第1話 ハンター試験①_一次試験の開始
珍獣・怪獣、財宝・秘宝、魔境・秘境
"未知という"言葉が放つ魔力
その力に魅せられた奴等がいる
人は彼等をハンターと呼ぶ
◇◆◇
「ステーキ定食を一つ」
こぢんまりとした親しまれた定食屋でサングラスを掛けた1人の青年が定員に一つの注文をした。
「焼き方は?」
定員の目付きが鋭くなり、焼き方を問われる。
「弱火でじっくりで頼む」
青年は迷うことなく答えた。
「あいよ!お客さん、奥の席へどうぞ」
「お客さん!此方へどうぞ!」
青年の答に対して定員は奥の席を勧め、近くに居た女性定員が案内した。
木製の扉を開け、案内された部屋は丸テーブルが一つ置かれた、10人近くは入りそうな小部屋だった。「此処でお待ち下さい」と女性定員に言われ、青年は近くの椅子に腰掛けた。青年に下側への圧を感じ、今自分の居る部屋が降下し始めたことを感じ取り、この部屋がエレベーターになっていると考えた。そのまま5分ほど降下し続け、ポーンと機械音が鳴り、部屋に入った扉とは真逆の壁が左右にスライドした。
僅かに明かりがある薄暗いトンネルのような場所で300人以上の人間が居た。全員が只者ではない雰囲気を生み出し、異様な空気を作り上げていた。
「ようこそ、ハンター試験へ。此方、番号札になります。無くさないように」
そんなことを気にすることもなく青年は緑色の肌をした小柄な男から314と書かれたプレートを受け取ると「どうも」と簡潔なお礼を言い、自身の胸元に取り付けた。
「やぁ、新顔だね」
明るい声で話し掛けて来たのは茶髪で鼻がデカい、小柄な中年男だった。
「俺はトンパ。よろしく」
「よろしく」
こんなピリピリとした空気の中で積極的に話すのは絶対に碌な理由ではないと青年は思った。
「俺、ハンター試験を何度も受けてるから試験のことに関してはベテランなんだ。もし、分からないことがあれば教えてやるよ」
「要らないな。余計な先入観のせいで試験に挑みたくない」
「そ、そうかい?ま、まぁ気が向いたら何時でも聞いてくれ。よかったら飲むかい?此処まで疲れただろ?お近付きの印だ」
人受けの良さそうな笑みを浮かべ、缶ジュースを取り出して渡して来る。受け取らずに静観を決め込むが、「遠慮するなよ」と突き出して来る。
「はぁ」
しつこい、それが思ったことだった。変に悪目立ちはしたくなかったが止むを得ないと思い、手を翳し、横に一線...手刀を振るった。
─────パキン!
「うわっ!?」
トンパは目の前の出来事に驚き、斬られた缶ジュースを落とした。手に付着した溢れ出た中身を急いでハンカチで拭き取った。そして、周りに居た受験者も目の前の出来事に驚愕し、目を見開いた。
「あからさますぎだ。この場で話し掛けて来る奴は妨害行為か新人潰しのどっちかだろ。こんなにもピリついてる空気の中で話し掛けて来たお前はとにかく異様だ。これに引っ掛かるのは余程の馬鹿しかいないぞ」
サングラス越しでも分かるほど鋭い目付きで睨まれ、トンパはたじろいだ。心なしか薄らと青年の瞳が赤く見えた。
それ以上言うことはないのかトンパの横を通り過ぎ、人混みの中に紛れて行った。
「くっそ!また失敗かよ!今年の新人はどうなってるんだ!」
顔を歪め、その場で地団駄を踏むトンパ。ハンター試験の新人をあの手この手で邪魔をし、自分が命がけのスリルを感じている中で、新人が絶望に顔を染めながら死んでいく光景を楽しむことが生き甲斐となった【新人潰し】の異名を持つベテランのハンター受験者だ。
今年の受験もそれが目的で受験した。しかし、その目論見はほとんど成功せずにいた。二度目の受験者ならば引っ掛かることはないが、新人ならば一定の割合で先ほどの手口に引っ掛かる者が居るのだ。
「だけど今に見てろよ!試験が始まったら嫌でも巻き込まれる瞬間が来る」
再び歪んだ笑みを浮かべるトンパ。目的は決して褒められた物ではないが執着心だけは誰よりもあった。しかし、彼は今試験の中でも一、二を争う実力の持ち主であることをトンパは知らない。彼がその気になれば手刀でトンパの首を落とすことも可能だからだ。実行しなかったのは単に人殺しが嫌という訳ではなく、悪目立ちすることを避けた為である。
◇◆◇
「よっ!久しぶり、ハンゾー」
「おっ!カムイじゃねぇーか!お前もハンター試験に来てたのか」
カムイと呼ばれた青年は先ほどの冷徹な雰囲気から打って変わって、気軽な明るい感じでハンゾーと呼んだ赤い布を首元に巻いた、スキンヘッドの男に話し掛けた。ハンゾーと呼ばれた男も気軽な感じで返し、緊張感に包まれ、張り詰めた空気の中でカムイとハンゾーの間だけ和やかな雰囲気になっていた。
「最後に会ったのは半月ほど前だったか」
「そうだな。密猟者の捕縛で一緒に任務をやったな」
ハンゾーとカムイは旧知の仲だ。故郷は違えど同じ仕事に就いていた2人は昇級試験で出会ったのだ。昇級試験の二次試験でペアとなり、最初は意見の食い違いで喧嘩をしたが、次第に意気投合して行ったのだ。
「お前は294番か...俺より20も前か」
「おう!結構サクサクと行けたぜ!」
ハンゾーは忍だと言うのに目立ちたがりと言う矛盾を抱えた男だが実力は本物で上忍の階級を持っている優秀な忍だ。
