私フリーレン。後ろからスクナが追いかけてくるの。 作:フルシチョフ
「───君が、噂の呪術師かな」
とある西欧のとある外れの森。
現代最強の呪術師と名高い五条悟は目の前の少女にそう声を掛けた。
件の少女はというと意に介さず只管と草を選別し引き抜き傍に置いてある籠に入れていく。
「無視かい?ひどいね」
「…遠路はるばる来てもらって悪いんだけど私は君たちの言う呪術師ではないよ」
彼女は動作をやめることなくそう言った。
しかし、五条悟はそれは無理があると心の中でごちる。
日本とは違う西欧は呪霊の発生数は少ない。けれども、居ないわけではない。
だからこそ西欧でも呪霊に対抗するための呪具などもある。
ほんとに気味が悪い。
五条悟は少女の周りに漂う異様な雰囲気にそう考えた。
ここら一帯の呪霊は発生の報告がない。不信に思った上層部が僕を宛がったわけだが…。
改めて目の前にいる少女を視る。
僕と同じ銀色の髪に、あどけなさが残る顔立ち。
ちょっと奇抜な衣装はそこはまぁ、愛嬌かな。
ただ、一つ不思議に思うことがある。それは彼女が纏っているものである。
僕の六眼から与えられる情報からそれは呪力と似たようなものナニカそれだけしかわからない。
「驚いた。六眼持ちなんだ」
急に言われたその言葉に五条悟は彼女に対する警戒心を少しだけ上げる。
目隠しをしているのにもかかわらず六眼がバレ、尚且つ六眼を知っている。
つまりは───
「安心して、昔貴方と同じ目に会ったことがあるからわかるだけ」
「ははっ、この六眼持ちにあったことあるなんて不思議だね。何歳だよ」
「案外数千年を生きてるレディーかもよ」
やはり呪術関係者かと言う僕の答えに彼女は先読みして答える。
六眼は同時期に二人以上発生する訳でもないし、必ず生まれる訳でもない。
だが、この前にいる女性は会ったことがあるとぬかしやがった。
しかも、数千年を生きているだって?
それだったらあの両面宿儺よりも昔から生きていることになる。
「ん~、こちらとしても君みたいな存在は手放しにはできないし僕と一緒に日本に来てくれない?悪いようにしないからさ」
「もし、行かないといったら?」
「実力行使」
僕がそう言うと彼女は諦めたかのように溜息をし、荷物を纏め始める。
「あれ、案外素直だね」
「まぁね。私じゃ貴方から逃げ切れないし、逃げ切れたとしてもいずれはっていう話だからね。だったら大人しくついていくよ。それに、ここで意地這ると酷い目に合うことはもう知っているしね」
自分の実力と僕の実力をよくわかってる。
猶更ここの呪霊の発生がない原因が目の前の女の子である可能性が高まった。
というか十中八九こいつだな。
理屈は分からないけど呪術ではない何かの対抗手段を持っているに違いない。ま、大人しく日本に来てくれるならいろいろ聞けるしその時で大丈夫か。
「じゃあ、改めて。僕は五条悟。呪術師だよ」
彼女は僕の自己紹介に対して口を開く。
発せられた言葉が風に乗って耳に流れてくる。
僕は彼女の名前を噛み締める。
「改めて宜しく」
そして、僕は彼女の名前を繰り返すかのように言ってそれに対して彼女は微笑みで答えるのだった。
※
「どうした、夏油」
ある火山頭の呪霊、漏湖は頭を押さえ考え事してる特徴的な前髪をし頭に縫い目がある夏油傑にそう声を掛けた。
「ちょっとね…、彼女の動向が気になってね」
「彼女?なんだそいつは、どいつのことをいってる」
「漏湖はさ、魔法を信じるかい?」
突然放たれた言葉に怪訝な顔を浮かべた漏湖をみて、夏油は軽く笑いを洩らす。
『魔法』
言葉自体は知ってはいるがそれは眉唾なファンタジーなものであると漏湖は理解している。
だからこそ、理論的で現実的な思考を持ち合わせている夏油がそう言うことが不思議でならなかった。
「遥か昔、それこそ呪術と言う概念がない時代。昔の人たちは呪術の代わりに魔法を使って化け物どもを退治していたらしい」
「馬鹿馬鹿しい。もし仮にそれが本当だとしても関係なかろう」
「果たしてそうかな?」
夏油の言い草に漏瑚は久方振りに怒りの感情が少しばかり湧き上がる。
煮えきらない言い方に伝えたい意図が全く持って見えないからだ。
「夏油、言いたいことがあれば早く言え。儂は真人や花御と違って気は長くないぞ」
「おいおい、そんなに呪力を荒ぶらせるなよ。───でも、そうだね。単刀直入に言うとね、いるんだよ、まだ」
「…っ!なんだと!?」
一拍を置いて話し始める。
「遥か昔から魔法を使い、化け物を対峙する大魔法使い」
「人間がそこまで長生きは出来ないが」
「彼女はちょっと特殊でね。エルフという長寿の種族で悠久の時を生きているらしい」
「そんな奴がおったら耳に入るはずだが」
「彼女は隠居が得意なのさ」
夏油は傍に置いてある飲み物に口をつける。
そして、ある事実に気がつく。
夏油はその少女との面識があると言うこと。でなければここまで詳細に話せるわけもない。
だか、妙だ。
