超強い先生+@がキヴォトスにやってきたやつ   作:夜叉烏

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取り敢えず次でヘルメット団の追撃回は終わりの予定です。
幹部キャラは今後も出したいけど、ゼウス先生の出番がとられないか心配だ。


蹂躙ほど痛快な単語はない②

「シッ!!」

 

――バキャアッッ!!

 

「ぶお゛ぁッ!?!?」

 

 エヴァの一息と共に放たれたストレートリード――ジークンドーの挙撃が、団員の顔面に真正面から突き刺さる。

 軽やかなフットワークとステップ、体重を乗せることで遠い間合いから、キヴォトスの生徒でさえ反応できないスピードで飛ぶ、神速の打撃。

 徹底した部位鍛錬によって鋼鉄の如き硬さとなった拳、そしてチタン合金を埋め込んだミリタリーグローブも手伝い、トレードマークであるヘルメットの顔面部分は容易く撃砕され、顔のど真ん中にその一撃がめり込む。

 殴られ慣れてない彼女はひとたまりもなく白目を剥き、鼻血を噴水の如く噴き出して昏倒する。ヘルメットがなければ顔面の骨全てが粉砕され、下手くそな福笑いの如く歪んだ顔になっているところだ。

 

――ドスッ!!ドスッ!!

 

「み゜ッ!?!?」

「おぉう…痛そ」

 

 続けて、弾切れなのかヤケクソ染みて銃床を振りかぶってきた団員の攻撃を紙一重で回避し、上体を倒して小柄な少女の内懐まで入り込むと、これまた体重の乗った拳の連撃。共同戦線を張るホシノが思わず声を漏らす。

 1発目は右人差し指の一本拳による打撃を壇中(だんちゅう)に。胸のど真ん中にあるこのツボは、一撃されると内臓に響き、かなりの苦痛を伴う。

 それも、徹底的な部位鍛錬を施された一本拳。打撃の威力が一点に集中されているのもあって、かなり効いたようだ。

 2発目は左手人差し指の先端を、ヘルメットの隙間から僅かに覗かせる顎の付け根に突き立てた。

 ただの指先とて、部位鍛錬によって鍛えたそれを神速で打ち込めば、最早弾丸と変わらない。それに、顎の付け根は人体にとって弱点であり、ここを一撃されると脳が揺さぶられ、意識が飛ぶ。

 壇中と顎の付け根――急所を2か所、1秒未満の間に潰された彼女は、頓狂な呻きを発して地に這った。

 

「ひぃっ!?く、来るなぁ!!」

 

――ドォンッ!!

 

「あぎゃぁッ!?」

「そんなの言ってる暇があるなら撃った方がいいぜ!」

 

 発狂して銃を向けてくる団員には、アドバイスを残しながらM590M"ショックウェーブ"の射撃。バックショットがヘルメットを粉砕し顔面を穿つ。狭い工場内が戦場であるため、嫌でも至近距離の撃ち合いになる。ショットガンの独壇場だ。

 被弾の衝撃でふらふらになった所へ肉薄し、顎を掴み足払いすることで背中から転ばせ、顔面を踏みつけてやれば、忽ちヘイローが消えて気絶した。

 ホシノは女子の顔を躊躇なく踏みつけるエヴァに若干引いたが、ヘイローのない彼にとって、中途半端な攻撃はできないのだろう…と判断し、その気持ちを心の奥に封じた。

 

「おじさん、リロード!」

「はいは~い。カバーするよ~」

 

 遮蔽物に隠れて散弾を込めるエヴァの時間を稼ぐように、ホシノが射撃する。さっき会ったばかりにしては、中々いいコンビネーションだ。

 

「ほれほれ~、手榴弾の押し売りだよ~!」

「そんなんいらねぇぇぇぇっ!?!?」

「いぎゃあぁぁぁッ!?!?」

 

 "ブルーシャーク"の兵員室から拾い、ショットシェル共々盾の裏に隠し持っていた手榴弾を複数、纏めて投擲。消耗品である手榴弾を惜しみなく使えることが余程嬉しいのか、彼女の声色がやや高い。

 コンテナにバイポットを立て、なんちゃって機関銃陣地を構築し応戦していた団員たちは、ホシノの強肩により放られた数発の手榴弾の炸裂に吹き飛ばされ、意識を飛ばした。

 

「くっそぉぉぉぉッ!!」

 

――ダダダダッ!!

 

 ガス爆発に巻き込まれたためだろう、服と顔を黒く煤けさせた不良の1人がヤケクソになってアサルトライフルをホシノに向けて乱射するが、彼女は盾を構えて弾丸を弾きながら突進し、そのまま軽く体当たり。

 体勢を崩した団員の腹にショットガンの銃口を、まるでヨーロッパ槍兵がランスで敵を突くかの如く思い切り捻じ込み、そのままトリガーを引く。

 

――ドォンッ!!