「そーいや、カムイはどうしてハンター試験を受けに来たんだ?」
「俺か?俺はこの世界を見てみたくてな...俺はあんな狭い世界で終わりたくなかったんでな」
「ほーん、カムイらしい理由だな。俺は伝説の忍の巻物を見付けたくて応募したんだ」
「隠者の書か?」
「正解!」
「もし、情報があったら教えてやるよ」
「おっ!ありがとうな!お前もハンター試験頑張れよ!」
「お前もな。変なところで落ちんなよ」
「当たり前だ!」
互いを応援しあいカムイとハンゾーは別れた。余程のことがない限りカムイはハンゾーが合格すると確信している。逆もまた然り、互いの実力を把握しているからこそ確信したのだ。
別れたカムイは配管の上に飛び乗ると瞑想を始めた。オーラを整え、不測の事態に備える。オーラを整えると同時に気配で自分の障害となり得る実力者を見極めた。
(桁違いに強い奴が2人居る...1人はピエロのような格好をした奴に針だらけの奴。殺り合ったら...負けはしないだろうが完全勝利は厳しいな。俺の持つ能力は一つ一つが強力だが、周りへの影響も凄いからな...余り情報も渡したくないし...読み合いの勝負でやるしかないか)
カムイは2人の人物に警戒していた。1人は赤髪で頬に星と涙の化粧をした長身の男。もう1人は体中に針を刺したモヒカンの髪型をした異様な男。この2人は瞑想をし、目を閉じているカムイが見ていることにもしっかりと気が付いており、僅かにだが殺気を出していた。
◇◆◇
試験会場に着いてから十数時間は経った。ハンター協会の職員から飲み水と食料が定期的に配られ、飢え死にするようなことはないが退屈の一言に尽きる。途中で瞑想をやめ、武器の手入れをやったりもしたがそれも全て終わってしまった。途中でピエロのような男と揉めたのか叫び声を上げ、腕を消された受験者も居た。
この状況がいつまで続くのか苛立ちを感じていた頃にそれは唐突にやって来た。
─────ジリリリリリ!
連続で機械音が鳴り、受験者全員が音源の方へ目をやる。目を向けた先は壁だったが少しずつ、壁が上へ上がって行き、スーツを着熟す髭が特徴的な紳士な男が立っていた。紳士は機械音を止めるとはっきりと澱みない声で喋り出した。
「大変お待たせ致しました。只今をもってハンター受験者の受付時間を終了致します」
紳士の声がトンネルに木霊する。
「では、これよりハンター試験を開始致します」
トンネルの中で紳士の声は響き渡り、試験開始という言葉に受験者全員に緊張が走る。
「さて、一応確認致しますが、ハンター試験は大変厳しいものもあり、運が悪かったり、実力が乏しかったりすると怪我したり、死んだりします。さらには先ほどのように受験生同士の争いで再起不能になることも多々あります。それでも構わない...という方のみ付いてきてください」
紳士は注意事項を伝える。もちろん、誰も引き返す者はいない。先程ヒソカに腕を消された者を除いて。
「承知しました。第一次試験、404名全員参加ですね。それでは参りましょう」
紳士はくるりと身を翻し手足を大きく振り上げて歩き出す。スタスタと先の見えないトンネルを歩いて行き、受験者もそれに付いて行く。
「やっぱり誰1人帰らねぇな。ちょっとだけ期待したんだが」
近くから緊張を紛らわせるような声が聞こえて来たことにカムイは苦笑した。発言者はスーツ姿の長身の男性で近くには黒髪が坂だった釣り竿を持った少年に民族衣装を着た金髪の青年が居た。スーツ姿の男性の発言に2人は苦笑するなり、肩を竦めるなど様々な反応を見せた。
「ん?」
「おかしいな」
「?」
近くに居た黒髪の少年と金髪の青年が異変を感じ取り、カムイもその異変を感じ取った。段々ペースが速くなっていき、とうとう前方の受験者達が走り出した。
「おいおい、なんだ? やけに皆急いでねぇか?」
「ああ、だんだん速くなっている」
「前の方が走り出したんだ!」
全員が駆け足で付いて行く中、紳士は大股で歩いているだけだった。
「申し遅れました。私一次試験担当官のサトツと申します。これより皆様を二次試験会場にご案内いたします」
サトツと名乗った試験官は二次試験会場へ案内していると言った。一次試験は何時やるのか疑問に思った。
「?二次...? ってことは一次は?」
代表するようにハンゾーが試験官に問う。
「もう始まっているのでございます。二次試験会場まで私に付いてくること。これが一次試験でございます」
「「「「!!」」」」
「場所や到着時間はお伝え出来ません。ただ私に付いてきていただきます」
試験官に付いて行くことが一次試験。一見簡単な内容に見えるがこのペースでゴールが見えないこの果てしないトンネルを走り続けるのは精神を大きく擦り減らすこととなる。先の見えない不安感から体力が削られ、強い精神力と純粋な体力がどれくらい保つか、それを振るいにかけられているのだ。
こうして、ハンター試験が幕を開け、一次試験は試験官に付いて行くだけと言う単純明快で難しい内容だ。精神を強く保ち、体力のペース配分を考えることが一次試験を合格する鍵となる。
NARUTOの木ノ葉隠れの里や忍の昇級試験はかなりオリジナルを帯びています。今後の内容もオリジナル設定が多いです。