追放された錬金屋さん、しっかり貰ってた転生チートで神器量産中~村に置いてきた習作が【成長】して村人全員S級冒険者になってました…え?俺も?~   作:好芥春日

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17:やめて!俺のために争わないで!

「ダイアさんに修復《リペア》してもらうと、すごく調子がいいですよ! いつもありがとうございます!」

 

「見てください! 何度打ち合っても刃こぼれ一つしないですよ! おかげで気兼ねなく訓練に勤しむことができます!」

 

「くぅー! ダイアさんの修復《リペア》した武器を盾受けするのは堪えますね! ……これ、本当に【アップデート】してませんよね?」

 

 ラルフ君がギャルに引きずられていった翌日。

 工房に籠る必要もなくなったので、練兵場を見学に来ると、憲兵の人たちが次々と礼儀正しく挨拶してきた。ついでに、昨日のことや、これまで修復《リペア》してきた武器の使用感など、嬉しくなることを言ってくれる。

 

「刃こぼれ一つでも遠慮なく言ってくれよ。すぐに直してやるからな」

 

「ははは! むしろ、どんな使い方をしたら、ダイアさんの手掛けた武器が壊せるんですか?」

 

 そうだな。特異個体のモンスターと戦えば、案外ポッキリいっちゃうぞ。

 とは言え、みんな、筋がいい。冒険者の荒くれ剣術とは違う、洗練された腕前なのは、君r年の様子から見て取れる。城塞都市トランの憲兵団には、良い指導者がいると見た。

 

「さあ、みんな。武器の性能に慢心してはいけませんよ! そういうのは、せめて【神器】使いから一本取ってからするものです!」

 

 キリっと表情を険しく、とめどなく流れる汗を袖で拭いながら、憲兵団第三隊長のラーシアが緊張感のない団員を叱責する。

 

「ラーシア隊長は手厳しいな」

 

 今は自身の訓練で手一杯の状況だろうに、流石に憲兵団を纏める立場にある人物だ。視野が広い。

 だが、今回は相手が悪すぎた。

 

「ラーシア。あなたにも出来ないことを下の者に要求するのは、酷というものよ」

 

 ラーシアが皆に呼びかけた一瞬の、あるかないかの隙をついて、彼女の訓練の相手をしていたナージャが胴を一閃。

 訓練用に装着していた甲冑が割れて、破片が宙を舞う。

 えげつねえ……。

 

「ぐはっ! な、なんの……まだまだこれからです!」

 

 ラーシアは苦悶の表情を浮かべながら、それでもまだナージャに食らいつく。ナイスガッツ。

 ただ、汗だくのラーシアと比べてナージャは涼しげだ。ウォーミングアップ程度にしか思ってなさそうだ。

 黄色いドレスはホコリ一つついてない。

 

 どんだけ強いんだよナージャ……。

 六年前の、おしとやかながらオシャレ好きで、村一番の美少女だった彼女は、平地で躓いて転んでしまうほどのドジっ子だった。

 

 今はドジの片鱗もなく、さながら優雅に舞い踊るように、皆の視線を引き付けていた。

 あの頃は、また突然転びやしないかとハラハラさせて、別の意味で注目を集めていたのだがな……。

 

 

 彼女が扱う【神器】の『ノックスハート』は、泉にたゆたう白鳥のような、純白の剣だ。

 性能を解析してみれば、これまたとてつもない……。

 

――――

【ノックスハート】

種別:≪神器≫

錬金効果:≪刺突の極意S≫≪連続攻撃時威力上昇S≫≪連続攻撃時速度上昇S≫≪貫通性能S≫≪納刀時オート修復《リペア》S≫

スキル:≪天穿≫≪明鏡止水≫≪水泡無帰≫

パッシブスキル:≪成長≫≪三秒飛行≫≪水面滑り≫

―――—

 

 剣を見て白鳥をイメージしたのは正解だったな。パッシブスキルにある≪三秒飛行≫はまんま三秒間だけ空を飛べるらしく、≪水面滑り≫は慣性が働く限り、水面をまるでツルツルの氷上のごとく滑って移動できるのだとか。止まれば沈む。

 

 その性能は錬金術で付与できる効果を逸脱している。

 まさに【神器】だ。人が生み出せる技術の枠から逸脱している。

 転生チート……。神の御業……。

 どうして俺は、こんな能力を手にして、異世界に転生したんだ……?

 

 

 

「ダイアお兄様? どうされましたか?」

 

 ふと、視界に入って来たのはナージャだ。

 先ほどまでの訓練は、ラーシアの気絶によって終了したらしい。気を失うまで自分を追い込むのか。すげぇな、ラーシア。

 そして憲兵団の隊長格を気絶まで追い込んでおきながら、さわやかな汗が頬を一筋伝うのみのナージャは、どれほどの強さだというのか。

 

「ナージャはこんなにも強いんだな。本当に、見違えたよ」

 

「ふふふ。ありがとうございます。それもこれも、お兄様のおかげです。お兄様が私に与えてくださった一本のナイフ……『ノックスハート』がなければ、きっとしがない冒険者の一人として、どこかで野垂れ死んでいたでしょう」

 

「そんなことない。ナージャの今があるのは、紛れもなく、ナージャ自身の実力だ。俺がきっかけであったなら嬉しいが、流石に、王女付きの近衛騎士の名誉を俺の手柄にするには、話が大きすぎる」

 

 ナージャが俺を慕ってくれるのは、素直に嬉しい。

 だけどもなんでもかんでも俺が【アップデート】した武器のおかげなんて言ったら、ナージャの立場がない。

 そこに辿り着けたのは、紛れもなく、彼女が行動を起こし、それを達成してきた積み重ねがあるからだ。

 

 それを伝えると、泣きそうな顔で、喜んでいた。かわいい。

 

「……それでですね。王都を出る前に、お兄様の話を、王女様にしたんです。どうしても会いたいお方がいると」

 

「いや、ルイジアナを迎えにきたんだろ?」

 

「まあそれはついでです。一番はお兄様に決まってるじゃないですか」

 

 そうですか。まあ、死んだと思ってたんだもんね。ごめんね……。

 

「それで、そしたらですよ。……王女様も、是非ダイアお兄様とお会いしたいと申されたんです。【神器】を造った人を是非招きたいと!」

 

「へえ、王女様がねぇ。俺なんかに会ったところで……ほえ!? 俺に会いたい!?」

 

 ノリツッコミみたいな驚き方をしてしまった。

 ええ……王都にはいきたいが、正直、お偉いさんに会うのは嫌だな……。

 必要以上に気を遣うのは、肩が凝るからいやなのだ。肩凝りはいやだ……。肩凝り怖い……。

 

「む。待ってくださいナージャ様。ダイア様を王都にお連れするですと? それは困ります」

 

「あら、ラーシア。もう目を覚ましたのね」

 

 困っていると、ラーシアがボロボロの体を引きずって現れた。

 そしてこほんと咳ばらいを一つして、ナージャに対して、堂々と言ってのける。

 

「ダイア様には、この憲兵団で専属の錬金術師となって頂く予定でした。なのでどうか、王都にお連れするのはやめて頂きたい」

 

 いや、それも初耳なんですけど……。

 俺の意見など聞こうともせずに、二人の女性が、俺を巡って、にらみ合うのだった……。

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