 

「ぐふッ!?」

 

 神秘が込められた散弾の零距離射撃を喰らった一介の不良は、壁に叩きつけられてひとたまりもなく崩れ落ちた。

 

「おらぁッ!!」

 

 吹き抜けになっている二階通路から飛び降り、ホシノの真上から襲い掛かる団員。

 

「七面鳥発見!」

 

――ドォンッ!!

 

「ふべらッ!?!?」

 

 リロードを終えたエヴァが、狩猟で鳥を撃ち墜とすかのように、空中で身動きの取れないヘルメット団員にバックショットを叩き込んだ。

 被弾により落下の軌道を変えられ、撃墜された団員は、腹から地面に叩きつけられ、呻く間もなくホシノが盾を突き立てて押し潰す。

 

「ナイスおじさん!」

「エヴァさんもナイスだよ~」

 

 エヴァはすっかり、ホシノに対する『おじさん』呼びに違和感がなくなっていた。いつも冷静な相方(ジオルジョ)を常に『オッサン』と呼んでいるためかもしれない。

 

「これで工場内はクリア、と…。それじゃあ次行こうか~」

「あぁ。総帥は1人も逃がすなって言ってたし」

 

 平屋の工場で、満身創痍になりながらもなんとか抵抗を続けていたヘルメット団の生き残りは全員始末完了。

 ノノミは得物の都合上、狭所での戦闘は苦手であるため、堂々と広場に陣取ってM134をぶっ放している。士気がどん底の状態での奇襲であるし、直ぐに片付くはずだ。

 

「おじさん、意外とワイルドな戦いするねぇ。気に入っちゃったな!」

「そっちもね~。ていうか撃つよりも殴ったり蹴ったりが多…いやそっちがメインになってない?よく銃持ち相手に突っ込めるね~」

「度胸だよ度胸!それに、銃よりも単純に殴る方が効いてる疑惑あるし」

「う~ん…まぁ、キヴォトスの皆は銃弾って喰らい慣れてるからね~。確かに殴ったり蹴ったりの方が効く…かも?」

 

 そんな雑談を繰り広げながら、古びた産業機械やコンテナ、鉄骨等が放置された屋内を駆け抜け、外へと出る。

 M134を持ったノノミ、M2重機関銃の銃座を受け持つゼウス、"ブルーシャーク"を盾に応戦しているセリカが、主戦場である正面広場を受け持っている中、建物裏や路地を掃除(・・)するのだ。

 

「早くしろ!」

「逃げろ逃げろ!」

 

 赤黒の服を纏ったヘルメット団員が、ノノミやゼウス、セリカの銃火から逃れようと、広場から走ってくる。

 建物裏や路地には、ジープや装輪戦闘車――南アフリカ軍が採用しているルーイカット装甲車に酷似している――が停車しており、それに乗り込んで脱出を図ろうとしているようだ。

 

「…意外といいもの持ってるねぇ」

「うん…ただのチンピラのくせに、一体どこから手に入れてくるんだろ?」

 

 まさかジープのみならず、戦車に劣らない火力を有する装輪戦闘車まで複数両保有しているヘルメット団の装備の良好さに、2人して疑問符を浮かべる。

 

「ま、そんなのは後で考えよっか。まずは…」

 

 物陰から飛び出したホシノは、手近の団員をシールドバッシュで数十メートル吹っ飛ばすと、急いでジープへ乗り込もうとしている団員の背中に散弾を叩き込んで気絶させた。

 

「おぉ、判断が早い。いいねぇ!」

 

 エヴァは近場のジープの車体に手をかけ、一息で飛び乗ると、ホシノばかりに目が行っている敵の背中や側面を車体上面から次々と撃ち抜く。

 ベルトに引っ掛けてある手榴弾を隣のジープのサンルーフへ投げ入れ、エンジンをかけようと躍起になっていた団員と、後部座席からそれを急かす彼女を纏めて吹き飛ばした。

 

『えぇい、こいつを喰らいなぁッ!!』

 

 辛うじてエンジン始動が間に合ったルーイカット擬きの砲塔が旋回し、62口径76ミリ砲の細長い砲身がホシノへ指向される。

 

「ッ!?おじさん、逃げろぉッ!!」

 

 戦闘が始まって以来、エヴァが初めて声を荒げる。ホシノの盾は、これまで数多もの銃弾を撥ね返してみせたが、流石に戦車砲は防げない…そう直感した上での、絶叫に近い言葉だ。

 

『終わりだ、小鳥遊ホシノぉッ!!』

 

――ドォンッ!!

