Rozen Maiden ―Alice in Desire Grand Prix― 作:水銀党員
「ケミー、マルガムにジャマト……。昨日家でネットで調べた時はどちらも掠りもしなかった」
「何だか不思議ね。
「あぁ…。全くな」
自身が通う学校の図書館でジュンは幼なじみで雛苺の前のマスターである柏葉巴と本を漁っていた。
数日前のあの出来事以来、ジュンは彼等が話していた存在を調べている。
『ケミー』
『マルガム』
『ジャマト』
内、ジャマトと言うのは先週の木曜日に家を襲った怪物達の事だろう。
単純な推理になるが「ジャ!」と発言してたから文字通りそのジャマトの名に繋がってる可能性が高い。
だがそれでもケミーとマルガムに関しては全く情報がない。
「本も駄目だな」
極薄の望みにかけ、フランスやドイツの古書も繋がりそうなタイトルを選び読んだが記載はない。
伝説の人形師ローゼンの活躍時期、拠点が欧州と言うのも含め凡その時代を推測して選んだが情報は得られなかった。
まるで雲を掴むようだ。あれが悪夢だったらどれだけマシだったか………。
時に現実よりも悪夢の方がマシな場合があるとは思わなかった。
しかし逃げるわけにも行かない。
何処かに痕跡はきっとある。
「桜田君大丈夫…?」
「ん?何が」
「寝てないんでしょう。目の下真っ黒よ」
「……あいつらのためだよ。あいつらにはもう悲惨な目にあってほしくないからな」
言って更に本を探し続けるジュンを見て巴はクスリと笑った。
雛苺や真紅ちゃん達はいいマスターを持ったわね。
「柏葉…?どうしたんだ僕の顔見て?」
「巴」
「え?」
「今日から私の事は巴って呼んでジュン君。私もジュン君って呼ぶから」
「もう呼んでるじゃんか。分かったよ巴」
「うん…!」
結局その日も情報は得られずじまいだったがジュンと巴の仲は縮まった。
そんな仲睦まじいジュンと巴を見る者に二人は気づかない……。
―――――
「何故彼と彼の姉は創世の力で記憶が消去されていない?」
モニター越しにジュンを眺める男性は苛立ちながら呟く。
「何やらケミー等と言うおかしな存在も出しゃばってるし最悪私自身が実力行使するしか無くなってしまうな。ちょうどいい。ギーツばかり勝たせていては運営としては不公平。次のゲームは全員に勝利の機会を与えねば……」
ジュンがまだ知らないエンターテイメントショー『デザイアグランプリ』のマスターギロリは黒いマスクを被る。
「だがあの化け狐よりも前に桜田ジュン君。君に警告を送ろう。前のデザグラが終わってから監視していたがローゼンメイデンなる人形は君にとって命と同じのようだ」
ギロリは誰かに電話を掛けた。
その好奇心が君の弱点だ。桜田ジュン。