追放された錬金屋さん、しっかり貰ってた転生チートで神器量産中~村に置いてきた習作が【成長】して村人全員S級冒険者になってました…え?俺も?~   作:好芥春日

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閑話:追放した側の物語

 ゲンツー王国の中心部に位置するマチルダ市には、そこのギルドを拠点とする冒険者パーティー『ライオネルハーツ』がある。

 各々がAランク冒険者として、国中でも名前の通るパーティーだ。

 

 彼らを称える功績のの一つに、『どんなクエストも必ず成し遂げる』というものがある。

 例え予測不能な緊急クエストが発生しても、彼らは涼しい顔で完遂する。

 突如として強力な特異個体のモンスターが現れても、決して臆することなく立ち向かい、勝利を掴み取る。

 最近、彼らを象徴する代表的な事例が更新された。

 

 スケルトンの【最上級特異個体】である『不死王《リッチ》』の討伐に成功したというものだ。

 

 この『不死王《リッチ》』というモンスターの厄介な点が、他のスケルトンと比べてもほとんど見た目に差異が見られないというところにある。

 その癖に、平均的なスケルトンよりもはるかに強く、また、『不死王《リッチ》』というモンスターの中でも個体によって扱う攻撃方法が異なるために、対処がめちゃくちゃ難しいのだ。

 

 唯一、どのアンデット系のモンスターにも等しく有効な攻撃手段である聖属性だ

けが『不死王《リッチ》』の弱点ではあるのだが、『不死王《リッチ》』は【反転錬金術】すらも使用して、聖属性を、アンデットがかえって活性化してしまう闇属性に変えてしまう場合もあるのだ。

 

 このモンスターを倒すには、どのような状況にも機転が利く優秀な錬金術師の存在が不可欠だ。

 そして『ライオネルハーツ』には、そのような錬金術師が在籍していた。

 

 していたのだ……。

 

 

 

「—―くそがっ! 面白くねぇなァ!」

 

 ホーデスは悪態をついて酒場のテーブルを蹴り上げた。集まっていた客たちがこぞってそっちを向くが、蛮人の姿を一目見て察して、関わるべからずと席を立ったり、隅に移動したりと、あっという間にホーデスの周りから人が消えた。

 

 あの『ライオネルハーツ』のリーダーがここまで荒れるのは、まあいつものことだが、今回は問題があった。

 他のメンバーも一様に、重暗い顔を浮かべて、ホーデスを諫めることすらしないでいる。

 彼らもまた、怒りに似た不満を抱えていて、ホーデスなんかを相手にしている心の余裕なんてなかったのだ。

 

 魔法使いのテロッサが、ジョッキを飲み干し、ふうと息をつく。

 いつもは姉御肌ぶって、優雅に酒を嗜んているというのに、今日はテーブルにもたれて、だらしない恰好のまま、ツマミのカルパッチョを食べるわけでもなく、ただぐちゃぐちゃにいじっている。

 

「……最悪だわ……」

 

 一言そう呟いて、カルパッチョをいじっていた手を止める。

 ジョッキに手を移して、中身がないことを確認すると、ジョッキを高く掲げてフリフリと店員にアピールして、無言でおかわりの要求をした。そしてまた、カルパッチョをほじくる作業を始めた。

 精神的に疲弊しているのが見て取れる。

 

「おい、テロッサ。もうやめておけ。明日がひどいぞ」

 

 戦士のゴーンが彼女を諫めるが返事はない。

 二人は付き合っていた。ダイアがパーティーに所属していた時からの公認カップルだ。元から、熟年夫婦のように静かな慎ましい関係だったが、今はさながら、離婚秒読みといったギスギスした状況である。

 

 しんと静まる『ライオネルハーツ』の面々。

 ……ふと、そこには姿を見せないメンバーがいることに気付く。

 錬金術師のダイアのことではない。いや、ダイアが辞めた後にすぐ雇った錬金術師もこの場に姿を見せてはいないのだが、もう一人、このパーティーを語るうえで外せない人物の一人。重騎士のリドが不在であった。

 

 ――つい先ほど、パーティー結成以来初となる『クエスト失敗』と共に、前衛の要ともいえるリドが大怪我を負って、現在、病院で生死を彷徨っているからだ。

 なので、彼はこの酒場にやってこれないのだった。

 

 そしてダイアの代わりに加入した錬金術師は、死んだ。

 仲間に死人を出したことも、このパーティーは初めての事態だった。

 

 いや、死人どころか、これまで大きな怪我を負うことも、思い返せば一度だってなかった。

 そしてそれは、ダイアがいたからに他ならない……。

 

 ダイアの錬金術は、決してトロくさくはなかった。

 だが、今回引き入れた錬金術師は、ダイアよりも更に早く【アップデート】を行使できた。

【反転錬金術】の可能性を排除したシンプルな錬成陣だった。

 

 更に言えば、錬成陣の構築中は、作業に集中するために、とても無防備かつ、後衛として仲間への指示を出す役割すら疎かにする。

 安全圏にいたならば、それは有効な手段だったろう。

 だが冒険者としてクエストの現場に赴く錬金術師として、それではダメなのだ。

 

 一瞬の油断が命取りとなるクエスト。中でも特に気を抜けけないモンスターとのバトル中。

 それを行った者の末路は、自身の命と、その者を庇い二次被害の犠牲者を出すという悲惨な結果である。

 

 正式にパーティーを組んでの初クエストでこれが起こってしまったのは不運としか言いようがないが、いずれ起こる可能性の一つなのは間違いなかった。

 それが最悪の形で引き起こされただけなのだ。

 

「錬金術師は錬成の早さが命。そして錬金術師の命はパーティーの命……。ふざけんなよ! 勝手に俺らの命運を握っといて、あっさり死にやがって……! こんなことなら、ダイアの野郎とまだ組んでおくべきだったぜ!」

 

「そうだな……。俺たちは、あのゴミクズの口車に乗せられた被害者だ。Aランクパーティーの肩書が欲しかっただけの三流錬金術師に、まんまと踊らされた」

 

 ホーデスとゴーンが、死人の愚痴をこぼしながら、過去の仲間へと思いを馳せた。とんだ掌返しだが、二人は自分の発言の整合性なんて気にしちゃいない。

 

 ダイアを自分勝手に追放したのには、深い理由なんてない。今回死んでしまった錬金術師に唆されたためだった。

 錬金術師は錬成の早さが命。

 お前らのとこの錬金術師、田舎者だろ。錬成陣からトロくさい匂いがするぜ。Aランクパーティーには釣り合わない。

 俺は王都で最新鋭の錬金術を学んだ。

 田舎錬金術には限界がある。いずれ足を引っ張る。俺を起用するべきだ。

 焦ることはない。ゆっくり考えればいい。俺が今見せた錬金術と、これまでのあいつの田舎錬金術の早さを比べてみればいい。

 聡明なあんたらなら、パーティーに必要な人材がどっちなのか、わかるはずだ。

 

「……そうね。私たちは詐欺にあった被害者よ。ダイアだって戻りたいはずよ。リドの重症も伝えて、すぐにでも戻ってきてもらいましょう」

 

「だが、あいつ……どこにいるんだ? ここ最近、影も形も見えないぞ」

 

「どうせ宿に引きこもってるだろ。よーし、叩き出してやるか! 泣いて喜ぶだろ、あいつ! ははは……! ははははは! ここからが『ライオネルハーツ』の再スタートだ!」

 

 喧騒の絶えない酒場に、虚勢が響いて、すぐ消えた……。

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