書きたいssの設定が多すぎて1つに集中できない…。
「うへ、先生もう行くんだ~。朝早いね~」
「そういうお前は朝帰りか、ホシノ。補導が必要そうだな」
「う~ん、それは勘弁してぇ~。先生のお説教は何か怖そうだし」
柴石ラーメンで豪勢な歓迎会を楽しんだその翌日。
アビドスの砂を詰めた箱を10数個、緩衝材に包んで特殊なケースへ入れていたゼウスは、根城にしている教室に入ってきたホシノにそう言葉を掛けた。
ゼウスの見立て通り、彼女の目元には隈が刻まれており、傍らのショットガンには砂が付着していた。夜に外を出歩いていた証拠である。
軽く彼女の心中を視てみたが、夜遊びをしているわけではないらしい。
「…まぁ、法に触れる行為はしていなさそうだし、大目に見てやる」
「うへ、ホントに心読めるの?先生。セリカちゃんを見つけたときもそうだけど、やっぱり超能力者?」
大自然相手の鍛錬、それも数十回死んで都度活法でセルフ蘇生してきたゼウスが得た特殊能力の1つ…読心。
流石に、相手の考えを一言一句違えずに読み取ることはできないが、どんな感情を浮かべているか、嘘をついているか否か、何を脳裏に浮かべているかを視ることは可能だ。
それにより、『ホシノは歓迎会後、明け方まで夜警活動を行っていた』という事実を読み取った。
「お前は事実上、アビドスの最高責任者と言っていい。…睡眠不足はいい仕事の敵だ。自分を大切にするからこそ、他人も大切にできるんだぞ」
「は~い。ま、空き時間に昼寝してるし大丈夫だよ~」
夜型の生活に慣れてしまうのもあまり良くないことだが、取り敢えずゼウスは注意しないでおいた。
「まぁいい。1週間程ここを空ける。ミレニアムに行ってシャーレで仕事するだけのつもりだったが、トリニティで重症を負って入院した生徒がいてな、見舞いに行ってくる」
トリニティへ派遣したハデスより、ハスミがテロリスト集団との戦闘で重傷を負ったという連絡が入った為、急遽見舞いの予定を入れたのだ。
流石に、入院レベルの大怪我を負った生徒へ会いに行かないのは、教師としてマズイだろう。
彼女の心の隅には常に甘味の存在が視えていたため、少し値の張るスイーツを持っていこうと思っていた。
「そっか。じゃあ行ってあげて」
「あぁ。…それに、カイザーの思惑も調査したいからな」
ヘルメット団を雇い、金を貸しているアビドスを襲撃させた黒幕。その調査もしたかった。
「カイザーねぇ…悪い噂しか聞かないのは確かだけど、お金を貸してるところを潰すだなんて、何考えてるんだろ…」
尤もな反応だった。ヘルメット団リーダーの証言を聴かせた際もそうだったが。
純粋な女子高生らしい。
「…恐らくだが、奴らはアビドスの借金などどうでもいいと思っている」
「え…?」
ゼウスの呟きに、ホシノは訳が分からないと言いたげに顔を上げた。
「最初は、純粋に金を貸したんだろう。後で返すようにとな。…だがホシノ、お前は他人に貸した金がいつまで経っても返ってこなかったらどうする?」
「んまぁ…返してって急かすかな?」
「普通はそうだな。…それでも返してこなかった場合は?…『返す気がない』までも、『返せない』と考えるんじゃないか?」
一応の納得を示したホシノは頷くが、やはり疑問が残っているらしくゼウスへ訊き返す。
「そう考えるのはまだわかるよ。けど、それだけじゃアビドスを襲う理由には…」
「目的は、貸した10億を十分ベットできる代物…十中八九、アビドスの土地だろうな」
砂漠の広がるアビドスで、10億と釣り合うような価値のあるものはない。油田や鉱物資源は無いし、強いて言えば砂が資源になる可能性がある程度。
となれば、その広大な土地しかない。
「土地を手に入れて…恐らくは軍事関連の施設を建てるんじゃないか?この砂漠だと、それ位しかできない。約10億でそれができるなら、カイザーにとっては安いものだ」
キヴォトス経済の大半を牛耳る大企業であるカイザーコーポレーションにとって、10億などはした金に過ぎない。
「それに、それだけで連中の気が済むとは思えない」
「…もしかしてだけどさ、その施設ってうちの学校を」
ホシノは、建設した施設がアビドス高校侵攻の前哨基地として運用されるのではないかと考えたのだ。
「可能性はなくはないな。何等かの理由をつけて、アビドス自治区すべてを手に入れようと侵攻してくるかもしれない」
「そう…なんだね…」
「まだ決まったわけじゃない。奴らを問い詰めようにも、証拠不十分で突き返されるだけだ。名誉棄損で借金が増えることになるかもしれない。…まぁ、心配するな」
砂のサンプルを詰めた箱を収めながら、ホシノを安心させるように口角を上げる。
「新入生は"エリュシオン"で軍事訓練を受けてきた。少なくとも、そこらの傭兵やヘルメット団程度じゃ相手にならない。仮に、奴らが始末屋を差し向けてきたとしても、持ち堪えてくれる」
"エリュシオン"は、世界中から軍・警察関係者が集まった組織だ。
