気づいたらメカゴジラ転生して20年経ってた 作:よよよーよ・だーだだ
転生前の記憶は曖昧で、正直あんまり覚えていない。
記憶の
それが何の因果でロボット怪獣、それもメカゴジラなんかに転生したのかはよくわからない。悩んでもわからないので、ぼくは前世の自分についてはあまり考えないようにしている。
そんなぼくは、ときどき前世の夢を見た。
ぼくの電子頭脳に生体パーツ由来のDNAコンピュータを使っていることに理由があるのか、あるいは転生者のいわゆる“転生特典”みたいなものなのか。いかなる理屈によるものかはよくわからないけれど、ぼくは転生する前の夢を見ることがあった。
一番よく鮮明に思い出せる夢、それはぼくの人生最期の記憶。ぼくが怪獣に踏み潰されるときのことだ。
その“怪獣”がぼくの住む街を襲ったのは、遠い遠い昔のことだ。その夜、更けた暗闇の街に大砲のような轟音が響いていた。
――どぉーん……どぉーん……どぉーん……。
大砲ではない。次第にその轟音はぼくらへと近づいてきて、やがて建物の陰から巨大な“影”がぬらりと姿を現した。
……身長50メートル、体重2万トン。黒い巨体に強靭で逞しい手足、背中には三列並んだぎざぎざの背鰭、そして身の丈よりも遥かに長い尻尾が大蛇のようにくねくねとのたうっている。
地上を見下ろすその恐ろしげな形相を前にして、人間たちは悲鳴を上げた。
「ご、ゴジラだ……っ!」
水爆大怪獣にして恐るべきキングオブモンスター、ゴジラ。『怪獣黙示録』のこの時代、世界各地を襲った大怪獣ゴジラがとうとうぼくの住む街へとやってきたのだ。
ゴジラの歩みに伴って車両が横転し、街灯が倒れ、火災が広がる。ゴジラの巨大な足が地面を踏み潰し、建物の残骸を蹴散らしながら進軍を続けてゆく。地獄の門でも開いたかのように轟き渡る、ゴジラの恐ろしい破壊と咆哮。
人間の街は大混乱に包まれ、猛火の火柱が立ちのぼった。怪獣ゴジラはこれまたバカげた長さの尻尾を思い切り振り回し、周囲の建物を一気に薙ぎ払ってゆく。
――……バァーンッ!!
これまで長らく築き上げられてきた人間の営み、だけどそんなものはゴジラの強大な暴力に比べればちっぽけなもので、その圧倒的な存在感に押し潰されてしまうかのようだ。
唐突に現れた破壊の王の襲来に、人々は恐怖に包まれながらそれでも懸命に抗おうとした。
「芝浦地区の火災は、ますます火勢猛烈を極め、消火の見込みナシ……」
「信じられません、まったく信じられません! いまやゴジラの通過した辺りは火の海と化し、見渡せば一帯は火の海です……!」
「全員地下室に退避せよ、全員地下室に退避せよ……!」
けれど、人々の抵抗は無意味だった。
戦車隊や戦闘機隊による決死の攻撃も、知恵と工夫を凝らした防衛作戦も、ゴジラの超絶的な暴力の前ではただひたすらに無力だった。懸命に築き上げたビル群も鉄道も街並みもゴジラに呆気なく捻り潰され、人々は命からがら逃げるか、でなければ絶望の虜になるしかなかった。
「いよいよ最後、さようなら皆さん、さようなら……!」
「もう、おとうちゃまの傍に行くのよ……もうすぐ、もうすぐ……おとうちゃまのところに行くのよ……!」
「おかあちゃーん、おかあちゃーん……!」
そんな人間たちの有り様を見下ろすゴジラの眼光は冷酷そのものであり、まるですべての人間を軽蔑、でなければ憎悪しているかのようだった。人間の文明を前に威嚇的に佇む姿、それはまさに破滅と破壊の象徴であり、人々の心に深い恐怖を植え付けてゆく。
人々は生き延びようと懸命に努力したけれど、ゴジラの圧倒的な猛威に対してはあまりに無力だった。辺りは炎に取り巻かれて逃げ出す先もなく、多くの人々がその巨体に踏み潰され、あるいは崩れた建物の瓦礫に埋もれていった。
ゴジラの雄叫びが、轟く。
「――――――――――――――ッ!!!!」
