超強い先生+@がキヴォトスにやってきたやつ   作:夜叉烏

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 仕事の都合で執筆時間が作れない…。
 ゼウス含めた“エリュシオン”幹部勢は各々何かしら突出した強みを持っていますが、その設定考えるのが難しいっすね。参考のために色々YouTubeで武術の動画観たりしてます。


セリカ奪還作戦②

「「「ふぎゃああっ!?!?」」」

 

 ゼウスが右手で構えるK4自動擲弾銃から連射された40ミリ擲弾が、砂上で次々と炸裂していく。団員は爆発に吹っ飛ばされ、ヘイローが消えて気絶した。

 本体重量34キロのこの武器は本来、車両やヘリに固定して使うものだ。今の彼のように、カスタムでピストルグリップを取り付け、片手で持って撃つような代物では断じてない。

 主力戦車を片手でぶん投げる膂力を持つゼウスだからこそできる、ゴリ押し火力プレイだ。尤も、この程度はその『ゴリ押し火力プレイ』の中でも控えめな方だが。

 

「あ、当たってるのに!?」

「何で顔色すら変わんないんだよっ!?」

「顔!今顔に当たったろ!?ちょっとは怯むくらいしろよ!!」

 

 団員たちも辛うじて反撃し、アサルトライフルのフルオートをゼウスに浴びせる。最早殺人になるだとか、そんなものは恐怖の手前考えられなくなってしまったらしい。

 しかし、胴体、腕、脚、顔にまで弾丸が次々と命中しているにも関わらず、ゼウスは眉一つ動かさない。

 非人道の極みと言うべき改造手術によって得た頑丈な肉体と、死と隣り合わせ――なお数十回死んだことはある。その度に仲間の手、及び武術活法をはじめとしたセルフ蘇生で生還している――の鍛錬で培った、この世のあらゆる合金よりも強靭な精神力の防壁を、この程度で貫くなど不可能だ。

 何百発撃ち込まれたのか、ゼウスの周りには彼の身体を貫けずに変形した弾丸が大量に散らばっていた。

 

「こ、これなら…!」

 

 ならばと団員が持ち出したのは、400ミリ厚の均質圧延鋼装甲RHAを貫徹する対戦車ロケット弾発射器――RPG-7。

 放たれた対戦車榴弾を、敢えてゼウスは真正面から受けた。腹部の真ん中に弾頭が直撃した瞬間、橙色の閃光が一瞬だけ周囲を支配する。

 

「「「……はあっ!?!?」」」

 

 しかし、弾頭炸裂に伴う爆炎が晴れるや、ゼウスの健在な姿が露になった。普通なら木っ端微塵になっているにも関わらず、だ。

 弾頭が直撃した腹部のコートには、戦車の装甲を貫く高温・高圧のメタルジェットで焼かれた跡が残っており、皮膚にも確実にそれが及んでいるだろう。

 本来なら熱いどころでは済まないが、本人は全く堪えていない。眉一つ動かさない。

 

「…マジで??」

「…もしかして、ホシノ先輩レベルで硬いのでしょうか~?」

「いや、私でもロケランをモロに食らったら『痛い』くらい言っちゃうよ?」

「ホシノ先輩、喋り方が普通になってる」

 

 ホシノがいつものおじさん口調を忘れ、素で驚くほどの頑丈っぷりだ。

 

「総帥だけに仕事をさせるな。俺たちも行くぞ」

「おっとっと…そうだね~。セリカちゃんの仇討ちだよ~」

『私死んでないんだけど!?』

 

 TTI TR-1 Ultralightを構えたジオルジョが全員に向けて言う。エヴァ共々、上司の無双劇へ特に感想を口に出すことはない。いつもの事だと言いたげだ。

 

「よーし、じゃあいつも通り突げk…っ!?!?」

「エヴァさん!?」

 

 突如、エヴァの持つショットガンから火花が散り、弾き飛ばされた。直前に何かを察知して得物を手放したことで大事には至らなかったが、彼の両手には痺れが残った。

 

「…狙撃兵がいるね。あーあ、俺のショックウェーブ…」

 

 大体の狙撃位置を割り出したのか、一点を見つめながらエヴァがぼやき、腕を擦る。

 愛着のあった彼のショットガンは、銃身付け根付近を抉られた状態で転がっていた。

 すると、師匠の苦境を見たシロコが愛用のドローンを起動。搭載されたミサイルの爆撃を、狙撃兵がいると思われる家屋に叩き込み、倒壊させた。脳筋だが、手っ取り早い制圧方法である。

 

