俺は、強くて硬くなくていーわな男   作:なんちゃってアルゴン

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決断

 

 

「……近い内に、このキタカミを発とうと考えています」

「……うむ、そうか」「……はあい、わかりましたよ」

 打ち明けた時のお爺さんとお婆さんの反応は、思いの他アッサリとしたモノだった。

 てっきり、ある程度は引き留められたり、根掘り葉掘りで色々と聞かれるもんだと思っていた。

 まぁ所詮、そんなの俺の自惚れって事か。

 

 

「ぽに、ぽにおー!」

「にーちゃん! やっと見つけたべ!」

「テンゴみーっけ! じーちゃんとばーちゃんと何話してたの?」

 

 廊下をちびっ子達が駆け寄ってくる。

 ……当然、この子達ともお別れになんだよな。

 どうする? 打ち明けるか? それとも黙って出て行くか? 

 ………………黙って出て行こう。また怪我した時みたいに、泣き付かれても困るしな。

 

「……いや、何でもない話だよ。お前らこそ、今日はどうした?」

「にへへ……にーちゃん怪我治っただろ? 一緒に遊ぼうと思って……」

「そうよ! こんな良い天気の日に外で遊ばないなんて、キタカミ探検隊としてあるまじき行いだわ! 一緒に行くわよ!」

「がお、ぽにおー!」

「………………よーし、わかった! なら今日は思いっきり遊ぶか! この俺に付いてこれるかな?!」

 

 せめて……せめて、ここにいる間は少しでもこの子達と一緒にいてあげたい。いや、いさせてほしい。

 俺を慕ってくれるこの子達の笑顔を、俺のせいで曇らせたくない。

 心底、自分勝手だと思う。でも、どうか今だけは………………。

 

 ○

 

 ちびっ子達と遊びに遊び倒していると、時間はあっという間に過ぎていった。

 さっきまであんなに高く登っていたお天道様が今はもう夕陽に変わり、辺りが暗くなり始めている。

 そろそろ時間かと思っていると、遠くの方から聞き覚えのある音が聞こえてきた。

 これって……祭り囃子? でもなんで? 

 

「……あれ? なんかお祭りの音聞こえない?」

「お、おれも聞こえる……」

「ぽにぃ……? ぽにー!」

「──────おーい! お前たちー! やっと見つけたわい!」 

 

 おお? 何かお爺さんが走ってきた。なんだなんだ?? 

 

「じーちゃん! なんか祭りの音が聞こえるんだけど!」

「そうなんじゃ! 急なんじゃが、ともっこにやられた復興を兼ねて、特別にオモテ祭りを今夜する事になったんじゃ!」

「えー! そうなの?!」

「お、オモテ祭り……今からやるの?」

「ぽにー?」

「そうなんじゃ! だからみんな着替えに家に帰っておいで! テンゴ君にも、若い衆から借りてきた甚平があるからの!」

「え、俺も良いんですか?」

「村を救った英雄が何言ってるんじゃ! 良いに決まっておろう! もちろん、オーガポンもな!」

 

 でも、そうか……。

 祭りとか、無事にできる様になったんだな。

 

「やったぁ! テンゴもぽにこもお祭り初参加よね?! 思いっきり楽しむわよー!」

「や……やったー! オモテ祭りだべー! にーちゃんとオーガポンと一緒に……楽しみだー!」

「がおお! ぽにおー!」

 

 おお、ちびっ子達のテンションが爆上がりしてる。

 ……何か釣られて、こっちまでテンション上がってきた気がする! 

 

「よーし! お前ら! 家まで競争だ! 走れ走れー!」

「あ! テンゴずるい! フライングよ!」

「ずるい! 今日はにーちゃんがずるっこ!」

「ぽにぃ? ……ぽにおー!」

「ふははははは! 俺が一番だー!」

 

 

 家に着いてから手早く準備を整えた俺達は、またオーガポンからお面を借りてオモテ祭りへと繰り出した。

 キタカミセンターに着いた俺達は、まずは腹拵えとばかりに焼きそば・かき氷・りんご飴などのお祭りあるあるメニューをみんなでシェアしながら、食べ物屋台を片っ端から制覇していく。

 次に、射的・輪投げ・ボール掬いなどの出店では誰が一番になれるか、全力で競い合った。

 そして、この場にいる俺達以外の村人も、みんなが揃って笑顔で、誰も彼もが全力でオモテ祭りを楽しんでいた。

 そんな中、祭り囃子が軽快な音頭に変わると、みんなそれぞれが一つの輪になって、盆踊りを踊り始めた。

 多分キタカミ音頭とか、なんかそんな感じの名前なんだろう。

 振り付けの分からない俺は、誰もこないであろう神社の端っこへ移動。

 オーガポンはみんなと一緒に輪に加わって、ゼイユやスグリの真似をしながら楽しそうに踊っていた。

 

「こんばんは、テンゴさん。祭りは楽しめていますかな?」

「あ……住職さん、こんばんは。楽し過ぎて……少し、怖いくらいですよ」

「……村を去るのが、ですかな?」

「! なんで……?」

「はっはっはっ! 田舎の話の広がり方はあっという間ですからな!」

「……そうか、じゃあこのオモテ祭りも?」

「ええ、貴方がお世話になっている家の方より、相談を受けましてな『彼が村を去る前に、少しでもキタカミの里に来てよかったと思ってほしい』と急遽一日だけ、村を救った英雄とオーガポンさまが楽しめる様に手配させて頂きました」

「………………まいったな。そんな事されてしまったら、この村にずっといたくなっちまうじゃあないですか」

 

 ……目元から溢れる熱いものを止められない。

 本当はずっとこのキタカミで、みんなと穏やかに暮らしていきたい。

 みんなで……ゼイユとスグリとオーガポンと面白おかしく過ごしていきたい。

 原作的には二人はイッシュのブルーベリー学園に入学して、ポケモンバトルを学んでいくんだろうから、きっと今よりもっと強くなる。

 俺はどうしようか……お爺さんの跡を継いで、お面職人になるのも良いかもしれない。

 結婚とかはできるか分からないけど、この村に骨を埋めるその時まで、このキタカミの里で幸せに暮らすんだ。

 

「……もう行かれるのですか?」

「はい。このままここにいたら、ここに永住したくなってしまうので」

 

 身体が結晶体化したイワークの事も放って置けない。

 ただの家出から始まった旅ではあるけど、一時の気の迷いでこの旅を終わらせる事はできない。

 

 そうして俺は荷物を纏める為に、オモテ祭りの会場を後にした。

 




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