以降話で簡潔な要点が作中で伝えられる為、読者視点スルーしても問題ないようになっております。
ただ、どうしてキングヘイロー、セイウンスカイ、カレンチャンの態度が急変したのか理解したい方のみ、自己責任でコピー・アンド・ペーストによる閲覧をお願いします。
夜時間。寮に戻ってきた。相変わらず、寮は基本トレーナー立ち入り禁止なので彼女はここまでついて来れない。
「おかえりなさい」
寮に帰ってくると、ノボジャックがインターネット検索に接続したノートパソコンを用意していた。
「まぁ、携帯よりもパソコンで調べたい事がありましたらどうぞ。時間がかかりそうな事なら、こちらに申し付けていただければ調べておきます」
「ありがとうジャック。じゃあ、まずは復旧したデータを閲覧してみようか」
店から受け取った記録媒体をパソコンに入れて、閲覧する。
「I DUCTの投稿用のカラオケ動画……うん、ちゃんと容姿は隠してるね」
パソコンに入ってたのは、投稿用の音声データが主だ。トレセン学園のウマ娘であるだけに、その歌声はとても聴き心地がいい。熱心にライブ練習していたのだろう。
彼女は動画を一通り確認し終わると、曲名やTbyのハンドルネームから関連した情報からセイウンスカイはI DUCTでその手の動画が無いか調べる。
「……ひどいね。これは」
当人によって削除されていたはずのそれは他人の手によって再アップロードされていた。嘲笑目的の画像コントや、加工をつけてられている。書き込みには、数々の心無いコメントも書き込まれていた。
「そういう文化があるって事くらいは知っているけど……いざ知り合いでやられると、キツいものがあるわね」
「ま、そこらへんについてはセイちゃんはノーコメントで」
人々に歌声を振りまく自分達にとって、そこは踏み込みたい話題ではなかった。
他のデータは……ブラウザのブックマークだ。ファストヴィクティムについてのまとめページを入れていたらしい。
「……あ、トヴィちゃん気づいてたんだ!!」
ハルウララがそう大きな声をあげる。ライスシャワーも同じように、頷きながら声をあげる。
「ライスなら単に自分の誹謗中傷するサイトを、ブックマークに入れたりする勇気はない……けど、でも、入れてるという事は……トヴィちゃん、やっぱり周囲の人間の誰かが【女神】だって気づいてたんだ!」
そして、気になるものがあった。もう一つあった。ハンドルネーム【女神】の投稿動画一覧というブックマーク。
セイウンスカイがそのページをクリックする。動画サイトは【I DUCT】ではなく、アンダーグラウンドの【UNDER DUCT】という動画投稿サイトらしい。
『誰!? どこから見ているの!!!』
当然、例の動画も投稿されてあった。過去投稿には、普段からの盗撮動画。最初は普段通りのファストヴィクティムであったが、日に日に情緒不安定になっていく様子が動画から分かる。盗撮されている事に気が付き始めた経過だろう。
「これ、アプリとか使って動画ごとページ保存しておくね。……犯人、消しちゃって知らぬ存ぜぬ突き通そうとするかもしれないし」
皆もそれに同意した。そして――
――すまん。
セイウンスカイ『?』
――ここ【凄まじく不快な描写】が入る。POW判定失敗すればキャラクターのメンタルであるMPも1~3削られる。それくらいまずい動画だ。
セイウンスカイ『え、さっき以上に? そんなのあるの? R-15じゃないよね?』
――おそらくR-15ほどではない。性的でもない。
キングヘイロー『……シナリオ上意味のある情報よね?』
――あぁ。だから「シナリオに関わる要点だけ伝える」か、「不快なモノも受け入れてありのまま描写」するか。プレイヤーの君達にはそれを選択する権利がある。また、キャラクター達もそれを見るかどうかの選択肢がある。
セイウンスカイ『私は感情移入したいから見たいけど……ハルウララとキングには、プレイヤー単位でありのまま見せたくないかなー……個人宛で送ってもらって、他二人は要点だけ……』
ハルウララ『? セイちゃんがそういうなら……』
キングヘイロー『あら、私はある程度の耐性はあるわよ? ほ、ホラー映画だって、いくらか楽しんで見れるもの。ミザリーとか、シャイニングとか……』
セイウンスカイ『……強がっちゃって』
――その見てるホラー映画も実に古典王道というか、ある意味お上品というか……まぁ、それはさておいて。
カレンチャン『……MPがまずい数値だけど……カレンは見ようかな……ライスさんには、とりあえず要点だけ後で伝えたい』
ライスシャワー『う、うん。わかった』
キングヘイロー、セイウンスカイ、カレンチャンはその動画のありのままを見る事を選択した。作業を補佐していたノボジャックも、補佐しているつもりのフォーエナーも、画面を覗き込んでいる。
目の前にあるのは女神による、最後の動画だ。
動画内容は、ファストヴィクティムが高所のビルのフェンスをよじ登っている。それを遠くから盗撮しているものだ。
蒼褪めたファストヴィクテム。登りきった彼女の前にあるのは――何もない虚空。十何メートル下にはコンクリートの地面。
『――――早くしろ……! 死ね……!』
撮影者の、押し殺したような声が漏れ聞こえていた。誰だかは、押し潰されたような声で呻くものだから判然としない。
映像のファストヴィクティムは、何事か決心したような表情をする。
そして、一歩前へ。そして、宙を舞った。そして……そして……。
しばらくして、ブリキのトタンがコンクリートに叩きつけられたような強烈な音が響いた。
『やった……! 本当にやった……!』
被写体は地面でぐったりしたファストヴィクティムに映る。
