ウマ娘がTRPGを遊ぶだけのはずだった。   作:稗田之蛙

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壱:『フォーエナーを追え』
1.行方不明者捜索依頼


 舞台は中央トレセン学園。時期は菊花賞も終わりを告げた秋頃だろうか?

 

キングヘイロー『……ちょっとまって、VR空間なのに舞台トレセン学園なの!?』

 ――まぁ世界観の説明省けて楽だろう? シナリオにそう書いてあるんだから仕方ないさ。

ハルウララ『よかったねキングちゃん! トレセン学園なら迷子とかになる事なさそうだよ!』

セイウンスカイ『1920年代アメリカとかじゃないんだね……』

 

 ……ともかく、君達の知り合いに《フォーエナー》というウマ娘が居た。中等部一年生の子だな。写真をそちらに提示しよう。

【挿絵表示】

 

 おそらく皆の後輩だろうか? その子は、とても君達を慕っている子だった。

 君達のレースを走り振りを参考にしたり、たまにジュースを差し入れしようとしてきたりして懐いていただろうか?

 その子は早期にメイクデビューを果たしたのだが、この時期になっても一勝も出来ずに……。

 

ハルウララ『ウララといっしょだ! 一着ってなかなかなれないよねぇ……』

 ――(GM、爆笑) ちょっと待ってくれ、これたぶんプレイヤーキャラクター達は活躍してる想定で組まれ……うん、いや、逆にウララみたいな子は面白いシナリオだぞコレ。HO1はキミに決定だな。

ハルウララ「えいちおーわん? わかった! 酸素だ!」

カレンチャン「さんそだ! さんそもってこーい!」

ライスシャワー「も、もってこーい……」

キングヘイロー「……それはH2O。HO1はタンパク質の一種で――」

セイウンスカイ「……キング。それ高度な化学ボケ?」

 ――HO1……まぁ、セイウンスカイはわかってるみたいだな。よければウララを補佐してやってくれ。頼んだ。

セイウンスカイ『は~い』

 

 フォーエナーは一勝も出来ずに、【行方不明】になった。

 寮から忽然といなくなったんだ。中学一年生の子が門限を過ぎても帰って来なかったんだから、学園も警察も大人達は大騒ぎだった。

 そんな騒ぎは当然、フォーエナーといくらかの親交があったであろう昼休みに君達の耳にも入ってきた。

「ねぇ、キング……一年生の子、いなくなったらしくて」

「わたし達も~心配で~……」

 別の教室からやってきた猫目のウマ娘、ボブヘアーのウマ娘が不安げにキングヘイローへ相談を投げかけてきた。

 

 ――おぉ、さすが。VRウマレーターのAIはすごいな。性格とシナリオの設定を入れると自動で考えて喋ってくれるとは。

キングヘイロー「ちょっと、モデルに許可取らず勝手に使うの? しかも私の知り合い……」

 ――……まぁ、変な事させるでもなし。当人呼び寄せたとしてもキング相手ならきっとノリノリでやるだろう。あの二人なら。

ハルウララ「じゃあ皆呼んで協力してもらえばもっともっと楽しくなりそうだね!」

 ――エキストラ何人要るんだ? まぁ、進めよう。さて、TRPGとして初ロールプレイの瞬間だ。キングヘイロー。受け答えどうぞ。

 

「そうね、私も心配だわ……」

 キングヘイローは二人以上に心配した表情で受け答えた。面倒見の良い彼女らしい反応だった。

 そんな話を、同学年のセイウンスカイとハルウララも横聞きしているだろう。

「……うーん、やっぱり気になりますねぇ」

 セイウンスカイは、耳をぴくりとキング達の方向へ動かした。同じく、彼女らしい反応だ。人が居なくなっている以上、無視も出来ない。

「よし、じゃあいこう!」

「え、ちょ!?」

「え、まって」

 キングとスカイの制止も聞かずハルウララは意気揚々と教室を飛び出し

 

 ――待て待て待て待て待て。

ハルウララ『へ?』

 ――いや、分かるけど! やろうとしてる事は分かるけど!

