ウマ娘がTRPGを遊ぶだけのはずだった。   作:稗田之蛙

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11.日常への帰還

(全プレイヤーが1話終えて、ログを見せあっていた時のお話)

ハルウララ『GM、GM。ウララね、ちょっと気になる事があって』

 ――どうしたんだい。ウララ。

ハルウララ『んっとね、ラウディーちゃんとの戦闘中で攻撃に対する応戦って行動で、ラウディーちゃんがイクストリーム出してた事覚えてる?』

 ――そういえばそうだな。アレのせいでやたら耐久力が減ったPCがいて、カレンチャンは気絶までしたっけな。

ハルウララ『えっとね。ルールブックに"防御側が応戦でイクストリーム出てもダメージは増えない"って感じの事書いてるんだけど……』

 ――……え、マジだ。

セイウンスカイ『え、分かった上でやってるハウスルールだと思ってた』

カレンチャン『………………』

 ――…………。

カレンチャン『GM……あとで"おはなし"しよっか♡』

 ――はい……。

 

 

 

 さて、事件後のお話だ。

 フォーエナーから以前の事件のお詫びのお弁当を提供され、皆でそれをつまんで感想会といったところだろうか。

「いやー、ウララがあんな頼もしいとは……」

 セイウンスカイはニシノフラワーと横に座りながら、しみじみとそんな事を語るだろう。それにキングヘイローも同意はする。

「……案外、私達の手助けなんていらないのかもね」

 それぞれが若干寂しそうにしているさなか、やかんでお茶を貰いに行ったハルウララがガシャーンと盛大にこけていた。やかんの中身は……全部ぶちまけてしまった様子だ。――もう、中ないよ……(ささやかないのり)。

「うわぁぁ、やっちゃったーっ!!!」

 やかんを帽子のように頭の上に乗せて、大慌てのハルウララである。

「……いや、まだ手助け必要そうだね。アレ」

「そう、ね。そうね……きっと……」

 微笑ましそうに見守る二人である。同年代のはずなのだが、どうにも妹か何かを見守っている気分になるのは気の所為か。

「ライスさん! 新聞に出てますよ~っ。黒い刺客、スリグループのリーダー一人で捕獲ス……だって!」

「ふぇぇぇ~~!!!? み、みんなのおかげだよコレ!!」

 ……カレンチャンとライスシャワーは、年齢関係逆転してるのは気の所為か。

 

「ど、どうですか……?」

 明るい様子で皆に味の評価を聞き回っていたエナーだが、セイウンスカイに対して聞きに来る時だけ、妙にしおらしい態度を取ってきた。

 素直に美味しい弁当なので、そこはセイウンスカイも快く答える。

「うん、上手だよ。毎日作りにきてくれたら、学食まで足に運ぶ手間が減ってセイちゃん楽かなぁ~」

「ちょっと。後輩にタカらないの」

 そんなお約束とばかりの冗談とツッコミを入れて、小さく笑う二人。しかし、エナーはふるふると首を振った。

「……スカイさんがお望みならば、私は、毎日……お弁当を、差し入れにきます」

 エナーはあの時のように甘えるような視線をスカイに向けてくる。スカイも、これにはさすがに気づいた。

「え、えっと。キングや他の人にも作ってあげるのもいいかもね~、なんて……」

「あら、五人分を毎日なんて大変すぎるわ。セイウンスカイだけが受け取るのが肝要かと」

「そうだね! セイちゃん、エナーちゃんの為にあれだけ頑張ってたもんね……」

「そうだよね~。『エナーがいると、私が嬉しいんだ。キミが笑ってくれたら、私も笑えるんだ。だから……傍に居てほしい』なんて、年下の子に片膝をついて言うなんて……」

「ふふ、エナーさんが傍に居てくれたら嬉しいって、スカイさんもいってたもんね……」

「うんうん、おまけに愛されてるとか愛してるとか、そういう話もあったよね~。カレンもあぁいう事言われた~い♪」

 他の四人が和気藹々と、雑談のように話す。この場で笑ってないのは、青褪めた表情のセイウンスカイと、上目遣いで頬を赤らめてセイウンスカイに肩を寄せるフォーエナーと、きょとんとした顔のニシノフラワー、そして歯ぎしりしているノボジャック。

 

エナーも……スカイさんの事、愛して……その……

……本気(マジ)で……放っておけばよかった……

「スカイさん、そんなお相手が出来たなんてステキです!」

 