「排除したよ」

「ナイス。…アヤネちゃん、右から三番目のガンケースをドローンで送れる?」

《は、はい!少々お待ちください!》

 

 10秒足らずで、ガンケースを懸架したドローンが戦場へ到着。エヴァのすぐ近くにそれを投下してきた。

 手早くケースを開けると、中には新品の銃器が。見た目はAKシリーズに似ているが、ストックや伸縮式のグリップにはAR-15の面影があり、ジオルジョのTTI TR-1と同型のLPVOスコープが取り付けられ、銃口には大型のマズルブレーキが装着されている。

 

「さて、お返しをしに行こうかね」

 

 サイガ12 340――ロシア製セミオートショットガンであるサイガ12をアメリカが輸入し、同国企業が独自カスタマイズを施した型である。

 10発入りのボックスマガジンを腰ベルトのホルダーに入れ、戦闘準備を整えた。なお、銃弾に対する耐性が高いキヴォトス人に対抗して、弾倉のうち2つは榴弾であるフラッグ12を込めていた。

 

《先生!主戦場両脇の廃屋に敵が潜んでいます!》

「あぁ、分かってる…ジオルジョ、エヴァ。頼んだ」

 

 既にダウジングで敵の位置は把握している。ゼウスは2人に廃屋の制圧を任せると、そのまま射撃を続行して団員たちを吹き飛ばしていく。

 

「ほいっと!」

 

 エヴァが近場の廃屋の玄関に12ゲージ散弾を叩き込んで無理やり開けると、そこから中へ侵入。シロコがそれに続いた。

 

「突入するね」

「ちょい待ち」

 

 リビングに続くらしいドアを蹴破ろうとするシロコをエヴァは制し、数秒ドアをジッと見つめる。

 すると何かを感じたのか、蝶番に狙いを定めていたサイガ12の銃口をドア本体に向け、3点バーストを叩き込んだ。

 木製のドアが無数のショットシェルで穴だらけになり、ドアの向こうからうめき声が聞こえた。

 

「シッ!!」

――バキッ!!

 

 刹那、サイドキックでドアを砕いて中に侵入。ショットシェルが直撃して蹲る団員と、窓の外に向けられたM2重機関銃を構えた団員1人、ベルトリンクを満載した弾薬箱を持った団員2人、アサルトライフルを持った団員5人がいた。

 突然の侵入者に、全員がポカンとしている。

 ドア前で敵の侵入を見越し、1人が張っていたのだろうが、詰めが甘かったようだ。

 

「邪魔するよ!」

「がはッ!?!?」

 

 エヴァがサイガ12を2連射。蹲る団員が散弾に止めを刺される。

 酷い追い打ちを見た気がするが、確実に戦闘不能にするのは大切である。

 そのまま、闇雲に12ゲージ散弾を連射。室内の全員へ大まかな照準を付け、弾倉に残った全ての散弾を撒き散らした。

 

「ごっ!?」

「うぎぃっ!?」

 

 近距離射撃でのショットガンの威力は流石のもの。弾薬箱を捨てて拳銃を引き抜こうとした生徒の顔面を打ち据え、M2の射手が胸を散弾に撃ち抜かれ、被弾の勢いで窓から外へ転がり落ちた。

 残りの団員も、被弾のダメージが大きく呻きながらよろめく。

 

「ん。逃がさないよ」

 

 一瞬遅れてエヴァの後ろから顔を出したシロコが射撃。正確に呻き声を上げていた団員の眉間を貫いた。

 

「糞…ッ!!」

 

 1人残った団員が、フラフラになりながらもホルスターを漁って拳銃を取り出そうとするが、そこをエヴァは見逃さない。

 弾切れのサイガ12を手放し、ジークンドーのフットワークを駆使して素早く、且つ相手に悟られない足捌きで間合いを一気に詰めると、一瞬で目の前まで…それこそ拳が届くほどの距離まで肉薄してきたエヴァに驚き、動きを止めてしまった。

 

「恨むなよ!」

――ズダァンッ!!

「ぐあっっ!?!?!?」

 

 チタン合金板が仕込まれた靴の踵。そこで重心である右足の膝関節を思いっきり蹴ったのだ。

 骨が軋む音が周囲に響く。エヴァの絶妙な加減によって骨折や靭帯の切断までには至っていないが、団員は脚を抑えて戦闘どころではない。

 

――ドスッ!!

