‐STRIKE WITCHES‐[戦車と魔女・Panzer-und-Hexe]   作:白岩

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一美「今回の話では私達、とっても空気みたいですよ!?」

マリア「何だって!? もしかしたら名前すら出ないのか!!」

一美「なんかそうみたいです、主人公(笑)ですよ本当に!!」


隊長会議

「つまり、君は観測機の得た情報を基に少数の装甲歩兵で組んだ斥候隊を既に確認された施設型ネウロイの他に存在するネウロイがいると思われる座標まで行かせ、その正確な位置をあの山の麓に作った砲兵陣地に伝達して砲撃を仕掛けると言うのかね?」

 

 ラーテの最後の武装組み込みが終了した頃、辺りはすっかり夜になっていた。隊長会議が始まる数分前、南部方面隊の最高責任者であるブリタニア王立陸軍の中将はラーテの整備士達に無理を言って車内の作戦室を貸し切り、そこで隊長会議を行うことになった。ラーテの作戦室に置かれた長机にはカセリーヌ峠の地図が敷かれ、消しゴムや鉛筆に部隊番号や兵科を記した簡易コマを転々と置いて議論していた。

 

 本来なら作戦が始まる数日前には行軍ルートも役割分担も決めているはずなのだが、集合が作戦開始の前日までに立て込んでしまったので今更議論を行っているのだ。割と大規模な部隊だが所詮は東・西部戦線に引き抜かれず現地警備に残された部隊が殆どなので精鋭とは言い難かった。

 

 そんな部隊の内、今回の南部方面隊に於いて総指揮権を持つブリタニア王国陸軍中将アーロン・ブレンダン・アッテンボロー中将は作戦室の全体が見渡せる位置に座っている。彼の周りにはカールスラント陸軍やロマーニャ陸軍の佐官が座っている。中将は先ほどの作戦行動の一部を立案したカールスラント陸軍の中佐を睨み付け、彼の言葉に誤りが無いのか釘を刺す。

 

「その方法が一番手っ取り早いと思われます、ほ、砲撃で大半のネウロイを破壊してから取りこぼしを戦車や装甲歩兵で一掃する計画でありまして……斥候隊の犠牲は免れませんが被害を少数に留められると思います……斥候隊は我々の指揮下にある第三三五統合戦闘装甲団を主体として――――」

 

 作戦室にいる将校達の視線を一身に受ける、丸眼鏡を掛けたまだ若い中佐は緊張でしどろもどろになりながら行軍中に急ごしらえで作った書類を読み上げる。しかし彼の説明は装甲歩兵の部隊名が出た所で止まることとなった。止めたのは中将の拳、彼の拳が机を叩いたとき、静かだった作戦室が更に静寂さを増した。ただ一人の軍人を除いては。

 

「貴様! その斥候に装甲歩兵を使うと言ったな!! 我々の貴重な戦力をそんな無駄な場所に割ける筈が無いだろう! 彼女達は世界の希望、人類を解放に導く者達だ! 貴様らが使うような吸着地雷とは違うのだぞ!!」

 

 アッテンボローは声を荒げて中佐を罵る。彼は中佐の言う装甲歩兵を使い捨てるような作戦行動には反対のようである。

 

「(ねぇミヒル、あの中佐……ちょっとかわいそうじゃない?)」

 

 会議には一般部隊の隊長や司令部勤務士官の他に、装甲歩兵部隊の隊長らも同席している。今回の作戦には十人規模の部隊が五つ参加するので、隊長の席は五つだ。つまり約五十人の装甲歩兵が投入される作戦であるが、エジプトで奮戦するようなマイルズ隊とは違い、今回が初の実戦である部隊を二つも抱えている有様だった。彼女達は机の一番端に座らされていたので実質会議に参加というより傍聴席に座っているという感覚だった。

 

「(まともな将校の大半はガリアで土に還ってるからな……人命も省みない、ただ計算上の説だけで作戦を組んでも無理ないさ)」

 

 青ざめた顔で席に座る中佐を見たラナタが隣に座るミヒルへ耳打ちする。二人はブリタニアで行われた部隊再編時からの付き合いであり、エトナが親友以上と言うならラナタは悪友である。

