加茂家の超エリート術師に転生しました   作:君よ気高くあれ

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いきなりの評価ありがとうございます。



呪胎載天

 両面宿儺。

 顔が二つ、腕が四本ある仮想の鬼神だったが、虎杖悠仁の中にいるのは実在した人間だったものだ。今や、特級呪物として指だけを現世に残した呪いの王が君臨していたのは千年以上前の話だ。

 呪術の全盛とされる平安時代、術師が総力を上げて宿儺に挑み、塵芥となって敗れた。

 両面宿儺の名を冠し、その死後も呪物として時代を渡り、指だけになってもその力は衰えず、呪いの力を弱めるのが精一杯だった。

 そして、数千年ぶりの現代、呪いの王は再誕した。今を生きる虎杖悠仁の身体の中に取り込まれた指を媒介として。

 英集少年院は、その外観を灰色のコンクリートで固められている。付近には集合住宅地があり、そんな英集少年院入口には、立ち入り禁止を警告する黄色のテープが張り巡らされていた。

 これといって特筆すべき点もない、どこにでもある少年院に"呪胎"と呼ばれる集積した呪力が胎児を成した物を確認された。しかも、特級相当の呪胎である。

 英集少年院・受刑在院者第二宿舎に5名が、呪胎と共に取り残されており、任務にあたった虎杖悠仁、伏黒恵、釘崎野薔薇が補助監督である伊地知潔高に告げられたのは生存者の確認、もしくは救出。

 戦闘は目的ではない。3人の実力では、特級に会敵した時、できるのは戦うことではなく、逃げるか死ぬのみ。

 現実を直視できている恵と野薔薇は伊地知の言葉に頷く。少年院に息子を取り残されているという母親の言葉を聞いた悠二には戦ってでも助けたい。そんな思いがあった。

 しかし、現実は非情である。

 3人が目にしたのは2つの人間だったはずの肉の塊と、上半身しかない坊主頭の青年の亡骸だった。

 彼らの遺体を持って帰るか、放置して任務に従い他の2人を探すかで悠仁と恵が言い争っている間に、少年院内に蔓延っていた生得領域が拡大してしまう。

 野薔薇はどこかへと吸い込まれるように姿を消し、残された悠仁と恵は元凶である生まれ落ちた特級呪霊と会敵することとなった。

 

 術師になったばかりの悠仁と実力不足の恵では特級呪霊に勝つことはできない。そう判断した悠仁は、恵に野薔薇を救出して少年院を出ることを頼んだ。

 悠仁が特級呪霊と応戦し時間を稼ぐ。2人が出た後に彼の中にいる宿儺へと代わり、特級呪霊を倒す。そういう手筈だった。

 

「残念だがやつなら戻らんぞ」

 

 怪我を負った野薔薇を伊地知へと引き渡し、せめて悠仁を迎えねばと少年院で待機していた恵は特級呪霊の生得領域が消え去り、特級呪霊が消え去ったことを確信する。

 そして、あとは悠仁が戻ってくればと恵が少年院の方を見れば、背後に虎杖悠仁と同じ背格好をした化け物が立っていた。

 

「なっ……!」

「はは、そう怯えるな」

 

 愉快そうに嗤う化け物。

 否、虎杖悠仁の身体に受肉した両面宿儺だ。

 特級呪霊を祓わせたのはいいものを、何の縛りも結ばなかったツケで、悠仁は自身の身体の所有権を取り戻すのに時間がかかっていた。

 

「そうは言ってもだな。時間の問題だろうな」

 

 やれやれと手を大袈裟に広げる両面宿儺。檻として両面宿儺を閉じこめることに特化している悠仁では、あと5分程で意識を表層化させ、宿儺を閉じ込めることが出来るだろう。

 しかし、宿儺が悠仁の意識が戻るまで待つわけが無い。嫌な予感がすると、恵は唇を噛みしめる。そして、それは実際に目の前で起こる。宿儺が悠仁のパーカーと制服を剥ぎ捨てると、その鋭利な爪の生えた手を自らの肉体となった悠二の胸に突き立てた。

