主人公
病院から出た事が無い生まれつき重度の心臓病に侵されてる一人ぼっちの青年
高校生くらいの年齢、さっさと死にたいと思っている
ルーチェ
本当はるーちゃん自体が人形だけどここでは世界観に合わせて、るーちゃんは人間で職業がJK人形師という事になっている
※ご本人はIRIAMライバー
-1-
コツン、コツン。
フローリングに靴の音が響く。
冷たく響くそれは俺に虚しさを与える事しか無かった。
俺の人生は
「……余命1ヶ月、ね」
ずっとベッドの上が自分の世界だった俺にとって、生きる事より死ぬ事の方が余程楽に思えた。
数ヶ月前容態が急変した俺は運悪く一命を取りとめ、そこで医者から聞いたのが『余命数ヶ月』という宣告。
本当ならもっと早く死んでほしかったが順当に生きてしまい、残り1ヶ月。
あと1ヶ月生きないといけないと思うとどうにも溜め息を吐いてしまう。
身体に異常も無く、本当にそれだけで済むのかという面倒な気持ちも合わせて今日も今日とて生きたくない日常を過ごす。
そう、思っていた。
……バタバタ、と音がする。
いつもなら規則的な靴の音が今日は騒がしい、俺の近くの病室で人でも死ぬんだろうかと興味無さげに聞いていたがどうにも音が大きくなってくる、まるでここに近付いてくる様な……
「ごめんごめーん!遅れちゃっ……あれ?」
「あれ、じゃないんだけど」
ガララと勢い良くこの部屋のドアが開けられたと思うと女の子が顔を覗かせてきた……知らない女の子だ、どうやら病室を間違えたらしい。
人との関わりなんて言う非効率的なものなんて俺は御免だからと追い返そうとして……目が合う。
「わわっ、ごめんなさい!病室間違えちゃった!」
「……え」
興味なんて無い、はずだった。
しかし病室を出ていくその直前に見えた目、それはどこまでも澄んだ綺麗な夜空の様な瞳をしていた。
たった一瞬のそれで、俺はその瞬間だけ空虚だの面倒だの早く死にたいだの、そんな気持ちを忘れていた。
間違いない、今まで無かった気持ちだ。
「……今のは……一体」
どうせもう会えないのに、この気持ちの正体を知りたくて。
もう一度会いたいと人生で初めて思ってしまう自分がいるのだった。
-2-
コン、コンと病室のドアをノックされる。
そろそろ面会時間も終わりだと言うのにまた部屋を間違える様な人間がいるのかと呆れながらも、後々面倒になりたくないからと声を上げる。
「部屋間違えてますよ」
「あ、あのっ!さっき部屋間違えちゃったんで、その、お詫びでも……と思ったんですけど……」
目を見開く。
その声は間違いなく、少し前に見たあの夜空の様な瞳の持ち主の声だった。
二度と会えないものと思っていただけにこの気持ちの正体を知れるかもしれないと思うと、先程までの嫌悪感は消えていた。
「……入れば」
ぶっきらぼうに答える。
「ありがとうございます〜!ほんと、さっきはごめんなさい!ええっと……これ、お詫びの果物なんですけど。……め、迷惑でしたか?」
「普通、部屋間違えただけでそこまでやる?」
「入り方とかめちゃくちゃ失礼だったかな〜と思いまして……あはは」
「ふーん、面白いね君。良いよ、貰う」
根っからのドジ娘なのだと察するのと同時に、何となく笑いが込み上げてくる。
人と関わりを持ってこなかった俺にとってこの騒がしさは本来雑音になるはずだったのに、何とも不思議な気分だ。
「ほんと、お騒がせしました~」
だから、だろうか。
彼女を少しだけ引き止めたくなってしまったのは。
「ねえ」
「え、はい?」
「君さ、生きてて楽しい?」
そして、そう聞きたくなってしまったのは。
「……?楽しいですよー、友達と沢山遊んで沢山お出かけしてゲームして、だからとっても楽しいです」
「……そ。なら良いや」
今日まで、俺は誰かを