 

 細長い砲身の先端から、轟音と橙色の発射炎と共に放たれた76ミリ榴弾は、真一文字にホシノが構える盾のど真ん中を直撃し、爆炎を沸き立たせた。

 エヴァは言葉を発することができず、彼女の破局を予感し、ジープの上で固まってしまう。

 

「危ないねぇ~。私レベルじゃなきゃ一発アウトだよ~」

「「「!?」」」

 

 だが、なおも聞こえてくるのほほんとした声に、その場の全員が絶句した。

 爆炎の中からスタスタと歩いてくる小柄な人影。擦り傷どころか煤汚れ1つないホシノが、やれやれと言いたげにいつもの調子で立っていた。

 

「…それじゃ、御返しだよ~」

 

 ホシノのヘイローが一際輝いた…と思った瞬間、彼女は盾とショットガンを構えたまま、自身に砲弾を叩き込んできた装輪装甲車に吶喊した。

 砲塔に取り付けられた同軸機銃での攻撃を難なく撥ね返しながら、ルーイカットの数メートル手前まで差し掛かった時、彼女のEye of Horus(ベレッタ1301)が火を噴く。

 

普通なら、散弾を装甲車両に撃ち込んだところで、空しく跳ね返されるだけだ。

 しかし、今ホシノが叩き込んでいるのは、彼女の誇る強力な神秘が込められ、威力が格段に向上した代物。

 銃口から放たれる、神秘を纏って光輝く散弾の嵐は、まるでドラゴンが火を吹いているかのような、美しくも破壊的な光景を作り出していた。

 

 ホシノが放った散弾の群れは、ルーイカットを押し包むように命中。

 車体や砲塔の装甲が削られ、タイヤがパンクした挙げ句脱落し、被弾の衝撃が重量30トン近い車体を浮き上がらせて横転。

 散弾の嵐に揉みくちゃにされた装甲車は、まるでピラニアの群れに食い散らかされた草食動物のような有り様になっていた。

 

「すげぇ…」

 

 地球での銃撃戦では起こり得ない光景に、エヴァは思わずそう呟いた。

 人ひとりが装甲車両を破壊するのは可能であるが、それはあくまでRPG等のロケットランチャーやC4といった爆発物を使用した場合だ。

 銃一丁だけで、装甲目標を破壊するなど有り得ない。地球の常識では図れない、キヴォトスのハチャメチャさを目の当たりにした気がした。

 

――ボフンッ!!

 

「おわ!?…あ、オッサンかよ!」

《後ろが留守だぞ、エヴァ》

 

 突如、エヴァの後ろに止められていたジープが、まるで膨らませすぎた風船が弾けるかのように爆発し、フロントガラスやドアが内側から吹き飛んで火炎が噴き出す。

 不良の1人が宙を舞っており、車内からエヴァを狙っていたらしい。

 建物2階の通路から、グレネードランチャーを取り付けたDSAR-15Pを構えるジオルジョの擲弾攻撃が、ジープを爆発炎上させたのだ。

 次いで、彼は滅多に使わないフルオート射撃による機銃掃射を浴びせる。ジープの車体に火花が散り、外板を穴だらけにして周りの何人かを撃ち倒した。

 

《エヴァさん、そこ離れてて》

 

 無線からシロコの声が聞こえると同時に、プロペラが風を切る音が聞こえてきた。彼女が先に用いた、武装ドローンのものである。

 咄嗟に、エヴァはジープから飛び降りて離れる。

 

――ドオォォォンッ!!

 

「「「ぎゃあぁぁぁぁぁっ!?!?」」」

 

 ドローンから放たれた小型ミサイルの群れが車列の周りに落下し、団員たちは爆炎に飲み込まれた。

 機関砲弾を跳ね返す程度の装甲はあるルーイカットは、弾片や爆炎に耐えたものの、非装甲車両であるジープはそうもいかず、複数台が爆発・炎上する。

 

「こっちも片付いた。広場に向かって総帥たちを援護するぞ」

「はいよ!」

「は~い」

「うん」

 

 この場で一番の年長者であるジオルジョの指示。エヴァは勿論、仲間の援護に賛成的なホシノとシロコもそれに従う。

 しかし、後者が皆に待ったをかけた。

 

「あ、ちょっと待って」

 

 シロコが未だ健在なルーイカットに近づき、車体上面のハッチから内部へ身体を滑り込ませる。

 若干前かがみになり、ガサゴソと計器やレバーを操作すると、十秒程度でエンジンがかかった。

 

「…どこで操縦法を習った?」

「何となく。車の動かし方って基本どれも同じでしょ?」

 

 顔を顰めるジオルジョの問に、シロコは何でもないかのように簡潔に応える。そうは言うが、強力な戦車砲を備える装甲車と、当たり前にそこらを走る一般車を比べるのはどうかと思ってしまう。

 とはいえ、キヴォトスでは戦車が一般車に混じって走るなんて常識であり、戦車をはじめ火砲や装甲を備える車両は、普通自動車の同じ感覚で教習所に通い、免許を取れば合法で乗れるのだが。

 

「やってんねぇ。おじさん、この子将来碌な大人にならないかもよ?」

「うへ、否定できない…」

「ん、それほどでも」

「シロコちゃん、褒められてないよ~」

 

 揶揄うようなエヴァに、シロコのアウトローっぷりを知るホシノは何も言い返せない。

 当のシロコは、何を思ったのか照れたように後頭部を撫で、またホシノがツッコむ。

 

「皆乗って。ホシノ先輩は車長ね」

「…え、私~?」

 

 後は皆に任せて中で寝ようと考えていたのか、シロコの勝手な任命に、表情が僅かに強張るホシノだった




次辺りでやっとゼウス先生の出番が来そうです。
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