超強い先生+@がキヴォトスにやってきたやつ   作:夜叉烏

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早速人外っぷりを発揮していくぅ。
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哀れ不良たち①

窓ガラスが割れ砕け、外壁が爆炎に撫でられ、所々崩れ落ちたビル、銃痕や砲弾孔があちこちに開いた道路、絶え間なく鳴り響く銃声…こんな光景も、ゼウスにとっては見慣れたものだ。

 

「ひゃっは~~~~っ!!」

 

「ぶっ壊せぇ~~~~っ!!」

 

 しかし、一昔前の不良の恰好をした女子高生が銃を撃ちまくる様は今までの人生で拝んだことはなく、彼は戸惑いを通り越して感嘆すらしてしまった。

 

「な、何よこれ!?何で私が不良たちと戦わなきゃならないの!?」

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すには、あの部室の奪還が必要ですから…」

 

「それは聞いたけど…!私これでも、うちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど!何で私がこんなこと…!」

 

 会話の内容から、ユウカはそこそこ偉い地位にいる人物らしいと結論付けた。だが、最前線ではそんなものなど飾りに過ぎないものである。

 

「危ないぞ、ユウカ」

 

「きゃっ!?」

 

 此方に銃口を向けていた不良に気付いたゼウスは、即座にユウカの足を払う。彼女は尻もちをつき、頭上を凶弾が通過した。

 遅れてゼウスもすぐ近くの瓦礫の山にユウカを引っ張っていき身を隠し、飛来してきた銃弾が石屑を噴き上げさせるのを見たスズミ・ハスミ・チナツの3人が、ゼウスに続いて瓦礫の後ろへ隠れた。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、いえ、ありがとうございます!」

 

 幼気な少女に足払いを掛け、乱暴に腕を掴んで引っ張ることになってしまったが、命には代えられない。

 ユウカもそれは分かっていたようで、文句は言わなかった。ついでに言うと、顔がやや赤かった。

 

「っ!先生、肩に…!」

 

 スズミが、視界に入ったゼウスの肩を見て小さく叫んだ。

 ユウカに足払いした直後、彼は肩へ衝撃を感じていた。ゼウスにとって懐かしい被弾の感覚。弾丸の影響か、嘗て経験したものより痛みを強く感じた。

 

「先生、此方へ!傷を診せてください!」

 

 血相を変えたチナツが、カバンから包帯やら消毒やらを取り出していく。彼女の担当は衛生兵かと、ゼウスは判断した。

 だが、これ位は慣れている。

 

「あ?…ホローポイント弾とは物騒だな」

 

 肩の表面で止まった弾丸を指で摘まむ。潰れてしまっているが、変形具合からホローポイント弾と推定した。

 

こんなものを盛大にばら撒くとは、奴らも中々イカれてるな…心の中でそう呟くゼウス。

 

「「「「…???」」」」

 

 宇宙人を初めて見たような顔…とでも言えばいいのだろうか。とにかく、目の前の光景に理解が追い付かない様子でゼウスを見つめるキヴォトス人4名。

 当然である。ホローポイント弾とは、弾頭に窪みを設けることで、人体へ命中した弾丸が膨脹・炸裂する代物。一撃で致命傷を負わせる対人特効の凶弾なのだ。

 キヴォトス人ならともかく、ヘイローを持たない軟弱な人間が食らえば、一撃で四肢のどれかが欠損、最悪あの世行き…のはずだった。

 

 そんな彼女らを他所に、ゼウスは戦場でのルーティーンをこなしていく。

 懐に手を入れ、黒く細長い煙管を取り出すと、先端に香料物質の塊を入れ、マッチで火を点ける。

 

「…って、いやいやいや!何暢気に煙管を吸ってるんですかっ!?」

 

「俺のルーティーンだよ。安心しろ、これは煙草葉を使わないもので全く無害なものだ。心配はない…あぁ、生徒の前で軽々しく喫煙するのはダメか」

 

