超強い先生+@がキヴォトスにやってきたやつ   作:夜叉烏

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 ヤバい先生とヤバい部下たちが合流しました。不良さんたち、御愁傷様です。
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哀れ不良たち⑤

――不良(ジル)side

 

「次。右前方の敵集団。突っ込め」

 

「はっ、はいぃッ!!」

 

 厄日だ…心中で私、刈谷(かりたに)ジルはそう呟く。

 

 キヴォトスに幾千と存在する学校の1つ、トリニティやゲヘナほどではないが、それなりの規模の学園に最近まで通っていた身だった。

 

 しかし、勉強についていけずに赤点を繰り返し、成績不振者用の救済措置も意味なく留年。

 学業は疎かにしてなかったと、自信を持って言える。自分はどうやら地頭が悪いらしい…と意識しはじめたときから努力していたつもりだったが、その頑張りは報われることはなかった。

 上手く行かない学業に嫌気が差し、万引きをしたことが呼び水となり、そこからより罪の大きい犯罪に手を染めるようになったと思えば、いつの間にか退学処分となり、私と同じような生徒たちが集まる不良集団の一員となっていた。

 

 カツアゲ、強盗、窃盗、誘拐等、非合法な手段で金を稼ぐ毎日。最初こそ、他人を脅し傷つけること、奪ったそれらを使うことに罪悪感を覚えたが、慣れとは怖いもので、案外すぐになんてことはなくなった。

 

 そんなある日、百鬼夜行連合学院出身の"災厄の狐"こと孤坂ワカモが、私の所属するグループに接触してきた。

 潰しに来たのかと戦々恐々する私たちに向け、彼女はシャーレの建物を占拠するべく暴れまわろうと提案。

 

 ワカモの考えを退ければ、此方が本当に潰されかねない…という考えもあったが、犯罪の現場を風紀委員や正義実現委員会、ヴァルキューレ警察学校の生徒に制圧されたことへの恨み等で、丁度ストレスの捌け口を探していたこともあり、その話に乗った。

 …今思えば、どうしようもない逆恨みだったと思う。留年したのも自分の責任だし、今まで犯した犯罪に至っては言い訳のしようがない。

 

(あぁ…そのツケを今払ってるんだなぁ…)

 

 涙を流しながら、戦車に入り込んできた謎の大人の『こいつ等を轢け』という命令に従い、操縦桿を握る私。

 周りの不良たちが戦車に轢かれ、車体正面の装甲にぶち当たる度に、申し訳なさでいっぱいになる。彼女たちの中には、親しくしていた者もいたというのに…。死なないだけマシなのかもしれないが。

 

 それを強制するこの大人はなんて鬼畜なんだ…と思ったが、それと同等かそれ以上に鬼畜なことを、自分は何度も繰り返してきた。そのツケが返ってきたのだろう。

 

 ヘイローの無い大人如き、簡単に制圧できるのが普通だが、どうもこの大人には勝てそうにない。今まで相対してきた治安組織の生徒などとは、比較にならない威圧感を感じる。『敵対してはならない』と、私の本能が訴えていた。

 もし、傍らのSMGを手に取ろうものなら、その瞬間にあの大型自動拳銃が私の眉間を穿つだろう。

 というより、武器を取り上げないあたりに彼の余裕を感じる。

 

(皆…ごめん…ッ!!)

 

 仲間への懺悔を口にしながら、私は操縦桿を握り、アクセルを踏み続けた。

 

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 ――ゼウスside

 

(少し脅かし過ぎたか…)

 

 ヘルメットの隙間から涙を流しながら操縦している不良を見ながら、俺は砲手席に腰かけていた。

 彼女に対し、『仲間を轢け』と命じたわけだが、幼気な少女に対してその命令は酷過ぎたようだ。

 

 嘗て、俺は敵の戦車にC4を投げ込んで内部から破壊するだけでなく、戦車をジャックして敵部隊を攻撃させたことがある。その時の癖が出てしまった。

 

 …さて、彼女が敵部隊に突っ込んでかき乱している間に調べて分かったが、やはりこの戦車は1人でも操縦できるらしい。

 この戦車の外装には無数の小型カメラが取り付けられ、その映像が不良が身に着けているヘッドマウントディスプレイシステム(HMDS)に投影され、車長の周囲監視・指示が必要ないレベルの全周視界を実現している。操縦手が首を向けた方向に砲塔が駆動する仕組みで、発射・弾種変更スイッチは操縦桿に付いているようだ。

 

「よし、俺は主砲を撃つから砲塔の操作権をこっちに渡せ。お前は適当に走っておいてくれ。…あぁ、あまり主戦場から離れてくれるなよ?」

 

「は、ははははははいッ!!わわわ分かりましたッ!!だから、こっ、こここっこ殺さないで下さいッ!!」

 

 …想像以上に彼女は怖がっていた。

 

「…落ち着け。言い忘れたが、俺はここで先生として働くことになった者だ。一応、お前たちも生徒ってことになるからな。手にかけたりはしないと誓おう。…あと、さっきは済まなかったな。ここの人間は頑丈とはいえ、流石にあの指示は酷すぎた」

 

「は、はぃぃ~~…!!」

 

 声を和らげ、謝罪したことが功を奏したらしく、完全にではないが落ち着きを取り戻した。

 しかし、一種の極限状態下にあるとはいえ、彼女の操縦スキルは中々のものだ。"エリュシオン"が配備しているK2EL主力戦車を駆らせれば、良い働きをするだろう。

 

