世界を歩むうちはのハンター   作:ノワールキャット

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第3話 ハンター試験③_ヌメーレ湿原

「ここが二次試験会場?」

 

「多分違うな。此処が試験会場だって言うのなら他の試験官が居るはずだ。だけど目の前には湿原だけ...まだ走ることになるぞ」

 

「ト、トンネルの次は沼地を走ることになるのね...」

 

トンネルの出口の先には霧に覆われた湿原があった。余りの霧の濃さに少しでも離れればお互いの姿が見えなくなるほどだった。

 

「どうだ?走れそうか?」

 

「多分走れると思うけど...診てないから何も言えないわね...」

 

「あっ!カムイ!」

 

「おっ、ゴンにキルアか。やっぱお前達は先に行ってたか」

 

「だってこんな試験楽勝すぎるぜ。周りの奴らは体力がねぇーな」

 

走り切った他の受験生に毒を吐くキルア。約100kmをノンストップで走り続け、体力に余裕があるからこそ言えた言葉だ。

 

「ん?ねぇカムイ、その子は?」

 

「あぁ、この人は...」

 

「私はポンズ。呼び捨てで構わないわ。他の受験生の妨害に遭って怪我をしちゃってね。カムイに助けてもらったの」

 

「へぇー、あっ!俺、ゴンって言うんだよろしく!」

 

「キルア」

 

「えぇ、よろしく」

 

「はぁー!はぁー!はぁー!」

 

「ふぅ、ふぅ」

 

そこにレオリオとクラピカが息を整えながら到着した。ゴンはクラピカに声を掛け、ゴン達の存在に気付いたクラピカはこの場所がゴールかを聞いた。

 

「違うってさ」

 

「そうか...あっ、霧が晴れて来たぞ」

 

「え!本当?」

 

真っ白に染まっていた視界が段々と色味を帯び、濃い霧が晴れていった。霧が晴れた先には湿原のみならず、巨大な森林までもがあった。鳥が羽ばたいて木々が揺れる。この先は開発加えられていない、自然本来の姿を残した危険に満ち溢れた場所でまた、言葉では言い表せない「自然の圧」を感じていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「ヌメーレ湿原、通称詐欺師(さぎし)(ねぐら)。二次試験会場へはここを通って行かねばなりません。この湿原にしかいない珍奇な動物達。その多くが人間をも欺いて食料にしようとする狡猾で貪欲な生き物です。十分注意して着いてきてください。騙されると...死にますよ」

 

サトツの言葉に受験者達から戸惑いの声が上がると同時に背後の出口が音を立てて閉じていった。

 

「ああ...ま、待ってくれ...!」

 

出口前で漸く登り切った男が手を伸ばすがシャッターは止まらない。そのままガシャン!と言う音を立て、シャッターは完全に閉じてしまった。

 

「この湿原の生き物はありとあらゆる方法で獲物を欺き捕食しようとします。標的を騙して食い物にする生物の生態系...詐欺師の塒と呼ばれる所以です。騙されることのないよう、しっかりと私の後を着いて来てください」

 

緊張が再び、受験生達の間で走る。

 

「けっ!ふざけた話だ。騙されるのが分かってて騙されるわけねぇだろ!」

 

「「「...」」」

 

レオリオはサトツの言い分に悪態を吐くが、嘘とはそう単純な物ではないと知っているカムイ、クラピカ、ポンズはヌメーレ湿原の厄介さについて考えていた。カムイは職業柄から、クラピカは持ち前の頭脳で、ポンズは得意分野から...各々が戦闘や戦略の上で嘘の難しさと厄介さを理解しており、情報戦では嘘を見抜けなかった者から順に脱落していくと知っているからだ。

 

「騙されるな!」

 

「あん!だから騙されねぇって!」

 

声のした方に受験生達が目を向いた時、出口の陰から傷を負ったボロボロの男が片手で何かをずるずると引き摺りながら現れた。

 

「だ、騙されるな」

 

男は迷いなくサトツを指差し、叫んだ。

 

「ソイツは嘘をついている!ソイツは偽物だ!試験官じゃない!俺が本物の試験官だ!」

 

その言葉に受験生達の間でどよめきが起こり、サトツと男を交互に見比べ、困惑の表情をあらわにする。次々と緊張と困惑の波が広がり、小さなパニックを起こしていた。

 

「偽物!?どういうことだ!?」

 

「じゃあ、こいつは...一体?」

 