「うぐぃッ!?!?」

 

 そのコンマ数秒後、体重が乗った必殺のシャベルフックが腹を穿ち、団員の身体がくの字に折れ曲がる。吹っ飛ばされて壁に叩きつけられ、意識を失った。

 

「"急所攻撃は基本"。ルール無用で一対多もあり得る実戦じゃあ、1人相手に時間をかけられない。股間、喉、壇中、鼻、顎、関節…そういうところを積極的に狙って、最低でも6秒以内に勝負をつけること」

「ん。分かった」

 

 エヴァ教官による実戦でのジークンドー教室は、シロコにも好評のようだ。

 

「…ところでシロコちゃん、ここに銃座があるじゃん?」

「それも50口径。弾薬もいっぱい。見晴らしも良い」

 

 空のマガジンを外し、新たなそれを装着しながら語り掛けるエヴァに、シロコもその真意を悟りながら見識を述べる。

 12.7ミリ弾を満載した弾薬箱が10個以上置かれており、さらに窓からはヘルメット団側の陣地がよく見える。

 

「よーし、好きなだけ撃て撃て!」

「ん。全弾ぶちまける」

 

 すぐさまシロコがトリガーを力強く握り、エヴァが弾薬箱を用意する。前者は、大口径を弾数を気にせず撃ちまくれることに快感を覚えているのか、顔がやや上気している。

 

「ひぎゃあッ!?!?」

「どぼぉッ!?!?」

 

 12.7×99ミリ弾が石柱を抉って石屑と煙を巻き上げ、それに怯んだ団員がヘルメットをかち割られて昏倒。

 異方向からの死角に、彼女たちは分かりやすく怯んだ。

 

「撃ち切ったら交代ね!…って、聞いてるのかね?」

「…!!」キラキラ

 

 M2を撃ちまくるシロコの表情は、エヴァが今まで見てきた中で一番生き生きとしていた。

 一応彼も、職務上中々撃てない重機関銃を景気よくぶっ放したいと思っていたため、シロコが全部撃ち尽くさないか心配になっていた。

 

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「ほいっと」

――ドゴォッ!!

「ひぇぇぇっ!?!?」

 

 シールドバッシュでコンクリート壁をぶち抜いたホシノが、勢いそのままに手近な団員を撥ね飛ばす。

 不運な彼女は背中からクレーターができるほどの勢いで壁に叩きつけられ、意識を失った。

 

「ぐへぇ!?」

 

 まさか、壁をぶち抜いて入ってくるとは思わなかっただろう。窓の外ばかりに気を取られていた団員たちは、至近距離から撒き散らされた散弾にひとたまりもなく吹き飛ばされた。

 

「なんだなんだ!?」

「家に入ってきやがった!迎え撃て!」

 

 高所に陣取って銃撃を浴びせようとしたのか、2階から団員が降りてくる音がする。降りてきたところを撃ってやろうとショットガンの銃口を向けた。

 …その直後、ホシノの横を棒状の何かが飛んでいった。

 

――ドスッ!!

「「「うわぁ!?」」」

 

 その何か…シャベルが階段に突き刺さり、唐突に現れた障害物に団員が足を取られ、後ろの団員も同じように躓いた。

 5人の団員は階段を転げ落ち、壁にぶつかって呻きを上げる。

 

「粗末が過ぎるな。全員拳骨の上、前線から下げられるレベルだ」

「うへ。コントロール凄いねぇ、ジオルジョさん」

 

 遅れてホシノが開けた大穴から愛銃を構えたジオルジョが顔を出し、クリアリングもなしに階段を駆け下りたヘルメット団の未熟さ加減に溜息をついた。

 軍隊格闘術『システマ』の教官を務め、一流エージェントとして第一線で活躍する彼からすれば、彼女たちの練度の低さに辟易せざるを得ないらしい。

 無言でTTI TR-1 Ultra lightの引き金を引き、転げ落ちた団員の頭にそれぞれ1発ずつ見舞って沈黙させた。

 

「あ!てめぇ、あの時のオッサいだっ!?」

 

 校舎での戦闘にてジオルジョにぶん投げられた団員が窓から顔を出した瞬間に額を撃ち抜かれる。

 すぐに撃たず、自ら居場所をばらした団員は哀れ、やり返す機会を失った。

 

(被弾に対する意識の違い、か)

 

 腕っぷしも心構えもなっていないヘルメット団員の体たらくを見て、ジオルジョはそう感じた。

 銃爆撃程度では死なない身体を持ち、ちょっとした喧嘩で簡単に発砲し、脅し感覚で銃を携帯しているキヴォトス人は、被弾に対する捉え方が薄い。よって、このようなガバガバな立ち回りになってしまう。

