気づいたらメカゴジラ転生して20年経ってた   作:よよよーよ・だーだだ

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7、デスペラード・アウトポスト

 Gフォースの本拠地『国連G対策センター本部』にもほど近いとある支部の喫茶室にて、三人の若い兵士が雑談していた。

 彼らの所属はいずれもGフォース、それぞれの名前は本人たちのプライバシーを考慮し、ここではソネザキ(仮)、ジョニー(仮)、キャサリン(仮)としておこう。

 まず口火を切ったのはソネザキである。

 

「……おい、聞いたか、あの噂」

「ああ、例の“独立愚連隊”だろ? 解散するらしいね」

 

 口を開いたソネザキに、ジョニーが答える。

 ジョニーの言った“独立愚連隊”。それがGフォース第2002試験部隊“機龍隊”を指す現場レベルでの符丁であり、Gフォース内で機龍隊が呼ばれている異名でもあった。

 続いて、キャサリンもコーヒーを啜りながら口を挟んだ。

 

「でもこないだのシドニーの一件で、エイペックス社の新型メカゴジラ計画は白紙になったんでしょう? どうするんでしょうね」

「上では相当モメてるらしいぜ。代わりはどうすんだとか、誰が責任取るんだとか、そもそも機龍隊を解散するのかしないのか……まったく、上で揉めるよりも現場をどうにかしろって話なんだけどな」

 

 肩をすくめるジョニーに、事情通のソネザキは言った。

 

「まあ機龍隊、上からは叩かれてるらしいしなあ。今のGフォース幹部連中で機龍隊の味方してるのは、20年前の機龍隊創設に関わってたイガラシ長官くらいだ。メカゴジラ機龍自体も稼働年数きてるだろうし、機龍隊の解散に関しては既定路線だと思うぜ」

「まあたしかにあの独立愚連隊、相当やりたい放題やってたみたいだしなあ……」

 

 ……やりたい放題と言えば、とソネザキは“とっておきの話”をし始めた。

 

「なあおまえら、『ロシアの件』とか知ってるか?」

「ロシアの件?」

「なんだそれ?」

 

 興味深げに身を乗り出したキャサリンとジョニーに、ソネザキはぼかしつつ言った。

 

「数年前にロシアのバイカル湖であった一件だ。ほら、あの『聖戦』の……」

「……ああ! デスギドラの!」

「あったなあ、そんなの!」

 

 聖戦、という単語でキャサリンとジョニーもようやく思い出した。

 それは遡ること数年前、世界中を大ブームになった『聖戦』騒動にまつわる出来事だ。環境保護ブームの行き過ぎが引き起こしたエコテロリズム運動、『聖戦』。その混乱に乗じてロシアのイルクーツク地方に封印されていた宇宙超魔獣デスギドラが復活を遂げ、ロシアはおろか地球そのものを破滅の寸前にまで追いやったという大事件である。

 

「でもアレ、モスラが解決してくれたんじゃないの?」

「……()()()()、な」

 

 ……どういうこと? と首を傾げるキャサリンとジョニー。そんな二人にソネザキは、意味深に含ませつつ如何にも人目を憚るかのように小声で告げた。

 

「あれ、表向きには『モスラが解決した』ってことになってるが……実際は機龍隊の連中が絡んでるらしい」

「……ウソじゃないのそれ」

 

 ソネザキの言葉を、真っ先に否定したのはキャサリンだった。眉をしかめながら、キャサリンは反論を述べた。

 

「デスギドラなんて大物怪獣を仕留めるような大手柄、今のGフォースなら格好の宣伝材料にしそうなものだけど」

 

 訝しげなキャサリンに「まあおれも人聞きでしか知らないんだけどな」と前置きしつつ、ソネザキは話を続けた。

 

「あのとき現場じゃあゴジラや他の怪獣も割り込んできたらしいんだが、機龍隊の奴ら、上からの撃滅命令を無視してデスギドラ相手にゴジラと共闘してたらしいぜ。それでご不興を買って、活躍を『無かったこと』にされたんだとよ」

「マジかよ……ゴジラと共闘とかイカれてんな」

 

 驚き半分呆れ半分、といったところのジョニー。キャサリンも同様だったが、ただキャサリンはこうも付け加えた。

 

「……まあそれが事実なら、結果的にはその判断こそが正しかったんでしょうけどね」

 