レオリオとハンゾーは困惑し、カムイはハンゾーとレオリオの様子に半ば呆れていた。カムイは見た瞬間にどちらが本物かを即座に見抜き、クラピカとポンズはサトツと突如現れた本物の試験官だと主張する男を交互に見て、真偽を確かめている。

 

「これを見ろ!」

 

「「「おわぁ!?」」」

 

「うわぁ!サトツさんそっくり!」

 

男が引きずっていた物を引っ張り出すとどよめきが起こり、ゴンは驚きの声を上げた。それもそのはず、男が引っ張り出したのは細身の猿だった。それだけだったら特段驚く要素はないが、受験生達が驚いたのはその猿の顔である。その猿の顔はサトツと瓜二つで見分けがつきにくいほどそっくりだったのだ。

 

「ヌメーレ湿原に生息する人面猿だ!」

 

「人面猿ぅ!?」

 

「人面猿は新鮮な人肉を好む。しかし、手足が細長く非常に力が弱い。そこで自ら人に化けて言葉巧みに人間を湿原に連れ込み、他の生物と手を組んで喰い殺す!ソイツはハンター試験に集まった受験者を一網打尽にする気だぞ!」

 

「野郎...」

 

「確かにあの走り...とても人間技とは思えなかったもんなぁ」

 

男の主張に同調するようにハンゾーが意見を合わせている様子にカムイは呆れながら聞いていた。

 

「阿保が...とんだ茶番だな」

 

「カムイはどっちが本物か分かったの?」

 

「だってあからさますぎるだろ。サトツさんが人面猿の偽物だった場合、そもそもここまで走って来れたのがおかしい。あの足じゃ、見ての通り走りきれねぇし、あの男がここで偽物の試験官を待つ理由がない」

 

「た、確かに言われてみればそうね」

 

ポンズもどちらが見破ったその瞬間、サトツと男へ向けてトランプが猛スピードで空を切った。胸と頭にトランプが刺さった瞬間に男は絶命し、男は重力に従って倒れた。一方でサトツはトランプを難なく受け止めていた。

 

「えっ」

 

突然の出来事にレオリオは素っ頓狂な声を上げ、周りの受験生達も理解が追い付いていなかった。

 

「くっふふふ♦」

 

トランプを投げた張本人であるヒソカはトランプをシャッフルしながら不敵な笑みを浮かべていた。

 

「なるほどなるほど♣これで決定♦そっちが本物だね♠」

 

ヒソカの言葉に答えるようにサトツは手に持っていたトランプを放り投げると驚愕の表情が浮かび上がった。死んだふりをしていたサトツの顔をした人面猿は目を開け、周りの状況を理解すると悲鳴の鳴き声を上げ、一目散に逃げていった。

 

(えぇー!?やっぱり本物なんだ!?)

 

(そんなパフォーマンスしなくても分かり切っているだろうに。それにしても何て完璧な【(しゅう)】だ。人体はおろか、大木や金属の切断も容易に出来るだろうな)

 

「試験官と言うのは、審査委員会から依頼されたハンターが無償で任務に就くもの♠︎我々が目指すハンターの端くれとあろうものがあの程度の攻撃防げないわけないからね♣︎」

 

「誉め言葉として受け取っておきましょう。しかし、次からは如何なる理由でも私への攻撃は試験官への反逆行為とみなして即失格とします。いいですね?」

 

「はいはい♦︎」

 

サトツはヒソカに釘を刺す。

 

「ポンズ」

 

「何?」

 

「見ておけ、あれが敗者の姿だ」

 

「っ!?」

 

上空から何匹かの鳥が男の死体に群がり、肉を抉り始めた。次々と鳥が集まり死体を食べ尽くして行く。その様子に何人かの受験生は顔を青くし、自分もあの様になるのではないかと恐怖を抱いた。

 

「自然の掟とは言え、えぐいもんだぜ」

 

「やはりあの男も人面猿」

 

目の前の光景にクラピカとレオリオは苦悶の表情を表した。

 

「私を偽物扱いして受験生を混乱させ、何人か連れ去ろうとしたのでしょうね」

 

「油断も隙もないな」

 

「うん」

 

「こうした騙し合いが日夜行われているのです。現に何人かは騙されかけて私を疑ったんじゃありませんか?」

 

サトツは喰い尽くされて行く死体を眺め、受験生に問い質した。別に責める気はない。これもまた一つの試練であり、見破れなかった者が未熟者だっただけの話だからだ。

 