 対してジオルジョのようなプロのエージェント・軍人は、敵を正確に殺傷・排除するための訓練を受け、心身を鍛え上げた猛者。

 どちらが勝つかなど、言うまでもない。覚悟が違うのだ。

 

「先行してくれ、ホシノ。…生憎、俺は総帥ほど頑丈じゃない」

「あ、流石に銃撃はマズいんだね。なんか普通で安心したよ~」

 

 ゼウスの規格外っぷり…特にその撃たれ強さを目の当たりにしてきたホシノは、知識通りのヘイローのない大人の存在に、どこか安心したような顔をする。

 少女を先行させることに一瞬抵抗感が過ったジオルジョだったが、被弾を避けるのを優先することに決めた。それに、エヴァの『あのおじさん、戦車砲防ぎやがったんだぜ!?』という言葉を思い出し、その盾の後ろに居させてもらっても文句は言われないだろうと判断。

 

「…危なう゛へぇっ!?!?」

 

 何かを感じたホシノが注意喚起するまでもなく、ジオルジョは彼女の襟首を掴んで壁際に移動して姿勢を低くしていた。

 壁が爆ぜ、細かなコンクリート片が吹き込むが、吹っ飛ばされることはなかった。校舎での攻防戦時と同様、常にリラックスしている彼の危機察知能力の高さが伺える。

 

「突撃ぃぃぃっ!!」

 

 ヘルメット団員が赤服の指示の下、ぞろぞろと開けられた大穴から突っ込んでくる。旧日本軍もにっこりな、典型的な突撃戦法だ。

 

「豪華なお出迎えだな」

 

 凡そ15人と思われる団員。そして、そのどれもが素の力で敵わないときている。

 しかし、ジオルジョは落ち着き払ったまま。団員が得物を構えるよりも早くTTI TR-1の銃口を向けていた。

 

「いでっ!?」

「あ!?ちょ!?」

「んひぃ!?」

 

 弾倉に残った強装5.56ミリ弾をセミオートで残らず叩き込む。

 頭を狙いたかったが、時間がなかったため狙い易い胴体に向けての射撃。そのせいか痛がるだけで昏倒しなかったものの、突撃してきた団員は全員残らず出鼻を挫かれて怯んだ。

 

(銃撃よりも殴り・蹴り・極め技が有効か…)

 

 弾切れの愛銃を手放し、サイドアームのキアッパ・ライノ60DSを左手で、左太股のホルダーに仕舞ってあるナガイカ…『システマ』で使われる鞭を右手で構える。

 手近な団員に肉薄し、右脚の内腿に向けて前蹴りを放つ。股間を蹴るのは申し訳ない…そんなときに、ジオルジョはよくここを蹴る。

 

――ドガッ!!

「っっった!?!?!?」

 

 股間を直接蹴る程ではないが、この部位も弱点に分類される。

 内腿の筋肉は腰椎に繋がっているため、ここを一撃されると腰が崩れてしまうのだ。

 ジオルジョの蹴りは、神速を以て鳴るエヴァのサイドキックほど強烈ではない。

 とはいえ、チタン合金を仕込んだ靴の蹴りは、キヴォトス人が一時立てなくなるのに十分な威力を持っていた。

 

――スパァンッ!!

「――ぐげあっ!?!?!?!?」

(うっわ、絶対痛い)

 

 次いで、右手のナガイカを振り、ヘルメットの隙間から僅かに覗かせている首へ叩き込む。その様を見たホシノは心中で冷や汗をかいた。

 脱力し、遠心力と撓りを最大活用した、鞭の正しい使い方だった。

 ナガイカや同じく『システマ』で使用する鞭であるボルチャッカは、正しく扱えば狼の背骨をも叩き折る。その威力を叩きつけられた団員の首元には、鞭と同じ模様・形の赤い痕が残っていた。

 火傷したかのような痛みと衝撃により気道を潰され、団員は激痛と呼吸困難に苦しみ崩れ落ちる。

 

「んごっ!?!?」

 

 次いで、ヘルメット越しに別の団員の脳天を一撃。

 直接頭をひっ叩かれたわけではないが、それでも脳を直下地震の如く揺らした。

 頭を抑えてよろける団員の緊張している部位――この場合、力が入っていて固くなっている箇所を指す――を瞬時に見抜き、そこを狙う。

 

「くが…っ!?!?」

 

 団員の顎を掴んだジオルジョは、そのまま後ろに引き倒す。

 力が入っている箇所は案外脆いものであり、キヴォトス人だろうとそこを小突けば簡単に転ばされてしまう。「固いものは折れる、柔らかいものは曲がる」理論だ。

 倒された団員の顔面へ容赦なく.357マグナム弾を叩き込んで無力化した。

 