夏油のことだから儂等の作戦に対しての不安因子は排除したいはず。だが、動向を気に止めるまでに収まってる。
「なんで彼女を殺さないのか、だろ?」
「顔に出てたか?」
「わかりやすいんだよ。うん、でもそうだね。私だって考えたさ。考えて何回も殺そうとした」
「───殺せなかったのか」
「あぁ、魔法っていう奴は厄介でね。特に彼女に限ってはその扱いが上手いときた。返り討ちにも遭いかけたし」
「そこまで強い癖になぜそこまで余裕ぶれる?」
漏瑚の言葉に夏油は笑顔を浮かべる。
それは悪いことをしようとしている少年のような顔だった。
大きく手振りを始め、説き始める。
「簡単なことさ!僕たちが復活させようとしている両面宿儺も彼女を殺したがってる!わかるかい、漏瑚。作戦に必要な工程を踏むだけで彼女の抑止力を作れる!!これがどれほど嬉しいことか…」
嬉しげに話す夏油とは裏腹に漏瑚は冷や汗をかく。
呪いの王、両面宿儺。
呪術界にいてその名を知らないモグリはいないだろう。平安の時代に呪術師が総力を上げ討伐しようとし返り討ちにあったまさに化け物。
力の権化。
そんな両面宿儺が夏油のいう女を殺したがってる。
ふざけるな、ではその女は両面宿儺と相対し生き残っている化け物ということではないか。
「其奴の名はなんという、夏油」
「そうだね、彼女はこう言われてたよ。昔いた化け物どもを残らず屠り、死へと送り出す。まさに葬送」
「葬送のフリーレン、彼女はそう呼ばれてるよ」
※
そんな当のフリーレンはと言うと、
「暗いよー!怖いよー!」
宝箱に化けた呪霊に頭から食べられてた。
五条悟は数分前までの出来事を思い出す。
「あれ、あそこにあるのって」
「こっちによくいる宝箱に化ける呪霊か。たまに本当の宝物が入っているって話も聞くけど。…ってなにやろうとしてるの」
「ふん、悟は知らないよね。こういう宝箱を開けてこそ私達人類の進歩があるってことを」
「確かにその宝物から発掘されるものは人類の進歩に貢献したという話も僕も聞くよ。でもそいつは明らかに呪霊。僕の六眼もそういってる」
「六眼って本当の情報は伝えてくれる。でももし仮に六眼がバグってたら?」
「急に何言っての。ほら、祓って先行くぞー」
五条の忠告を無視したフリーレンは勿論呪霊に襲われて上に戻るといった感じだ。
呆れながらも助け出し、その化け物を祓う。
フリーレンは呪霊の涎に体を汚されつつ恐怖の色に顔を染めあげる。
「怖かった…」
「だから言ったじゃん。なに昔からこうなの?」
「───そうだね。昔からかな。でも一時期は弟子のおかげでなかったけど」
「…そっか」
彼女の特異性については本人から説明があり大体理解している。悠久の時を生きる彼女がとった弟子はもう亡くなっていることもすぐにわかった。
だから、少しだけ悲しそうな顔もしたことも。
「でも、日本か。久しぶりにいくな」
「あれ、行ったことあるんだ」
「うん、1000年ぐらい前に魔法の収集をするため行ったよ」
彼女の時間感覚に五条は舌を巻く。
1000年という考えられない時間を軽く久しぶりだなといえる感覚は天才の五条悟にとっても無理なことだ。
だが、彼女の発言にふと気になる点が思い浮かぶ。
魔法───術式の原本。
フリーレンがそう教えてくれた。
それを集めるためってことは旅をしていたはず。
つまるところ…、
「両面宿儺って知ってる?」
「あぁ、あの魔族みたいな奴か」
魔族?という聞き覚えのない単語に首を傾げつつフリーレンが宿儺と面識があることに驚く。
「私とスクナの関係性知りたそうだね」
「まぁね、君にはどう映ったのか知らないけど僕たちにとっては宿儺は呪いの王と呼ばれる化け物。そんな怪物の生き証人と来た。気になるさ、普通」
「ふーん、そういうものか。話してあげてもいいけど」
彼女はそこで言葉を限る。
何故なら敵が迫っていることを二人して知っていたからだ。
異形の化け物。
五条は六眼で相手の情報を読み取り準一級相当の呪霊だと決めつけた。術式は厄介だけど五条にとっては一瞬で終わる相手。
そして、それはフリーレンにとっても同じだった。
体が浮く。
呪力の流れを一切感じずそういった芸当をし始めるフリーレンに五条は笑みをこぼす。
いつのまにか手に握られている杖を呪霊に向けると見慣れない陣が浮かび上がった、六眼でもわからないソレに対し勝手に魔法陣だと決めつけた五条は行先を見据える。
そして、フリーレンは言葉を口に出す。
五条は目隠しの奥から見開きその美しいものを焼き付けようとした。
初めて見る魔法、その名は───
『
あまりにも綺麗で、残酷な魔法。
地面に降り立った彼女は何事もなかったかのように歩き出し動き出さない僕を不審に思ったのか振り返った。
「どうしたの?早く行こ」
「あぁ、そうだね」
これからくる新時代の幕開けの予感を感じながら五条は歩き出すのだった。
※
飛行機内
「どうこれ?僕のおすすめのデザート」
「〜〜〜っ!」
そこには頬を押さえて足をばたつかせているフリーレンがいたとかいないとか。