‐STRIKE WITCHES‐[戦車と魔女・Panzer-und-Hexe]   作:白岩

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私が生きるとこ

 時は西暦一九四二年。ネウロイが各地の土を汚してゆく中、北アフリカの戦闘でハルファヤ峠に孤立した連合陸軍部隊を救出するために立ち上がった一二人のウィッチがいた。ブリタニア王国陸軍所属の彼女達は祖国で製作された陸戦ユニットを利用しネウロイと交戦。連合空軍と残存部隊との絶妙な連携をとった善戦の末、多くの陸戦型ネウロイを破壊し、孤立していた部隊の救出に成功した。

 

 この戦闘とブリタニア王国陸軍、第四戦車旅団C中隊の行動は全世界に報道される事になる。その後、資源と魔導エンジンに余裕がある国は陸戦用ストライカーユニットをこぞって設計・製作・現地へ投入する不毛な競争が始まった。しかし、急いで前線へ配備させるあまり輸送の大半はウィッチ一人とユニット一機、整備パーツは後送してくる「アフリカ弾丸旅行」と称された方法でアフリカ戦線へやってきてしまった。転属された各国のウィッチ達は満足に同型のユニットと編隊を組むことも出来ず、統合本部の辞令で無理矢理に出身国の違うウィッチ達で部隊を編成させられる事になる。この事については現地のウィッチ達に抵抗は無く、以外にも「スオムスの独立義勇隊みたいで面白い」とのコメントが各隊の隊長から返って来る始末であった。

 

 それは北アフリカ最大拠点『トブルク』より約九〇〇キロ離れた都市『トリポリ』来訪している第三〇九連合軍統合戦闘機械化装甲団「Rolling・Witches」も例外では無かった。今日も先日の戦闘による疲弊を癒すためもあったが、トブルクに存在する連合軍人事支部へ補充兵の申請を行っていたので、今回は補充兵のお迎えが本当の来訪の目的である。

 

 いくら沿岸の都市でもアフリカの乾季である10月までは最低気温は27度を下回らず、最高気温は三〇度を裕に超えるので、暑い。そんなトリポリの港に1隻の連合軍属貨客船が入港する。全長が六〇メートル、全幅が一五メートルほどの船は数十分かけて船着場へ到着、荷降ろしを始めていた。貨客船の船首には[八女(ヤメ)]と白ペンキで塗られていた事から、扶桑皇国製の貨客船だと分かる。

 

「え…えぇ~っと…確か私のストライカーユニットは白い木箱に納まってて…赤い札が…アレだ!!…あった!あった!」

 

 漁港も兼ねる船着場であるため魚介類の腐臭が酷く、乗客は荷物の配達を港の入り口まで頼み、さっさと乗降口を後にする中。荷降ろしを続ける船着場で大きな木箱にしがみ付く不審な少女がいた。

 彼女の名前は竹西(タケニシ)・一美(ヒトミ)。扶桑皇国陸軍出身の軍曹で、年齢は一三歳。何故この歳にして下士官並の階級であるかと言うのは話さなくても良いだろう。扶桑の西に位置する大きな島の北部にある気高い山々に囲まれた村で育ち、五歳の時に家で飼っていたチャボの『吾郎』と契約を果たした後、僅かながら魔法を使用することができた。

 

 戦争が始まってからというものは国に一定量の米を供出せねばならず、家の食い口を減らすため、ウィッチを募っていた扶桑陸軍に入隊、難なく航空歩兵の身体テストに合格、ずば抜けた測定結果のため簡単な筆記試験で練習飛行にまで漕ぎ付ける異例の事態が起きたが、やはり体力だけでは不十分な箇所があり、複座式の練習機(アカトンボ)を訓練時に何機も墜落させている。実際なら強制除隊をされて当然な行為をしているが、その事を惜しく思った扶桑陸軍人事部は急遽「特別派遣措置」制度を作り、そして派遣される場所をアフリカに選んだのだ。

 

「ハァ~~…(もぅ、何で朝食中に西住中尉が私の配属辞令をいきなり机に置いてくるのよぉ。『昼飯前には出発だ』なんて言われて思わず了解しちゃったけど、原隊の配属先を見たのはその後だもんなぁ~)」