「よろしいですか?この先、ヌメーレ湿原の先は霧が深く、一度私を見失うとまず、二次試験会場にたどり着くことは出来ないでしょう。ご注意を。では参りますよ。着いて来てください」

 

その一言に受験生達の顔が再び引き締まり、緊張に包まれる。迷うことなくサトツはヌメーレ湿原に足を踏み入れ、濃い霧の中を進んで行く。受験生達も置いて行かれない様に走り始め、サトツの後を続く。

 

「ちっ!またマラソンだぜ!」

 

「しかも、今度は湿原だ。足元が泥濘んでいる分、体力が奪われるぞ」

 

足元の泥濘みが約100kmのトンネルを走りきり、体力を消耗した受験生達に追い打ちをかけるが先程の偽物かどうかのやり取りである程度体力が回復している為、そこまで苦にはならない。と言うよりも未だ脱落していない者達の中には体力を全くと言っていいほど消費していない猛者もいる。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

『内出血は治ったらしいな。これならすぐに完治するだろう』

 

『すぐ治るのね。時間が掛かる気がしてたら』

 

『まぁ、少々特別なことをしたからな』

 

『その特別なことって?』

 

『...悪いが教えられない、一族の秘術みたいな物だからな。一応、薬を塗っておくが痛くなったら言えよ』

 

『分かったわ』

 

先ほどの会話を思い出しながらポンズはカムイと共に試験官の後を追っていた。湿原の中は出口付近とは比べ物にならないほどに霧が濃く、試験官の姿を捉えることが出来なかった。先を進む受験生の影を追い、何とかなっているが前方が試験官を見失えば追い付くことは不可能だろう。

 

(やっぱりカムイは凄いわね。あんなに走っていたのに全然息が乱れてない)

 

チラリとカムイを見るが息が乱れている様子はなく、依然として余裕を保っている。

 

「まずいな」

 

「まずいって...この霧が?」

 

「それもあるが、一番懸念すべきはやはりヌメーレ湿原に生息する動物達だろう。この環境だと場所にもよるが獲物を手に入れるのは相当困難なはずだ」

 

「えっと...つまり?」

 

「つまり、俺達は絶好の的だ。それに、こんな場所に生息する動物がどんな能力を持っているか分からないぞ」

 

「もしかして、私達って今結構ピンチ?」

 

「大ピンチだな。一先ず、試験官に追い付くぞ」

 

「えっ、どうして?」

 

「こんなとこを通るんだ。湿原の動物の生息地域は把握しているはずだ。試験官の後を追えば少なくとも比較的に安全に辿り着くことは出来るだろう」

 

「た、確かに。で、でも何処に試験官が居るのか分からないわよ」

 

「それは問題ない。既に補足してある」

 

写輪眼に切り替えずともカムイは既にサトツを捉えている。オーラを使い熟すサトツを発見するのは非常に楽で簡単だ。普段垂れ流しになっているオーラを自身に留める四大行の一つ【(てん)】を扱うサトツは目を凝らせば一箇所に特段強いオーラがあるのが分かるからだ。

 

「あの赤い眼に切り替えなくても分かるのね」

 

「気付いてたのか?」

 

「え、えぇ、トンネルの時に。もしかして言っちゃいけないやつだった?」

 

「いや構わない。いつかはバレるだろうしな」

 

カムイはサングラスを取ると眼を写輪眼に切り替える。カムイの眼が黒眼からギュルン!と音を立てるように回転したかと思うと次の瞬間には赤い瞳に変わり、三つの黒い巴模様が等間隔に配置された独特な模様をした瞳になった。

その様子に流石にポンズはびっくりしたがそれ以上に綺麗だと思った。赤い瞳が美しく、等間隔に配置された巴がカッコよく思えた。ポンズは今、少年心が少し分かった気がした。

 

「この眼は俺の一族のみに発現する特別な眼、【写輪眼(しゃりんがん)】と言うものだ」

 

「写輪眼...聞いたことないわね」

 

「それもそうだろうな。俺の生まれ故郷は写輪眼のような特殊な体質を持った種族が集まった場所だ。徹底的に秘匿された場所でな。大陸とかにある国とは関わりがほとんどないんだ」

 

「大分閉鎖された空間なのね」

 

「だけど、今から200年近く前辺りから関わりを持つことが増えてな。要人警護やスパイ活動時には暗殺なんかを依頼される様になった」

 

「暗殺って...じゃあ、カムイも...」

 

