世界を歩むうちはのハンター   作:ノワールキャット

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第2話 ハンター試験②_邂逅

「場所や到着時間はお伝え出来ません。ただ私に付いてきていただきます」

 

サトツと名乗った試験官はそれだけを言うとスタスタと前へ歩いて行く。

 

「なるほどな...」

 

「変なテストだね」

 

「さしずめ持久力試験ってことか。望むところだぜ!どこまでも付いて行ってやる!」

 

(だが、どこまで走ればいいのか分からないのはかなりの精神的負荷となる。精神力も同時に試されるわけだな)

 

(ただ走るだけなら問題無いがこのトンネルに何か仕掛けがあったらやばいかもな。周りの受験者の妨害もあると考えると常に警戒もしなくてはいけない。これはかなり精神削られるな)

 

各々がこの試験を意図を汲み、冷や汗を流した。余裕があるのはピエロ風の男と針だらけの男。カムイも特に問題があるわけではないが辺りの警戒をしていた。そこをスゥーッと横を通り抜けるスケボーに乗った少年。

 

「おい、ガキ!汚ねぇぞ!そりゃ反則じゃねぇか!」

 

すぐに長身の男が噛み付いた。

 

「なんで?」

 

「なんでって、こりゃ持久力のテストなんだぞ!?」

 

「違うよ。試験官はついて来いって言っただけだもんね」

 

「ゴン!!てめぇ、どっちの味方だ!?」

 

「どなるな、体力を消耗するぞ。それにうるさい。テストは原則持ち込み自由なのだよ」

 

「むしろ利口と言うべきだろう。この試験で体力を温存出来るのはかなり大きいぞ」

 

「〜〜〜っ!」

 

全て正論で返され、押し黙った。

 

「って誰だお前!?」

 

「盗み聞きをして悪かったな。俺はカムイだ。君達と同じでルーキーの1人だ」

 

「カムイさんって言うんだ俺、ゴンって言うんだよろしくね!」

 

「あぁよろしく。それと敬称は結構だ。普通にカムイと呼んでくれ。君達は?」

 

「私はクラピカと言う」

 

「俺はレオリオだ」

 

カムイの存在に驚いたレオリオとクラピカだったが挨拶を交わした。試験開始前に話し掛けて来たトンパと違い、胡散臭さが無かった。カムイには得体の知れなさこそあったものの、トンパのような胡散臭さは無かった。

 

「ねェ、君いくつ?」

 

「12歳」

 

(ふーん...同い年ね)

 

「ん?」

 

「やっぱ俺も走ろっと」

 

少年はスケボーを蹴り上げ、キャッチするとそのままゴンの隣で走り出した。

 

「かっこいい!」

 

白髪の少年のパフォーマンスにゴンはキラキラと目を輝かせた

 

「俺、キルア」

 

「俺はゴン!」

 

「あんたは?」

 

「カムイだ」

 

「そっちの金髪の人は?」

 

「クラピカだ」

 

「ゴンにカムイ、クラピカね。おっさんは?」

 

「おっさんじゃねぇ!俺はまだお前らと同じ10代だ!」

 

「「ウソォ!?」」

 

「あー!ゴンまで!ひっでーもォ、絶好な!」

 

((離れよう))

 

そそくさとカムイとクラピカはゴン、キルア、レオリオの3人から遠ざかって行った。初対面だと言うのにカムイとクラピカの心は一致した。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

景色が変わることなく試験が開始してから早数時間が経った。未だに受験者達はサトツの後を追い掛け、走り続けていた。

 

(走り始めてから大体4時間くらいだろうか?これまで走った距離は大凡60kmはありそうだな)

 

移動速度と時間から大凡の距離を割り出すカムイ。

一定のペースで走り続けるカムイは汗をかくことなく、余裕を保ちながら走り続けていた。試験官含め、前方に固まっている受験生達はカムイと同じく、息一つ乱れることなく、一定のペースで走り続けている。

 

(ただ走るだけが試験だとは思えないな。最低でも今の倍以上は走らされるか、罠が仕掛けられた場所を走らされるのかの2択か?それとも両方か...)