 そう言いながらキャサリンが思い出していたのは、デスギドラという怪獣のデータである。

 その後のモナークによる研究解析によれば、宇宙超魔獣デスギドラは単純な脅威度で測るならあの宇宙超ドラゴン怪獣キングギドラをも遥かに凌ぐ危険な存在だったことが明らかになっている。そんな恐ろしい敵を前に人間と怪獣で仲間割れなんかしていたら、きっと地球はあのとき滅亡していたに違いない。

 そんなジョニーとキャサリンに、ソネザキはさらに話を続けた。

 

「デスギドラだけじゃない。オーストラリアのダガーラの件、クライオグの地球侵略、あと宇宙ステーション・パラソルの事故も、あの独立愚連隊の奴らが一枚噛んでるって噂だぜ。まあ連中の活躍は全部“上”の都合で握り潰されたらしいんだがな……」

 

 と、そうこうしているうちに、喫茶室に常設されているテレビ画面が切り替わった。

 テレビに映っているのは噂をすれば影、シドニーでのエイペックス=メカゴジラの反乱を録画したものだった。その真ん中で暴れ回るのは機龍隊の主力機、メカゴジラ機龍。

 暴走する量産型メカゴジラの大群を相手取り、戦場を縦横無尽に駆けまわりながら暴れ回る。そんなメカゴジラ機龍の大奮戦を眺めながら、ジョニーは感嘆の声を漏らした。

 

「機龍を動かしてるのは無線操縦、だったか?」

「ああ、そうらしいな」

 

 ジョニーが訊ねて、ソネザキが答えた。

 

「操縦してるのは機龍正オペレータ、アキバ=キョウスケ。父親は政府高官のアキバ=イサオ、ああ見えてお坊っちゃんらしいな。噂じゃあ実家のコネを使ったとか……」

「あら? わたしはむしろ『実家とは縁を切ってる、完全に実力で入った』って聞いてるわよ? たしか機龍隊に入ったのも『世界でたった1機しかないメカゴジラ機龍を動かしたい』とかいう理由だったとか」

「うわ、変わってんな……」

 

 まあ、コネだろうが実力だろうが、とジョニーは言った。

 

「どちらにしても機龍隊アキバの腕前が“本物”なのは間違いないわな。見ろよ、このしらさぎと空中ドッキングするときの動き、“上に落ちる変態”か? 無線操縦だからパイロットは乗ってないとはいえ、体重4万トンのメカゴジラがやっていい機動じゃあねーだろ」

 

 ちなみに“上に落ちる変態”とは、とあるアクションゲームでの華麗すぎる空中機動を表すスラングである。重力を無視したかのような軽やかな挙動がさも“上に向かって墜ちている”ように見えることから一部ゲーマーのあいだで呼ばれているのだという。閑話休題。

 そうこうしているうちに、雑談の話題はメカゴジラ機龍から機龍隊航空支援機へと移った。

 

「しかしこれを受け止められる〈しらさぎ〉もスゲエよな、どんなウデしてたらこんなデタラメな機動で飛べて、しかも空に飛び上がったメカゴジラを空中キャッチなんか出来るんだ?」

 

 機龍隊航空支援機、しらさぎ。機龍隊の航空機動力としてメカゴジラ機龍を空輸し、戦闘時は機龍を空から援護する。

 ちなみに、しらさぎがメカゴジラ機龍を空輸するときに用いられているワイヤーについてだが、これはかつてキングコングを空輸する際に利用された特殊繊維ワイヤーの改良型である。巷では『メカゴジラやキングコングを吊るせるんだったら、いっそこのワイヤーを武器にした方が早いのでは?』などと冗談めかして語られるほどの優れモノであった。

 

「しらさぎに乗ってるのは、ええっと……」

 

 眉間に皴を寄せながら記憶を呼び起こそうとするジョニー、それよりも先にソネザキが答えた。

 

「キサラギ=アズサ。階級は中尉、機龍隊の副官で、航空分隊“しらさぎ隊”の指揮官だな」

「あ、その人。そのキサラギ中尉、元は整備エンジニアから転向したんだっけ?」

「そうそう! そこから今じゃあ機龍隊の航空チーム、しらさぎ隊のリーダーだなんてな。それであの美貌だろ、高嶺の花というか、天は二物を与えるというか……」

「あら、あんた、キサラギ中尉が好きなの?」

 

 妙に熱を入れて語るソネザキの様子を見て、キャサリンはニヤニヤ笑みながら得意気に言った。

 