「ちょっとぉぉおおおおおおお!!!? フラワー本人じゃなくてNPCってわかっててもコレキツいんですけどォー!!!!?」

 ――PC発言とプレイヤー発言が混ざってる混ざってる。

 

 ともかくとして、お弁当をつまんでるさなかに今回の事件の総まとめがノボジャックとエナーから行われる。

「……本当に、ごめんなさい」

 フォーエナーからそう言葉が投げかけられてくる。

「そこはごめんなさいじゃなくてありがとう、と言うべきよ。エナーさん」

 何も謝る事はないと、遠回しにいいつけてくるキングヘイロー。それを受けて、エナーはもう一度頭を下げて感謝の言葉を送った。

「……本当に、ありがとうございます」

「どーいたしまして。でも、落ち込んだら今度は相談しなよ? やさしーやさしー先輩達がたくさんいるんだからさ。」

 セイウンスカイは言葉だけは印象としてはツンケンとしているが、ウマ娘達の表情を見る限り、とても優しい言葉だった。

「……はい、その通りに致します」

「ら、ライスも……力になれる時はなるからね……」

「カレンもカレンも~♪ SNSの使い方とか、そっち方面なら自信あるよー!」

「ウララはねー……うーんと、負けた時に元気が出る方法!!」

 どっとはらい。エナーがひとしきり笑い、皆も笑った。そんなやり取りを経て、ノボジャックが大真面目に告げる。

「……ラウディー。自ら『ワタシがスリグループのく・ろ・ま・く』などと証言しているようです。まるで、それを誇らしげに。『構成員を顎で使ってたのはワタシダヨ♪』『暴力や、恫喝をして脅して言う事聞かせてヤッタヨ☆』なんて……」

 あえてどういう風に語ってるのか分かりやすいように、台詞の言い方をマネてノボジャックは語った。

 それだけで、もはや彼女がどういう方向性に向いたのか理解出来てしまった。

「……エナーさんに引っかぶせようとしてたけど、今度は逆に自分が全部引っかぶるつもりなのね」

「えぇ、おそらく。ですが、何割かは間違ってないんです。それだけに、周囲も庇いづらい。バカにしたような態度が反省してないとも受け取られて、あれでは……」

 フォーエナーは祈るように手を握る。

「それでも……私は、姉さんがちゃんと心の中では反省してるって理解してるし、証言する機会があったら……私は、姉さんの事を庇うつもりです……」

 それを聞いたキングヘイローは難しい顔をした。

「いいの? あの子があなたを害そうとしたのは、歴とした事実なのよ」

「……確かに、事実なのかもしれません」

 そう踏まえた上で、フォーエナーは言葉を続ける。

「ですが、私はもう許しました。姉さんは、道を踏み外していただけです。私が、思い悩んでいたように……誰にも相談出来ずに……だから、私が、彼女の力になりたいんです。皆さんが私を救ってくれたように、私は彼女を救います」

 そのように言うと、キングヘイローは「そう。なら、あなたの判断にいちゃもんはつけるべきではないわね」と微笑んだ。皆も同じように、微笑む。

 

 

「…………それについて、なのですが」

 ノボジャックだけが、笑っていなかった。

「どうしたの?」

 ハルウララが首をかしげながら訊ねる。しばらくの沈黙。お茶が切れてエナーが「持ってきますね」と退席しているその瞬間を狙ったように、ノボジャックはまくしたてるように皆に告げた。

「……警察署で聞いていたんですが、ラウディー。自分から、エナーを犯罪者に仕立てあげて退学させようって話で、罪が軽すぎるから退学させられないかも、って話になって……それから『――だったら、エナーにワタシの罪、引っ被させたらイイジャン?』なんてラウディーが言ってたって話ですよね?」

「うん。そうだね。記憶通りなら、おそらく」

 セイウンスカイも話に乗っかるように言葉を発する。ノボジャックは、溜まり溜まっていた言葉をワッと吐き出した。

「よくよく考えてみれば、おかしいんです! 言っちゃ悪いけど、あの人はそんな『悪知恵』が回るようなウマ娘じゃない! グループのリーダーをやれていたのは人が変わる前はなんだかんだ人に好かれる部分があったからで、非行に走った後の彼女は、他人を統率出来る能力なんて……」

