スネイルちゃんはルビコン3で生き残りたい。 作:VERRILLを崇めよ
設定を振り返る為にAC6を起動する
体が闘争を求める
ネストに籠り始める
投稿が遅れる
俺は退屈には勝てない、だから退屈が訪れる前に潰しに行く。ACは自由だ、俺という存在を増幅するコイツは俺を熱くする。
自由を求めるなら独立傭兵にでもなればいい。そうしなかったのは選択肢を選ぶ側に回った方が面白い事に近づける、そう考えたからだった。
制約が増えたが、退屈というモノはなくなった。この所はベイラムもルビコン解放戦線も血の気が多くてたまらない。
本当なら戦場で強い奴と戦えるならそれが一番だがV.Iとしての立場が邪魔をする。
またもや退屈が俺を包もうとしている、それは―――奴の存在が大きく関わっている。
「邪魔するぞ、スネイル閣下殿」
「せめてノック位したらどうです、貴方には言っても無駄でしょうけど」
蜂蜜色の髪、琥珀のような瞳、利発そうな雰囲気を湛える眼鏡、小柄な体ながらもしなやかな所作。きっちりと整えられた制服と机上の扱いに彼女の律儀な性格が伺える。
ヴェスパー第二隊長スネイル、階位は俺よりも下だがアーキバスもといヴェスパー部隊においては閣下と呼ばれ親しまれる実質的な部隊の長だ。
ヴェスパー隊長にはそれぞれの執務室が割り当てられているのにブリーフィングルームで仕事をする変わり者、しかし代わりにスネイルの執務室にはお宝が眠っているとの噂でアーキバス隊員の賭けの対象になっている、俺も賭けてる。
「それで?わざわざここに来た要件は何ですか?」
ため息を吐いて眉間に皺を寄せながら嫌々とした態度を見せるが態々作業の手を止めて自分と俺の分のコーヒーを用意するコイツは面白い。
「壁越えっていいよなぁ、楽しかっただろうなぁ」
「……フロイト、言ったでしょう。貴方には任せたい仕事があるの、切り札を壁ごときに切るなんてありえません」
「それにしても行かせたのがV.Ⅳか、奇襲は得意だろうが要塞に正面から突っ込ませるとはとんだスパルタだな。成るほどそういう事か」
「なんですか、独り言ちて一体」
「スネイル、壁越えを何故ベイラムとの共同戦線に変えた、何故ラスティを態々行かせた、何故壁越えにあの独立傭兵を採用した」
「
これだ、これさえなければ可愛げもあるが実際コイツにとっては企業こそが第一優先であり、その為であれば一切の躊躇いもなければ容赦もない。
「なんですか?ラスティを構ってばかりで嫉妬でも?」
口元に手の甲を寄せて隠し、いやに耳に残る嘲笑う声で俺を揶揄うが、目元も口元も一切笑っていない。
「ラスティなら事も無げに戻るでしょう。ヴェスパー隊長に欠員が出たとしたら業務を引き継ぐのは貴方ですよフロイト、貴方が一番暇なのですから」
「それを言われたら何も言い返せんだろう。それで?俺に任せたい仕事って結局なんだ、退屈すぎて勝手に出撃しそうだ」
「惑星封鎖機構を潰してきて下さい」
「……は?」
コイツは何を言っている?そう思って顔を見つめ返すが今度は一切の揶揄いの気配はない。
「フロイト、いずれ我々がコーラルを手にした時には輸送の経路が必要ですが惑星封鎖機構は必ず立ちふさがるでしょう。その前に潰して置くのが最も効率的なのです」
「そうは言うがな……さすがに俺一人だと時間がかかるぞ」
「問題ありません、惑星封鎖機構を一網打尽にする手筈を既に手を打ってあります」
流石にこれには俺も絶句してスネイルの顔を凝視する、コイツは自分で何を言っているのか分かっているのか?