教官を務めるような実力者が多く所属しており、その元で訓練を受けた不良生徒らは、キヴォトス傭兵の基準を上回る腕前を持つに至っている。
「それに、アビドスの砂に価値が認められたら不労所得が入ってくる。組成の分析次第で価値は変わるが、10億の借金を合法的に返せる可能性が出てくるぞ」
「おぉ~…」
ゼウスの言葉に目を輝かせるホシノ。今まで悩みの種だった借金返済に光が射してきた。
「一週間後には帰る。それまではジオルジョとエヴァを頼れ」
「は~い。…あ、そうだ先生」
登校時間まで寝ているつもりなのか、部屋のソファで横になるホシノは、何かを思い出したかのようにゼウスを呼び止めた。
「…セリカちゃんを助けてくれてありがとね。背中痛くない?」
後輩を助けたことに対する感謝の言葉。上辺ではなく、本気で言っているようだった。
「背中に銃弾が当たる位、安いもんだ。あいつが無事でよかった」
それだけ言い残したゼウスは、踵を返して部屋を出て行った。
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「迎えご苦労だったな、"ヴァルカン"」
「いえいえ。総帥の為ならば火の中水の中ですよっ!」
アビドス高校の校庭にてローターを回しているMV-22"オスプレイ"。ゼウスの専用機となっている、"エリュシオン"で1機しか保有していないレアものだ。
「私としても、ミレニアムサイエンススクールの科学技術には興味がありましたので…」
MV-22の操縦桿を握るのは、"エリュシオン"幹部の1人『ヴァルカン』。
ゼウスらが嘗て所属していた組織にて、科学者の卵として働いていた男だ。ゼウスをはじめ、現在の"エリュシオン"幹部に施された改造手術のエキスパートである。
立場的にゼウスたちとは相容れない人物だったが、彼も人の心を失くした同期や上司の科学者連中とは織りが合わず孤立していたところだった。
そこを、反乱を起こしたゼウスに拾われた経緯だ。ゼウスへの忠誠心は、レートーに劣らない程に高い。
"エリュシオン"では研究開発班の責任者を勤め、数多の武器兵器を開発しているが、事務能力も高く、主に裏方として活躍している。
しかし、幹部らしく腕っ節も中々であり、前線勤務もお手のものだ。
「しかし、彼女たちを連れてきても良かったのですか?私としては問題も不満もありませんが…」
そう言って振り返るヴァルカンの視線の先には、兵員室の座席に腰かける12名の生徒たち。アビドスへの転入が決まった生徒であり、本人らが「ミレニアムに行くなら道案内役として連れて行ってほしい」と申し出たところ、ゼウスが許可したのだ。
「…いや、ヴァルカンさんも先生も強いから正直行かなくても…とは思ったんだ。だけど、アタシたちは元々ミレニアム出身だから。道案内位ならできるし…」
1人の生徒がそう言うと途端に苦い笑みを浮かべる。残りの生徒も同様だ。
そういえばと、ゼウスは彼女たちの経歴を思い出す。
ミレニアムサイエンススクールは、何よりも学力が無ければついていけない。彼女らは必死に勉強に励み、ミレニアム生徒としての立場を保とうと努力したようだが、赤点連発で退学となり、不良に身を堕としたのだ。
「…あと、ミレニアムの生徒って、見たことない装置とか武器兵器に目が無いんだ。2人が話し合ってる間に駐機してたこのヘリが解体されて部品が持ち去られて…なんてことになってるかも。ドローン以外のティルトローターってキヴォトスに無いからさ」
その情報を聞いた2人はポーカーフェイスを保ったまま顔を見合わせた。
「…比較的治安は良いと聞いておりましたが、あくまで"キヴォトス基準で"、ですね」
「マッドサイエンティストの集まりってわけだ。これはこれで、生徒指導のし甲斐がある」
キヴォトスにいる限り、どこに行っても厄介事は必ず付き纏うものなのか…と、半ば諦観の情を浮かべる2人。
MV-22は、"エリュシオン"で1機しか保有していない貴重な機体だ。分解されて持ち去られるのは困る。
狂った理系生徒の無力化はゼウスとヴァルカンで容易にできるが、流石に分身することはできない。セミナー他ミレニアム生徒とやり取りを行う間、機体を守る生徒の存在は必要だろう。
「さて総帥。発進準備完了です」
「あぁ。…お前たちもベルトをつけろ」
「「「は~い(うぃっす)!」」」
ヴァルカンの言に返答してシートベルトを装着したゼウスが生徒たちに命じる。
7500馬力のターボシャフトエンジン2基が織りなす轟音が周囲を満たし、砂煙を舞い上げた。
やがて、借金返済の希望となる物資を乗せた20トン近い巨体が離陸し、明け方のアビドスの空に舞い上がった。
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ヴァルカンのイメージは『SAKAMOTO DAY'S』の鹿島です。継ぎ接ぎだらけの外見をしてます。