誰かに興味を持つ事が、それが自分自身でも有り得なかったから。
だが、初めて俺はこの女の子を羨んだ。
もしもこの子と共に人生を過ごせていれば、病気なんて無ければ、ほんの少しだけそれが脳裏に過ぎってしまった。
考えるだけ無駄だと分かっているのに。
「……ありがとう、聞かせてくれて」
複雑な気持ちが絡まるのを抑える様に、そう一言だけ漏らす。
死ぬ瞬間に、この夢みたいな一瞬を思い出せるならそれで良いのだと。
「……あの」
「良かったら、なんですけど。こういうお話……友達とのお話とか、毎日の話とか……くらいなら、またしに……来れますよ……?」
そう、割り切ろうとしていたから。
突然にそうして切り出されて、どう返そうかと困ってしまう。
彼女には見透かされていたのか、それとも何も考えていないのか。
「……えと、やっぱり今の無し――」
「話して、ほしい」
「え?」
「俺さ、こっから出た事無いんだ。だからここで会ったのもなんかの縁だろうし、話してくれるならしに来てほしい」
「ほんとですか!?」
「いやなんで君の方が食い付いてるんだ……」
多分何も考えてないんだろうな。
そんな少しバカっぽい、それでいて純粋なこの子の話に。
いや、この子自身に、興味が湧いていた。
「なあ。君、名前は?」
「るーちゃんですか?るーちゃんはルーチェって言います!普段はJKしながら人形師をしてるんですよー。お人形さんを沢山作ってるんです!」
「へえ……良い名前だね」
「貴方のお名前は……なんて呼べば良いですか?」
「俺?俺は……」
自分の名前なんて何年振りに名乗っただろう。
もう、分からないくらい遠い遠い昔の話か、それとも
だと言うのに、この子……ルーチェの前では自然と名乗れるのが自分でも不思議で面白く感じる。
「貴方も良い名前だね!」
「……そりゃどうも」
残り1ヶ月。
俺の人生最後の30日前後は、何となく楽しくなりそうだと
-3-
バタバタと忙しない靴の音が聞こえる。
少し前までは無機質なものだと感じていたその音が、今では俺の楽しみになっていた。
何とも不思議で、何とも安直だが事実なのだから仕方ない。
「おは〜ちょっと遅れちゃった」
「おー、待ってたぞ」
人間、心を開こうと思えば一週間もあれば簡単に開けるものなのだと実感している。
実際ルーチェと一週間過ごしてみて、人と関わる事がこんなに楽しいのだと初めて気付かされるくらいには仲良くなれた、なってしまった。
あの日病院に来ていたのは盲腸に
そんな
どうしようも無く灰色だった俺の世界に、色を付けてくれた。
……その為なら、日に日に弱っていく身体なんて気にしなかった。
不条理、理不尽だと今更ながらに思う。
やっと生きていて楽しいと思えたのに、その時には既に余命通りの身体になっていて。
ルーチェと出会う前はあんなに死にたいと思っていたのに、今になってそうなってしまっているのは何とも皮肉なものだ。
「……顔色悪そうだけどだいじょぶそ?」
「は?俺の顔色が良かった事なんて無いが?」
「いやブラックジョークぅ!」
彼女には、俺の話も少しだけしてある。
生まれつき心臓の難病でずっとこの敷地から出た事が無い事、両親は既に俺を捨ててどこかに行った事、だから外の話を聞きたかった事。
……余命の事と、瞳に惹かれた事は話していない。
余命の事は心配させたくなくて言い出せず、後者は小っ恥ずかしくて。
「そういえば今日は遅かったけどなんかあったのか?」
「あ、それね。実はこれを仕上げちゃおうと思って……じゃーん!るーちゃん人形!」
ルーチェがカバンから取り出したのは自分そっくりの人形だった。
……あの夜空の様な瞳も再現されている、凄く綺麗だと月並みな言葉ながら感じてしまう。
「おー、そっくりだな。流石人形師」