 

「(それにしても後ろの娘、なんか怖いぞ……たぶん私とラナタより目つき悪い)」

 

 統合戦闘装甲団の隊長の席には一人ずつ中将の秘書と思われるブリタニア陸軍の熱帯用戦闘服に身を包んだ少女が付いている。彼女達はミヒル達と違って下を『穿いている』のでウィッチかどうかは怪しいが、その挙動や目つき、直立不動の態勢は装甲歩兵より凛々しい。もしかすると航空歩兵より礼儀正しいのではないかといい雰囲気を漂わせる。

 

「(これに乗った直後から各隊長に一人ずつくっついてる……護衛かしら? 気持ちミヒルに付いてる人が一番強そうな気がする)」

 

「(私達を護衛する必要なんてあるか? そりゃ確かにうちの隊員が落書きしたりしたけど……大の隊長が悪戯なんてするわけ―――)」

 

 ないじゃない、そう言おうとしたミヒルの目の前にいきなり背後にいた少女の顔が現れる。東欧系の鷲みたいな尖った顔立ちにエトナに似た青い瞳、とうていブリタニア人とは思えない美貌だ。あんな紅茶くさいクリスと比べる事自体失笑モノと言える。

 

「うるさいですよ。 会議に集中してください」

 

 彼女は氷柱に似た冷たい声でミヒルの言葉を遮る。鳶色の瞳を持つミヒルが見た彼女の瞳には輝きは無く、どこまでも潜っていけそうな程に沈んだ青だった。これには部隊の中でも怖いもの知らずなミヒルも思わず竦み上がる。

 

「しかし、犠牲を出さないもならその計画も使えるかもしれん。三三五の隊長さん、やれますかな?」

 

 アッテンボローの質問に第三三五統合戦闘装甲団の隊長が胸に手を当てて立ち上がる。第三三五統合戦闘装甲団と言えば先の合同演習で三〇八を撃破したものの三〇九に奇襲を食らって敗退した部隊だ。そしてミヒルの向かい席に座っていたのは紛れも無くミヒルが放った模擬弾を眉間に食らった間抜けな魔女だった。

 

「はい! この第三三五統合戦闘装甲団隊長、フリーデ・エッダ・バウムガルテン少佐にお任せください!! 必ずネウロイの居場所を見つけ、生還して見せます!!」

 

 そう言って座ったフリーデと名乗った三三五の隊長はしたり顔でミヒルを見つめる。童顔に顎の高さで切りそろえた金髪に小さな髪飾りを付け、カールスラント陸軍の熱帯用野戦服にも少佐の階級章横にペンダントを付けていかにもお嬢様風の着飾りだ。こんな成りをしていてもネウロイには勝てないと言うのに、何かを勘違いしている。

 

「宜しい、では我が空軍の偵察機を回してくれるように無線連絡を入れよう。そうすれば座標送信後に彼女達を収容して安心な生還を約束できる。他の装甲団は自分の部隊が何をするか覚えているかな? そこの三〇九の隊長、言ってみなさい」

 

「えぇ!?……あ、あの……わ、私達の任務は……え~っと」

 

 いきなり話を振られて同様するミヒル。こういう会議にはエトナに頼み込んで代理で出席してもらっていたが、今回は会議するだけで復唱は無いと思っていたのだ。緊迫している作戦室の中で愛想笑いしかできないミヒルに呆れ気味のラナタが立ち上がり、ミヒルの尻を叩いた。

 

「第三〇九統合戦闘装甲団は我々第三〇一統合戦闘装甲団と共に施設型ネウロイの手前までラーテを護衛、ラーテが戦闘を開始したら護衛を終了しネウロイの側面から奇襲を掛けます。施設型ネウロイの破壊を確認したら作戦終了であります」

 

 尻を叩かれて変な声が出たミヒルに代わってラナタが復唱する。

 

「そうか、合同で行動するなら良いか。他の部隊も復唱は省略するが全て頭に叩き込んで置くように。隊長が忘れてはいかんからな」

 

