加茂家の超エリート術師に転生しました   作:君よ気高くあれ

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雨後

 虎杖悠仁が両面宿儺によって心臓を抉られ、そのまま死亡したことが総監部及び五条悟に伝わったのは少年院の特級呪霊が祓われた日の夜のことだった。

 任務に当たった伏黒恵、釘崎野薔薇は怪我を負うも命に別状はなく、今後も呪術師として活動できる。だが、前述の通り虎杖悠仁は任務中に宿儺と自らの意思で切り替わるも、特級呪霊を撃破後、身体の自由を取り戻せずに宿儺によって心臓を抜き取られた。

 伏黒恵が心臓を反転術式で治させようと奮戦するも、実力差は大きく一方的に嬲られる。

 伏黒恵が森に投げ込まれたところに、強い呪力量を感知したため、やって来た加茂篝が乱入。宿儺と手合わせするも、今度はその宿儺に失望し、唖然とする伏黒恵と激昂する宿儺を置いて少年院から立ち去る。

 その後、数分で虎杖悠仁の意識が戻ってくるも、心臓のない状態ではやはり生きることは出来ず、伏黒恵と数秒ほど言葉を交わした後、地面に倒れ伏した。

 

「特級相当に成る可能性のある呪霊から被呪者を救出なんて、1年のする任務じゃない。大方上が仕組んだんだろうね、悠仁の抹殺を」

 

 そう語るのは五条悟で、自身の生徒の死体が置かれている高専内の検死室で彼に任務の説明、現地までの送迎を担当していた伊地知潔高から任務の最初から最後までを聞いて、その結論に至った。

 上層部としては、死ぬのが虎杖悠仁じゃなくても、任務の名目で五条の生徒が死ねば、彼への嫌がらせになると考えたのだろう。

 五条の生徒が死に、五条勢力の力は削げる。まさに一石二鳥。そう考えてるんだろうなと五条はいつもの口調で語るも、その奥にある怒りまでは隠せていなかった。

 

「わ、私の方でも再三忠告はしました。ですが、派遣の段階では本当に特級になるとは……」

 

 その怒りに当てられ、否、自身の不甲斐なさにも苛まれ、伊地知は声を震わせながら弁明する。

 

「犯人探しも面倒だしなあ〜。……いっそ上の連中、全員殺してしまおうか」

「ひッ…………」

 

 目隠し越しでも伝わってくる五条の怒りの灯った視線に伊地知はか細い悲鳴を上げる。

 それほどまでに目の前の存在から発せられる殺気が凄まじかったのだ。

 

「珍しく感情的だな、五条。そんなに彼がお気に入りだったのか?」

「い、家入さん……!」

 

 解剖室の扉を開けて中に入ってきた家入硝子は、いつものように気だるげな雰囲気を醸しながら部屋に入ってくる。

 伊地知としては救いの女神がやってきたかのような最高のタイミングだった。

 

「あまり伊地知をいじめてやるな。上とのやりとりで苦労してるんだから」

 

 しかも伊地知をかばう発言をする硝子に、伊地知はもっと言って欲しいと心の中で喜びの涙を浮かべる。

 

「男の苦労なんて砂一粒の興味すら無いね。それに僕は、いつだって生徒想いのナイスガイなんだよ」

「どの口がほざくんだか」

 

 だが、硝子の伊地知に対する評価も、五条からすれば毛ほども興味のないもので、一蹴すると逆に自身を褒め称える。それに、硝子は呆れたようにため息をついた。

 

「しかし、こう言ってはなんだが……伏黒と釘崎が無事でよかったな」

 

 野薔薇は1人でキャパオーバーと言えるほどの呪霊たちと相手したせいもあって、呪力切れは起こしていたものの大きな怪我はなかった。

 恵も、宿儺から受けたダメージはあったが、呪力で防御していたおかげで骨にヒビもなく、安静にしていればすぐに治るものだった。

 

「あぁ、硝子の大好きな篝のおかげでね」

「はは、いつ私がそんなこと言った?」

 

 五条の不用意な発言で再び流れる剣呑な雰囲気。

 誰かさんが、呪いの王の称号に違わぬ存在かを確かめに来なければ、恵の怪我はもっと大きなものになっていたことは、予想に容易かった。最悪の場合、ベッドの上に置かれる死体が増えていたかもしれない。

 それを防いだのはバトルジャンキーのおかげではあるが、戦うことしか考えてない脳筋に惚れるほど暇じゃないと硝子は青筋を浮かべる。

 

