追放された錬金屋さん、しっかり貰ってた転生チートで神器量産中~村に置いてきた習作が【成長】して村人全員S級冒険者になってました…え?俺も?~   作:好芥春日

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15:これってもう→転生チート

 ――今日も朝から工房に籠っていると、入り口のドアを乱暴に開け放つ奴がいた。

 来たか……。ラルフ君!

 彼の横にはラーシアもいる。そしてやじうま憲兵団がわらわらとその後ろに群がっていた。

 

「一週間ぶりだな詐欺師ぃ! 逃げ出さないでいたことだけは褒めてやるぞ!」

 

「そいつはどうも」

 

 褒めるなら、お前のやり残した仕事を全て片付けたことを……と思ったが、なんでこいつに褒められにゃならんのだと普通にムカつくことに気が付いたので、何も言わなかった。

 

 ついにこの日が来てしまったか。

 ラルフ君との約束の一週間。

 

 ……俺はついぞ【神器】の製造には至らなかった。

 

 まあわかっていたことだが……いささか、悔しいものだ。

 親の権力を我が物顔で振りかざす悪い子息には、お灸を据えてやらんといかんと思っていたんだが、なかなかうまくいかないものだ。

 

 まあ、俺の人生なんて、結局これまで、そんなものだったよな。

 だから冒険者時代、パーティーから追放された。

 ……嫌なこと思い出しちまった。うげー。

 

「わかってると思うが、今から俺の前に【神器】が現れなかったら、即座に捕縛。抵抗するなら、詐欺師風情の命くらい、簡単に吹き消してやるぞ。わかったか!」

 

「わかったわかった。対抗しないし、殺されないよ」

 

「ふん。減らず口を……まあいい! さあ、さっさと出せ! 一応は、頑張ってみたのだろう!? それとも開き直ってなにも造ってはいないのか!? だとするなら滑稽だな! はーははははは!」

 

 なぜかドヤ顔でふんぞり返るラルフ君。いや分かるよ。だってお前の中では、俺は百パーセントの詐欺師で、【神器】なんて造れるはずがないのだから。

 

 それともまさか酔狂に武器を【アップデート】し続けて、奇跡に賭けたが結局は平凡な武器を差し出して、「これが【神器】です」とでものたまううもりなのかもしれない。

 ……とも、頭の片隅には思っているだろう。

 

 やれやれ……。

 そんなこと……。

 

 ……してみてもいいか?

 

 確かに、俺は【神器】を造ることは適わなかった。これは疑いようのない事実。そして約束を違えたということに変わりはないのだ。

 だけど、なんか、結構いい武器が出来ちゃったんだよな……。

 

「ギャル。ちょっと、アレ出してみてくれないか」

 

「ちょりーす! りょーかーい!」

 

 俺の指示に素直に答えるギャルは、懐から、一振りのナイフを取り出し、そしてそれをラルフ君の前に提示した。

 ラルフ君は「いやお前の主人は俺なんだけど……」なんてぽかんと呟いたが、しかし、目の前にあるナイフの異様さを察知してか、吸い込まれるように視線を移した。

 

「……は? なんだ、これ?」

 

――――

【ライトニングダガー】

種別:≪王器《レガリア》≫

錬金効果:≪切れ味マイナス付与≫≪エレキスタンA≫≪切れ味マイナス分電力上昇付与≫

スキル:≪スペツナズショット≫≪電磁装填≫

パッシブスキル:≪成長≫

―――—

 

 お、ラルフ君には難しいと思ったが、このナイフに付与されてある錬金効果をある程度は解析できたようだ。

 その証拠に、理解が追いつかず、呆然としている。

 

 

 

 四日前、ギャルのナイフを【アップデート】してやると、ギャルははしゃいで、ナイフを撫でたり、ぶんぶんと振り回したりしていた。危ない。

 

「ねーねー! ちょっとザコ兵士で威力試してきていい!?」

 

「だめだろバカ。あとザコ言うなお前より遥かに強いわ」

 

「あ、じゃあ私が練習相手になろっか? 私の『ノーザンサウス』も電気の性質があるから、私自身も電気に耐性あるし、ちょっと試してみてもいいよ!」

 

「いーの!? ヤバ! ヨロ!」

 

「うん! 練兵場にいこ!」

 

 そうして二人は出ていった。

 俺は一人静かな工房で、ゆっくりとどんな【アップデート】をするか思案していた。

 ──だが、考えがまとまる前に、すぐに二人が帰ってきたのだ。

 

「ヤバいんですケド!?」

 

「ダイアお兄ちゃん! ラビちゃんのナイフが! ナイフが!」

 

 俺が【アップデート】したギャルのナイフは、アナとの訓練中にすぐに【成長】して、その刃を射出させたという。

 スペツナズナイフになっていたというのだ……。

 錬金術で加工する前も、誓ってギャルのナイフはなんらギミックのない、普通のナイフだった。てかこの世界にそんなギミック存在しない。

 もちろん俺は錬金術でスペツナズナイフに【アップデート】なんてしない。したなら言うだろ。危ないから。

 

