私フリーレン。後ろからスクナが追いかけてくるの。 作:フルシチョフ
勇者ヒンメルの死から31年後。
勇者一行の魔法使いとして魔王を討伐したフリーレンは弟子のフェルンとアイゼンの弟子シュタルクと一緒にある石碑の調査に赴いていた。
「フリーレン様、本当にいいのですか?」
「あぁ、フェルンの言う通りだぜ。あんな目にあっておいてまだ調査するのかよ」
「まぁね。だってあの代物───女神の石碑は謎が多い。その謎を解明しに行くってワクワクしない?」
「それはフリーレン様だけです」
「おかしいな。ヒンメルが謎を解くのは人類全体が抱くロマンだよって言っていたのに」
「訂正します。それはフリーレン様とヒンメル様だけです」
女神の石碑。
それは聖典に出てくる天地創造の女神さまが自らの魔法を込めた石碑の事。
十の石碑をこの大陸にばら撒いた。
そのうちの一つをフリーレンが解析した際酷い目と言うかまぁ、いろいろ大変な目に先日あったばかりだ。
会話から数刻、フリーレン一行は女神の石碑がある場所までたどり着いた。
そこには前回の石碑と同じように壊れたものがあった。
「ここも壊れてますね」
「うん、そうだね」
そういって傍に腰かけるフリーレン。
手をかざし魔力を込め始める。
前回は魔力を込めると私だけ過去に飛ばされる事件があった。過去の人物の協力もあって現代の時間に戻ってこれた私だがそれだけで女神の石碑の謎を解明したとは言い切れない。
まぁ、過去の過ごした時間が現代の時間に影響しないのは前回で学び、それについては
「どうだフリーレン?」
「うん、そうだね。ここまで前回と同じかな。一定の魔力をこめると使用者のみ何処かへ飛ばされる感じ」
「…行くんですか?」
「行きたいけどフェルンたちは嫌だよね」
前回戻ってきたときここでの時間は1秒も経っていなかったらしい。
そして今回見た感じ前と一緒で時間の流れが違うね。
おそらく飛ばされた先での時間はこっちに影響がない。
ないけどもフェルンたちは私の話を聞いて結構心配された。
「確かに私たちの知らないところでフリーレン様が危ない目に合うのはちょっと嫌です。でも、行きたいんですよね」
「正直言ってしまえばそうだね。やっぱり魔法っていうのは探しているときが一番ワクワクするし、飛ばされた先で得られる経験がある。今回は長くても3分ぐらいでこっちの私の意識が戻るから」
「フリーレンがこう言い始めたら俺らじゃどうしようもないからさ、いかせてやろうぜ」
「シュタルク様…、わかりました。でも危なくなったら帰ってきてくださいね?」
「任せて」
ある程度の決め事をした私は改めて魔力を流し始める。
流して、流して、流して、そして───
景色が、一変する。
さっきまで殺風景の丘にいたはずだがいつのまにか草木に囲まれた場所に来ていた。
なるほど、今回の石碑は場所までの移動があるのか。
前回は過去のその場所に飛ばされたわけだが…、うん。なるほど。
女神さまも意地が悪い。
ここは私が知る世界じゃないね。
※
改めてこの飛ばされた場所の調査を始めて数えきれないほどの年月がたった。
私の想像通りここの時間は直接は影響ない感じだね。
つまり、不老といった存在に私はなっていた。
そして、ここは地球と言った場所らしい。
人々は魔族に恐れることはなく、代わりに呪霊という化け物が代わりに蔓延っていた。
魔法と言う存在そのものもなく代わりに呪術というものがあり、その化け物の対抗策にしている感じだ。
まぁ、最初飛ばされたとき人がやっと文明を作り始めていた時期だったのはびっくりした。
なんで呪霊がいてその対抗策がないのか、と一人で解決策を考えていたが気が付いたら呪術と言う対抗策が生まれていた。
人間怖い。
「あ!フリーレン様だ!」
「ほんとだ!おーい!」
とある村の外れ、そこでいつの間にか神と崇められている私は呪術と魔法の研究をしつつ自堕落的な生活を送っていた。
子供たちの声掛けに私は手を振って答えてあげる。
呪霊の被害にあっているこの村を助け復興の手助けをしてあげ、住み着いていたらいつの間にか神と崇められようになってしまった。
まぁ、悪くない気分だ。
そんな折、私が張った結界をすり抜ける輩の反応を感じる。
この結界は悪意を持ったものが通ると自動的に私に教えてくれるものであり、それが反応したということは呪霊かまたはそれに似たナニカだ。
反応があった場所に向かいつつ村民を避難させる。
そこそこ強い気配がするから戦いになったら巻込みかねない。
「やぁ、君だろ。噂の呪術師っていうのは」
一人の男性がそこにいた。
頭に縫い目がある男性でどこかのお偉い人が来ているような服装をしている。
フリーレンは目を細める。
強いね。すくなくともアウラぐらいはあるかな。