ゴジラの破壊はたった一晩のことだったけれど、それでも容赦なく無差別だった。
ゴジラが通り過ぎたあと、廃墟と化してしまった街並み。猛火と黒煙が上がり、崩れた建物の残骸が各所に散乱してゆく。かつてこの国でも有数の華やかな繁華街だったはずが、今や絶望と破壊の光景に成り果ててしまった。
――どーん……どーん……どーん……。
そんな瓦礫の山と化した街を尻目に、悠々と海へ帰ってゆくゴジラ。その後ろ姿をひたすら見送りながら、生き残った街の人たちは悔しげに唸った。
「ちきしょう、ちきしょう……ちきしょう、ちっきしょう……ッ!!」
「ちきしょー、どうしたらやっつけられるんだ! ちきしょー!」
そしてぼくは、そんな街の人たちの一人だった。その恐ろしい災厄でぼくは命を奪われ、何の因果かふと気がついたらメカゴジラに転生していた、というわけである。
『気づいたら××だった』系の転生、いったいどういう状況なのよソレと常々思うのだけれど、いざ自分の身に降りかかってみると“そう”としか言いようが無いから困るよね。転生の神だかなんだか、もしそういう存在がいるというのならもうちょっと親切なチュートリアルを用意して欲しいよ。いきなりメカゴジラに転生してたら、誰だってビックリするじゃんか。
……という塩梅で遠い前世をぼんやり回想していたら、ぼくのいる整備ドックがにわかに慌ただしくなってきた。
まず機龍整備隊のメンバーたちがやってきて、その中でハードウェア班リーダーを務める最古参のチュウジョウくんが、部下の整備士たちにどんどん指示を下し始める。
「おいタドコロ、予備のパーツ、こっちまで運んでこい!」
「はい、了解しました!」
「モチヅキは、ここの配線チェック!」
「了解!」
「さあ急げ、だけど手を抜くなっ! おれたちが手を抜けば人が死ぬんだからなっ! ……おい、チバ! そんな甘い締め方してるとバルカン砲が笑うぞ、締め直せっ!」
「は、はいっ!」
所狭しと駆けずり回る整備士たちと、テキパキ働くパワーローダー。彼らは前線で戦う軍人ではないけれど、その統率された動きはまさに整備ドックを戦場にする勇敢な戦士たちだった。
他方、コンピュータルームでは、電子頭脳調整担当のノジマさんを筆頭にシステムエンジニアのソフトウェア班がぼくの制御系最終チェックを進めていた。巨大な画面には膨大なデータ群が流れて行き、メカゴジラの動作を制御するコンピュータシステム系統を監視している。キーボードと端末を操作する打鍵音が響き、やがてチェッカー担当が声を上げた。
「システム、オールグリーンです。今日の機龍はご機嫌良さそうですよ、班長!」
「よーし、じゃあ始めますかね!」
このにわかにドタバタ忙しくなるこの感じ、きっとぼくの出撃が近いんだろうなと思う。それも怪獣、間違いなく緊急出動だろう。怪獣いるところにGフォース、そしてGフォース機龍隊のあるところにこのぼく:メカゴジラ機龍ありだ。
……さーて、今回はどんな相手かな。周りの人たちが仕事をする中、メカゴジラ機龍であるこのぼくもまた、心の中でウォームアップを始めたのだった。
その日、怪獣が出現したのは建設中の造成地だった。
その怪獣は、どうやら地中を移動しているうちに地表へ姿を現したものらしい。これが都市部のド真ん中でなかったのは幸いだけれど、かといってぐずぐずはしていられない。すぐ近くには人間の街、人口密集地がある、つまり街の人たちが避難できるようになるまで、誰かが時間を稼がなければならない。
すぐさま人間の防衛隊が出動。防衛線を築いて懸命に奮戦しているらしいのだけれど、相手はおそるべき大怪獣、その大進撃は到底止められそうにないらしい。
そこでお呼びがかかったのはこのぼく:メカゴジラ機龍と、その仲間たち機龍隊だ。今回の作戦は街の人の避難までの時間稼ぎ、そして怪獣の撃退ないし殲滅である。