「あぁ、人を殺したことがある。幻滅したか?」

 

「...私は初めて受けたハンター試験で殺したわ。殺したと言うよりは殺してしまったって言うのに近いかしら」

 

「その帽子の中に居る奴でか?」

 

「分かってたのね。...この帽子の中には私のハチが居るの。私が攻撃されると私に危害を加えた者に襲い掛かる様になっているの。これで相手を殺しちゃったのよね」

 

(操作系だな。念能力を知っているのか?いや、だとしたらオーラの扱い方が杜撰すぎる。それに試験官やあのピエロ野郎と針男のオーラにも気付いていなかった。と言うことは何かがきっかけで念に目覚めた無自覚の念能力者か)

 

念能力者は「基本の四大行を扱える」ことが大前提となる。この中で【(はつ)】つまり能力(・・)が完成すれば一人前の様な扱いとなるが、稀に念能力を自覚しないまま基本の四大行を素っ飛ばして拙いが発を習得し、能力を完成させる無自覚の念能力者が存在する。

条件付きでのハチの操作がポンズの能力で、無自覚な念能力者がポンズがそれに当て嵌まる。余程の思い入れがない限り念能力が発現することはほぼないのだ。

 

「お互い殺しの経験あり、か...俺としては憂いが晴れていいや」

 

「私は嫌厭されると思ったわよ」

 

「自分も人を殺しておいて自分は良くて相手は駄目なんてことは言わないから安心しろ」

 

殺人は世間では犯罪として扱われ、世界で最も重い罪として扱われる。しかし、殺人は最も日常的に起きている事象だ。

暗殺を生業とする家業も居れば、殺し屋を営む奴らも居る。ハンター試験でもそうだ。当たり前のように人が死んでいる。だが、咎める者はいない。各々が様々な理由で殺人を許容し、見て見ぬふりをするからだ。

 

人が殺人に憤慨する理由は主に二つに分けられる。それは根っからの博愛主義者か自身の身内に関わる(・・・・・・・・・)かどうかだ。人は他人のことになると興味を持たず、他人に対しての共感能力が皆無になる。人間は最も愛情深くて、最も非情な生物だ。どれだけ平和を謳っても結局は兵器を隠し持ち、自己保身に走る生物、それが人間なのだ。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

濃い霧の中を走り続け、異変が起きたのは唐突だった。

 

「うわぁぁぁあ!?」

 

聞こえて来たのは断末魔。カムイとポンズは足を止めて当たりを見渡す。

 

「避けろポンズ!」

 

「っ!?」

 

カムイの声に反応して慌てて後方に避けた。ガブッと音を立てて姿を現したのは巨大な亀。甲羅の上には人の形をしたイチゴが群生していた。

 

─────ドスッ!

 

カムイは毒針取り出すと、毒針を亀の目に刺し、オーラで纏ったクナイで首を斬り落とした。早業だった。目で追うことは出来ず、次の瞬間には首を斬り落とされた亀が横たわっていた。

 

「ポンズ、この亀分かるか?」

 

「多分、キリヒトノセガメね」

 

「キリヒトノセガメ?」

 

「キリヒトノセガメは霧の深い日にだけ活動して甲羅に群生する人を模したイチゴで誘き出して襲うの」

 

「あぁ、なるほど。前の連中はコイツにやられたな」

 

「思った通りになったな」と溢すカムイ。カムイの言う通り、ヌメーレ湿原ではほとんどの受験生は格好の獲物だった。そしてカムイ、ポンズ含め、今この場に居る者達もある危機に立たされている。それは試験官を見失ってしまったことである。ここまで霧が濃いと試験官を探し出すのはほぼ不可能であるからだ。しかし、カムイにとってそれは然した問題ではない。写輪眼で試験官を見付けるのは容易な上に気配も分かり、大まかな方角と位置が分かっているからだ。

 

「さて、先に進もう。早く試験官に追い付かないと本当に見失うぞ」

 

「そうね」

 

─────ヒュッ!

