ウマ娘がTRPGを遊ぶだけのはずだった。   作:稗田之蛙

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4.アクイジション

 

カレンチャン【??:0⇒1】

 

 有栖川家へ移動した一同は、トヴィの部屋に移動した。

 女の子らしいとはいえない、質素な部屋だ。和室に六畳間のベッド。勉強机、本棚。すぐ目に入る家具はそれだけ。あとは押入れ。

 華やかとは言えないが、両親を亡くしている事を踏まえればそんな余裕は無いのかもしれない。

「録音してたならパソコンくらいはあるとは思うけど~……」

 カレンチャンはそう推測をつけて机の方を見やる。しかし机にもそのようなものは見当たらない。

「携帯で撮ってたのかしら?」

「……アリスおばあちゃんに何度も叱られるくらいハマってたのなら、携帯ではちょーっとキツいと思うなぁ」

 キングの推測に対して、カレンらしい反証を並べた。

 

「そういえば……さっき、捕まった人の携帯で何を見たの? すごく辛そうな顔してたけど……」

 ライスシャワーがカレンチャンに対してそう訊ねた。

「………………」

 一瞬だけ、陰りがある表情で黙り込む。しかし誰かがそれを指摘する前に、カレンチャンらしいオーバーな表情を取った。

「あのね、聞いて聞いて! 画面をいじってたらね、妙な女の子……ウマ娘の小さい子がね、画面越しに挑戦状を叩きつけてきたの!」

 配信の事は伝えず、黒髪のウマ娘が放った言葉を一言一句違わず伝えた。

「……【特定】? 前後の反応含めて、あの警察に連れてかれた子に指示を出してたみたいな言い草だねぇ」

 セイウンスカイの返事に対して、カレンチャンはこくこくとしきりに頷く。

「そうでしょ! だったら、とっても悪い人たちだよね~。あんなタチのイタズラを複数人で企てるなんて……」

「え、えぇ~……そ、そんな。トヴィさんが複数の人から嫌われてるなんて、ライスには考えられないよ……だって、カレンさんに会いに行ったついでに顔合わせしか出来なかったけど、それでも悪い子には見えなかったし……」

「うん、カレンも絶対そう思う! トヴィちゃんはね。他人から嫌われるような子じゃないの! それに……」

 ――他人に『死を願われる』など、そんな事があっていいはずがない。それが、たとえどんな人物であっても、

 そう口にしようとしたが。カレンはそこまで話を踏み込ませたくなかった。

「……それに、トヴィちゃんはね。他人に優しくて、とってもいい子だし~♪ 今話題に挙げたその人達にだって、きっと何か誤解されてるんだよ」

「ンぅぅぅぅ~~~ん!!」

 ……なんか、凄く聞き覚えのある呻き声が聞こえてきた。

 皆が呻き声が聞こえる方を向くと、ハルウララがベッドの下に体を突っ込んで……そのまま上手い具合に挟まって身動きが取れなくなっていた。

「ウララさん……何をやってるの?」

 顔を青褪めさせて、口をあんぐりと開けるキングヘイロー。

「え? うーんとね、推理モノのゲームだとこういうところになんか秘密の情報? があるのがお約束だって聞いた事があって……」

「あったとしても見なかった事にしてあげた方がいいモノかもしれないよ」

「……やめてよ。中学生の女の子がそんな本持ってるなんて……」

 大きなため息をつくキングヘイロー。少し間を置いて、彼女に注目が集まる。

「……なによ」

 セイウンスカイからのじとーとした視線に、首をかしげる。ライスシャワーは顔を真っ赤にして、カレンチャンは流れ弾を食らわないように明後日の方を向いていた。

「『そんな本』ってなぁに?」

 そして、ハルウララが核心を突いた。

 

キングヘイロー『スカイさぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!』

セイウンスカイ『セイちゃんのせいじゃないですし~? やーん変態♡変態キング♡』

カレンチャン『キングさんったら~♡』

ハルウララ『ねぇねぇ、どんな本なのー?』

 ――知らなくてよろしい。

ライスシャワー『え、えっと……ウララちゃんには、まだ早いかな……?』

 ――ライスの姉さんにもまだ早いですよ。っていうかこの場の全員――はい。やぶ蛇だからこの話やめやめ。

 

 ともかくとして、カレンチャンがベッドを浮かせてハルウララを救出する。

 一応、ベッドの下も見てみる。何か推理の情報の手がかりになる日記があるわけでもなければ、『そんな本』も無い。

 ただ、ベッドに近づいてみると小さなコルクボードがつるされている事に自然と気がつく。

 そこにはファストヴィクティムが撮影したと思われる写真が飾られていた。修学旅行などで友達らとの記念写真が並び、その中にファストヴィクティムとツーショットで写っている人物がいる。

 

『アリスあんどマロワ。ふたりはだいしんゆー♡』

 