「なら残念ね。キサラギ中尉、カレシいるらしいわよ。ほら、整備班のチュウジョウ=ヨシト」

「あー……あの『メカの声が聞こえるか』の。やっぱり整備エンジニア仲間だからなんかな?」

 

 整備班のチュウジョウ=ヨシト、彼もまたGフォース内では良くも悪くも有名人である。腕のいい整備士ではあるのだがメカへの偏愛ぶりは筋金入りであり、メカの扱いが雑な現場隊員に対しては『エンジンが可哀想』だとか『管制航法装置の機嫌を損ねた』だとか『バルカン砲が笑ってるぞ』だとか独特のキレ方をする奇人として知られていた。

 ソネザキは続けた。

 

「チュウジョウ=ヨシト、現場で故障した機龍を直すために、戦場のど真ん中にバイクで乗り込んでいったらしいぜ」

「あ、その話、聞いたことある。あの人、それで死に掛けたらしいじゃない?」

「チュウジョウといいノジマといい、機龍隊に絡んだ連中は、なんでどいつもこいつも命知らずの変人ばかりなんだ……?」

 

 なにげなく呟いたソネザキに、ジョニーが聞き返した。

 

「ノジマ? 誰だそれ?」

「知らねーのか? ノジマ=トモカ、メカゴジラ機龍の電子頭脳調整してるシステム担当チームの班長だ。Gフォース入る前、Gフォース本部にハッキングしたとかいうぜ」

「それは流石に眉唾だろう。なんでそんなやべーハッカーが、メカゴジラ機龍の電子頭脳調整なんかやってんだって話だし」

 

 流石に鼻白んだジョニーだったが、ソネザキは「いやいや」と首を振った。

 

「それがマジらしいんだ。噂じゃあ、凄腕すぎて敵に回すと厄介だからいっそ仲間に引き込んだ、って経緯らしいぜ。いわゆるホワイトハッカーって奴だな」

「ははあ、異色の経歴だなあ……」

 

 異色の経歴と言えば、とここでキャサリンが口を挟んだ。

 

「機龍隊の分析担当:サエジマさんとかもなかなか凄いわよ。あの人、もとは国連G対策センターの統合作戦本部、そこの事務次官だからね」

「国連G対策センターの統合作戦本部ゥ?」

 

 驚くジョニー。ソネザキの方を見ると、どうやら事情通のソネザキも初耳だったらしい。今度はソネザキが訊ねた。

 

「なんでそんなエリート様が、機龍隊みたいな最前線に来てんだ?」

 

 至極当然の疑問だった。国連G対策センターこそがGフォースの母体組織、そこの統合作戦本部といえばGフォースの作戦方針を固める頭脳中枢であり、中でも事務次官であれば立案された作戦を実行へと移す官僚である。そんな彼らの主戦場は本来ならば頭脳労働、こんな最前線で銃をとって怪獣と戦うことではないはずだ。

 興味津々なジョニーとソネザキに、「……ここだけの話だけど」とキャサリンは前置きしながら言った。

 

「サエジマさんって連合政府の派閥争いでモメたみたい。で、ライバルにハメられて降格処分、機龍隊に左遷されてきたんだとか」

「ひぇー……こわやこわや」

「エリート街道を歩いてた先で送られたのがこんな最前線で、しかも返り咲きとは無縁の“独立愚連隊”か。エリート様の出世争いは怖いねぇ……」

 

 怪獣よりも醜悪な人間同士の権力闘争、その闇を垣間見てジョニーとソネザキは怖気が走る思いを感じていた。そんな二人に、キャサリンは話を続けてゆく。

 

「まあ、噂だけどね。サエジマさんくらいデキる人だったら元鞘の出世コースに戻れるチャンスはいくらでもありそうだけど、なんか今も居着いてるみたいだし、案外居心地の良いのかもしれないわね」

「ふーむ、“独立愚連隊”が居心地が良いってわけか。やんごとなきエリート様の感性はどうもいまいちわからんねぇ……」

 

 と、ひと段落したあたりで、三人の話題は機龍隊の若手隊員へと移った。

 

「機龍隊にアンザイさんっていたよな。彼女についてはどう思うよ? 機龍隊の中ではわりと新参だって聞いてるが」

「ああ、アンザイさんな」

 

 ジョニーが話を振ると、ソネザキが続けた。

 

「機龍隊通信担当のアンザイ=リンコ、ああ見えて通信士としては凄腕らしいぜ。機龍隊があれだけ戦場で活躍できるのは、彼女が他部隊の情報を上手く整理してるからだしな」

 