 顔を赤らめたミヒル座りながらがラナタに小さく「馬鹿」って呟く。作戦室の空気を和ませる事は出来たが、装甲団の隊長達は口に手を当てて笑っている。間違いなく馬鹿にされているのだ、しかし後ろの少女達はピクリとも笑わない。ミヒルもラナタも会議そっちのけで少女達の動向を探っていたが、結局最後まで何もわからなかった。

 

「今回の会議はここで終了とする。各自部隊のテントに戻って休息をとる様に。では解散だ」

 

 作戦室の全員が起立し敬礼を行う。アッテンボローが返礼し、手の平を下ろすと他の将校たちが腕を下ろした。作戦室から段々と人が減り、あの失言を犯した中佐も作戦室を出ようと鞄に書類を詰め、最後に通路へ出ようとした所、側近の少女達に囲まれた。

 

「いやぁ、怒鳴って悪かったね中佐。君の作戦も別に悪いわけではない、むしろ凄い合理的だと思ったよ」

 

 笑いながら近づくアッテンボローの声はちっとも笑っていない。まだ怒っているのだろうか。この期に及んで側近の少女達も笑っていない。

 

「いえ、とても人命軽視な作戦を立案した自分が恥ずかしいです。収容まで考えた中将殿に……遠く及びません」

 

「いやいや、私も若い頃は無理な計画を立てたりしたものだよ。それに君、眼鏡にゴミが付いてるぞ?」

 

 中佐も愛想笑いをして眼鏡を外し、持っていた布巾で眼鏡のレンズを拭く。中将は彼の周りを歩きながら話を進める。

 

「そういう時は上官が私に休暇をプレゼントしてくれた。休暇を満喫した後の作戦立てでは頭が冴えるんだよ。良かったら君も休暇なんてどうだね?」

 

「有り難いです、元連合軍幕僚である中将殿からそのようなお言葉が頂けるとは。それで休暇は作戦が終わってからですか?」

 

 そう言って眼鏡を拭き終わり、また両目に掛けようとした中佐の右腕を側近の少女が掴む。フリーデの後ろにいた赤毛の少女だ。

 

「いいや、『今から』だよ――――中佐殿」

 

 その瞬間、ミヒルの後ろにいた少女が中佐の眼鏡を右手で払い落とし、空いた左腕で中佐の左肘を間接とは逆方向にへし曲げる。中佐の左肘はいとも簡単に砕かれ、あまりの痛さに苦悶の声を上げようとするが、それより早くにラナタの背後に立っていたアジア系の少女が繰り出した掌底によって喉仏を潰された。息が苦しくなった中佐は右腕を必死に振り回し、右腕を掴んでいた少女の手を振りほどくと腰に提げていたP38拳銃を引き抜こうと黒革のホルスターに手を掛けた。

 

 床に落ちた丸眼鏡を踏み潰して遊んでいた北欧系の少女が中佐に走り寄り、中佐の手より早くホルスターから拳銃を抜き、慣れた手つきでスライドを引いてから弾倉を外して分解用レバーを回転させ、スライドと銃杷を分離させる。

 

 抵抗手段が無くなった中佐は四人の少女に殴打され、床へ仰向けに倒れている。まだ自分の状況が理解できていないらしく、薄れる意識のなかで中将を見上げる。今度の中将は笑っていた、側近の少女達も笑っている。なのに自分は許されたような気がしない、意識が遠のく、体に力が入らない。早く他の部隊に伝えねば、この中将の本当の狙いを―――――――

 

 

「私の狙いはこの作戦での功績を独り占めする事にある。幸い此処に集まった部隊長は皆が受身的性格の者ばかりで助かったよ。しかし君は違った、君も私みたいに出世を狙っていたんだ、だから消させてもらう。 道理に適っているだろう? って、もう聞いていないか」

 

 禿げた頭を制帽で隠し、如何にも悪人とでも言った方が相応しい風貌のアッテンボロー中将、今までは連合陸軍を支える柱の一つを受け持つ程の大物であったが、ある日の会議で彼の汚職が判明、連合軍幕僚を解任させられていた。