「それこそ暴力で言う事聞かせていたのではなくて?」

「それが能だけの御大将なら、私みたいに幻滅して離れていくのがオチです!!」

 セイウンスカイは、ノボジャックが何事か言いたいのか察して、口にした。

「……『入れ知恵したヤツがいる』と言いたいの?」 

「…………」

 確証はない。しかし、その沈黙は何よりも肯定だった。機知に富んだ印象の彼女が、ただの妄想でモノを語るはずがないのだと、セイウンスカイ達はなんとなしに感じた。

「……そもそも、トレセン学園への落第だけで、ラウディーはありえないくらい、性格が変わりました……そりゃ、多少落ち込んだりするかもしれませんが……だからって、13歳で他人の心を縛り付けて、犯罪組織紛いの事やれるような器の子じゃ……」

「……でも、入れ知恵したとしたら誰なの? 料理店のお店の人くらいしか残ってないけど、あの人そんなたいそうな人物には見えなかったよ~?」

 そんな事をのたまうカレンチャン。彼女の想像通り、場所を提供して甘い蜜を吸っていただけのあの料理店の店長はそういうタマではないだろう。

「では、一体誰が…………?」

 この時点の彼女達に、何も分かるものはなかった。そもそも、そんな人物が"実在"するのかどうかすら、それすらも分からない状態だった。

「……これを。彼女の実家で見つかった、ラウディーの携帯です」

 一同はスマートフォンを渡される。しかし、デフォルトのもの以外何もデータが入っていない。

「なにこれ。削除済みじゃん」

「こわしちゃったの?」

「…………いえ、見つけた時には全部削除されてました」

「あら、じゃあ、犯罪計画にでも使われてたのかしらね? よくあるじゃない。捕まる前に消す、とか、あるいは……使った毎に消す、とか」

 ふるふると首を振る。

「その手のデータを復旧するサルベージ業者に、一応依頼してみました……『完全にお手上げ。木っ端微塵にデータが破損してる』だそうです……」

「……はぁ、じゃあ、完全削除アプリを使って削除したとか? 用意周到だねぇ、いやはや」

 セイウンスカイは、そのような言葉を口にする。その言葉を受けたノボジャックは、俯いたまま、小さな声でつぶやくように答えた。

「……絶対、違う……」

「そう言える根拠は?」

 セイウンスカイが促すように訊ねる。

「………………写真……」

「?」

 カレンチャン、ライスシャワー、ハルウララが携帯を覗き込んでいて。ノボジャックが全て答える前に回答にたどり着いた。

「あれ、家族写真とか無い?」

「……写真、撮らない人だったのかなぁ?」

 

 ノボジャックは自らのスマートフォンを取り出す。そして、トップの壁紙画面に三人のウマ娘の写真が映っていた。

 茶髪の時のラウディーと、フォーエナーとノボジャックだろうか。五年生くらいに見える。キャンプ場で料理に興じていて、仲睦まじい様子だ。

「……ラウディーから、送ってもらった……彼女が消すはずが、ない……」

「でも、あんな状態だったのよ? だったら、消した可能性だって」

 ノボジャックの表情に暗い影が落ちる。

「……本当にそうだったら、もう……彼女を、信じきれない…………」

 しかし、そこでエナーが戻ってきて、不安げな表情のノボジャックと、怪訝な表情のキングヘイローを交互に見て。

 ノボジャックの携帯を覗き込む。そこには相変わらず、幼き日のラウディーが三人と仲良くキャンプに興じる姿が映っていた。

「あ、やっぱりジャックも大事にしてくれてるんだ。抜け出してカームフェスティバルに行く直前、お姉ちゃんも私に見せてくれたよ。『あの時は楽しかったなぁ』って、『何が起きても、これは消す気になれないなぁ』なんて……ふふ」

 そんな彼女を見て、どういう事か分からずに混乱し、愕然とするノボジャック。それぞれのウマ娘は、お互いに目くばせをした。

 

 ――この事件、何かまだ解決し終えてない事が残ってる……。

 

 

 

 

 プレイヤー達とGMによるMVP投票:ハルウララに決定。(想い1追加回復)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

『えぇ、えぇ、それは、悲しい出来事でしたね……』

 

『心配なさらず……私(わたくし)は、常に迷えるウマ娘様の味方です……』

 

『ゆえに、仰ってください。あなたの悩みを。あなたの、苦悩を』

 

 

『――あなたの。溜め込んだ悪意を』

 

『……その感情を、どうすれば解消出来るか』

 

『……私(わたくし)が……相談に乗って差し上げます。一緒に、解決していきましょう……』

 

『……だって、あなた達ウマ娘は、《愛されてしかるべき存在》なのですから』

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

NEXT STAGE⇒『燃え上がる悪意』

描写の傾向(特に暴力表現の頻度・内容など)

  • 現状維持
  • もっとシリアスな描写を増やす
  • もっと穏便な描写にする
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