ぼくはさっそく装備を整えてもらって出撃した。機龍隊の支援用航空機:しらさぎ5機にワイヤーで吊るされて空輸されてゆくうちに、やがて目標の姿が見えてくる。
眼下に広がるのは造成地と防衛線。
闊歩しているのは暴龍:アンギラス。
全長は100メートル近く。全身に生やしたスパイクの鎧と、巨体に似合わぬ敏捷な動きが自慢の大怪獣アンギラス。ゴジラと違って放射熱線などの飛び道具を持たないものの、それでも凶暴性においては決して引けを取らない。
周囲では防衛隊のメーサーやミサイル戦車が防衛ラインを展開し、猛烈な集中砲火を浴びせて追い払おうとしているのだけれど、アンギラスは持ち前の頑強さで物ともせずに進攻を続けていた。その進んだ方向には人間たちの街がある、このままだとアンギラスが人間の世界へと踏み込んでしまう。
「現場での避難完了報告、まだです! 完了見込みまで残り10分!」
「アンギラス、防衛ライン突破まであと5分! 防衛ライン、もちませんっ!」
通信担当のアンザイさんと、分析担当のサエジマくん、両者の報告を受けた機龍隊隊長:ヤシロ=ハルカは、しらさぎ1号機の空中作戦指令室で戦局を見下ろしながら思案した。
「このままだと間に合わない……仕方ない、アレをやるしかないか」
そしてハルカは決断した。
「機龍を空中で切り離す。アキバ、キサラギ、行ける?」
隊長であるハルカの確認に、しらさぎのパイロットのキサラギさんと、機龍のオペレータであるアキバくんが威勢よく答える。
「了解っ!」「了解ですっ!」
え、ちょ、ちょっと!? まだ高さが、高さが結構あるんですけどっ!?
当のぼくは内心でパニクったけれど、機龍隊の隊員たちは誰も気に留めない。アキバくんが操縦桿を握り締めながら、声をかけた。
「行くぜ、機龍ッ! 切り離し用意ッ!」
無茶苦茶だなあ、もう!
「3……2……1……降下!」
途端にワイヤーのロックが外され、ぼくの機体が空中へと放り出された。このままだと墜落してスクラップになるところだけれど心配は要らない、アキバくんの巧みな操縦でぼくは全身のバーニアを展開、ジェットブースターを吹かしながら制動。真っ直ぐ駆け降りてゆく先は、街へ向かって猛進し続けているアンギラス。
そしてぼくは、アンギラスへ渾身のタックルを叩き込んだ。
総重量4万トンの巨体による高さ数百メートルからの急降下突進、それをまともに喰らったアンギラスは軽々と吹っ飛ばされて造成地の荒野を転げまわり、最終的には山へと激突して悲鳴を上げた。
ぼくはというと、ホバリングを調整しながらなんとか無事に着地に成功した。まったく無茶するなあ、せっかく替えたばっかりの装甲が凹んじゃったよ。こんなことばっかりやってるから整備係のチュウジョウくんとかに怒られるんだ。まあ、上手くいったから良いけど。
とにもかくにも大地に立ったぼくは、全身の装備を展開した。両腕のレールガン、両肩からはミサイルランチャーとバックパックのミサイルポッド、そして口の中に搭載された2連装メーサー砲。すべての武装をアンギラスに向けながら、ゴジラに似せた合成音声の咆哮を轟かせる。
フル装備にゴジラの威嚇音を放つメカゴジラ、並の怪獣なら怯えて逃げ出すところだ。今回のアンギラスも、どうかこれでビビって逃げてくれたらいいんだけれど。
しかし、ことはそう上手くはいかなかった。
ぼくにブッ飛ばされたアンギラスは、瓦礫の山から這い出して敵であるぼくを認識すると、ぼくに負けじと雄叫びを轟かせた。鼻息荒いその表情は怒りの形相、アンギラスもやる気のようである。
……とはいえ、市街地から気を逸らすことが出来たのは幸いだった。これで街の人間たちが逃げ出せるだけの時間を稼ぐことが出来る。
ぼくを操縦するアキバくんが勇ましく吼える。
「勝負はここからだぜ、アルマジロ野郎っ!」
ああ! さあ、戦いだっ!