 俺はこの時……初めて自分の錬金術で武器が【成長】することを確認できた。

 

 

 

 静寂の中、ラルフ君の反応を見ても、いまいち何が起こっているのかよくわからない兵士たちが唖然とした声を漏らしはしめた。

 

「なんだ? あれ、そんなに凄いナイフなのか……?」

 

「自意識の塊みたいなあいつが立ち尽くしてるぞ。よほどの武器なんだろうな」

 

「俺、昨日見たけど、なんか刃の部分だけ、矢のように飛んでたぞ。そしたらなんか見えない力で、また柄に戻って行っていた。それだけでも凄いのは確かだな……!」

 

「マジかよ……そんな武器を造れるなんて、すげぇな……」

 

「ああ、その上ダイアさんが来てから、武器の仕上がり具合が本当によくなったよな。すげえ錬金術師だ」

 

 工房はしだいに俺を称える声で包まれる。照れる。

 ……だが、実はこの場で、一番驚いているのは俺だ。

 

 俺の錬金術が【神器】を造ったっぽいのが、これで濃厚になった。いや、まだランクとしては【王器《レガリア》】だが、それでも十分に逸物だ。最初はこのナイフの種別は≪Aランク≫だったことからも、しっかり【成長】しているのがわかる。

 

 マジか。マジだよな。

 マジで転生チートだろこれ。だって俺の錬金術、母さん譲りの田舎錬金術だもん。そんな凄い技術あるわけがないし聞いてもないし、現に俺が生まれる前から母さんはリーベ村で錬金屋さんしてたのに、今回のようなことが起こったのは初めてだ。

 

「……ふざけるな。何をお前ら、勝ち誇ってるんだ? 俺は【神器】を造れと言ったんだぞ! これは【神器】か? 違うだろバカ共が! つまりお前はやはり詐欺師だったということだ! さあ憲兵共! こいつを捕らえろ! でなければ殺せ! 殺せよ! さあ早く殺れぇ!」

 

 殺れぇ! じゃないんよ! 物騒だな!

 それに、同じ製法で造った【神器】ならある。今なら確信を持って、これは俺が造ったものだと言える。

 

「おい、ラルフ君。俺の腰に下げてある剣を解析してみろよ。面白いぞ」

 

「はあ!? 命乞いか!?」

 

 どんな理屈? どこが命乞いに聞こえたんだ。

 そもそも俺が今この場で命乞いをする必要ないだろ。

 お前以外、みんな俺の味方なんだし。

 

「あれ? じ、【神器】……? そ、そんな曲がった出来損ないみたいな剣が!?」

 

 それでも、腐っても錬金術師か。言われたら気になったようで、素直に解析してみたようだ。

 1週間前から俺がこれをぶら下げているのは見ていただろうし、少なくとも【神器】所有者だと理解はできたか。ほれほれ。殺せるものなら殺してみろ。

 

「あ、【神器】私も持ってまーす! ほらほら、この『ノーザンサウス』もダイアお兄ちゃんが【アップデート】したんだよ!」

 

「うおっ! 誰だ貴様……ってそれも【神器】じゃないか!? どうなってる……!? なんで、どうして!?」

 

 あ……。そういえば、アナは初対面か。一日に一回はラルフ君の愚痴をこぼすから、てっきりとっくにご対面してるものかと錯覚していたが、確かにあの時、アナは憲兵団の訓練に付き合っていた最中だったな。

 

 そう考えれば……。

 今日は最初から、さもここで造りましたよって体で、アナの『ノーザンサウス』見せてやれば一番簡単だったんだな……。

 

「う、嘘だ……! いいかお前ら、目を覚ませ! こいつは詐欺師だぞ!? どんな方法かは分からないが、鑑定結果を改竄しているはずだ! だってありえないだろ! 【神器】の製造者が何をしにこの街に……」

 

 狼狽え、現実を直視できないラルフ君。誰かに助けを求めたそうに、目が泳いでいる。だが、彼に帰ってくる視線は、どれも冷たい。

 だけども、そんな彼に、優しく声をかける者が、工房のドアの向こうから現れた。

 

 

 

「—―それはもちろん、私に会うためよ。ラルフ」

 

 鈴を鳴らしたような、凛とした透き通った声色だった。

 この場の誰もが、一斉に振り返る。俺も視線を移すが……。

 入り口には、誰もない。ただドアが開いてあるのみだ。

 

「私の『ノックスハート』に誓って、宣言するわ。この者、ダイアは紛れもなく、正真正銘、【神器】を造りし至高の錬金術師よ!」

 

 そして気づけば、声は、俺の真正面から聞こえた。

 今度はきちんと、瞬間移動せずに、その場にとどまってくれたその子は――!

 

「ナージャ! お前、ナージャか!? 大きくなったな!」

 

「ダイアお兄様! お会いしとうございました! うわーん!」

 

 黄色いドレスを可憐に着こなした黒髪の美女がいた。

 一目でわかった。ナージャだ。あの頃の切れ長の目が特に綺麗な美少女が、そのまま大きくなって、そこにいた。

 彼女は、目に涙を浮かべて、俺に抱き着いてきた。




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