 なお、ゼウスが吸っているのは、様々な香料を配合してタバコ葉の効能を完全に代替、燃焼しても身体影響のない食品燃焼性タールを排出する、無害な『タバコ葉擬き』である。

 これを紙煙草にしたタイプもあるのだが、燃焼した紙の匂いが邪魔だとして、ゼウスのお気には召さなかった。

 

 いつも通りの吸い方で他人に迷惑を掛けない理想の煙草だが、相当な愛煙家からすれば若干物足りないらしい。

 なお、この無害タバコ葉を開発したのは彼の組織の研究開発班である。

 元々、ゼウスは普通の煙草を吸おうとしたのだが、そんな中で研究開発班が開発した無害タバコを吸ったところ、案外彼の好みだったらしく、健康的ということもあって、それ以来此方を吸うようにしていた。

 

「あぁ…。まぁ、確かにそうですね。自他に悪影響がないものとはいえビジュアル的には問題ですから、自粛してください、先生。……って、そうじゃなくて!!」

 

 見事なノリツッコミを入れるユウカ。ここだけ見れば、完全にコメディの絵面だった。

 PMCに入った新人が同じような反応を示していたことを思い出し、薄く笑いながら、黒いマスクをずり下げる。

 

「「「っ!!」」」

 

 治療しようとすぐ隣に来ていたチナツが、次いでゼウスの身を案じていたスズミとハスミが、最後にノリツッコミによる昂ぶりから冷めたユウカが絶句した。

 

 口の端から耳元にかけて、ズタズタに裂けた傷跡があったのだ。傷跡はギザギザで、まるで強い力で一気に引き裂かれたかのような傷。

 キヴォトスに住む彼女たちは、このような深手を負うことはない。チナツは医療従事の経験が、ハスミは委員長ツルギが作り出した悲惨な現場の事後処理を担当したことがある身だが、こんな傷を見るのは初めてだ。

 

 この深手を負ったとき、ゼウスはどんな状況だったのか、どれほどの激痛が彼を襲ったのか、想像もつかないし、できればしたくない。

 

「あぁ、これか?…まぁ、正義の味方ぶったツケだよ。その行動に悔いはないけどな」

 

 それだけ応えると黙り込み、香料の塊を燻した煙を吸い込み、吐き出し、香りを楽しんでいく。

 その様子は、ゼウスの整った顔立ち、目元をサングラスで隠したミステリアスさが相まって中々様になっていたが、傷跡のインパクトが大きすぎるあまり気にならず、黙って見ているだけだった。

 

「ふぅ~~…ユウカ。お前、何ができる?」

 

「……へっ?」

 

 吸気する度にどことなく安堵しているかのような、穏やかな表情を浮かべるゼウスだったが、煙管を咥えたまま唐突にユウカへ向けてそう訊いた。

 突然質問されたユウカは、自分でも驚くほど間抜けな声を漏らす。それほど、明らかに普通じゃないゼウスの得体の知れなさに言葉を失っていたのだろう。

 

「戦場でお前はどうやって戦う?どんな役目を果たすんだ?教えてくれ」

 

 より詳細な質問を投げられ、ユウカはやっと放心状態から脱した。

 

「え、えっと…見ての通り2丁のサブマシンガンでの銃撃、それから電磁シールドを発生させることで敵の攻撃を防ぎます。前衛で攻撃を受けつつ、ついでに私自身も攻撃…といったところですね」

 

「…ほう?」

 

 『電磁シールド』のところで、ゼウスは僅かながら驚きを露にする。SF映画でしか見たことのない技術に、興味が刺激されたようだ。

 

「なるほど、興味深い。…じゃあ銀髪のお前、名前と所属、戦い方を教えろ」

 

 続けて、無害な副流煙が立つ煙管の先でスズミを指し、自己紹介も兼ねて自らの戦法を聞き出す。

 

「は、はい…。守月スズミです。トリニティ総合学園で自警団活動を行っています。基本的にアサルトライフルを使いつつ、閃光弾で敵の制圧を行います」

 

「通常のグレネードではなく、閃光弾を使うのはなぜだ?」

 

「その…なるべく相手を傷つけないように、です」

 