「うへ、すんごいスマートだねぇ」

 

 手際の良さにホシノは素直にそんな感想を漏らした。その間にも彼女は、銃を構えさせずに団員3名をショットガンの速射で、2人をシールドバッシュで纏めて吹き飛ばしている。

 

「深く考えず突撃するショットガン持ちが相棒なものでな。援護は慣れている」

「あ、エヴァさんのこと?」

「何度か軽率な突撃は止めるよう言ってるが…なんやかんや実力で突破しているから、下手に文句も言えん」

「セリカちゃんの上位互換的な感じかなぁ?」

 

 突撃癖があるのはセリカと共通しているエヴァだが、突撃し過ぎて孤立し、何もできなくなる前者とは違い、エヴァは敵勢力を支える"力点"を見つけ出し、そこを衝いて突破してきたものである。

 ジオルジョの援護が巧みというのも勿論だが。

 

「一番ヤバいと思ったのは、あいつが墜落しかけているヘリに突っ込んでいった時だったな」

「え、どういう状況?」

 

 あまりにも続きが気になりすぎる内容に、思わず聞き返してしまうホシノ。

 しかし、話の続きは新たな刺客に遮られる。

 

「うおぉぉ!!覚悟しろこのオッサンっ!!」

「一々台詞を挟まないと死ぬ病気なのかコイツらは…」

 

 窓枠を乗り越えて堂々と突撃してくる新たな団員たち。

 サイレントキルを狙えばいいものを…と心中で呆れながら、ナガイカとリボルバーを構える。対処し易いのに越したことはない。

 たが、そのせいで後ろが疎かになった。

 

「おらぁ!捕まえたぜ!!」

「…!ジオルジョさん…あぁ、もう!?」

 

 先ほど、顔を踏みつけて無力化したと思われていた団員が、ジオルジョを羽交い締めにした。

 ホシノが身を案じて助けに入ろうとするものの、別の団員が複数迫ってきているため、そちらに集中せざるを得なかった。

 

(確かに、力は強いな)

 

 だが、こんな時でもジオルジョは冷静だ。危機感により身体が固くなることはない。

 体軸をピンと立てたまま、仙骨に意識を集中して姿勢を整える。脱力したまま身体をでんでん太鼓のように振ってやると、膂力で上回るはずの団員によるロックが簡単に外れた。

 

「んがっ!?!?」

 

 ゆったりとした、それでいて予想外の動きに振り回され、その遠心力により派手に転がる団員。

 

(うへ、全然大丈夫じゃん。というか、何でヘイローない人がキヴォトス人をあんな簡単に振り払えるのかな?)

 

 数秒で向かってきた団員を全て叩きのめしたホシノは、素の力ではなく脱力・タイミング・姿勢を重視する戦闘術に興味を示した。

 

「こ、こいtひでぶっ!?!?」

 

 よろよろと立ち上がった団員の眉間を、容赦なくキアッパ・ライノ60DSで撃ち抜いた。

 至近距離で.357マグナム弾を喰らった彼女は、当然の如く意識を飛ばす。

 …と、団員の背後にある窓の外で、橙色の閃光が揺らめき、数瞬遅れて轟音が響き渡った。

 

「…ヴィッカースだと?」

「あれま、初めて見る戦車だねぇ。デカいなぁ~」

 

 幸いにも、ジオルジョたちを狙った砲撃ではなかったらしい。咄嗟に伏せ、窓際からゆっくりと様子を伺うジオルジョが呟く。

 ヘルメット団のアジトから出張ってきたらしい3両の戦車は、地球世界におけるヴィッカース MBT――イギリス製の輸出用主力戦車にそっくりだ。砲塔の形状からMk.3と思われる。

 51口径105ミリライフル砲を装備、その他射撃統制装置やレーザー測距儀を搭載しており、開発当時は先進的だと言われていたものだが…ジオルジョの視点からすれば骨董品に等しい。

 

(クルセイダーだったりヴィッカースだったり…技術にムラがありすぎるな)

 

 ロボットアニメ染みたSF兵器を実用化していると思えば、数世代前の戦車が主力という、何とも歪な発展をしているキヴォトスの軍事技術に、ジオルジョは心中で呟いた。

 ゼウスが陣取る道路上に砲撃を放っているらしい。対戦車兵器を持っていない現状、大きな脅威だが…。

 

「…総帥なら大丈夫か」

「えぇ~、マジで?」

 

 生憎、ゼウスは主力戦車の1両や2両で止められるような男ではない。

 ジオルジョは全く上司の心配はしていなかった。




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