【駄目な子】   作:星野ヒスイ

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私達は輝ける/私の光

突然だが、ヒスイはアイドルに興味がある。

もちろん歌って踊れるアイドルだ。憧れというほど大層な物ではないが、機会があれば小さな舞台で歌って踊ってみたいと思っていた。

 

 

「ならヒスイも誘おうよ!」

 

「無理よ。持って一曲、二曲目半場、それ以上やったらあの子倒れるわよ」

 

 

だが、長年の運動とバランスの取れた栄養食で体力をつけたといっても彼女が虚弱体質なのはあまり改善しなかった。

 

 

苺プロダクション―会議室―

 

紆余曲折あって有馬かなが加わることになったB小町(仮)はまだまだ足りない新メンバーを欲していた。

そこで白羽の矢が立つかのように思えたヒスイをかなはバッサリと切り捨てる。

 

 

「えっ、でもヒスイって6時間耐久とかよくやってるし体力はむしろあるんじゃないの?」

 

そりゃ昔はよく咳をして熱を出していたけど、今ではすっかり克服した様子に見えた。ルビーが見た限り、今のヒスイはすっかり健康体である。

 

「そこよね。勘違しちゃうけど虚弱体質っていってもあの子持久力はあるのよ。だから適度に休憩を挟みつつ、そこそこの運動量だったら常人よりも動けてしまう。でも全身運動なんてしようものならものの数分で息切れして、そのままブラックアウト。とてもアイドルがやれるような体じゃない」

 

アイドルのライブの平均時間が2、3時間らしいが、流石に一曲だけやってあとはトークで繋ぐというのは無茶が過ぎるだろう。

それは努力や治療によってどうにか出来るものではなかった。どれだけヒスイがやりたいと望んでいても持ってきて生まれてきてしまったものはどうしようもないのだ。

 

「なら、一曲だけ踊って……1時間ぐらい休憩した後にまた踊るってのは!それかヒスイにメインボーカルをやってもらって、ダンスは休んで貰うとか!」

「あんた。それをやれって言われて喜んでやれる?みんなが楽しそうにしてるのに自分だけ特別扱いされるのがあの子にとってどれだけ辛いことか、まさかまだ理解していないんじゃないでしょうね?」 

 

一応和解はしていると言うからルビーとアイドルをやるという話を飲んだのだ。それでまだ分かっていないようなら、かなは可愛い妹分の為、ルビーの首根っこを掴んで延々と説教をしてやる所存である。

 

「そんなこと…………ないよ。でもアイドルをやりたいのにそれが出来ないなんて……そんなの私は堪えられない」

 

それは天童寺さりなとしての過去のあるルビーだからこそであった。やりたいのに体が言うことをきいてくれない。どれだけ手を伸ばしても届かない夢への羨望なら彼女は誰よりも理解している。

だからこれは妹の夢を叶えてあげたいと願うルビーの本音だ。

 

「…………まぁ幸いだったのは、あの子にはアイドル以外にもやりたいことがあった。それがあの体でも出来るもので今は充実している。それで話はおしまいよ」

 

これでヒスイがルビーのようにアイドルに成りたいという欲求が強ければ話は違ったかもしれないが、ヒスイは現状の自分に満足していた。そして自分がアイドルに向いていないというのは薄々分かってはいた為、簡単に諦められてしまうのだ。

 

「それでも一回ぐらいは……て考えちゃうんだから私もバカよね」

 

「え?」

 

「何でもないわ。それよりも暇ならYouTubeにアカウントでも作って宣伝PRでも作ってみたら?」

 

「……ユーチューバーか。ヒスイの動画にもちょくちょく出てたし、ロリ先輩ってこう言うのに詳しいの?」

 

「まぁね。最初はインパクト重視の一般人がテレビの企画を流用しているんだと小馬鹿にしてたけど、あの子に言われて少し勉強したから」

 

かなは少し勉強して、引っ越し先の条件で鉄筋コンクリートにして防音屋を作って、セキュリティマシマシなのは勿論のこと回線を早くする為に業者を呼んで、配信、編集機材をヒスイが使っているモデルの最新版を取り揃えたところで、あ、引っ越してもこの子がついて来る訳じゃないんだと我に返って少し泣いたのは苦い思い出だった。

そして一年後に、ヒスイが申し訳なさそうに同居を打診してきた時は内心跳び跳ねそうなぐらい嬉しかったが、姉貴分としての立場を守るため、有馬かなの女優生命をかけてポーカーフェイスで対応したのも、恥ずかしい記憶である。

 

「あら、なら私から提案する必要もなかったかしら?」

 

そこでミヤコが片手サイズのビデオカメラを持って現れた。

 

「おかあさん!」

「あ、カメラなら私がそれよりも性能良いの持ってるんで、今度持ってきましょうか?」

 

結果的にみればかなはアクアに説得されてB小町(仮)に加入することになったのだが、彼女なりにやりたいことがあって、加入したのは事実。今回は自分が提案したんだし、自前の機材を取りに行こうかと打診したが、それをやんわりとミヤコさんは断った。

 

 

「ごめんなさい。それは次回からってことにしてくれないかしら?協力してくれる人を偶然捕まえることが出来たの」

「協力してくれる人?」

 

ピヨピヨ~どうも!ぴえヨンだよ!

 

 

 

 

そして二人はぴえヨンブートダンスを()()()踊ることになった。

 

 

 

本当は一時間だった筈だが、ヒスイとのジョギングのお陰で思ったより余裕だったかなのせいでプラス一時間増えたのである。

 

「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」

 

「ハァ…………ハァ……ハァ……」

 

 

「スゴいネ!流石のボクでもキツイのに初めてでやりとげるなんテ!それじゃあハイ!自己紹介どうぞ!」

 

 

「いちごぷろ、しょぞくの……星……野……ルビー、自称アイドルです」

 

「あり……ま、かな!自称アイドル……です!」

 

 

疲れすぎて殆ど声になっていなかった。

だが二人のアイドルは初めの一歩を踏み出した。

 

 

(見ててね……ヒスイ。お姉ちゃん、頑張るから!)

 

(待ってなさいよ、ヒスイ。あんたが全力でアイドルやれる舞台を私が用意してあげる…………だから私を、見捨てないで)

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