 自警団らしいな…とゼウスは心中で呟く。

 

「…ふむ、スズミは優秀のようだ。こうして話をしてる間も索敵を怠らず、周囲に気を配っている。訓練なり実戦なりで身に付けた技術と努力が垣間見える。それに、『相手を傷つけない』という自らに課した使命を守り続けるその姿勢、感服した」

 

「え、あ…その…ありがとうございます」

 

 このようにべた褒めされた経験のないスズミは、どんな反応をしていいのか分からず、嬉しさと戸惑いが混じったよく分からない顔をするばかりだった。

 ゼウスは褒めて伸ばすタイプだ。自らの組織に新入りが入隊した際は、彼らの訓練を見学し、まずは上手くできているところを褒め、ついでに改善点を伝える。

 

「…よし、じゃあ眼鏡のお前。さっきは気遣い感謝する」

 

「い、いえ…ご無事なようで何より、です…」

 

 煙管を咥えたまま、にこやかに感謝を伝えるゼウス。口角を上げ、尖った犬歯――それにしては尖り過ぎているように感じる――が見え、サングラスの奥に薄っすら確認できる目つきもどこか柔らかい。

 初めてのイケメン男性の笑みに、先ほどのユウカ以上に赤面させるチナツだった。

 

「ひ、火宮チナツです…。私は基本的に後方支援に徹して、ドローンで医療物資の投下、今回は風紀委員の歩兵1個中隊を連れてきているのですが、その指揮を行います」

 

「ほう、現場指揮官としての任務もイケるか。それにやはり衛生兵…危なくなったら世話になるからよろしく頼む。それと、流れ弾には十分注意しろ…それじゃあ」

 

「羽川ハスミと申します。トリニティ総合学園、正義実現委員会の副委員長を務めています。主な任務は狙撃です」

 

 次は自分が話しかけられると分かったのだろう、ハスミは自分から自己紹介した。

 正義実現委員会とかいうネーミングに、過激派のカルト団体なのではないかと一瞬だけ疑ってしまった。

 

「流れが分かったようで助かる。…よく手入れされたライフルだ。それに、さっきから全部の狙撃がヘッドショット、手際の良いボルトアクション。俺の所にスカウトしたい位だ」

 

「光栄です、先生」

 

 先ほどより、瓦礫を盾にエンフィールドを撃っていたハスミの手慣れた狙撃を褒める。話に夢中になっていたように見えるが、それでも視界の隅で彼女の一挙一動をくまなく観察していたのだ。

 ハスミはゼウスの言葉を素直に受け止め、礼を言った。

 

「お前が委員長…だと思っていたが、違うんだな。ハスミ程の人材を従えるとは、リーダーとしての器量が伺える」

 

「はい。ツルギ…委員長は少し変わったところがありますが、委員会の皆をよく見ていて、カリスマも実力も高い次元で兼ね備えた、正義実現委員会になくてはならない人で…私の友達なんです」

 

「そうか、一度会ってみたいな…右腕として、ちゃんと支えてやれよ?」

 

「勿論、そのつもりです。トリニティ総合学園にいらして下されば、いつでも会えるかと…」

 

 ツルギという少女に興味を持ったゼウス。

 腕っぷしの強い者は、彼の興味をそそる。いつか模擬戦(ガチ)することになるだろう。

 ともかく、これで自己紹介は終了だ。同時に、煙管に入れた香料も燃え尽きた。

 

「よし…」

 

 煙管の先で軽くコンクリートを叩き、香料の燃えカスを落して懐に仕舞い、立ち上がる。

 

「ユウカ、シールドを張りつつ応戦して敵を釘付けにしろ。スズミ、ユウカが敵を引き付けている間に敵の側面及び後方に回って閃光弾をしこたま投げつけろ。そのまま敵中に突っ込んでかき乱せ。ハスミは高所に移動して敵の指揮官クラスを狙撃だ。チナツ、麾下の部隊を指揮して統制が取れなくなった敵を処理しろ。随時ユウカ・スズミへの後方支援も頼む」

 

 




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