『フヒ……! ファストヴィクティムが死んだ……ざまあ……! フヒヒ……!』
歓喜に満ち満ちた、生理的嫌悪感を催す嬌笑。ひとしきりそれが響いていた。
やがて、それはふと止んだ。
『…………女神も終わりかあ……やだなあ……』
心底から落ち込んだ声。これからは自分がインターネットで【女神】として持て囃される事はなくなるのだろうと、予期しているのだろう声だった。
カレンちゃん:CC<=40 (1D100<=40) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 81 > 81 > 失敗
⇒1d3 (1D3) > 2
キングヘイロー:CC<=80 (1D100<=80) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 90 > 90 > 失敗
⇒1d3 (1D3) > 2
セイウンスカイ:CC<=60 (1D100<=60) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 57 > 57 > レギュラー成功
カレンチャン【MP:3⇒1】
キングヘイロー【MP:16⇒14】
その動画を目に入れて全員が青褪めていた。
「……う、うえぇぇぇ……」
耐えきれなくなったフォーエナーが、近くにあったゴミ箱に顔を突っ込んで、嘔吐した。
「うっ……」
あのキングヘイローさえも耐えきれなり、トイレの方に駆け込む。
「な、何が……あったの……?」
「どう、したの……?」
ライスシャワーもハルウララも、皆のそんな様子に不安になって、少し青くなる。
「…………あなた達は……見ない、方がいい……」
グロッキー状態になったノボジャックは、それを言って一旦制するのが精一杯だった。
「…………………………」
ここで一番の反応を見せたのは、カレンチャンだった。
学園の外に出てはいけない時間帯であるにも関わらず、火中の栗が弾けたようにすぐ寮を飛び出していった。
向かったのはもちろんマロリーボットの家。
辿り着いた頃には、すでに寮の門限は過ぎていた。だが今のカレンにとっては関係ない。
ガンガンと玄関を叩き、マロリーボットを呼び出す。
「おや! カレンさん! ……どうなされたのですか? そんな怖い顔をして?」
前と変わらない態度。それが憎たらしくて、たまらなかった。
「……なんで……」
「?」
「なんで、あんな事が出来るの!? なんであんな酷い事まで言えるの!? トヴィちゃんはあなたの大親友だったんでしょう!!?」
「…………」
マロリーボットは、しばらく無言だった。やがて、こう答えた。
「何の事かわかりません。何か勘違いしていらっしゃれません?」
「でも! 状況からしてあなたが怪しすぎる!!」
マロリーボットは、カレンに向けて嘲笑するような笑みを浮かべる。
「こんな状況だから、誰彼怪しく見えるのは仕方ないかもしれません、でもですねぇ?」
マロリーボットはますます笑みを強めた。
「『"何の証拠もない"のに、妄想じみた言いがかりつけるのやめてもらいます?』」
カレンがついに堪えかねて、マロリーボットに殴りかかろうとしたところだったろうか。
「どうしたんだい、マロリー?」
背後からおそるおそる声がかかる。……どうやら、働きに出ていた両親がちょうど帰ってきたらしい。
「なんでもないよ。お友達がね、心配して訊ねてきてくれてたんだ。父さん、母さん! おかえりなさい!」
マロリーからそのように愛想の良い声が飛び出てきた。みれば、表情の方も先程の嘲笑じみたものではなく、気さくな良い笑顔だ。
「そうか。それじゃあ、私達は先に入って料理を作っておこう」
安堵した両親達は、先へ屋内へ。彼らが居なくなったのを確認してから、マロリーボットは告げる。
「なんにせよ、"証拠"があればいつでもお訪ねください。ボクは、逃げも隠れもせず相談を請け負いますので!」
そのような事を言って、憎悪に満ちた表情を向けてくるカレンも気にせず自分も中に入ろうとするマロリーボット。
「『キャスリング』ってさ。キングの駒が一回でも自ら動いてたら発動不可なんだよね」
……遅れてやってきたセイウンスカイ、そしてその他のウマ娘一同がその場に駆けつけてきた。
「それがどうしたんですか?」
「親を頼って逃げ口実にはさせないって事だよ」
それを聞いて、鼻で笑う。
「貴方がたが言いたい事はわかりますよ。ボクが怪しい。ボクがファストヴィクティム……アリスを追い込んだ犯人だ、と。でも、そんな証拠、ありましたか? どこに? ないでしょう」
しばらくの沈黙。マロリーボットは勝ち誇ったかのように笑った。セイウンスカイは冷めたような目を向ける。
「――キミ、もしかして相当に頭悪い子だよね?」
普段のセイウンスカイなら絶対他人に向けないような、強い言葉だった。キングヘイローすら憎悪に近い視線でマロリーボットを睨んでいる。
「以前のエナーさんが行方不明になった事件の首謀者……ラウディーさん……その人は、やった事はいけなかったけど、動機も理解出来た。同情も出来た。そして、エナーさんジャックさんも、私達も彼女を許しも出来た」
そして、キングヘイローはバッと腕を振るって言い放つ。
「でも、貴方だけは絶対に許さない!!! 許されるはずがない!!!」
嘲笑じみた笑みは、だんだん冷めた笑みに変わっていく。
「……揃いも揃って、侮辱ですか? 犯人見つけられなくて苛立ってるのはわかりますが。八つ当たりはみっともないですよ」
そう言って話を切り上げようとしたが、セイウンスカイは続けた。
「あるんだよ。決定的な証拠。いくつもね」