 

カムイは空気を切る音を耳で捉えた。透かさずクナイで飛んで来た物体を叩き落とし、飛んで来た方向にクナイを投げ飛ばす。叩き落としたのは4枚のトランプ。

 

「ちっ、悪食なピエロめ」

 

「酷いな〜♥️僕にはヒソカって言う名前があるんだけど◆」

 

霧の中から現れたのはトランプを持った赤色の髪をしたピエロのような男、ヒソカだった。小さく笑いながらヒソカは「それとピエロじゃなくて奇術師ね♠︎」と付け足し、殺意とオーラが溢れ出す。禍々しいオーラと滲み出た殺意にカムイは顔を顰め、ポンズは青ざめていた。

 

「それで、何の用だ?」

 

「用って言われてもね〜♣︎君なら気付いてるんじゃない?」

 

「...」

 

カムイは敢えて答えない。ヒソカの目的が妨害ではないことは分かっている。妨害の方が幾分から楽だったかもしれない。目の前の男は己の欲を満たす為なら何でもするからだ。ポンズを背に回し、眼を写輪眼に切り替え、更に切り替える(・・・・・・・)

 

「クク、眼の力が強くなったね◆嬉しいなぁ♥️僕と戦う気になってくれるなんて♠︎」

 

「どうかな、ただの威嚇だけかもしれないぞ」

 

「僕の予言を教えよう♣︎君は必ず僕と戦う◆何故なら...」

 

─────ビュッ!

 

「君はこの子(ポンズ)を守るから♥️」

 

「ちっ!」

 

ヒソカの姿が消え、ポンズの首元をトランプで斬り裂こうとする。カムイは舌打ちし、新しくクナイを取り出すと首とトランプの間に滑り込ませ、弾き飛ばす。金属と紙からは決して鳴らないであろう甲高い音が鳴った。

 

─────カキン!

 

それが開戦の合図だった。

 

ポンズを手で押し退け、離れさせると次の瞬間、トランプの斬撃が飛んで来る。クナイで受け止め、ヒソカを蹴り上げるがオーラで防御し、大したダメージを入れることは叶わない。

 

「ふふ、いいねぇ♥️僕の見込んだ通りだよ、カムイ◆」

 

不気味な笑みを浮かべるヒソカ。

 

「バトルジャンキーめ!」

 

厄介、その一言に尽きる。ヒソカは戦いを生き甲斐とする人間で己の欲を満たす為なら平気で人を殺す危険人物だった。今後のことも考えて今この場で殺しておきたいのが本音だが、全力を出せば、膨大なオーラが吹き荒れ、ポンズの身体に大きな負担を掛けることになるだろう。

 

「あっはっは♥️」

 

甲高い笑い声を上げ、より一層攻撃のスピードが上がる。攻撃を往なして、往なして、隙を作るように努めるが手元に集中しすぎたせいで胴が疎かになり、鳩尾に向かって一発、重い蹴りを喰らう。

 

─────ドゴッ!

 

「この程度かい?カムイ、君の力はそんな物じゃないだろう?」

 

ヒソカの言う通り、ダメージはほとんどない。眼で動きは見えていたので対応は出来たが圧倒的な動体視力を持っていると言うのに優位性を持てない。この男の実力は念能力者としては確実の上位の存在だと言うことが分かった。

 

「忍を舐めるなよ!ヒソカ!」

 

だが、その程度でカムイは諦めはしない。

三枚の手裏剣を取り出すと、雷遁チャクラを手裏剣に流し、ヒソカに投擲した。

 

「【うちは流手裏剣術】」

 

弧を描きながらヒソカに迫る手裏剣。ただの攻撃ならトランプで叩き落として終わりだとトランプを構えるがビリッ!と手裏剣に電撃が流れる。

 

─────【(かずち)三連(さんれん)

 

電撃が流れることに驚いたヒソカは回避し、カムイに攻撃を仕掛けるがヒソカの後方から空気を切る音が聞こえた。後ろに目をやり、ヒソカは驚愕した。

 

─────ザクッ!

 

「っ!」

 

鎖骨付近を手裏剣は斬り裂いた。骨は折れてないが電撃が流れている手裏剣の為、体が痺れ、ほんの僅かに動きが止まる。

その隙を見逃さず、鳩尾を殴り付けるが、簡単に手で抑え込まれる。

 

「驚いたね♠︎まさか六枚(・・)もあるなんて◆」

 

「言っただろ、忍を舐めるなって」

 

─────【うちは流手裏剣術・二刃(にばみ)

 

手裏剣が接触しないギリギリまで手裏剣同士を近付け、一枚に見せる不意を突く技術だ。ヒソカでも見破れないほど近付けている為、常人にはまず絶対見破ることは出来ない。

 

(あぁ、いい♥️いいよ、カムイ♣︎)

 

ヒソカのオーラが更に禍々しくなった。あまりのオーラの濃さにカムイも一瞬だが身体が強張り、蹴りと共に拳が飛んで来るが右腕で受け止める。ミシッ!と骨が軋む音が鳴り、鈍い痛みが走る。

 

─────ドガッ!