キングヘイロー『う、ウララさん。まだ昼休み中』

ライスシャワー『じゅ、授業はちゃんと受けようね?』

ハルウララ『あ、そっか。ウララど忘れしちゃってた!』

カレンチャン『うーん、ウララさんはヤッパリ純粋でカワイイよね……カレンも参考にしなきゃ♪』

 ――カレンさん? 冗談か本気で言ってるのか分からないですよ? ……いや、ともかく、何処を探そうにも場所が分からない状態だ! 場面を進めよう!

 

「おっとっと?」

 飛び出したハルウララの腕を引っ掴んで入ってきたのは、いかにも生真面目そうな中等部一年生のウマ娘だ。君達の知り合いではない。容姿イメージを映そう。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

セイウンスカイ『ふふ、知り合いでないのにウララの腕引っ張ってきちゃった?』

 ――……いや、まぁ、合流させた方が……あとちゃんと理由あるから……。

 

 知り合いではないが、明らかに君達に用事があるようだ。キングヘイロー、ハルウララ、セイウンスカイ。君達三人。

「あら……どなた?」

 用事がある様子の、黒髪で眼鏡をかけたウマ娘に対してキングヘイローは淑やかにそう返す。

 相手もそれに対してゆっくりと一礼。ウララの腕を離してから、改めて自己紹介をする。

「初めまして。私は《ノボジャック》と申します。御話があるので、ついてきてくれますか?」

 キングヘイロー達三人は、特に断る理由もないのでそのまま応じた。

 移動した先には、ちょうどカレンチャンとライスシャワーが居る場所だろう。

「こ、こんにちは……」

 集まってきた者達に対して、ライスシャワーはそうぺこりと返す。それぞれも挨拶を交わすだろう。

 

「さて、要件は何かしら」

 先陣。そう切り出したのはキングヘイローだ。腕組みをし、自信に満ちあふれている。困った事があれば自分を頼るがいい、と言わんばかり。――実にキングらしい、良いロールプレイだ。

 相手もそれに物怖じせず。ゆっくりと周囲を見回す。自分たち以外に特に誰かしらがいるでない事を確認してから、彼女は口を開いた。

「内密の、御話したい事があります」

「ないみつ?」

「ヒミツのオハナシ?」

 ハルウララとカレンチャンがそう聞き返すと、ノボジャックはこくりと頷いた。

「……大事(オオゴト)にしたくないので」

 

セイウンスカイ『うーん、これは導入の情報提供者ですな……?』

 ――おぉ。つまりはそうだな。

セイウンスカイ『ふむふむ、そしてこの態度――これから提供される情報以上に、何かしら裏があると見た!」

ライスシャワー『えぇ、じゃあ、この人が悪者さん……!?』

ハルウララ『えー、そうなの!?』

 ――…………(GM、笑いを必死に堪える)……進めよう。

 

「あの、他の方に言わないようにお願いできますか……」

「……そうね。ではひとまず御話を聞かせていただけるかしら」

「ら、ライス。約束するよ。他の人に言わないって」

「ウララも!」

「じゃあセイちゃんも~」

「うん、カレンも約束するよ」

 そう言われ君達は一様に了承した。そこで一拍置いてノボジャックは答える。

 

「フォーエナーさんの行方を知っています」

 

キングヘイロー『……事件解決では?』

セイウンスカイ『いやいや気が早いよキング』

 ――ハハハハハ。

 

「なぜ、大人たちではなく私達に?」

 そう聞き返したのはキングヘイローだ。当然の疑問だろう。

「言ったでしょう。大事にしたくはない、と」

 相手はキングヘイローの態度に対して憮然とも受け取れる態度を返す。キングヘイローは頷くと、ノボジャックを改めて見据える。

「もっと話を詳しく聞かせてちょうだい」

 

 ……曰く、ノボジャックはフォーエナーが夜中に何処かへ行くのを見かけたという話だ。

 気になってある程度までついていったようだ。

 学園の外に、警備員や寮長に見つからないように移動した後

 いかにも不良、といった風体のウマ娘についていったらしい。

 