 

 汚職と言ってもあの手この手で脱税した金をブリタニアの孤児院へ寄付していたとか、私欲で使った訳ではなかったのでブリタニア国内で罵声を浴びせられる事はなかった。

 

 彼の目的はもう一度連合軍幕僚へ返り咲く事であり、彼に付き従う側近達も彼の為にあらゆる手を尽くしてきた。拉致も誘拐も殺しも、全て孤児院出身の彼女達の仕事だ。孤児院を対象にした魔女検査で素質ありと判定されながらもウィッチ入隊を拒んだ少女を中将は莫大な給金を条件に登用し、幕僚の仕事を手伝わせたりさせていたが、最近は現幕僚の夜の相手だとか殺しの仕事ぐらいしかやっていない。全員が処女で無くなり、二人も魔力を失った。しかしそれでも中将に付いて行くのだ。全ては自由と富をくれたアッテンボロー中将の為に。

 

「そいつを離れたところに埋めて来い、誰にも見つからないようにな。他の面々には彼が夜中の内にマレスの補給基地へ発ったとさせておこう。その途中で飛行機事故にて死亡、こりゃ良いシナリオだ」

 

 床の絨毯に中佐の死体を包んで通路に運び出す少女達。既にラーテの車内に人影は無い。乗員も居住区で就寝しているので死体を運び出す分には最適な時間だ。端から見ても車外へ絨毯を運び出す魔女二人としか見えない。もし歩哨に見つかっても絨毯に飲料を零したので砂洗濯するんだと言えば良いのだ。

 

 アッテンボロー中将もリーダー格の少女と共に自らのテントへ戻る。『喫煙禁止』と書かれた張り紙の隣で葉巻に火を付けた中将は、まるで何事も無かったかのようにラーテを後にした。

 

 

 中将がテントに帰った頃、死体を埋めに行った少女三人はラーテから数十メートル離れた斜面の裏側に穴を掘り、絨毯ごと埋めようとしていた。砂漠の地形は変わりやすいし、万一地表に出たとしても此処はまだ生物がいる。虫か鳥にでも食べられれば残りは骨程度しか残らないだろう。

 

 そんな作業を知ってか知らずか、三人の所に近づく一人の影があった。お腹を押さえて気だるそうに歩いているのは濃緑色の勤務服を着た一美だった。

 

「(うえぇ~……井戸水そのまま飲んだらお腹がゴロゴロしてきた……)」

 

 どうやら用を足す格好の地点を探しているらしく、三人と死体が隠れている斜面の頂上をぽつぽつと歩いている。三人は作業を止めて見知らぬ装甲歩兵の動向を見つめていたが、運悪く目が合ってしまった。

 

「そこの三人さ~ん。絨毯敷いてお楽しみするなら風下で用足しても良いですか~?」

 

 何も知らない一美は絨毯を抱えて人目の付かない場所にいる三人がおっぱじめるんじゃないかと思っていたが、三人のうち赤毛の一人が物凄い形相で睨んでくるので一美は尻尾を巻いて逃げ出した。

 

「……顔、見た?」

 

「いいえ、でも緑色の制服着た女の子だった」

 

「……ばれる前に、あの娘も消す?」

 

「私達で片付ける問題、ちゃんと“姉妹”で話し合いましょう」

 

 中佐の死体を『埋葬』した三人は中将のテントへ戻ったが、目撃者の話は中将には話さず、側近の仲間にしか話さなかった。結論は明日の出発前に目撃者を炙り出し、本当に現場を目撃したか確認を取ろうと言うことで終わった。その頃の一美は毛布に包まってガタガタと震えていた。相当睨まれたのが怖かったようだ。

 




すごくお話がややこしくなってきました(笑)

彼、アッテンボロー中将はブリタニア優勢のミリタリーバランス構築とかを考えず、ただ自らの名声の為に動いてるだけなので政治的要素は一切ありません。
それでも邪魔者は殺します、自国の将校だと側近に頼んで骨抜きにさせます。

P38拳銃のテイクダウン方法がちょっと分からなくて苦労しました(汗)
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