「でも、トドメを刺したのが篝じゃなくて良かったよ」

 

 先程までの怒りはどこへやら、いつもの飄々とした様子で五条は言う。

 恵も、直接聞いてはいないが別れを済ませられたのではないかと思う。

 

「もし、してたら恨んだか?」

「……どうだろうね。宿儺が恵や野薔薇、伊地知の誰かを殺してたら、僕が宿儺を祓いたいと思うから結局恨むかな」

 

 そう語る五条の言葉には、冗談など一切感じさせないほどの真剣さがあった。

 

「伊地知。僕はね、夢があるんだ」

「夢、ですか?」

「保身馬鹿、世襲馬鹿、高慢馬鹿、ただの馬鹿……腐ったミカンのバーゲンセールだよ、今の呪術界上層部は」

 

 五条が術師になった時も、1年前も、数日前も、呪術界上層部はずっと変わらない。だから、リセットするんだと、五条は口にする。

 

「僕らの代で、呪術界の悪習を終わらせる。上層部の玉座を叩き落とし、古典的な封建制度を取り替える」

 

 総監部の老人たちを殺す程度、五条悟ならば赤子を殺すより簡単だ。

 しかし、それだけでは、また同じ首がすげ変わるだけで変革は起きない。

 それに、他者の血で手を汚した人間が先頭に立っても、誰もついて来ない。

 だから五条悟は教育という手段と、教育者という道を選んだ。

 自分だけが強くても意味がない、いつか自分に比肩し得る後進を育て上げるために。

 

「恵も、野薔薇も……2年生も。3年の秤も。皆強くなる。これからの呪術界を引っ張っていく、その代表者なんだよ。そして……」

 

 虎杖悠仁もその1人だったと、五条はわずか数週間の付き合いながらも、可能性に満ちたその少年の顔を鮮明に思い浮かべることが出来た。

 

「……話はもう良いだろう。ほら、さっさと出なよ。解剖するとこも見てるつもりか?」

 

 湿っぽい話になって、硝子は辟易したように五条と伊地知を部屋の外に追いやろうとする。

 

「しっかり役立てろよ」

「役立てるとも。誰に言ってんの」

 

 そうかっこよく言葉を交わす2人の後ろで横たわっていたはずの少年が目を覚ますのは、すぐ後のことだ。

 

 

 そして、虎杖悠仁と宿儺の死が伝わったのは呪術師の中だけではなかった。

 

 

「……つまり、キミ達の親玉の目的は今の人間と呪いの立場を入れ替える事……といった所かな?」

 

 黒い袈裟服を着て前髪を垂らした男が、向かいに座る大きな目のついた火山頭、ぶふぅーという呼吸を繰り返す蛸と、頭から木の枝のようなものが生えた歯が剥き出しとなっている人ならざるナニカに問いかける。

 

「……少し違うな」

 

 男の言葉に火山頭が口を開く。

 

「人間とは嘘だ。己の身から出る正の行動には、必ず負の感情が隠れている。だが憎悪、殺意から来る感情は、人間の持ち得る唯一の真実。そこから転じ生を受けた我らこそ……真の人間と呼ぶべき存在だ。贋物は、消えて然るべき……!」

 

 ボッ、ボボッ……と火山頭の火口、頭のてっぺんから炎が漏れ出る。

 そんな火山頭の言葉に袈裟の男は苦笑する。

 

「でも現状、戦ったとしても負けるのは君達の方だろう?」

「だから貴様に聞いているのだろうが。……で、我々はどうすれば呪術師に勝てる?」

 

 真剣な眼差しで問いかけてくる火山頭に男は条件を満たせば勝てると口にする。

 1つは現代最強と名高い呪術師、五条悟を戦闘不能、あるいは封印する事。

 2つ目は、両面宿儺……虎杖悠仁を仲間に引き入れる事。

 さも簡単そうに言う男の条件を聞いて、火山頭は訝しんだ。五条悟は一旦置いておくとして、宿儺の器である虎杖悠仁は死んだはずだ。

 であれば、2つ目の条件を達成することは不可能だ。

 

「さぁ、どうかな」

 

 しかし、男は意味深な言葉を返すだけで、それ以上詳しく話すつもりは無いようだった。

 

「ところで……なぜ外に出ない? 陀艮に人の世界を見せるはずだっただろう?」

 