「そ、それって。それこそ大人達に伝えなきゃいけない話なんじゃ……!!?」

 ライスシャワーは大慌てで席を立ち上がる。その反応も当然かもしれない。

 だが相手の態度は相変わらず、憮然としたものだ。ライスの心配に対してこう言い返してきた。

「……一日二日で連れ戻せたなら、単なるお説教で済むじゃないですか」

 

セイウンスカイ『うーん、やっぱり何かしら裏があるね』

キングヘイロー『……単に薄情な御仁っていう可能性は?』

セイウンスカイ『連れ去ったのは怪しい不良。生真面目な子が関わり合いになりたくないっていう筋は通る。でもそれじゃあ私達にだけ伝えてくる必要性と大人に伝えたくない理由が噛み合わない』

キングヘイロー『確かに、そうね……でもその理由が……』

ライスシャワー『うーんうーん……』

ハルウララ『ぜんぜんわかんないねー……』

 ――……。

カレンチャン『ねぇ、GMさん。こういうのって能力値か何かのダイス振って、相手の気持ちが分かったりしないかな?』

 ――おぉ、いい提案だ。では相手の気持ちを推し量る場合は……そうだな、相手の仕草や表情から推察するという事だから、INTだろうか。1d100。等倍でどうぞ。自分の能力値以下の数値を出せたら成功だ。

 

 

キングヘイロー⇒9 成功

セイウンスカイ⇒78  失敗

ライスシャワー⇒5 クリティカル!

ハルウララ⇒4 クリティカル!

カレンチャン⇒72 失敗

 

 

 ――待って。キングはともかく、待って。ちょっと待って。

ライスシャワー『え、ら、ライス何か間違えちゃった?!』

セイウンスカイ『あはは、いやーまーうーん……』

カレンチャン『ウララさんライスさんすごーい! クリティカルってすごく良い結果が出るんだっけ?』

ハルウララ『そうなんだ! すごーいすごーい! どんな結果が出るんだろ!』

 ――えーっとちょっと待ってね……資料……えっと……普通の成功より、すごそうな結果……う、う、う……。

キングヘイロー『……なんかプレイヤー側が大喜びしてるのに対してゲームマスターが苦しそうにしてるのはなんで……?』

セイウンスカイ『まぁ、色々と苦労が多い役割なんだよ。うん……』

 

 ではキングヘイローは相手の態度が『自分は関わり合いになりたくない』というソレだと理解した。

 そしてライスシャワーとハルウララは、『関わり合いになりたくない』という気持ちは本当だが、それ以上に『どうにかフォーエナーを助け出したい』という気持ちがノボジャックの心の奥底にあるように感じた。

 彼女があくまで『自分は関わり合いになりたくない』と振る舞っているのは表向きの態度だけだ。

 

セイウンスカイ『なるほど……こちらを罠にハメようとするタイプの情報提供者じゃなさそうだね?』

キングヘイロー『じゃあ、善意の人?』

セイウンスカイ『いや、まだ分からない。けど、大人達に伝えたらジャックかフォーエナーに不利益が生じるんだと思う』

ライスシャワー『そ、そうなの……? ライス、本当にどうしようもなくなったらすぐにでも大人たちに伝えようとしてたけど……だって、フォーエナーさんが行方不明になって、もし大怪我でもしてたら……』

カレンチャン『そうだよね……何かしら事件になってたら、大人達に伝えなきゃいけない場合もあると思うし……』

セイウンスカイ『もちろんそうだね――それを裏返せば、つまりは"フォーエナーはまだ取り返しのつかない状況になってない"……ノボジャックがフォーエナーを助け出したい善意の人物であるという、ゲームマスターの情報を信ずるならね』

 ――……。

セイウンスカイ『ま、何にしても大人達に伝えない方がいいとはセイちゃん思いますよ。状況から考えれば、合理的には思えないかもしれないけど……得てしてそーゆーもんだし』

ハルウララ『うーんうーん……』

 ――ウララ、どうした?