 いくら機龍隊が独立愚連隊といえど、他部隊との緻密な連携や迅速な情報収集は絶対に欠かせない。機龍隊の通信をつかさどるアンザイ=リンコもそういう意味では彼女こそ機龍隊の“目と耳”同然、隊の中では誰よりも欠かせない人員だとも言えた。

 

「はぇー、到底そんなキレ者には見えねえけどなあ……いつだったか彼女、回転ドアにハマってたことあったぜ?」

「は? なにそれ??」

 

 きょとんとするソネザキに、ジョニーは先日自分が目にした光景を説明した。

 

「ほら、Gフォースの本部出入り口にガラス張りの回転ドアあるだろ? あそこで出るタイミングが上手く掴めなかったらしくてな、延々と回転ドアでグルグル回ってたんだ。天然なんかな?」

「あー、なんか、そういうとこありそう……」

 

 ジョニーの目撃談に対し、苦笑いを浮かべたのはキャサリンだった。

 

「でもまあ、確かにちょっと天然っぽいかも? 似たような話はあちこちで聞くから“養殖(わざと)”ってわけじゃなさそうだし、あれ素なんじゃない?」

「凄腕通信士で天然とかギャップ萌えかよ……しかも、“アレ”だろ?」

「“アレ”ってなによ?」

「“アレ”ってそりゃあ……なあ?」

 

 そう言いながらジョニーが意味深な目くばせをソネザキへ向けると、ソネザキもすぐに合点がいったようだった。含み笑いを浮かべつつ、ジョニーに応えた。

 

「ああ、たしかにな。そういう意味では、キサラギ中尉より遥かに“アレ”だよな?」

 

 そんな野郎二人にだけ通じるやりとりを見て、キャサリンもようやく理解したようだった。

 

「ああ、“胸”の話ね。ったく、野郎どもは……」

 

 キャサリンからズバリ指摘され、ソネザキとジョニーはバツが悪そうに目線を逸らした。

 機龍隊のアンザイ=リンコ、彼女は小柄な背丈のわりにメリハリの効いたワガママボディのトランジスタグラマー、機龍隊でも随一の爆乳の持ち主であった。Gフォースの男兵士のあいだでは『少なくともGカップ、下手すりゃIカップ』だというのがもっぱらの見立てであったが、真偽は定かではない。

 ちなみに同じ機龍隊のキサラギについては、長身で引き締まっていてスタイルは抜群ではあるものの、バストについてはそこまでではなかったりする。もっとも、苛酷なGに晒されるパイロットとしては、余計な脂肪がついてないことはむしろメリットではあるのだが。

 そんな下世話な話になり、キャサリンは心底呆れ果てた様子でぼやいた。

 

「やれやれ、男ときたらどいつもこいつも“そういうところ”ばっかり見てんだから。そんなだからアンタらモテないのよ?」

「う、うるせえっ!」

「ほっとけ! ならキャサリン、おまえはどーなんだよっ!?」

「は? わたし?」

 

 きょとんとしているキャサリンに対し、ジョニーとソネザキはここぞとばかりに詰め寄った。

 

「聞いたぞ、機龍隊のハヤマ副長、おまえあの人にアプローチしてたってな? そっちはどうなったんだ??」

「おうおう、機龍隊のナンバー2、ハヤマ=ススム大尉に片想いか? どうなったか聞かせろよ!」

「あ、あー……そっちかー……」

 

 ソネザキに問われたキャサリン、だがこのときキャサリンは何故かひどく気まずそうな表情で言葉を濁した。

 ……冗談半分で訊ねただけのつもりが、実は意外と地雷だったのだろうか? そんな考えがジョニーとソネザキの脳裏に過ぎったが、後の祭りである。

 

「……ダメだったのか?」

 

 心配そうに尋ねるソネザキに対し、キャサリンは小さく首を横に振った。

 

「……えーと、あっちから“お断り”されちゃった。もう“そういうのはしない”そうよ」

「えっ? あ、そうなんだ……すまん」

「おれも。茶化して悪かったよ」

「いいのよ、こっちも偉そうなこと言ったし」

 

 素直に謝る二人に、キャサリンは少し淋しげに笑いながら話を続けた。

 

「それにしてもさあ、ハヤマ副長ってカッコいいよね~。あそこの“隊長”に次いで機龍隊最古参、隊歴20年のベテランだっていうじゃない? まさにベテラン戦士よね」

 