 

思考に耽りながら走り続けるカムイはこれからの展開を考えていた。合格が困難であり、新人が合格出来る確率が3年に1人と言われるレベルでハンター試験は難関だ。試験がこれだけと言うことはないだろうが、一次試験がこれだけ単純なものなのだろうか、とカムイは考えていた。

 

「痛っ!」

 

痛みを訴える悲鳴が聞こえ、カムイが振り返ると黄色が基調な大きな帽子を被った明るい緑掛かった少女だった。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「え、えぇ。ありがとう」

 

「他の受験者の妨害か?」

 

「えぇ、足をやられたわ。これじゃもう走れそうもないわ」

 

「見せてみろ」

 

「え!ちょ、ちょっと!」

 

受験者の妨害にあったらしい少女。本当なら罠だと警戒すべきだろうが少女の戸惑いの声から嘘は感じられず、カムイは本当だと思った。

少女のズボンを捲り、傷を確認すると少女の足は赤く腫れ上がっており、内出血を起こしていた。

 

「内出血だな。足は動かせそうか?」

 

「ん...っ!」

 

「無理そうだな」

 

足を動かそうとするが痛みが走るのか顔を顰める少女。

 

「足を動かそうとすることも無理か。こりゃ筋肉も傷付いてるかもな。これだと立つことも難しいだろうし、走ることは無理だと思うぞ」

 

「...そうね。今年は諦めるわ」

 

もうこの足だと無理だと判断したのか「今年の試験は諦める」と言う少女。

 

「おぶって行ってやろうか?」

 

「え?」

 

「だから二次試験会場までおぶって行ってやろうかって言ってる」

 

「...そんなことをして何かあなたにメリットでもあるの?」

 

疑わしい目でカムイを見る少女。当たり前の反応だろう。たった今受験者の妨害に遭った彼女にとって二次試験会場まで連れて行くと言っている目の前の青年の言葉には半信半疑の上に意味不明だろう。それにハンター試験では妨害や乱闘、果てには殺し合いまでするほどの苛烈を極める試験だ。受験者は1人でも減っていた方が後の試験で有利になる為、積極的に助ける理由がないのだ。

 

「メリットねぇ...特にないな」

 

「え」

 

「あんたはトンパと言う輩よりはずっと信用出来るってだけだ。お前の目は澱んでいないし、純粋に何かを目指してる目をしてる。悪人なら放っておくがあんたのような善人を放ってはおけないさ。俺が助ける理由なんてこんなものさ」

 

カムイはそう目の前の少女に言い切った。少女は予想外の答えに驚いていた。驚くのも当然だろうただの善意で助けようとしてくれているのだから。

 

「...ポンズよ」

 

「ん?ポンズ?」

 

「ポ・ン・ズ!私の名前よ。さっきの話、お言葉に甘えさせてもらってもいいかしら?」

 

「あぁ、問題ない!俺はカムイだ。よろしく」

 

「えぇ、よろしく。それより試験官追い掛けなくていいの?」

 

「その前に応急処置だけはする。本格的な治療は悪いがこの試験が終わってからでいいか?」

 

「構わないわ」

 

カムイの言葉にポンズは頷くとカムイはハンカチを取り出し、ポンズの足に丁寧に巻いていく。このハンカチは呪印が刻まれた特別な物で呪印の効果は「肉体の治癒速度の上昇」だ。完璧な治癒に時間が掛かるだろうが応急処置には十分な措置だ。

 

「これでいいだろう。さぁ行くぞ」

 

「えぇ」

 

カムイはポンズを背負うと【写輪眼(しゃりんがん)】を開眼させ、前方に居る受験者達を補足する。

 

「良かったな、先頭の奴らとはそこまで離れてないぞ」

 

「え!み、見えるの!?」

 

「あぁ、見える」

 

「す、すごい視力してるわね」

 

「これは俺の一族の十八番なんでね」

 

(この距離なら【瞬身の術(しゅんしんのじゅつ)】や【飛雷神の術(ひらいしんのじゅつ)】を使う必要はなさそうだな)

 

「少し飛ばすからな。しっかり捕まってろよ」

 

「え?って、うわぁぁぁぁぁ!?」

 

ポンズは今まで体験したことのない速さを体感した。一気に駆け出すとそのまま音速なのではないかと思うほどのスピードが出ていたからだ。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

三度目のハンター試験。今度こそ合格するぞと気合を入れた途端に他の受験者の妨害に遭った。怪我の程度を診てはいないから分からないが、走ることは難しいと思う。

 

一回目は体力が持たずに二次試験で脱落し、二回目は今と同じような感じで受験者の妨害に遭い、続行不可能となって脱落した。自分の全力を尽くして脱落したならまだいい。自分が未熟だっただけの話でまた自分を鍛え直せばいいだけの話だから。でも、受験者の妨害のせいで脱落することだけは納得いかなかった。

 

自分の考えがこのハンター試験で場違いだってことは分かってる。だけど諦めたくなかった。脱落するならせめて全力を出してしてから脱落したかった。

 

「おい、大丈夫か?」

 