「でっしょー?今日はこれを、君にプレゼントしたいと思って急いで仕上げてきたんだ〜!……う、受け取ってくれるかな?」
「……貰って良いのか?」
「もっちろん!その為に作ってきたんだからね!早く少しでも良くなりますよーにって!」
「ありがとう、それじゃあお言葉に甘えて貰ってくわ」
俺の為に作ってきたのか、と思うと思わず頬が緩む。
しかしそれと同時に申し訳無い気持ちにもなってしまう、何せ俺はもう死ぬまで1ヶ月どころか三週間と少しだ。
そう思うとやはり言い出す事なんて出来る訳が無かった。
この子には、最後まで笑顔のままで俺の思い出の中にいてほしいから。
「ん?どうかした?」
「いや……大事にするよ、るーちゃん人形」
「うん!るーちゃんだと思って大切にしてね!」
「くく、それどういう意味だよ」
「さ〜てなんでしょうかね〜」
そして多分、この人形がいてくれれば死ぬ瞬間もきっと心地良い気持ちでいられるだろうから。
そうやって言わない理由を探して逃げてしまう。
いつか、言わないと行けない日が来るのだと分かっていても。
-4-
ルーチェと出会って二週間が経った。
今日もあの子はいつもと変わりなく外の話を聞かせてくれて、その時だけは死にそうなくらい辛い苦しみを忘れる事が出来た。
俺の身体はもう、殆ど限界を迎えていた。
昨日、主治医から言われた事があった。
「もしも君が望むなら、安楽死の処置を取っても良い」
ずっと俺の主治医だっただけあって、ルーチェと出会う前の俺をどこまでも熟知していたから出てきた言葉だった。
本来なら俺はこれに同意して、今日か明日にでも死ぬ予定だったのだろうと直感的に感じた。
ずっと死にたいと思ってきたから、それは俺の望みだったから。
だが
「俺は……生きたい。一日でも長く生きたい」
口から出てきたのはガラでも無い、そんな言葉だった。
夜一人、窓から覗く
ほんの半月でここまで変わるものなのかと、言った俺本人ですら驚いてしまう程だった。
主治医も勿論驚いていたが、次第に何かを察したのか穏やかな顔付きになり
「そうか」
そう一言呟いて何も言わなかった。
好きでもなかったが両親が蒸発した後も一人付き合ってくれた唯一の大人だけあって嫌いになりきれなかったそんな人間の言葉を聞かされて、何も思わない訳が無かった。
「……今まで面倒掛けたな」
そんな言葉を投げてからそっぽを向いて寝た。
後ろからは何となく静かな
……俺はあと、どれくらい生きられるのだろう。
余命は余命であって、必ずその日まで生きられる保証も無ければその日になれば確実に死ぬとも限らない。
俺はどうして、好きでもなかった主治医に最後に言葉を送ったのだろうか、どうしてそうしたいと思ったのだろうか。
それは『後悔したくない』からではないのだろうか。
「だとしたら、俺は……」
ルーチェから逃げる事は、果たして後悔しない選択なのか。
そんな事、分かりきっていた。
-5-
余命まで残り一週間前後、ようやく心の踏ん切りが付いた俺はルーチェに本当の事を話そう、逃げずに向き合おうと決めた。
どんな言葉を言われたとしても大丈夫だと言う覚悟を持って。
言葉を発する事さえ本当ならまともに出来ないだろう身体にムチを打って、彼女を待つ。
面会なんてものも本来ならここまで来たら完全禁止にするはずだが、最初で最後のワガママという事で主治医が許してくれていた。
一般人からしたら今日は休日、彼女はまだ日の高い内からバタバタといつもの様に足音を響かせながら俺の病室に来た。
「おっはよー!元気?」
「よ、ルーチェは元気そうだな」
「そりゃ勿論!貴方に会えると思ったら元気100倍だよ!」
「ありがたい限りだねえ」
ズキリと胸が痛みつつも、元気かと言う問いには答えず……答える事が出来ずに笑い返す。
「……ねえ、昨日より声ガラガラじゃない?それに顔色も……」