 さりげなく話題を逸らしたキャサリンの気遣いに内心で感謝しつつ、ソネザキとジョニーも話に乗った。

 

「そうそう、たしかにハヤマさんっていぶし銀の魅力があるよな。“デキるナンバー2”、“鬼の副長”っていうかさ。まああそこは指揮官も“鬼”だって評判だが」

「まあ、あの“隊長”の下にいりゃあねぇ……苦労も絶えないだろうなあ」

「あら?」

 

 話が機龍隊の“隊長”に移り、キャサリンが口を挟んだ。

 

「あそこの隊長って、ヤシロ=ハルカ少佐でしょ? 知り合いの雑誌記者がインタビューしたって言ってたけど、結構気さくで好い人だったって聞いたわよ?」

「マジか!?」

 

 途端、ジョニーが席を立って大声を上げた。

 

「話したのかっ!? あの『オペレーション=エターナルライトの戦乙女(ヴァルキリー)』と!?」

 

 突然、過剰反応を示したジョニーに、キャサリンは胡乱な目を向けた。

 

「……あんた、キサラギ中尉の次はアンザイ軍曹で、さらにその次はヤシロ少佐なの? 節操無さすぎない??」

 

 呆れるキャサリンの言葉に、ジョニーは首を左右にした。

 

「いや、あの人は“そういうの”じゃあないんだって! 機龍隊が“独立愚連隊”なんて呼ばれてるの、理由知ってるか?」

 

 すかさず、ソネザキも言った。

 

「ああ、おれも聞いたことあるぜ。先代のトガシ中佐が亡くなって、そのあとをヤシロ少佐が引き継いでからだってな、機龍隊が“独立愚連隊”って呼ばれるようになったの」

「どういうことよ?」

 

 興味深げに訊ねるキャサリンに、ソネザキは言った。

 

「現場重視で上層部にも平気で盾突くから上からは嫌われてるらしいが、メカゴジラ機龍をまともに動かせるノウハウを持ってるのは今や機龍隊の連中だけ、だからいくら気に喰わなくても上層部(うえ)も迂闊に潰せないらしい」

 

 どこか得意気なソネザキの言葉に続いて、「しかもよお、」とジョニーが言う。

 

「今の機龍隊総隊長ヤシロ=ハルカといえば、20年前の欧州奪還作戦:オペレーション=エターナルライトで活躍した英雄だ。当時ついた異名が戦乙女(ヴァルキリー)。今も横のパイプは強いし、ひとたび機龍を現場に出せば想定以上の結果を間違いなく上げてくる。そういう活躍が始まったのはヤシロ少佐の代からなんだとさ」

「ふーむ、なるほど……」

 

 ソネザキとジョニーの熱弁を受け、キャサリンもようやく腑に落ちたらしい。感心しつつ、キャサリンは言った。

 

「それで“独立愚連隊”ねぇ……よくまあそんな無茶が通るわね」

 

 感嘆が半分、呆れが半分といったところのキャサリンに、ソネザキが言った。

 

「まあ、だからこそ、メカゴジラ機龍が退役になるこのタイミングで、上層部(うえ)は機龍隊を潰そうとしてるんだろうな。あんな無茶苦茶が通ってたのは動乱が激しかった過渡期だけ、これからはそうもいかない。今じゃあ『怪獣黙示録』も沈静化しつつあるってのが学者連中の主だった見解だし、おれたちGフォースの方針や体質もどんどん少しずつ変わってくんだろうなあ……」

「はー、時代は変わるもんねぇ……」

 

 などと、三人が感慨深げに呟いていたそのときである。

 

 

 ――Beep! Beep! Beep!……

 

 

 G対策センタービル内に、耳障りな警報音が響き渡った。鳴っているのはアラート、怪獣の出現を表すものだ。それまで完全に緩み切っていた喫茶室の雰囲気も一瞬にして仕切り直され、ソネザキ、ジョニー、キャサリンの雰囲気も即座に引き締まったものへと変わる。

 

「おっと、出番だぜ!」

「行かなきゃ!」

「またあとでな!」

 

 そしてすぐさま席を立ち、各々の持ち場へと戻ってゆく三人組。今の彼らの表情はつい先ほどまでしょうもない世間話に興じていた若者たちのそれではない。

 すべては世のため人のため、そして世界の平和を守るため。怪獣の猛威から人々を守る、勇猛果敢な戦士の顔に変わっていた。




タイトルは岡本喜八の映画『独立愚連隊』の英語版タイトル『Desperado Outpost』から。

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