 そういうポップな文字が目を惹いた。可愛らしい花柄も書き添えられている。

 幼少期のファストヴィクティムが映っている写真だ。髪型や体格がだいぶ違う事から、ずいぶんと前の写真だろう。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 有栖川ハルが祖母である事から、ファストヴィクティムの愛称は「アリス」だっただろうと予測がつく。

 マロワという相手の子は……同年代の金髪のウマ娘、だろうか? 後ろ姿なのでそれくらいしか分からない。

「……マロワ」

「うーん、同い年かな? この年頃だと1歳差でもだいぶ違うし……」

 セイウンスカイがカレンと一緒に覗き込み、そう判断する。その推察通り、後ろ姿でも同い年、あっても一歳差なのではないかと感じる。

 他にマロワらしき人物の写真がないか探してみるが、金髪のウマ娘との写真はその一枚しかなかった。

 

カレンチャン『……な~んか……「だいしんゆうとの写真が後ろ姿一枚しかなかった」って、わざわざ描写されてる部分、カレンすごく気になる……』

 ――……。

 

 カレンチャンとセイウンスカイが写真を見つめている合間、ライスシャワーは本棚を調べていた。

 教科書、少女漫画の他に、カラオケを上手く歌う為の方法やインターネットへのカラオケの動画投稿の仕方が掲載された教本が数冊並んでいた。

 教本を読んでみると丸まった色文字つきで「このとおりにやってみる!」などとファストヴィクティムが描いたと思われる箇所が数か所見つかる。

「……やっぱり、トヴィさんは動画を撮影していたのかな……?」

 

 ベッドを脱出したハルウララは、次に押入れに何があるか確かめようとしていた。それを後ろで見守るキングヘイロー。

「ちょっと、ウララさん。他人の部屋をそういう風に家探ししたらいけないわよ……?」

「え、でも……調べる為に来たんでしょ?」

「……まぁ、そうなんだけど。でもね、そうやって宝物捜しみたいな素振りでやる事じゃ――」

 そんなお小言が出てしまいながらも、ハルウララは宝物を見つけた。

 

 押し入れの中には、ノートパソコン、携帯電話、マイクなどの録音装置がダンボール箱に乱暴に押し込まれている。

 その近くには日曜大工品のハンマーがあり、これを使って破壊したのだと推察できる。

 

「……うわ」

 キングヘイローは、それらを見て言い知れぬ恐怖を感じて引きつった声が出た。

 そのダンボール一式を見たものは、EDUによる判定が行える。

 

ハルウララ:CC<=50 (1D100<=50) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 25 > 25 > ハード成功

キングヘイロー:CC<=60 (1D100<=60) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 83 > 83 > 失敗

 

「……あ、これもしかして電気屋にいけば修理出来るかも! なんだっけ! おサルさんの~……?」

「サルベージね」

「あ、そっか。キングちゃん頭いい~」

 ともかくとして、成果といえる成果はあったかもしれない。あんな事があった直後であるから、アリスおばあちゃんもこれには気づいてないのだろう。

「……ひとまずアリスさんに知らせないとね」

「うん」

 キングヘイローとカレンチャン、そのほかの者達も頷き合って、アリスおばあちゃん達がいるであろう下の階に降りる。

 

 

 カシュ、ごく、ごく。

「ぷはー、やっぱこの一杯のために生きてるわぁ~」

 下に降りてみると、アリスおばあちゃんが用意してくれたであろう食事を目の前に缶を開けて飲んでいるトレーナーがいた。

 

カレンチャン:CC<=70 (1D100<=70) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 58 > 58 > レギュラー成功

(GM注釈:カレンチャン、唐突に独断でダイス振り始める。……PLとGMが非常に気心知れた仲だから許されるのであって、本来は無許可で振るのは混乱の元だから控えた方がいいのは言うまでもない)

 

「お姉ちゃん!###### く・る・ま・で・き・た・で・しょ!!??#####」

 料理に被害を出さないように気をつけながらトレーナーを卍固めするカレンチャン――もといカレン。

「まって! まってカレン! 誤解よ!! これは誤解なのよ!!?」

 卍固め受けても決して缶の中身をこぼさないように出来る辺り、この技を受け慣れてるのかもしれない。

「おやおや、やっぱり若い子達は元気だね~」

 大技を目の前に素直に感心するアリスおばあちゃん。カレン以外のウマ娘一同は、乾いた笑いが出た。

 

「私だって飲酒運転するほど愚かじゃないわよ。ジュースよ。ジュース。イミテーション。こう見えてもゴールド免許持ち。その辺りは信頼してほしいものだわ」

 ……カレンは手元に持った『子供のビール』と印字された缶を見つめながら、力なく俯く。

「……お姉ちゃん、信頼してほしいならカレンの見えるところで飲酒するのやめてよ……」

 なんとなく。カレンさんが普段どれだけの苦労をしているか、ウマ娘一同にも伝わった気がした。

 

キングヘイロー『……これVR内の話よね?』

カレンチャン『とーぜんですっ♪ カレンは誰かに暴力なんて振るわないように心掛けてるから♡』

セイウンスカイ『…………』

 ――カレンさんが実在しているかどうかは、シュレーディンガーの猫なのである。さておき、続けよう。

 