 

受け止めることが出来たとしても勢いまで殺すことは出来ず、そのまま突き飛ばされる。追撃しようとヒソカがトランプを構えて迫って来る。

 

「くそっ」

 

─────ドスッ!

 

突き刺さる様な音が鳴った。

ヒソカのトランプから血が垂れ、地面を赤く染め上げて行く。視線の先にはトランプが左胸に刺さり、吐血しながら息絶えているカムイの姿があった。

 

(あぁ、これで終わりか...)

 

「結構期待したんだけどね♠︎」

 

ヒソカは落胆の表情を浮かべた。自身が強いと思った男は想像以上に弱かった。いや、強いことは間違いない。ただ相手は全力を出すことが出来ない状況下にあった。それはポンズは気遣っていたから。

無自覚に念能力を扱える彼女だが、オーラの扱い方は赤子同然。もし、カムイが全力を出し、ヒソカと戦っていたならばポンズは身体を壊していただろう。

 

「さて、次は向こうのほうに行ってみようかな◆」

 

─────ギュッ!

 

「!?」

 

次の獲物を定め、カードを抜き取ろうとするが手を凄まじい力で握られる。ヒソカは驚愕し、カムイの方へ視線を向けるとカムイは手がトランプで貫通している状態でヒソカの手を無理やり掴んでいた。トランプが刺さっていたのは左胸ではなく、彼の手だったのだ。

 

「肉を切らせて骨を断つってな!これで終わりだ、ヒソカ!」

 

ヒソカと相対した時に正攻法で勝つのは難しいと思ったカムイはある手段に打って出ることにした。それはうちは一族の十八番である【幻術】を使うことであった。しかし見せるのはあくまでも途中からだ。自身を死んだと思い込ませてから動きを封じ込め、自身の固有瞳術で止めをさす。これが一番ポンズの身体に負担を掛けずにヒソカを殺す最適手段だとカムイは考えた。

 

左眼にオーラを集中させ、発動させる固有瞳術。

 

─────【御稜威(みいつ)

 

カムイの左眼とヒソカの胸部の空間を結び付け、別空間へ飛ばす。心臓、肺を丸ごと二つ飛ばされればヒソカは確実に死ぬからだ。ヒソカも【(ぎょう)】でオーラの線の様な何かは見えているだろう。だが、回避する術はない。ヒソカかこのまま終わる筈だった(・・・・)

 

(【伸縮自在の愛(バンジーガム)】発動!)

 

保険として木に仕掛けておいた能力を発動させる。だが、狙うのはカムイではない。狙いはポンズだ。数十枚ものトランプがポンズ目掛けて飛ばされたのだ。

カムイとヒソカの戦いを見守っていたポンズだったがオーラに当てられ、心身が疲労してしまっていた。飛んで来るトランプには気付いていたが今の状態で避けることは絶対に出来ない。

 

「なっ!?」

 

「残念♣︎今回はここまで◆次に戦うときは本当の死闘をしようじゃないか♥️」

 

「くそっ!」

 

痛みを無視してヒソカの手を離し、強引にトランプを引き抜く。ポンズにすぐ様駆け寄り、【御稜威】を発動させる。空間が渦巻く様に回転し、トランプが別空間へ飛ばされる。

 

「ポンズ大丈夫か!?」

 

「え、えぇ」

 

「どこか怪我はないか?」

 

「私よりもカムイの方が酷いじゃない。私は大丈夫だ、から」

 

─────ドサッ!

 

「ポンズ!ポンズ!」

 

限界が来たのだろうか。その場でポンズは倒れてしまった。急いで容態を確認するが気絶しているだけの様だった。

 

(ヒソカのあのオーラにやられたか。あそこまで禍々しいオーラは初めて見た。一先ず、今すぐこの場から離れて治療しないと)

 

カムイはポンズを抱えると試験官の気配を追い、二次試験会場へ向かった。




このHUNTER×HUNTERでのチャクラの設定は以下の通りです。

・チャクラを生み出すには生命エネルギーである「オーラ」に精神エネルギー加えることで生まれる
・チャクラは変化系の様なもので特殊な能力を作ることは出来ない
・チャクラ量はオーラ量に依存する

とざっくりこんな感じです。私として以下の図の様に考えています

オーラ≒チャクラ
オーラ量=チャクラ量
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