 

「そこで、今俺に出来る事を考えた」

 

 肉が抉れる不快音がと共に、夥しい程の血液が流れ落ちる。

 

「小僧を人質にする」

「人質!?」

「俺は心臓が無くても生きていられるが、小僧はそうもいかん。俺と代わる事は死を意味する。更に──駄目押しだ」

 

 抜き取った心臓をその辺に投げ捨て、代わりに取りだしたのは両面宿儺の指。特級呪霊が取り込んでいたものを宿儺が見逃すはずもなかった。

 それを飲み込み、全盛期の3/20の指を取り戻した宿儺は邪悪に微笑む。

 

 

「さて……準備はこれくらいで良いか。ああ、もう怯えて良いぞ。殺す。特に理由は無い」

「く、そ……!!」

 

 恵は身構える。両面宿儺の狙いは分からないが、心臓なしで生きられるとしてもダメージはあるはずだ。

 何もしなくても殺される状況だ。何か行動を起こさなければ死ぬだけ。

 恵に出来ることは精々足掻く程度。指1本の状態の宿儺と五条の戦いを見ていた恵にはわかる。今の自分では宿儺を倒すことは出来ない。だが、悠仁の意識が戻って宿儺と切り替わるまでに心臓を戻させる。それはしなくてはならない。

 

(腕が治ってる……)

 

 特級呪霊に落とされた悠仁の手や傷つけられた箇所が治っていることから宿儺が反転術式を使えることは間違いない。

 心臓を欠いた状態では恵に勝てない。そう思わせるしか活路は無い。

 

(できるか俺に?)

 

 特級の前ですら動けなかった自分にできるのか、恵はそう自分自身に問いかける。

 

(できるかじゃねぇ、やるんだよ!)

 

 恵は印を組む。全身全霊、呪力を指先に集中させる。

 

「ケヒッ」

 

 そんな恵を見て宿儺は笑う。そんな宿儺に臆することなく、影から鵺を出し、恵は両面宿儺に仕掛ける。

 式神使いには珍しい術師自らが仕掛けていくスタイルに、宿儺は「悪くない」と評価しつつ、恵の攻撃を容易く躱していく。

 鵺とのコンビネーションで死角を狙おうとするも、宿儺はそんな攻撃を意に介することはない。下から現れた大蛇の口の中に半身を咥えられるも、呪力を流してそのまま大蛇の頭を吹き飛ばす。

 

「なっ!?」

 

 大蛇の半身が恵の眼前に落ちてくる。決まったと思った攻撃は宿儺にとっては赤子に噛まれた程度で、その事に動揺する恵に、宿儺は再び背後をとって恵の服の裾を掴んだ。

 

「広く使おうと言っただろう?」

 

 そう言って恵を少年院外の森へと投げ飛ばす。だが、恵の身体が森の木々を薙ぎ倒すことはなく、その体は突如現れた男に受け止められる。

 

「ん……?」

 

 逆だった黒髪に、ノースリーブの青い服と白い手袋とブーツを履いた見慣れない男に宿儺は首を傾げる。

 

「なんだ貴様は」

 

 術師、にしては呪力が薄い。しかし、それが意図的に抑えているものだと気づくのはすぐの事だった。

 

「俺か? 俺は……」

「か、篝さん……?」

 

 男が名乗ろうとした時、受け止められた恵が顔を上げる。

 

「……ちっ」

 

 まぁ今はこの自己紹介する時じゃないかと舌打ちと共に言葉を引っ込めた篝は恵から手を離す。

 

「ありがとうございます」

「勘違いするな。俺はお前を助けに来たわけじゃない」

 

 礼を言う恵にそう言い放って、篝はその手を定位置である胸の前で組んだ。

 

「てめぇが宿儺か」

「そうだ」

 

 問いかけられて、宿儺はそう答える。

 