半ば諦めかけてた時にそう声を掛けられた。顔を上げると灰色の髪を一つ結びにし、サングラスを掛けた青年。ブーツに、団扇が刺繍された特徴的な黒いコートを羽織った全身黒尽くしの格好をした長身の男だった。

 

怪我の具合を確認し、これでは走れないと言われた。薄々分かっていたが、諦めるしかなかった。

知らず知らずのうちに諦めの言葉が口に出ていたのだろう、私の言葉を聞いて有ろうことか彼は私を「二次試験の会場まで連れて行く」と言い出した。

そんな都合の良い話があるわけがないと思った。こうして私と彼が話しているうちに受験者達はどんどん前に進んで行く。

 

「...そんなことをして何かあなたにメリットでもあるの?」

 

私を助ける何かより、私を置いてさっさと前に進んで行ったほうがいいはずなのに何で私に構うのか、メリットはあるのか思わず聞いてしまった。

 

「メリットはねぇ」

 

「あんたはトンパと言う輩よりはずっと信用出来るってだけだ。お前の目は澱んでいないし、純粋に何かを目指してる目をしてる。悪人なら放っておくがあんたのような善人を放ってはおけないさ。俺が助ける理由なんてこんなものさ」

 

善意。そう善意だ。彼はただの善意で私を助けようとしてくれてたのだ。その言葉を聞いて信じてみたくなった。いや、信じるしかなかった。彼の目には曇りなんてなかった。只々純粋に私を助けようとしてくれていただけだ。

 

彼に連れて行ってもらうことを選び、彼を...カムイを信用することを決めた。彼から応急処置を受け、内出血を起こしている足にハンカチが巻いてくれた。私が痛くないように丁寧に優しく巻いてくれた。不思議なことにハンカチを巻かれてから、痛みが和らいだ気がする。

 

そこからは圧巻の一言だった。まずは視力がすこぶるいいのだ。自分も視力は良い方だと思っていたがカムイと違い、先頭の列なんて誰も見えない。

次に私を背負っていると言うのに、音速だと思えるほどの速さ。ある意味貴重な体験をした。

そして一番不思議に思ったのが彼の目が赤くなったような気がすることだ。気のせいかもしれないが先頭がどの位置に居るのか確認する時に彼の眼が赤くなったような気がするのだ。

 

あれよあれよと言う間に先頭まで到着し、私を背負いながら軽々と階段を登っていくカムイの身軽さと体力の多さには度肝を抜いた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

一次試験から約6時間経過。

走行距離、大凡80km。

 

「80km地点を突破しました。さて、ちょっとペースを上げますよ」

 

距離を言うとサトツは何段も階段を飛ばして登って行く。その光景に彼の後を追う受験者は驚愕を隠せなかった。

 

「おいおいマジか!」

 

「何て奴だ!普通に歩くような感じで楽々と登って行きやがる!」

 

「このペースじゃあかなりの脱落者が出るぜ」

 

受験者達も驚きを隠せず、目の前の光景に戦々恐々とした。

一直線のトンネルを走っていた時に突如として現れた先の見えない長々と続く階段。これには多くの受験者が難色を示した。その上、先程試験官が更に登るペースを上げ、受験者達はスピードを上げざるを得なくなってしまった。

 

ここに至るまで多くの受験者が脱落し、この階段が止めとなり、脱落する受験者は拍車を掛けるように増えていった。

 

先頭を維持する受験者達は冷や汗を流すが、体力的にはまだ余裕がある。しかし、体力よりも精神面で徐々に削られてきており、先の見えないゴールに不安を感じ、恐怖を抱き始めている。

 

一方で余裕を保っているのはピエロ風のメイクをした長身の男、ヒソカ。全身に針を刺した針だらけのモヒカン型の髪型の男、ギタラクル。この2人は試験開始時から変わらず平常心を保ち続け、一定のペースで走り続けていた。

 

何故、平常心を保ち続けられるのか...2人は己が強いこと、この程度の試験で落ちることはないと確信しているからだ。

 

「ゴン、どっちが先にゴールするか競走しないか?」

 

「いいよ!勝った方がご飯一回奢りね」

 

「よし、乗った!」

 

「「よーい、ドン!」」

 

今ハンター試験で最年少の少年ゴンとキルア。彼らは競走をするほどの余裕があり、額に汗は見られなかった。同時にスタートの掛け声をし、勢いよく階段を登り始める2人の少年。

 

一方でポンズを背負ったカムイは階段の所まで追い付き、着々と前に進んでいた。

 

「ね、ねぇカムイ」

 

「ん?どうした?」

 

「いや...よくよく軽々と登れるわね。普通、人を背負いながらこの急な階段を登るなんて出来ないわよ」

 