「ひとまず、ハンマーで壊された携帯と、そのほかの機械類を見つけました」

 それを聞いて、びっくりするアリスおばあちゃん。

「なんだって? 無くしたといっていたのに、押入れの中に……?」

「泥棒に押し入られて、破壊してったとか可能性は?」

 アリスおばあちゃんはぶんぶんと首を振る。

「そんな。鍵だって毎日ちゃんとかけてるし、そんな痕跡。一つも……」

 トレーナーが、その話を一旦制止させる。

「……あぁいう事が起きた手前。あまり不安にさせるものではないわよ」

 制止させてから、彼女は一つの方向性を示した。

「たぶん、あなた達の事だから業者さんに頼めばサルベージできるのではないかと検討はついてるわよね? ……私はブツを見たわけじゃないから、実際出来るかどうかの確証はないけれど」

 トレーナーの問いに、ハルウララはこくこくと頷く。

「おサル……サルベージ! できると思うよ! そんなに念入りに壊されてなかったもん!」

「だったら、有栖川さん。もしよろしければ業者に頼み込んでよろしいですか?」

「えぇ、お願いします。私は、どこに頼めばいいのかすらわかりませんし……」

 それらを回収する許可を得て、一同は車に一式を運び込んだ。

 料理もご馳走になって、お礼挨拶も一通り終えてから。別れ際。

「そうだ。アリスさん。『マロワ』って誰の事かわかります? ファストヴィクティムちゃんのお友達の……」

「あぁ、それならたぶん『マロリーボット』ちゃんの事だろうね。トレセン学園でも、同じクラスに通ってた子だよ」

「マロリーボット……金髪の子?」

「あぁ、きれいな金色の髪の子だったねぇ。幼い頃から一緒にいて……」

「そっか……じゃあ、その子に決まりだね。学園に帰ったら、その子にもお話聞いてみよう。アリスさん、お話ありがとうございましたっ。カレン、必ず成果をあげてきます」

 ぺこりと頭を下げて、皆と一緒に車へ乗り込んだ。

 

 寮の門限間近。電気屋。キングヘイロー達を車に待たせて、破壊された機械類一式を店内へ運ぶ。

 

【シークレットダイス】

 

「あ、あれってもしかして……」

「ねぇ、写真ご一緒によろしいですか? そちらの、保護者の女性の方も」

 店内を歩いているとウマ娘の高校生に、そんな事を申し出をされる。

「うん、いいよ♪ 可愛く撮ってね~♡」

「……私も? まぁ、カレンの為ならいいけれど……」

 手慣れているのだろう。カレンチャンはその申し出にファンサービスの一環として、気さくな感じで受け答える。

 ……ぱしゃりと一枚。

「ありがとうございましたー」

「これからもカレンをよろしくね~♪」

 何事もなく、ファンサービスを終える。

 

 そうして修理専門のカウンターまでやってきた。

 

【シークレットダイス】

 

「これ、ウチの子が壊しちゃって……データどうにか復旧してほしんですけど、いけますかね?」

 女性トレーナーはそのように店員に話しかける。破壊度合いを見て、店員はすぐ頷いた。

「あぁ、この程度なら。おそらく大丈夫ですよ。データ自体は明日には全部取り出せると思います。マイクとかは……」

「あー、えぇっと。今回はデータの取得だけお願いします。別の記録媒体に」

「了解しました。ではこちらに住所と名前と電話番号と――」

 個人情報一式を書き留める書類を渡される。まぁ複数日またぐ依頼は当然こういうものも必要なのだろうな、と考えて。さっさとサインした。

「えぇっと、カレン。携帯出して」

「あ、はーい」

「………………それ、誰の携帯? カレンのでもないわよね?」

 破壊された携帯でも、カレンチャンの携帯でもない。……ともなれば、一つ。

「え、あ……あ!! あの子の携帯、警察の人に渡し忘れてたーっ!!」

 あの後、警察に捕まった若いウマ娘の携帯をカレンチャンはそのまま所持していた。

 中身がどうなっているのか気になり、画面をタッチしてみる。パスワードは求められない。

「無用心だなぁ……」

 そう思いながら、画面を見た。

 

 何もない。いや、デフォルトのシンプルな状態。

 配信用に必要なアプリや、はたまたデータの類も一切なかった。

 

「…………デフォルト状態……携帯…………これ……まさか……」

 

 

 この携帯の状態に以前の事件と一つの繋がりを感じ取って。トヴィの部屋で見つけた機械一式を店員に押し付けて早々に撤収の準備を始める。

「お姉ちゃん! 急ごう!」

「ちょ、ちょっと、カレン!?」

 ノボジャックと改めて話し合う為に、カレンはトレーナーの手を引っ張りながら車へ走った。

 

カレンチャン【??:1⇒2】

女性トレーナー【??:0⇒1⇒2】

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