「頼んだ! イワーク!」
俺の次のポケモンはイワークだ。
このイワークで少しでも体力を残しながらロコンを倒して、最後のポケモンのイシツブテに繋げないと非常にまずい。
理由は、前世の知識を信じるならゼイユの最後のポケモンは草・ゴーストタイプのチャデスだからだ。
流石に特性やら技までは覚えていないが、自分のタイプと同じ草タイプやゴーストタイプの技を使って来ていたのは確かだ。
本当ならフーディンのエスパー技で種族値のゴリ押しといきたいところだったが、カントーからキタカミへの家出長距離テレポートの疲労のせいでバトルに出す事はできない。
つまり俺は、ゼイユのロコンはともかくチャデスに対して岩・地面の四倍弱点タイプのポケモンで挑まなければならないって事だ。
……難易度高くない?
「ロコン! 『ひのこ』!」
「イワーク! 『うちおとす』!」
岩と火の粉が激しく庭を飛び交う。
お互いに技を受けても一歩も譲らずに、互いに技を相手に向かってひたすらに出し続ける。
イワークはやけどをもらって攻撃力が下がったのか、本当にギリギリの戦いだ。
しかし……先に限界が来たのはロコンの方だった。
これでゼイユのポケモンは残り一匹。
……ただ、これでゼイユを追い詰められたなんて思っていない。
むしろ、ここで踏ん張らなければ負けるのは俺の方だ。
もうロリっ子だのなんだの言っていられない。
ゲームでの山場……組織のボスや四天王、チャンピオン戦だと思ってゼイユに立ち向かう。
おそらくそれしか、あの娘に勝つ道はない。
ロコンをボールに戻してゼイユが最後に繰り出したのは、予想通りチャデスだった。
そしてゼイユの顔も、よりキリッと引き締まる。
四倍弱点のタイプ相性だからって、油断してはくれない。
再度ステルスロックの効果が発動し終わってから、お互いの指示はほぼ同時だった。
「イワーク! 『うちおとす』! 打ちまくれ!」
「チャデス! 『メガドレイン』!」
最後の力を振り絞ったイワークから打ち出された岩は、チャデスに何発かのダメージは与える事ができた。
しかし、その後の『メガドレイン』によってイワークは倒されてしまう。
不幸中の幸いだったのはイワークの体力がギリギリだった関係で、チャデスの体力の回復量が微々たるものだった事だ。
さあ、俺もラストのポケモンだ。
「ゆけ! イシツブテ!」
「ラッシャイ!」
泣いても笑っても、これが最後!
俺の今世、最初のガチバトル! 全力で行く!
「チャデス! 『メガドレイン』!」
「躱して『まるくなる』からの『ころがる』!」
迫ってくる『メガドレイン』を器用に両腕を利用する事で、身軽に回避するイシツブテ。
ゼイユは命中100の『メガドレイン』を躱された事に驚いたみたいだが、俺のイシツブテを舐めてもらっては困る。
俺の最初の相棒イシツブテの回避・移動スキルは、他のイシツブテとは一味違うものだ。
他の個体みたいにピョンピョン跳ねて移動するだけじゃなく、両腕を鍛えて積極的に利用している事で、腕を利用した素早く小回りのきく動きや受け身をとる術を手に入れた。
鈍重で硬いだけが、岩タイプのあり方じゃあないんだよ!
『まるくなる』によって威力が上がったイシツブテの『ころがる』が、チャデスにぶち当たる。
クリーンヒットした勢いで、チャデスを後ろに大きく吹き飛ばした。
おそらく、あと一発当てれば倒せる!
押すなら、今しかない!
「突っ込め! イシツブテ!!」
「……これを待ってた! 今よ! 『メガドレイン』!」
トドメを決めようと突っ込んだイシツブテをギリギリまで引き付けたチャデスが、『メガドレイン』をイシツブテに当ててみせた。
流石にイシツブテもこの攻撃は避けられずに、チャデスに体力を根こそぎ持って行かれてしまう。
この場にいた全ての人達が、ゼイユが勝ったと思っただろう……。
俺達以外は。
「チャデス、戦闘不能……で、良いよな?」
「……え? な、んで?」
攻防の末、倒れていたのはチャデス、ギリギリでも立っていたのはイシツブテだった。
「ちょ、ちょっと待ってよ! なんでチャデスが倒れて、イシツブテが倒れてないのよ! あの時『メガドレイン』は、確実に当たってた! 当たる様に狙ったんだもん! なのになんで……!?」
「『がんじょう』だよ」
「……『がんじょう』?」
「そう、俺のイシツブテの特性は『がんじょう』。この特性は体力満タンの状態から一撃で倒されるダメージを受けても、ほんの僅かに耐えてくれる特性なんだ」
「……じゃあ、あの時の『メガドレイン』をギリギリ耐えたイシツブテが、回復したチャデスの体力を丸ごと削り切ったって事?」
「そう言う事。例え『メガドレイン』を受けたとしても『ころがる』の回転は止まらないし『まるくなる』の後での『ころがる』だから、威力の上昇も早いしね」
実際、これをゲームでされた時はマジで『ころがる』って技自体がトラウマになった。
コガネシティ……ミルタンク……ウッ頭が……!
「くやしい……あたしが、よそ者に負けるなんで……」
さて、これで無事に宿は確保できる事になったけど……ちょっと、お節介でも焼いてみますか。
この娘達も、将来はイッシュ地方のブルーベリー学園に進学するみたいだし。
「ゼイユはさ、キタカミの里から出た事ある?」
「……ない」
「そうなんだ……今ゼイユに勝った『よそ者』がいるところって、どんな場所か気にならない?」
「……別に……いや、ちょっと気になる……かも」
「よし! じゃあ、泊めてもらうお礼に話してあげようか?」
「……ん、ありがと」
「じゃあ、まずは俺のいた場所についてかなー? 俺んち、カントーでジムリーダーをしてて……」
「ジムリーダー?!!」
おおう! すごい食いつきだ……!
「ジムリーダーって、ポケモンジムで一番強い人なんでしょ? あんたがそうなの?!」
「あ、いや。ジムリーダーなのは俺の兄さんで……」
「あんなに強いのにジムリーダーじゃないの?! でも兄弟がジムリーダー……合格! あんた、合格! 名前は?!」
「へ? あ、ありがとう? 俺はテンゴだよ」
「テンゴ! 今日からあんたはあたしのしゃてーとして、家に泊まっていいわ! その代わり、よそ者の事をいーっぱい教えなさい!」
「わやじゃ! ねーちゃんに勝っちまった! よそ者さん、強い! かっこいいー!」
「スグ、うるさい! テンゴはあたしのしゃてーなの! あたしと話すの!」
「そんなのずるい! ねーちゃんずるい!」
「あらあら、それなら私達は食事の支度でもしましょうか。ね?おじいさん」
「……はっはっはっ! そうだな、ばあさん! テンゴさん、孫達を少々頼みます」
そんなこんなで、俺は無事? に本日の宿にありつけた。
ただその代わりに、ゼイユとスグリがお眠さんになるまでの間、ひたすらキタカミの里の外に関する質問に答えて続けていくのだった。
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