「ん……流石に分かっちまうか」
「毎日来てるんだもん、それくらい分かるよ」
どちらにせよこの子に隠し事なんて無理だったかと苦笑いを浮かべる。
いや、この子でなかったとしてももう限界なのは誰でも察せるレベルにまでなってしまっているだけか。
そうなると途端に緊張が無くなる。
参ったとジェスチャーをしながらゆっくり話し始める。
「あー……本当はもう少し前に言うべきだったんだろうな……俺の余命の事」
「……」
彼女は黙ったまま、何も言わない。
まるで全て覚悟していたかと言う様に。
「俺さ、ルーチェと出会った頃にはもう余命1ヶ月って言われてたんだ」
「1……ヶ月……」
「だから正確には今日時点で残り一週間くらい……何と言うか、言うの遅くなって悪かったな」
「そんな……事、言わないでよ……」
「そう言ってくれるなら嬉しいよ……だって俺、ルーチェと出会わなかったら余命なんて待たずにさっさと死んでたと思う。生まれてからずっと苦しいだけでつまらないだけで、なんで生きないといけないんだってずっと考えてたから」
泣きそうになるルーチェを見ながら、本音を語る。
そして本音を語りながら、あの日俺が彼女の瞳に惹かれた理由が少しずつ分かってきた様な気がしていた。
「ルーチェと出会った事で変わったんだ。毎日ルーチェと話してる時間が楽しくて、心地良くて、生きたいって思える様になった」
「でも、現実って無情だよな。余命は変わんないし、ちょっと前までは無駄に苦しい癖に死ぬ事も無いみたいな身体だったのに急に死にそうになって、生きたいと思えば思う程身体はボロボロになって」
「だから後悔しない内に話したかった。最後まで君には笑顔でいてほしかったから」
「そっ……かぁ……覚悟……してたけど、聞かされると……辛いなあ……」
「何となくは察してたんだ」
「来る度にドンドン顔色悪くなってくし、身体も細くなってくし……そうじゃ無いと思いたかったけど……」
察されていたのだと思うと肩の荷が降りる気がした。
罪悪感が無かったと言えば嘘になるから、隠していた事への責任というものは感じていたから。
これで
「気、遣わせたなら悪かった」
「そんな事無いよ……貴方が笑顔でいてくれるならそれで」
「……やれやれ、君は本当にお人好しだな」
最初の日に会った時も、とんだおっちょこちょいなお人好しに絡まれたと思ったものだった。
それを懐かしみつつそう答える。
「……違うよ」
「そうなのか?」
だが、本人は違ったらしい。
意外だと少し目を丸くする、ルーチェに打算なんてもの存在してるとは思っていなかったからだ。
「最初はそうだったよ、お詫びがてら何か楽しい事を話せれば良いなって。でも……話してる内に変わったの。貴方と話してるととっても楽しくて……それが恋だって気付いたの」
「恋、か……」
噛み締める様に呟く。
まさか人に惚れられる事があるなんてな、と軽く衝撃を受ける。
そしてそれと共に俺の中にある彼女への気持ちの正体にも答えが出せた気がした。
「じゃあ、俺の中にあるこの気持ちもきっと恋なんだろうな」
「え……」
「最初、間違えて入ってきた時に君の瞳に一瞬で興味を持った。あの時の気持ちは……一目惚れだったんだろうと今分かったよ。だから俺はあの時引き止めたんだと」
お互いジッと見つめ合う。
俺もルーチェも惚れたという割には単純な理由だと思う。
同時に『恋に理由なんて無い』とどっかの本に書かれていた嘘としか思っていなかった言葉は本物だったのだと今更ながら実感する。
「なあ、ルーチェ」
「は、はいっ」
「そんな畏まらなくても良いだろ。……もしも、たった数日かも知れないけれどさ。らしい事なんて何一つさせてあげられないけどさ。恋人になってほしいって言ったら……なってくれるか?」