「独立傭兵レイヴン、彼はいい働きをしてくれました。ですが勝つのは我々アーキバスです」
そう言ってコーヒーをお行儀良く血の気の良い潤んだ口元に運ぶ。
「あちち」
――――このどこか抜けている女が権謀術数の鬼才であり、俺達の長であるという事をたまに忘れそうになる。
俺がアーキバスに所属してから、ルビコンの最前線に送り込まれても、結局面白い事は殆どなかった。
最近はラスティが入ってきてからはほんの少しは張り合いも出て来たが、シミュレーションはここのレーションと同じくらい味気ない。
ヴェスパー部隊の隊長は一に実務、二に戦闘だ。とはいえ俺の実務は戦う事で、功績を積み重ねて行く内に気づけばV.Ⅰになっていた。
ヴェスパー部隊の隊長といえども一重に強いとは言い切れない。特にメーテルリンクは顕著だな、柔軟性はあるが面白味にかける。
そんな折にふと気になった、そういえば最近スネイルが戦う所を見たことがない。
スネイルが駆るAC『オープンフェイス』、重量二脚を基礎としたアーキバス系列のパーツで構成されており、スタン兵器をメインに牽制の垂直ミサイルと近接のレーザーランスを装備した隙の無い機体だ。
とは言え普段は基地に籠りきりのアイツが戦場に立つことは殆どない。どうせ今も悪巧みの最中だろう、アイツが笑う時には誰かが破滅するのがお約束だ。
アイツの悪だくみのお裾分けを頂戴するまで暇になった俺はシミュレーションルームに籠って機体のアセンブルを試す次いでにスネイルのシミュレーション結果を覗くことにした。
腐ってもV.Ⅰの隊長だ、権限はそこらの隊長よりも持っている。滑り込む様にシミュレーターのコックピットに乗り込むとスネイルのデータをアクセスして最近の戦闘結果を呼び出した。
――――心臓が、久しぶりに跳ねた。
Pilot:V.Ⅱスネイル
AC:オープンフェイス
Result
30xx/xx/xx
WIN vs V.Ⅰフロイト
WIN vs V.Ⅰフロイト
WIN vs V.Ⅰフロイト
WIN vs V.Ⅰフロイト
WIN vs V.Ⅰフロイト
WIN vs V.Ⅰフロイト
WIN vs V.Ⅰフロイト
・
・
・
この一日だけで、俺は何回殺された?しかもこの日だけじゃない、遡れるだけ遡って見てもスネイルは何度も俺のACを破壊していた。
勿論シミュレーションのAI擬きは俺じゃない、俺を模倣しているだけであって俺の性能をコピーしている訳ではない。
シミュレーションというのはあらゆる状況においての予習であり、武装の運用や組み合わせに問題がないかをテストする為に行うものだ。
このアーキバスの中でスネイルが隠したいと思えばそれを探し出す事は不可能だ、つまりこのデータはワザと残しているのだろう。
だったらなんだ、スネイル閣下殿は対フロイト用の戦闘訓練を必要としているとでも?アーキバスの本社のボンクラ共が俺をいつでも切り捨てられる様にする為か?
下らない考えだ、そして何より俺を捉えて離さない感情が俺の頭に血を昇らせる。
――――ズルイじゃないか。
俺がどれだけ誘っても手を払いのけられるばかりだと言うのに、お前はスネイルを独り占めしていたのか。
V.Ⅰの隊長権限においてシュミレーションの設定変更、過去全ての対スネイル戦のデータを読み込み俺を模したAIの学習を行わせる。
最新鋭のPCを用いても少々時間がかかったが些細な事だ、学習が完了すると戦闘用のステージが構築され目前に愛機「ロックスミス」が現れる。
武装やアセンブルは同じ、いつも通りにロックスミスを前進させるとAIは戦闘行動に移行した。
結果は俺の勝利、当たり前の結果だった。
スネイルの戦闘結果を反映させても、スネイルに対して有利になるだけで俺に対しては何の影響もない。
言ってしまえば憂さ晴らしでしかなかったし、何も得られないというのに根気が続くまで戦い続けたのは珍しい。
無駄な時間だったなと自嘲していると突然モニターの明かりが落ちた、光源を失い暗くなったシミュレーターのシートが外へ引きずり出される。
「フロイト、貴方には仕事がある筈です。いつまで遊んでいるつもりですか」
こちらを上から覗き込み、いつも整えられた髪が垂れて俺の鼻元に微かな香りを漂わせるスネイルを見て俺はコイツの手を引いて無理やり俺の膝の上に座らせた。
「……フロイト、私にも仕事があるのですが」
「なぁ、シミュレーションで俺を相手するのは楽しかったか?」
俺を睨みつける視線を無視してスネイルに語り掛ける。俺の体でも包めてしまいそうな程小さな体だ、こんな女でもACに乗れば虐殺とも言える程の戦果を出すというのだからやはりACは素晴らしい。
「何の話を……ああ、シミュレーションのリザルトを見たのですか。別に楽しいわけでも八つ当たりな訳でもありません。貴方が一番だから戦っていただけです」
「もしも俺が、一番じゃなかったら?」
「貴方は私にとっての一番ですよ、フロイト。それで?そろそろ離してくれると助かるのですが」
「―――なあスネイル、俺とヤろうぜ」
しな垂れかかり媚び諂う情婦の様に、懇願する言葉をスネイルに投げかける。
するとスネイルは呆れた顔で俺の顎に頭をぶつける、怯んだ隙にいつの間にか抜け出したスネイルが真っ赤な舌を出して俺を挑発する。
この女の口元から覗く舌は酷く蠱惑的で、吐いた言葉には毒がある。甘い甘い痺れるような毒が。
「もしも我々に休日が来たのなら、付き合ってあげてもいいですよ」
俺達には休む暇などない、それが分かっていての言葉だろう。
―――いいだろう、ベイラムも解放戦線も封鎖機構も全て壊してやる。特別強くもないお前の為に、俺が戦ってやるよ。
――――だから、まだ死ぬな。
――――お前との約束は、まだ終わってないんだ。
貴方が(ランキングの)一番(上で選ぶのが楽)だから戦っていただけです
貴方は私(企業)にとっての一番ですよ、フロイト(意図はなし)
スネイルちゃんは企業戦士なので、恋愛要素はありません。(重要)