 

「ねぇ、ノボジャックちゃん。本当はフォーエナーちゃんの事を助けたいのに、どうしてそんな態度を取ってるの?」

 

セイウンスカイ『ちょ、ちょっとウララ待って』

ハルウララ『え?』

 ――いや、大丈夫。ウララ、今回は続けて。セイちゃんが慌ててる理由は後で話そう。

 

 ノボジャックはウララの言葉を聞いて憮然とした顔つきから、虚を衝かれたような驚いた表情をした。

「そ、それは――その……」

「答えられない?」

 ハルウララの問いに、ノボジャックは申し訳なさげにこくりと頷く。

「そっか! じゃあ、ウララからは聞きたい事はそれで終わり! ……あ、そうだ! フォーエナーちゃんを探す宛はジャックちゃんは知ってる?」

「え、あ……」

「わかんなくてもだいじょーぶ! 私だけじゃなくて、キングちゃんやセイちゃん、カレンちゃんやライスちゃん! この場のみんなが協力してくれるから! きっと無事に連れ戻してみせる! 約束する!」

 ハルウララの邪気のない物言いに、その場に集った一同もつられて笑みを零している。……ノボジャックもその例外ではなかった。

「えぇっと、はい……お願い、します……えっと……」

 ノボジャックは、何かハルウララに対して情報を絞り出そうとしていた。

 

 ――ふむ……実に……ウララらしい……。

 

 ノボジャックは携帯を取り出して、地図のアプリを開く。

「あぁ、そうです。たった今、思い出しました……えぇっと、あの、この区画で、野良レースっていうのが度々行われてて、そこで、不良さん達の目撃情報も、結構……」

 野良レース。メジロパーマーなども参加している噂のある、レース場以外で走りを競い合う事を主に指す。

 それ自体は、人に迷惑などをかけなければ犯罪でもない。だがしかし、金銭を賭けて競う輩もいるのだと君達ウマ娘ならば知っているだろう。

 また、当然一般人に迷惑をかけるような走り方をすればそれは当然犯罪になる。その不良が行儀の悪い輩だとしたら、その区画の住民に何かしらの話を聞けるかもしれない。

「……私から話せる事は、以上です。申し訳ありません……」

「ううん、十分ありがとう! よーし、みんな! その区画に……いけばいいんだよね?」

 

 ――……セイウンスカイ。どう思う?

セイウンスカイ『……お見事』

ハルウララ『えっと、やっぱりなにか、やっちゃったのかな?』

キングヘイロー『……ううん、ウララさんはとっても上手だったわ。ロールプレイ』

ハルウララ『そっかー! 思った事そのまま言っちゃったけど、ロールプレイってそういうので大丈夫なんだね!』

ライスシャワー『ふふ、ウララちゃんの場合は演技じゃなくてもあぁいうものね』

カレンチャン『うーん……やっぱりウララさんの純粋なカワイイは手強いかも……』

 ――まぁ、さておき。さっきセイウンスカイが焦ってた理由を話そう。これは説教ではないから軽い気持ちで聞いてくれ。

 

 まず、行動には結果が伴う。ゲームだから当然ながら。無論、今回はウララの取った行動は大成功だったが。

 しかし反対に最悪の例だと自分のキャラクターの発言一つで、味方ごと巻き込みバッドエンドに直行する事もある。

 そういう場面は決して多くないが、決してゼロというわけではない。……ゆえに、味方と相談した場合が円滑、かつ無難。

 

ハルウララ『そっか……ウララが間違っちゃったせいでゲームオーバーになったら、楽しくないもんね。うん、わかった! 今度からみんなにちゃんと相談する!』

セイウンスカイ『でもウララに独断でやらせてみるのも結構ありだと思うなー?』

キングヘイロー『ちょっと、セイウンスカイさん?』

セイウンスカイ『いや、だって。カレンちゃんやライスさんならともかく。セイちゃんやキングじゃマネできませんよ。アレ』

キングヘイロー『ちょっと!? どういう意味よそれ!!』

 ――……ハハハ、マァ、次に進めようか。

 

 ではノボジャックから情報を得て、昼休みと今日の授業を終えた後に、君達はその野良レースが度々行われているという区画へ向かった……。

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