「……そんな予防線張らなくても、るーちゃんの方から言ったのに。ほんの少ししかいられないんだとしても、想いが通じ合えるなら私はそれで良い」
少しだけ、心配だった。
何なら明日には死んでるかも知れない男の恋人になってくれるのだろうかと、ルーチェがそんな事言わないと知っていても不安だった。
だから答えを聞けて、俺はホッと笑みを浮かべる。
「ありがとう」
そしてどちらからともなく、お互いに静かに触れるだけのキスをする。
多分、恋人として出来る事はこれが最大限だろうから。
一瞬のはずのその時間は、永遠に感じられる程で。
「……キス、しちゃったね」
「だな」
その幸せだった時間を、俺が死んでからも彼女には感じて貰いたくて。
「……俺が死んだらさ、色んなとこ旅行いってくれないか?」
「縁起でもない……とは、言えないよね……」
「バーカ、しんみりすんなって。死んだら目には見えないだろうが俺は自由の身になれんだから、色んなとこ連れてってほしいんだよ。な、ダメか?」
死んだ人間がどこに行くかなんて分からない。
少し前までの俺なら死んだらそれまで、そこから先なんてものは存在しないと思っていた。
だが、今は自由の身になってどこへでも行けるそんな死後であってほしいと願う。
そうすればルーチェとのデートも出来るからな。
「分かった。……色んなところ絶対連れてくね。海や向日葵見たいって言ってたよね。夏には絶対連れていくよ」
「おう、そうしてくれ……楽しみだなあ」
静かに呟けば、ルーチェがギュッと抱き締めてくる。
身体は震えていた。
「……大好きだよ。ずっと、一生」
「俺も大好きだ。死んでもずっと一緒だ」
その身体を、そっと抱き締め返す。
ルーチェの心臓の音が、彼女が生きているのだと実感させてくれる。
それだけで俺は充分だった。
俺が人生最初で最後に流した、涙だった。
-6-
ミンミンとけたたましく
照り付ける太陽を避ける様にして麦わら帽子を被る少女は、海と向日葵畑どちらも同時に一望出来る場所を見つけていた。
カバンには自分に似せた人形を
「凄い……こんな絶景あったんだぁ……」
潮風に白いワンピースが吹かれながら目を輝かせる。
「ね、貴方の見たかった海と向日葵畑、どっちも見られるよここ……喜んでくれてるかな」
少女の彼氏は余命より一月だけ長く生きられた。
主治医からは「君がいてくれて、彼の人生の最後はとても幸せなものだったよ」と男の死後しばらくしてから彼女に伝えられていて。
その時に託された彼の遺品……一度あげた人形と共に少女は男との約束を守る為各地を巡っていた。
そして見つけたこの場所。
静かに見つめる彼女は笑顔の中に涙を滲ませ、そしてポロポロとそれを零しながらそれを気にする事も無くただただ。
ひたすらにその光景を、男との思い出に浸り思い
誰かがそれに答える事は無い。
唯一答えられる人間はもうこの世にいないのだから。
「もう貴方といた時間より、いなくなってからの方がとても長くなっちゃった」
「でもね、貴方といた時間はどの時間より大切だった。これまでも、これからもそれは変わらないよ」
「たとえ姿が見えなくても、傍にいてくれるって分かってるから」
「見ていてね、私の事」
「……愛してるよ」
人生最初で最後。
彼女が発した『愛』の言葉。
それは誰に聞かれるでもなく、風に溶けて消えていく。
後にこの近くには一つの墓が建てられた。
いつでもこの場所が見られます様にと想いを込められて。
そしてその墓には夏になるとブルースターの花が添えられ、夜空の様な綺麗な瞳を持った女性がいつまでもいつまでも、その墓の前に
――「俺も愛してるよ、ずっとずっと」
-fin-
ブルースターの花言葉『幸福な愛』
たとえ過ごした時間が短くても、愛は本物になり得るものであると信じて――