ありがとうございます!
二人がかりとはいえ、ダブルバトルでしっかりちびっ子に負けてしまったのがこの私。
舐めプ野郎のテンゴ君です。
…………いや、くよくよしてても仕方ない。
そもそも俺は、今世の基準で言うのなら駆け出しトレーナーなんだ。
凹まずに、切り替えていこう。
逆に考えれば、俺がこうして負けたおかげで、ゼイユとスグリがご機嫌で今日の昼ごはんを食べられているとも言える訳だし。
……あ、この佃煮美味しい。
昼ごはんを食べ終わって少し休んだ後、俺達キタカミ探検隊は二つ目の看板を目指して出発した。
ちびっ子の元気はすごい。
午前中あれだけの道を歩いてバトルまでしたのに、まだまだ元気だ。
ちなみに、バトルで疲れているであろうイワークとストライクは、フーディンと一緒に家においてきた。
手持ちに空きがたっぷりとできたから、何か捕獲出来れば良いんだけど……。
「ところでお二人さん。さっきバトルで俺に勝った報酬、欲しくない?」
家を出発して少し歩いた頃、敗者として勝者の二人にリクエストを聞いてみる。
ただでさえキタカミの里にいる間、衣食住の世話になっている家のお孫さん達だ。
ゲスいけど、ちょっとでも良い顔をしておきたい。
「わや! い、いいのか? にーちゃん!」
いつの間にかスグリに「にーちゃん」と呼ばれるまで懐かれてしまっていた。
うん、可愛い。
ゼイユはどうかな?
「……あたしはもう四匹持ってるから、今はいいかな? 代わりに、スグに二匹プレゼントしてあげてよ」
「え……ねーちゃん、いいのか?!」
「うっさい! そう言う気分なの!」
「……ねーちゃん! ありがとう!」
「……ふんっ」
おおーなんか、ゼイユがお姉ちゃんしてるなー。
これはあとで何かしらの方法で、思いっきり甘やかしてあげねば……!
「よし! じゃあスグリ、ほしいポケモンが決まったら教えるんだぞ? 今度は二匹までボールぶん投げて捕まえてやるからな」
「う、うん! ……にへへ。実は俺、もうお願いするポケモン決まってんだ」
「お? そうなのか? どこの奴?」
「にへへ……俺についてきて!」
スグリは舞出山道の方にいく橋を渡り、目的の場所と思われる所に向かって勢いよく駆け出して行った。
「あ! こらスグ! ねーちゃん置いていくな! 待ちなさーい!」
「……案内頼んだー。あと、コケるなよー」
○
「……んで、ここが目的地?」
あれから駆けたり休んだりを繰り返しながら数十分。
ようやくついた場所は、小さなりんご園だった。
近くにポケモンはカジッチュがいるばかりで、それ以外のポケモンや人の影は全くない。
こじんまりとした、りんごの無人販売所がすぐ近くにあるだけだ。
……ん? 「りんごの無人販売所」?
……なるほど、そう言う事ね。
まあ、前世の記憶に関わるところもあるから、そこはすっとぼけるけど。
「ねぇスグ……あんたのほしいポケモンって、一体なんなのよ?」
「にへへ……それは、見てのお楽しみ!」
「なによそれ〜!」
「んじゃあ、にーちゃん! あのね……」
「……あそこのカジッチュ二匹でいいか?」
「! う、うん! 正解!」
スグリのほしいポケモンもわかったから、ヒスイ式投擲術でサクッとカジッチュを二匹捕まえてスグリに渡す。
「ええ〜! あんた、カジッチュ持ってたじゃない! それなのに、もう二匹もほしかったの〜?」
ゼイユは少し怒った様に、呆れた声でスグリに指摘する。
でも、本命はこれからだ。
「よし、まぁポケモンも捕まえられたし……ちょっと休憩にするか。お爺さんお婆さん達から、おやつ用にりんごを預かってるぞー。『すっぱい』のと『あまーい』やつがあるから気をつけて、だとさ」
「あ、にーちゃん! ここで売ってるりんごは『みついり』ですっごく美味しいんだ!」
「ほほう、そうか。なら、試しに買ってみようかな。スグリとゼイユもいるか?」
「いる!」
「んーじゃあ……あたしも」
俺が無人販売店で買ったりんごと、おやつ用のりんごをスグリに渡す。
「よ、よし! 出てきて、カジッチュ達ー!」
「「「カジッチュー!」」」
そうして出てきたカジッチュ達に、スグリは恐る恐るりんごを渡していく。
「ちょっとスグ! それあたし達のおやつでしょ! 勝手になにして……」
そこまで言ったゼイユは、りんごを与えたカジッチュ達の異変に気がついた。
進化が始まっているのだ。
それも、三匹全て。それぞれ違う姿に。
「アップリュー!」
「タルルルルー!」
「カミッチュー!」
これが、スグリの本当にほしかったポケモン達だ。
カジッチュは与えるりんごによって、その姿を変える。
すっぱいりんごを与えれば、りんごはねポケモンのアップリューに。
あまーいりんごを与えれば、りんごじるポケモンのタルップルに。
みついりりんごを与えれば、りんごあめポケモンのカミッチュに。
流石のゼイユも驚いた様子だ。
もちろん、俺も驚いている。
多分、俺が教えた知識が元になっているんだろうけど、スグリが俺達を驚かそうと自分で考えて行動に移したのは事実だ。
「スグ……」
「にへへ……ねーちゃん、びっくりした?」
「びっくりした……? ええ、したわよ! あたし達のおやつのりんご、勝手にポケモンにあげちゃって!!」
「ご、ごめんよ、ねーちゃん……い、いひゃいいひゃい! ほっぺはやめて〜!」
「あーこらこらゼイユ。俺達の分のりんご買ってきたから落ち着け、ケンカすんな〜」
そんなこんなありつつ俺達は新しくスグリのポケモンになった三匹と戯れながら、蜜がたっぷり入ったりんごを美味しくいただいた。
りんご農家の方々、本当にごちそうさまでした。
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