 1人と非人3がいるのは渋谷の昼間のファミレス……ではなく、陀艮と呼ばれた呪霊の領域内で、そこに留まってまるで隠れるかのように話を進めることを不可解に思った火山頭……漏瑚は問いかける。

 

「外にはめんどうな術師がいてね」

 

 漏瑚の疑問に男はそう返すと、1枚の写真を取り出す。

 

「……誰だこいつは」

 

 その写真に写っていたのは、逆だった黒髪をした、ノースリーブの青い服と白い手袋とブーツを履いた筋肉質の男だった。

 

「加茂篝。五条悟と同じ特級呪術師だよ」

「……だからなんだと言うのだ」

 

 現代において、4人しかいない特級の1人。そう言われても、漏瑚にはピンと来ない。未だ呪術師との交戦経験はない漏瑚だが、人が大地を畏怖する感情から生まれた特級呪霊にとって、それは些細な事だった。

 

「彼には術師や呪霊の呪力を感知できる能力があってね。もし、漏瑚に鬱陶しいとか、そんな理由で呪力を行使されるとこちらの位置が彼にバレてしまうのさ」

「呪力で他者の気配を感じとるなど、それくらい儂らにも」

「ああできるとも。けどね、彼の感知能力の厄介なところはその距離に制限がない事さ」

「なに?」

 

 漏瑚の言葉を遮り、男は説明する。

 

「言葉の通りさ。彼は非術師が持ってる微弱な呪力と術師や呪霊が持っている呪力を識別できるのさ」

 

 呪力を抑えてたり、領域や篝の入っていない帳の中であればその感知にも引っかからない。

 そのため、既に呪力を抑えることの出来る男は問題ないが、いつ呪力を爆発させ周りを焦土と化させるか分からない漏瑚を伴って外に出る訳にはいかないからと陀艮の領域内で隠密に話を進めている。

 

「ではそいつを殺せば、儂らは隠れずとも人間どもに反旗を翻せるわけだな?」

「……そうだね」

 

 殺せるならねと男は漏瑚に言葉を向ける。

 

「それは、どういう……!」

「加茂篝の厄介なところはもう1つ、君たちが目の敵にしている五条悟に比肩し得る力を持っていることさ」

「なんだと!? そいつの術式は呪力感知なのだろう!? その程度の術式の持ち主があの五条悟と!?」

 

 バカを言うのも大概にしろと漏瑚は男に詰め寄る。

 

「呪力感知は彼の技術で、術式では無いんだ。彼の術式は呪力放出。その名の通り呪力を手や足から出すだけの単純な術式さ」

「ん!? ますますわからん!」

「呪力放出はね、その単純さ故に強い力なんだ」

 

 憤る漏瑚に男は語る。

 呪力放出とはその名の通り、呪力をただ体の外に出すだけの術式だ。だが、外に出す呪力が多ければ多いほどその威力は遥かに増す。

 

「幼少期から莫大な呪力量を持ち、それを巧みに操る呪力操作技術。そして、呪力なしでも1級くらいなら体術だけで圧倒できるセンス……それを持っているのが加茂篝という術師さ」

 

 彼を殺さないことには、帳や領域なしでまともに呪力を行使することは叶わない。

 そう語る額に縫い目のある男は漏瑚達にほほ笑みかける。

 

「笑止」

 

 しかし、それだけ言っても自分自身の力量に自信のある漏瑚の考えは変わらない。

 

「ならば、儂がそのカガリとやらを殺してきてやろう」

 

 そう言って、漏瑚は陀艮の方へと目をやる。

 

「待っておれ。お前に、お前を生んだ存在と、お前のいるべき世界を見せてやるからな」

「ぶふーっ!」

 

 自信満々に陀艮へ話しかける漏瑚。そんな漏瑚の言葉に陀艮は喜びを露わにするかのように鼻息を荒げて反応する。

 そんな陀艮の反応に気を良くしたのか、漏瑚は機嫌よさげな様子で領域から出ていく。

 それを止めることなく、男はこれから起こる展開を予想しながら、その顔に微笑を浮かべるのだった。




硝子が篝に恋愛感情を抱いている可能性は、フリーザ編でクリリンと悟飯だけでギニュー特戦隊に勝てる可能性と同じくらいです。

ネタバレの範囲(DBはドラゴンボールの略)

  • 呪術DB本誌含め全てOK
  • 呪術DB単行本化してるとこまで
  • 呪術DBアニメ放映分まで
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