 …そう思いつつ、俺は砲手席の機器を弄る。HMDヘルメットとジョイスティックが備え付けられており、第二次大戦時の戦車に似合わない。

 電源らしきボタンを押し、ヘルメットを被ると、周りの景色を投影した映像が、俺の視界いっぱいに広がる。目の前には照準器の環が表示されており、首を動かすと、それと連動して砲塔の駆動音が響き、視界が上下左右に動く。

 視界の脇には弾丸のマークの横に『HE』、『Auto Reload』の文字が表示され、今は自動装填装置が動作しており、榴弾が込められている状態であることを報せていた。自動装填の解除ボタン、射撃スイッチは傍らのジョイスティックに付けられている。

 

 取り敢えず、逃げ惑う不良の集まりに対し射撃。

 40ミリ榴弾炸裂の様子は、K1EL戦車の120ミリ砲弾の炸裂とは比べるまでもない小さなものだが、それでも少女を吹き飛ばすには十分だ。

 口径はそこまでではなく、砲弾重量が軽いためか、自動装填の間隔も早い。ボフォース40ミリ機銃並み…とまではいかないが、爆発物を持って接近する不良を、片っ端から打ち倒している。

 

 流石に、このまま景気よく撃ちまくっていれば早々に弾切れになってしまうため、同軸機銃も併用する。

 フットペダルを踏み込んで7.92ミリ ベサ機関銃を発砲し、40ミリ砲弾の炸裂から逃れて接近する不良に細い火箭を連続で突き入れる。

 銃撃では死なないとはいえ、ダメージはある。1発被弾し体勢を崩したところへ1連射し、完全に崩れ落ちるのを確認した。

 

「これ楽しいな…」

 

 近代化――近未来化と言ってもいいかもしれない――されてしまったとはいえ、歴史的価値の高い第二次大戦の名車を駆り、その主砲をこの手で撃つことができたのだ。

 感動のあまり、思わず口角が上がってしまう。

 

『先生っ!!何してるんですかっ!?』

 

「見ての通り戦車をジャックしてるだけだ。今のうちに前進してこい」

 

『うぅ~~…!何で先生が私たちの前にいて戦ってるのよ…というか今更だけど何なの、この状況は…?』

 

『…ユウカ、逆に考えましょう。この際、あの戦車の中にいる方が最も安全です』

 

『た、確かに…いやでも…!あぁ、もうっ!!』

 

 ユウカは、どうしても俺に前へ出てほしくないらしい。諦観したようなハスミの声を受けて、無理やり自身を納得させていた。

 随分、融通が利かない性格のようだ。学校では上手くやっていけているのだろうか。

 

『…ッ!気を付けてください!戦車の増援が来ます!数は5両!』

 

『はぁッ!?あいつら、どんだけ戦力を揃えてきたのよ!?』

 

 チナツの報告に、ユウカが信じられないと言いたげに叫ぶ。この世界の戦車の相場は分からないが、かなりの出費になったことは想像に難くない。

 不良たちは、この度のシャーレ襲撃に本気で臨んでいることが伺える。

 

 徹甲弾に切り替えようとしたその瞬間、クルセイダーⅠへ白煙を噴き出しながら突進する弾体が突っ込んだ。

 巨大な爆炎が上がり、引き千切られた装甲の破片や曲がった砲身、曲がりくねった履帯の残骸が飛び散る。次いで、2両目の砲塔が首を刎ねられたように吹っ飛び、遅れて火柱が立ち上る。

 乗員はギャグマンガめいて宙を飛び、そこらに転がっている。本当に頑丈だな。

 

『…へっ!?』

 

『対戦車ミサイル…!?一体誰が?』

 

 驚くユウカと、攻撃の正体を予測して辺りを見回すハスミ。

 視界内に射手は確認できないため、RPGのような個人携行対戦車ロケットではなく、対戦車ミサイルの長距離攻撃とあたりを付けたらしい。

 

 僚車の爆発に驚いた残りの戦車が、慌てふためいたように砲塔を旋回させ、周囲の不良も切迫した様子で周囲を確認し始める。

 

 そんな狂騒に紛れて、空気を叩くような音が聞こえ、どんどん大きくなっていく。紛れもなく、ヘリコプターの飛行音だった。

 一応、IST-15.5を取り出して先ほど無理やり開けたハッチから頭を乗り出したゼウスではあったが、その心配は杞憂に終わった。

 

 損傷したビルの合間を縫うようにして飛行してきた、数機の攻撃ヘリが姿を現す。

 オードソックスな並列配置の座席、機首の3砲身ガトリング砲、スタブウイングに装備された対戦車ミサイル、胴体に描かれた竪琴を花輪で囲った『楽園』を象ったエンブレム。

 紛れもない、KAI LAH-1"ミルオン"のエリュシオン仕様…LAH-1/EL。俺の組織が所有する主力戦闘ヘリだ。先ほどのミサイル攻撃も、同機が搭載するTA-2K/EL対戦車ミサイルによるものだろう。

 

(お前たちも、来てたのか…)

 

 どうやら、俺は孤独になったわけじゃないらしい…そう確信し、心中で安堵の息を吐く。

 

「…皆、あのヘリへ銃を向けるな。あいつ等は味方だ」

 

『え…?』

 

『…了解しました』

 

 困惑するユウカ、何か思うところがありつつも俺の言う通りにするハスミの応答を聞きつつ、口角を吊り上げるのだった。

 




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