ぼくが身構えた、まさにそのときだ。
あの声が聞こえてきたのは。
「機龍が、動かない……っ!?」
わたしたち機龍隊のメカゴジラ:機龍は、いざアンギラスを前にして操縦を受け付けなくなり、その場に立ち竦んでしまっていた。
「どうなってるの、アキバ、サエジマ!?」
わたし:ヤシロ=ハルカの詰問に、オペレータのアキバと分析担当のサエジマは動揺した様子で応える。
「機龍のやつ、うんともすんとも言わねえ! どうなってやがる!?」
「わかりません、不明のシステムエラーですっ! 接続は出来てるはずなのに……!?」
不明のシステムエラー。その言葉で、わたしはかつて起こった最悪の経験が脳裏に過ぎった。
「まさか、“暴走”……!?」
あれはかつて、メカゴジラ機龍が建造途中だった時のこと。富士山麓の工場で建造開発が進められていた機龍が突然、わたしたち人間の制御を離れて勝手に起動したことがあった。
外装はおろか制御系もろくに完成していない状態だったにもかかわらず、目を覚ましたかのように暴れ出そうとしたメカゴジラ機龍。その現場にはわたしも居合わせたけれど、あのときの機龍の姿はまるで本物のゴジラみたいだったのをよく覚えている。
その後の解析で、あれは機龍の制御系DNAコンピュータに使われているゴジラのDNAが引き起こしたエラーだったことが判明している。けれど、その不具合はDNAコンピュータのDNAを修飾塩基に置き換えることで解消されたはずだ。
今度はいったい何が? いったいどうしちゃったの、機龍!? そう思ったときである。
空から、鋼色の巨体が降りてきた。
土砂と粉塵を盛大に巻き上げながらスーパーヒーロー着地を遂げた、鋼鉄の巨大ロボット怪獣。
身長は機龍よりやや大きく60メートルほどだろうか。機龍と比べてもあまりに長い尾と逞しい手足、背中には三列の背鰭、頭部には爛々と輝く赤い両目。機龍は鎧を纏ったようなドラゴンのような印象があるけれど、この鋼色のロボット怪獣はまるで工業製品を組み合わせて造り上げた機械仕掛けのガシャドクロ、まさにゴジラの骸骨だ。
そして肩には『APEX-TITAN-X-ZERO』のロゴがデカデカと描かれていた。間違いない、あいつが。
「エイペックス=タイタンか……!」
エイペックス=タイタン。エイペックス社が造り上げた、機龍の後継にあたる新型メカゴジラ。つまりはエイペックス社のメカゴジラ、いわば〈エイペックス=メカゴジラ〉とでも呼ぶべきだろうか。
そのエイペックス=メカゴジラは最初蹲るような姿勢だったけれど、やがてむくりと巨体を起こし、金属質な方向を声高らかに響かせる。
「――――――――――――――ッ!!!!」
突如現れたエイペックス=メカゴジラに対し、アンギラスは当初怖気づいたように後ずさっていた。けれどすぐさま気を取り直し勇ましく吼えると、エイペックス=メカゴジラへと飛び掛かろうとする。
エイペックス=メカゴジラもそんなアンギラスに応じた。全身のミサイルポッドを展開し、アンギラスめがけて無数のミサイルを撃ち出した。まさにミサイルの盛大なカーニバルが、猛進するアンギラスへと降り注ぐ。アンギラスの全身を盛大な爆炎が包み込み、アンギラスが怯んだように悲鳴を上げてたたらを踏む。
その隙を、エイペックス=メカゴジラは見逃さない。その巨体には見合わぬほどの素早さでアンギラスの懐に潜り込み、その胸倉を掴み上げると、その逞しい鉄拳をアンギラスのみぞおちへ思いきり叩き込んだ。
グシャッ、と骨の砕けるような音が響いた。