 

 一美は長旅の疲れからだろうか、長い溜息をついている。まさか練習機を壊した弁償が理由だと言う事には気づいていないのだろう。

 

 中には新品の飛行用ストライカーユニットが入っているはずの大きな木箱の隣には一美がちょこんと体育座りしていたので、彼女の近くに寄ってきた荷運びトラクターは木箱を回収せずに人ごみの中へ消えて行く。結果として一美の身の丈以上に大きな木箱は波止場に釘付けとなった。

さすがに持ち上げる事も適わず、引き摺るのは扶桑軍人の威厳として許されない。どうしようも無い事態に深く溜め息をついた一美の前に一台のトラックが停車する。しめた、相手が軍なら拾ってもらえるかもしれない。

 

「すいませ~ん、この辞令に書かれてる部隊に行きたいのですが~」

 

 一美は背伸びをしながらトラックの運転席に辞令の入った封筒を見せる。革張りの窓覆いからニュッと手が伸び辞令を引っ手繰る。しばらくトラック内の運転手は黙ったままだったが、いきなり車体のドアがばたんと開いた。

 

「お前が私達の新しい隊員なのか! 良かったぁ~。町中を探し回らずにすんだよぉ~!!」

 

 手間が省けた事に喚起している運転手は一美とさほど年は変わらない容姿をしているが、明らかに扶桑の人間ではない。一美が持つ綺麗な黒髪のロングヘアー、扶桑の流行髪型と違い、栗色のショートヘアを後頭部で結んでいる。今まで日差しの弱い場所にいたお陰で綺麗な一美の柔らかそうな肌と相対し、彼女の顔は強い日差しのせいか何処と無く赤っぽい。瞳の色も茶色と青色で大きく違うし、第一スタイルが大きくかけ離れている。 穿いているズボンも一美の真っ白なローレグでは無く、ズボンの上から薄青のタイツを穿き込んでいる。

 彼女は大きく開いた茶色い防暑シャツの胸元に下げる認識票を取り出し、一美にちらつける。

 

「私はマリア・T・フィールランド。リベリオン合衆国陸軍第九師団…まぁこれはべつにいいや…まぁ簡単に言えばリベリオン陸軍の中尉さんだよ。ようこそ!!我等が第三〇九連合軍統合戦闘『機械化装甲団』ローリング・ウィッチーズへ!!」

 

 マリアは右手を一美の前に差し出し、握手を求める。

 

「あ…あのぉ、フィールランド中尉どの…今の部隊名って、兵科は……」

 

 一美は額からダラダラと汗を垂らしながらマリアに質問する。

 

「お? 私達は『装甲歩兵』の第三〇九連合軍統合戦闘機械化装甲団・ローリン……」

 

「そんなぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 一美は両手で顔面を覆い、その場の人たちが驚いて振り返るほどの大声で泣き始める。これまでの長旅で疲れていた事と、誰とも接せない寂しさから開放された状態に先ほどの言葉はどんな刃物よりも一美の心に深く突き刺さっただろう。何も無いアフリカの空を飛べると言う希望だけを持って単身で海を渡った少女を裏切る事になろうとはマリアも予測していなかった。

 

「おおおちつけ!!?? ほら、きっと疲れて泣き出しちゃったんだなぁ?君の姉さんになる人たちがお風呂にいるから、入るついでにご挨拶行こうか? ね?? (何か何だか知らないけど…隊長は公衆浴場から出てこなくなって丸一日だし。ミイラ取りはとっくにミイラだしなぁ…でも、この事態は私じゃ解決できないって…ここは浴場まで連れて行くか…)」

 

 泣き喚く一美を抱き寄せ、彼女の口を自慢の胸で押さえつける。こうすることで必要外の騒音をカットでき、通りすがりの人が野次馬になる心配も無くなった。マリアは一美を抱き締めながらトラックの運転席に登り、すすり泣きに変わっている一美を助手席に座らせる。マリアの固有魔法を利用し、トラックの荷台へ木箱を浮遊させながら積載させ、自身は再度運転席によじ登る。周囲に集る人ごみをクラクションで追い払い、この運命的な出会いを果たしたトリポリの漁港兼船着場を後にした。

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