魔王軍の残党、アウラ。
元の世界でフリーレンが殺した敵ではあるが、扱う魔法は死者を操るという非道なもので数の暴力で来られていたら負けていた相手。
漂う呪力からそれぐらいの強さがあると判断したフリーレンは何もないから空間から杖を取り出す。
「ほう?それも君の術式かな?」
「お生憎様これは君たちの言う術式ではないよ」
「じゃあその現象をどう説明する」
「魔法」
「はっ、馬鹿馬鹿しい。…と言いたいところだけど君の纏っているものそれ呪力じゃないだろう」
「へぇ、勘がいいね。そうこれが魔力。まぁ、呪力と似たものだって考えてもらって結構だよ」
他愛もない会話に見えるがその実はお互いに攻めるタイミングを見計らっていた。
呼吸に視線に所作。
そのどれかがズレる、その瞬間を狙っていた。
沈黙が続く。
冷静な表情とは裏腹に目の前の男は額に汗を浮かべる。
これは驚いた。
まさかこの僕が勝てる想像すらできないなんてね。
最近噂になって一目見て勝てないと判断したあの両面宿儺と同じ感情を抱くなんて。
「…埒が開かないね」
フリーレンはそういうと魔法陣が展開されそれを見た男は身構えた。明らかな攻撃の意思。
ナニカが来ると思った瞬間男の体はすでに吹き飛ばされていた。
「───は?」
呆けた声が漏れ出ると同時に襲ったのは強烈な痛みだった。体全身を切れ味の悪い刀でズタズタされたかのような痛み。
男は焦り出す。
攻撃された!?いつ!?常時展開している結界がなければ明らかに死んでいたぞ!
男は結界術に長けていた。それも長い年月をかけた結界術。
─それらが全て意味をなさなかった。
男の名は羂索。
脳みそを他者に移し替える術式を持つ長年の呪術師だがあまりにも目の前の相手は分が悪かった。
「ひと目見た時にわかったよ。その体が本体じゃないってこと、長い年月を生きていたこと。でも、相手が悪かったね」
「───お前の前にいたのは数千年を生きた魔法使いだ。さて…」
フリーレンは飛ばされた相手を見据えつつ、新たに迫る敵に意識を割いていた。
殺すつもりであった魔法ではあったが耐えられた事実に少しばかり驚きつつ、次の相手をどうしようか頭を悩ませる。
今こっちに向かってる奴明らかに強いね。まさかあの魔王より強いなんて。
ヒンメルだったら喜んで戦いそうだな。
フリーレンは逃げる案を思索する。
そして、この時のフリーレンの判断は正しくもあった。
今迫ってきてる者の名は───両面宿儺。
鏖殺を好み、自分の指標で生きている、
「貴様が今の術式の使用者だな?」
呪いの王である。
※
「あの時は流石にびっくりした。逃げようと準備してたらいつの間にか目の前にいたんだもん」
「いやいやいや、もんじゃなくでそれが宿儺と出会ったイベント?」
時は戻り、現代。
東京の呪術高専の職員室に腰掛けたフリーレンと五条悟は談笑に浸っていた。
「男の方も気になるけどよくあの宿儺から生き残れたね」
「まぁね、
相性どうこうの問題じゃないだろと五条は心の中でツッコミを入れる。
それほどまでに現在に伝わってきている宿儺の話は信じられないものばかりだ。
だが、僕のこの六眼ですら欺く魔力操作に卓越した戦闘経験。
あり得る。
だが、ふと気になることが一点あった。
フリーレンには拠点にしていた村があったはずだ。
まさかその村を見逃したのか?
「悟が思ってるようなことはしてないよ」
「…君さ、そうやって人の思考読むのやめたら?それも魔法?」
「違う、ただの人生経験」
むふーとない胸を威張り散らすその様を五条はめんどくさそうな顔して見つめる。
「簡単なことだよ、私は宿儺と”縛り”を結んだだけ」
縛りという言葉に五条の眉がピクリと動く。
呪術界において縛りとは絶対に遵守しなきゃいけないものであり、それを破れば災いが起こる。
宿儺とて例外ではない。
「私がスクナを構ってあげる代わりに村の人を殺してはならないという縛り」
「手を出さないという縛りにはしなかったんだ」
「提案したんだけどそれだと割には合わないって却下されちゃった」
「却下されちゃったかー…」
まぁ、でもあの宿儺と交渉出来るほどの実力者で間違いないね。
これ上層部がうるさくなるな…
今後のことを考え少しばかり憂鬱な気持ちになるがどうしても一つだけ聞きたいことがあった。
なぜそこまでして村の人を守ったのか。
フリーレンにとって人間の寿命なんて短い。
にも関わらず守った理由、その信念。
「どうして縛りまで結んで村の人を守ったんだい?」
その言葉にフリーレンはきょとんとした顔を浮かべた後懐かしむように言葉を紡ぎ始めた。
それはフリーレンを変えたわずか10年の出来事。
その中心にいた人物を思い浮かべながら、
「勇者ヒンメルならそうした」
そう言葉にした。