アンギラスは呻き声と共に夥しい量の血反吐を吐き出し、地面に血だまりが出来上がる。
だがエイペックス=メカゴジラはなおも容赦しない。アンギラスの身体を掴んだまま思いきり腕を振り上げ、地表めがけて叩きつける。
大気が揺らぎ、地表がひび割れる。
その強打で全身の骨が砕けたのだろう、アンギラスはもはや立ち上がることすら出来ないようだった。
放されても動けないアンギラス、エイペックス=メカゴジラはその脳天と下顎を鷲掴みにして、引き裂かんばかりに思いきりこじ開けた。アンギラスは弱々しく藻掻きながら悲鳴を上げているけれど、エイペックス=メカゴジラのバルクが繰り出す膂力は相当のもののようで、弱ったアンギラスでは到底振り解けそうにない。
そうこうしているうちに、エイペックス=メカゴジラの口腔が赤い光を灯し始める。
そして、赤い閃光がアンギラスの顔面を撃ち抜いた。
エイペックス=メカゴジラが口内の砲塔から放ったのは必殺光線:プロトンスクリームキャノン、放った先はアンギラスの口の中だ。凶悪無比な灼熱の破壊熱線を呑まされたアンギラスは口内を、喉を、そして首までも焼かれてゆき、やがてアンギラスの首から上がまるごと焼き切られて胴体と泣き別れになった。
頭部を失ったアンギラスの胴は力無く崩れ落ちてゆき、やがてズズウンと地鳴りを震わせながら地へ伏せた。そんなアンギラスの死骸を足蹴にしながら、エイペックス=メカゴジラが雄叫びを挙げる。
勝ち誇るエイペックス=メカゴジラ。
その残忍な勝鬨の咆哮は、いつまでもわたしの耳に残った。
エイペックス=メカゴジラがアンギラスを仕留めてから10分後。わたしたち機龍隊は、エイペックス=メカゴジラのオペレータと対峙していた。
……いったいどういうつもりなのだろう、いきなり現れて標的を横取りするなんて。
そう咎めるわたしたち機龍隊だけれど、オペレータ兼作戦責任者を名乗るエイペックス社の女性は「連絡の行き違いがあったみたいね」としれっと答えただけだった。
「知らなかった? わたしたちエイペックス社は、あなたたちGフォースと共同でエイペックス=タイタンの試験運用を行うことになったの。ろくな引き継ぎも無しにいきなり実戦投入なんてするわけないでしょ。はい、これが認可」
そう言われて突きつけられた書類に目を通してみると、そこにはたしかにGフォース高官たちのサインが入っていた。間違いない、正式な認可証だ。
「で、わたしはその責任者でエイペックス=タイタンのオペレータ、〈マイア=シモンズ〉。よろしく」
……ご丁寧にどうも。
挨拶もそこそこに、マイア=シモンズはこんなことを言い出した。
「機龍隊、お噂はかねがね聞いてるわ。」
「へぇ、どんな?」
機龍隊隊員の一人であるキサラギが挑発するかのように訊ねると、マイア=シモンズは平然と答えた。
「機龍隊、任務達成のためなら手段を選ばないことから着いた渾名は『Gフォースの独立愚連隊』……だけど、案外大したことないのね」
……なかなかの言い草ね。
機龍隊一同から刺さるような視線を向けられているのに気づいているのか否か、はたまた気にもしていないのか。マイア=シモンズは続けた。
「こう見えても前任者のあなたたち機龍隊にはリスペクトを払ってるつもりよ。今までありがとう、御苦労様でしたって感じ。……まあ、最後のアレは流石に拍子抜けしちゃったけどね」
失笑を漏らすマイア=シモンズに、なんだと、と一斉にいきりたつ機龍隊隊員。だがマイア=シモンズは歯牙にも掛けずに嘲笑った。