「そりゃ鍛えてるからな。それにお前は軽いからな幼少期の頃の訓練と比べ優しいものだよ」

 

「どんな訓練してたの?」

 

「錘を付けて足音を出さずに走る訓練。クリアして行くごとに重さが倍に増えていったな。俺は...1トン近くあった錘を付けて走ってたかな?」

 

絶句、この一言に尽きる。子供に1トン近くはある錘を付けて走らせるなんて狂気の沙汰ではないだろう。

 

「...とにかく過酷な幼少期を過ごしていたことは分かったわ」

 

「ま、結果として余裕を保って試験に臨めてるから良いだろう」

 

あっけらかんに言うカムイ。過程が過酷で困難であったとしても結果的に上手く行けばそれで全て良しとするのがカムイだ。ポンズは苦笑するしかなかった。カムイの体力の多さにはポンズも見習わなければならない。一般人よりも体力はあるポンズだが、プロハンターと比べれば平均以下だろう。事実幼少期の努力でこうして人1人分を背負いながら軽々と階段を登っていっているのだから。

 

「おっ。クラピカ、レオリオ」

 

「ん?」

 

「カムイじゃねぇか!姿を見なかったから脱落したと思ったぞ!」

 

カムイが声を掛けたのはクラピカとレオリオだった。クラピカは民族衣装を脱ぎ、ラフな格好で走り、レオリオは上裸になって走っていた。

 

「それよりカムイ。そちらの女性は?」

 

「ポンズよ。他の受験者の妨害に遭ってねカムイに助けてもらったの」

 

「足をやられていてな。応急処置はしたがひと段落したところで改めて傷を診るところだ」

 

「妨害にか、そりゃ災難だったな」

 

「それにしてもカムイ。君は嘘だとは思わなかったのか?」

 

「あー、ポンズがわざとやったんじゃないかって言いたいんだろ?」

 

「ちょっと!私は本当に他の受験者の妨害に遭ったのよ!」

 

自分を嘘吐き呼ばわりするようなクラピカの発言にポンズは噛み付いた。

 

「気に障るようなことを言って申し訳ない。ただ、このハンター試験で他人の蹴落とし合いは普通の上に嬉々として行う受験者も居る。それを考えると助けると言う選択肢は中々持てないと思うのだが...」

 

クラピカの指摘はご尤もなことである。別に自分から他受験者を妨害せずとも、同情心を誘い、相手を利用することも出来なくはないからだ。

 

「ただコイツの眼から他の受験者よりもずっと合格を目指していることが分かっただけさ。下手な妨害はせずに自分の力で真摯に取り組もうとしているのが分かったから手助けしている。俺からしたら理由はそれだけで十分さ」

 

カムイはクラピカに自分がポンズに感じ取ったことを嘘偽りなく述べた。

 

「...ポンズさん先ほどは不快にさせることを言ってしまい申し訳なかった」

 

「いいわよ別に。あなたのような考えを持つのが普通よ。それに敬称はいらないわ。どうせそこまで歳に差はないでしょ」

 

喧嘩が起きそうになったがクラピカは自分の非を詫びた。ポンズもクラピカの考えにはある程度理解はしていた為、喧嘩が起きることはなかった。

 

「それにしてもゴンやキルアもすげえがカムイもすげぇな。人を背負ってこの階段を走るほど俺に余裕はないぜ」

 

「そう言えばゴンとキルアはどうした?」

 

「確か...私達を抜かして先頭まで行ったはずだ」

 

「ねぇ、ゴンとキルアって?」

 

「黒髪と白髪の子供だよ。多分、今試験で最年少じゃないか?」

 

「子供がハンター試験を受けに来たの!?」

 

「あぁ、俺もびっくりしたぜ。何せまだ12歳何だからな!」

 

「12歳...随分と無茶なことを...」

 

ゴンとキルアの年齢を聞き、ポンズは絶句した。自分が最初にハンター試験を受けた歳よりも更に下だったからだ。

 

「見ろ出口だ!」

 

先頭の方から歓喜の声が聞こえた。どうやら出口が見えたらしく、「漸くこの暗いトンネルから出られる」とカムイ、ポンズ、クラピカ、レオリオの4人は喜色を示した。

光が差し込み、もうすぐ外だと分かるとカムイは更にスピードを上げた。それにクラピカとレオリオも続き、外には先に到着していた先頭の集団が息を整えていた。ゴンとキルアの姿もあり、額には汗が見えないことから彼らの体力の多さが窺えた。そしてカムイが注目したのはその先である。

カムイの視線の先には濃い霧で覆われた巨大な湿原があった。

カムイを人柱力にするべきかどうか迷っています

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