』が欲しいのだろうか。それに付き合わされる側はたまったものではないけれど。

 そんな追走劇を繰り返しているうちに、とうとう男は御主人様の家にまでついてきてしまった。間一髪、御主人様は玄関へと転がり込み、男の目と鼻の先で扉を閉めてガチャリと鍵をかけた。

 

「はあ、はあ、はあ……」

 

 全身汗だくで息を切らし、呼吸を整えようとする御主人様。家の中なら安心だ、流石に追ってはこないだろう……そう思った矢先のことだった。

 

 ――ドンドンッ!!

「ひあっ!?」

 

 御主人様が悲鳴を上げて竦み上がる。玄関先、ドアを一枚隔てたすぐ向こうには、まだ男の気配がある。御主人様を追ってきた男は、諦めるどころかむしろこの扉を蹴破ろうとしている様子だった。

 こ、こいつ、まさか家に無理やり上がり込む気か……っ!?

 

「はあ、はあ、KILAAKさん! なんで逃げるの? なんで鍵なんかかけるの!? 一緒に映画観ようよ!!」

「ひ、ひいぃっ……!?」

 

 ドンドンッ、と扉を激しく叩く音と男の怒声が聞こえる。怖い、怖い、そう怯える御主人様はもう恐怖のあまり動けない。

 ……こうなったらもう、私が出るしかない。助けなきゃ、御主人様を。

 私は、御主人様のスマートフォンのアプリと連携して電話をかけた。さらにスピーカーへと切り替え、大音量で通話内容を流す。

 

〈はい、こちら110番です。どうしましたか、事件ですか、事故ですか……?〉

 

 かけた先は110番通報、警察だ。たとえ御主人様からちゃんと説明できなくても、この状況が聞こえていればきっと警察が来てなんとかしてくれる。

 さらにダメ押しだ。私は即興で合成した音声を流した。

 

〈――――――――――――ッッ!!!!〉

 

 防犯ブザーよりもけたたましい、電子音の叫び。電話越しなら、きっと悲鳴に聞こえただろう。

 

「あ、やべっ……!」

 

 御主人様によって、というか私だけれど、とにかく警察へ通報されたのを理解した男はすぐさまドアから離れて逃げ出した。

 けれど、御主人様はそれでも安堵できなかった。つぶらな目には大粒の涙を浮かべ、胸の中では小さな心臓の鼓動が破裂しそうなほどに早鐘を打っている。

 

「はあ……っ、はあ……っ……」

 

 警察が来たのはそれから5分後。それまでのあいだずっと、御主人様は心の底から震え上がっていたのだった。

 

 

 

 

 このとき、男は捕まらなかった。

 

 あるいは今頃は、別の場所で似たようなことを仕出かして警察沙汰にでもなっているかもしれない。けれど私たちからすれば本名もわからない相手だし、顔もよく見ていなかったので男のその後は結局わからず終いだった。

 まあ、あんなやつのことはどうでもいい。問題は御主人様だ。

 

「…………っ」

 

 あの夜からというもの、御主人様はあの夜から窓もカーテンも開けず、家中に鍵をかけ、些細な物音にさえ怯えながら部屋の隅で縮こまって過ごしていた。

 ……御主人様が夢見ていたインターネットの友達。それは行く前に御主人様が期待していたような『本当に好きなものでつながった、気心の知れた同好の士』なんてものじゃあなかった。

 匿名でリアルから切り離されているからこそかえって皆正直で嘘がない、それがインターネットの素晴らしいところ。けれど、ひとたびリアルに結びついてしまえば、そこはもう既にインターネットの世界なんかじゃなくてリアルの延長線上でしかない。そんな真実を、御主人様はひしひしと思い知らされてしまった。

 さらにリアルから切り離されているからこそ、皆、欲望にも正直だ。オタクに都合が良い妄想を具現化したかのような御主人様を、いい歳こいて思春期リビドーを拗らせまくってるようなインターネット世界のオタク野郎どもが捨て置くはずなどなかった。インターネットの世界にぶちまけられているような剥き出しの欲望が、リアルの自身へと結びついてしまう恐怖。

 

「怖い、怖い、怖い……」

 

 インターネットの世界では立派な論客の名物コテハンでも、リアルでは人一倍に繊細でか弱い人間でしかない御主人様は、そんなものには到底耐えられなかった。

 

「こわいよ、Li11-E……」

 

 それから数日、御主人様は部屋の隅でずっと震えて泣いていた。




タイトルは『雨に唄えば』の原語版タイトル『Singin' in the Rain』から。

好きなゴジラ映画のヒロイン

  • 山根 恵美子
  • 小美人(昭和)
  • 星 由里子さんが演じてた記者の人
  • 真船 桂
  • 三枝 未希
  • 小美人(コスモス)
  • 小美人(エリアス)
  • ベルベラ
  • 辻森 桐子
  • 立花 由利
  • 家城 茜
  • カヨコ=アン・パタースン
  • 尾頭ヒロミ
  • マディソン=ラッセル
  • ジア
  • タニ=ユウコ
  • ミアナ
  • マイナ
  • 神野 銘
  • 小美人(ちびゴジラ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。