「前よりも呪力が上がってやがるな……」

「ほう? あそこには小僧と忌まわしき五条悟以外いなかったはずだが……そうか、貴様、遠くからでも呪力を感じ取れるらしいな」

 

 平安の世にもそういう芸当ができる術師はいたため、宿儺にとっては驚くことでは無い。だが、それが出来る術師は大抵厄介な者が多い。

 しかし、篝から感じられる呪力の量は五条悟どころか傷だらけの恵にも劣る。

 

「篝さん」

「どいてろ恵。やつは俺が祓う」

 

 恵はそうはいかないと、篝に食ってかかろうとする。

 

「それはこの小僧ごと、オレを殺すということか?」

「当然だ」

 

 虎杖悠仁の死刑が延期されたのは、宿儺を抑え込むことができるという前提のもとに成り立っている。

 しかし、こうして宿儺に肉体の主導権を奪われている現状を目にした以上、篝としては手を出さざるを得ない。

 

「できるのか? 貴様に」

 

 挑発するように嗤う宿儺に、篝もまた嗤う。

 

「呪力量だけでわかるもんじゃないぞ。術師ってのはな……はぁっ!」

 

 そう言うと、篝は組んだ手を解く。気合いを入れるように拳を握り、前かがみになってその身に宿る呪力を放出する。

 

「……やはり貴様、呪力を自由に操ることが出来るのか」

 

 感心したように呟く宿儺。篝の呪力がどんどん湧き上がっていき、その強さは恵を上回る。

 

「では、残り僅かな時間だが……味見といくか」

「味見でおしまいにしてやるぜ」

 

 不敵に微笑んだまま互いに構えた2人は、同時に動き出した。

 

「くっ……!?」

 

 2人の拳がぶつかりあった衝撃波に、立っていた恵がふらつく。それほどに両者の力は拮抗していた。

 

「貴様……」

 

 しかし、宿儺は気づいていた。

 純粋な呪力のみを込めた一撃。それを受けてなお相手の真の実力が測れない宿儺では無い。

 

「忌まわしいな……この俺に手を抜くか……!」

「ガッカリだぜ。やはり指3本じゃこの程度か」

 

 苛立つように放たれた一撃を、篝もまた受け止めた。その反動で後方へと飛び、空中で一回転したかと思うと軽やかに着地する。

 

「不愉快だ。貴様といい、五条悟といい」

「どいつもこいつも五条悟、五条悟。こっちこそ嫌になるぜ」

 

 明らかな不快感を滲ませる宿儺に、篝は呆れたようにため息をつく。

 

「やめだ」

「なんだと……?」

 

 そう言って篝は構えを解いた。呪力の放出を解き、一般人レベルまで落とした篝に宿儺は眉を顰める。

 

「今のてめぇを祓ったところでなんの価値もない」

 

 宿儺の残り僅かな時間という言葉から、もうそろそろ悠仁が身体の主導権を取り戻そうとしていることに気づいた篝は、目の前の宿儺を祓うことを諦めた。

 悠仁の意識が戻れば、心臓なしでは生きられない悠仁の末路は見えている。それに伴って中にいる宿儺も死ぬのであれば、今この場で祓う必要も無い。

 

「じゃあな。器との別れをさっさと済ませるんだな」

 

 少なからず、悠仁と時間を共有しているであろう恵に微笑みを浮かべながらそう言って、篝は踵を返した。

 

「貴様ァ……!」

 

 名も知らぬ術師にコケにされ、ギリッと歯ぎしりをする。

 

「良いだろう、覚えておけ。貴様は必ずこの俺が殺してやる。絶対にだ……!」

 

 呪いの王から殺意を向けられたことなど気にも留めず、篝はその場を後にした。





NG
宿儺の往生際がめちゃくちゃ悪かった場合
「ち、ちくしょぉ〜! 完全体(指20本)、完全体になれさえすれば……!!」

ネタバレの範囲(DBはドラゴンボールの略)

  • 呪術DB本誌含め全てOK
  • 呪術DB単行本化してるとこまで
  • 呪術DBアニメ放映分まで
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