「だって、いざ怪獣を前にして動けないメカゴジラなんて無用の長物。そうでしょうが」
それを言われてしまえば、わたしたちも返せる言葉がない。
それにひきかえ、とマイア=シモンズはさらに続ける。
「我が社の新製品、エイペックス=タイタンは暴走もしなければフリーズもしない。マシンスペックだって装備だって、あらゆる項目においてあなたたちのポンコツ機龍を圧勝してるわ。どちらが真にこの世界の守護者たりえる真のメカゴジラか、火を見るより明らかだと思うけど?」
途端、その場は一触即発の空気になった。アキバ、キサラギ、サエジマ、普段は控えめなアンザイやこういうときに抑え役に回りがちな副長のハヤマまでもが今にも激昂しそうな顔をしている。
「……御忠告痛み入るわ、ミス・シモンズ」
いきり立つ隊員たちを抑えながら、リーダーであるわたしが口を開く。
「たしかに今回、あなたのエイペックス=タイタンが介入してくれなかったらどうなっていたかわからない。今回の失態は隊内でも反省点として持ち帰って、二度と起こらないように再発防止策を検討させてもらう」
だけど。わたしは言った。
「だけどこれ以上、部下を侮辱するのは辞めてもらいたい。隊員はもちろん、機龍もよ」
そんなわたしの言葉に、マイア=シモンズは「はァ?」と眉をしかめた。
「機龍が『部下』ァ? はんッ、あんなのただのロボット怪獣、マシーンでしょう? 日本人は巨大ロボットが好きとは聞いてたけど、ちょっと度を越してるんじゃない?」
「ッ、おまえっ!」
その言葉でとうとうアキバがキレようとしたので、機龍隊総勢で一斉に抑え込む。そんなわたしたちを横目で見ながら、マイア=シモンズはフンと鼻で笑った。
「Gフォースと言えば立派な国際機関、それも機龍隊は『オペレーション=エターナルライトの
あーアホくさ、と言わんばかりに踵を返しその場から立ち去ろうとするマイア=シモンズ。
その後ろ姿に、わたしは声をかけた。
「
その一言を聞いた瞬間、マイア=シモンズが立ち止まって振り返った。
見ると、マイア=シモンズはぎょっとしたように、両目を見開いて凍りついていた。キラアク、その名がわたしの口から出たのがよほど意外だったようだ。
最初こそ虚を突かれた様子だったマイア=シモンズだけれど、すぐさま冷静さを取り戻して両目を細めながらわたしに訊ねる。
「……あなた、その名前をどこで?」
……これは脈がありそうね。
内心でほくそ笑みながら、わたしは素知らぬ顔で答えた。
「さあ、どこかしらね。あなたの方こそ心当たりが山ほどありそうだけど、ミス・シモンズ?」
「…………ッッ!!」
カマをかけられたことに気づいたマイア=シモンズは不機嫌そうに顔をひきつらせたが、結局は「……ふんっ」と鼻息を荒げただけで、何も言い返すこともないままその場を去っていった。
「……なんですか、今の?」
マイア=シモンズたちエイペックス社の連中が引き上げていったあと、アンザイが質問してきたので、わたしはしれっと答えてあげた。
「魔法の呪文よ。開けゴマ、みたいな」
「は、はあ……?」
「冗談よ。あなたたちには関わりがない話だから忘れてちょうだい」
さー、帰って仕事しましょ、仕事。
不思議そうにしている機龍隊の隊員たちを尻目に、わたしはひとりそそくさと帰還準備を始めたのだった。
サブタイトルは映画『スターウォーズ:エピソード4』のサブタイトルから。『新たな希望』『新人』の意。
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