ウマ娘がTRPGを遊ぶだけのはずだった。   作:稗田之蛙

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16.BADビショップ⇒Goodビショップ

 

 

【挿絵表示】

 

 

(※プレイヤー達が集まると、カレンの立ち姿が明るいモノに変わっていた)

ライスシャワー『あ、明るい衣装になってる……もしかしてキャラクターの気持ちの問題、解決した……?』

カレンチャン『うん! GMに新しい衣装見繕ってもらったの~♪』

 ――いやGMつーかウマレーターのAIがアバター生成してくれたっつーか……。

(GM注釈:身内TRPGなのでGMがプレイヤーの立ち絵を挿絵同様に人力AI混合で造る事がたまにある)

 

 カレンと他のウマ娘達が合流したのは、トレセン学園の授業が終わった辺りに合流した扱いだろう。

 ここで全員エナーの治療とちゃんと休憩を取れた作用によって、HPを1回復しておいてくれ。

 

ハルウララ【HP11⇒12】

セイウンスカイ【HP8⇒9】

キングヘイロー【HP10⇒11】

カレンチャン【HP8⇒9】

ライスシャワー【HP9⇒10】

 

「さて、お集まりのところで。一流の推理を聞かせてあげるわ!」

「わーわー!」

 皆が集まり次第、そのように威張り散らそうとするキングヘイロー。よく分かってないが囃し立てるハルウララ。

「あー、エヴァがなんか変な悪行まとめアカウントを運営してるっぽいってヤツ?」

「それともイヴって相談アプリが実は疑似人格持ちのAI……だとか?」

 ……微妙に口を「ヘ」の字に曲げるキングヘイロー。ご自慢の推理の前菜を横から取られた気分なのかもしれない。

「い、いいえ。それも、もちろん気づいていたわ! けれど、私とウララさんが気づいたのはコレよ! コレ!」

 携帯画面の『お悩み相談アプリEve』の配信会社の部分を指差す。サトノグループの傘下である――エェット……ミサガセ? ……いいのかこれ……――『MISAGASE』という開発会社が配信していた。

 MISAGASEについて調べていくと、二つの記事があった。

 まずVRウマレーターを使った『メガドリームサポート』という計画の、開発の末席に関わっているという紹介記事。

 これについては自社の得意分野である『AI開発』を語ると共に、メガドリームサポートの計画で生じた【神がかりな産物】を参考に、「今回のプロジェクトで得られた経験をまた違った形で世の為に役立てる為に、大型の専用サーバー(記録媒体)を自社に導入した」というMISAGASE社長のコメントが掲載されている。

 もう一つは、その社長兼プログラマーである『ゾーイ』というウマ娘が、右腕に重傷を負ったゆえに入院したという記事だった。彼女の実績の最新には『お悩み相談アプリ-Eve』が紹介されている。

 彼女が入院している合間は実務から離れ、開発や会社運営は他の社員に任せているらしい、との事だ。

 

セイウンスカイ『ゾーイ……』

 ――……。(GM独白:この段階で勘づきそうなんだよなー。うん)

 

「ゾーイさん……何か今回の事件に関わってそうだよねぇ」

 ライスシャワーがキングヘイローの推理……というより、集めてくれた情報を聞いて考え込む。

「映画とかでよく見るお話の通りなら、悪のAIを開発したマッドサイエンティストか、反旗を翻したAIに敗れた正義のプログラマーかのどちらかでしょうね」

「マッドサイエンティスト! タキオンちゃんみたいな感じだと楽しそうだねぇ~」

 コテコテな設定であるが、実にキングヘイローらしい王道な推察。ハルウララは合いの手を入れて楽しんでいる。

 

「!! あ、あの……えっと……」

 ライスシャワーが何か閃いたような顔をした。

「どうしたの?」

 セイウンスカイ、カレンチャンが興味津々といった様子で訊ねる。

「えっと、Eve(イヴ)とEVE(エヴァ)って音は違うけど、意味は一緒だよね?」

「うん、確かどっちも聖書に出てくる人類最初の女性。言語が違うだけ」

「へー……そうなんだ……」

「同音異義語もあるけど、今は置いておきましょう」

「カレン……英語も歴史もあんまり自信ないかも……」

 ――ちょっとプレイヤーの素なのかキャラクターの発言なのか分かりにくい話題だな。ハハハ。私も資料読むからちょっと待ってな……アァ、続けてくれ。

「ゾーイ(Zoe)さんも、同じ意味! 意味は『命』、『生きるもの』! イブやエヴァの別の呼び方!」

 その事に自分で気づけた事が嬉しいのか、ライスシャワーは珍しく語気の強い形で語る。カレンがそれを肯定するように大きく頷いた。

「うん、きっと関係あるよ! ライスさんすごーい!!」

 ――……。(GM独白:「これで全く関係なかったら後で"おはなし"ね♡」とか謎のやり取りが脳内に走ったのは何故だろうか……)

 

 実際にライスシャワーの言う通りで、ゾーイとエヴァの意味は同じである。ほぼほぼ、別の言語というだけだ。

「……でも同じだったら、どういう事なんだろう?」

 ハルウララがうんうんと考え込んでいるさなかに、ライスシャワーがおずおずと考察を続ける。

「え、えっと……ゾーイさんが『おかあさん』、とか……」

「なるほどー! ライスちゃんあたまいいー!」

 ハルウララ以外の者達にとっては、なんとも暖かで予想外な意見だった。沈黙の後、キングヘイローがそのまま問い返した。

「確かに……プログラマーとして関わっているかもしれないから、母親ともいえるかもしれないけど……」

「あ、いや、そうじゃなくって……えっと……」

 ライスシャワーは、自分の推理が正しいのか不安と自信が半々ぐらいが混ぜこぜになった表情をしている。

 しばらくして、カレンが推察を補強するように述べた。

「……自分の心血を注いで創り上げた期待の存在だから、自分と同じ意味の名前をつけた。そういう事だよね?」

「う、うん! それに、ステキな名前だから……ライスも、自分の娘が生まれたらそんな名前つけてあげたいな……って。あはは、もちろん、ちょっと気が早い話かもしれないけど……うーん、ウマ娘のお名前にエヴァって変かなぁ……」

 真面目な推察から段々ほのぼのした未来話にシフトしかけたところで、コホンと咳払いでセイウンスカイが割って入った。

 

「……これ。私の推察が間違ってなければ記事の中で出てきた『大型サーバー』の中にいるよね? EVE(エヴァ)」

「……たぶん」

 確実なところは言えない。しかし、あのように高度な存在が保管出来る場所ともなれば……何かしら事業の一環としてそういった記録媒体を保有している場所に限られるだろう。

 その推察を聞き終えてしばらくして、ライスシャワーは嫌な想像をして青褪めた。

「……エヴァさんを、もし……無理矢理止めるとして……」

 ギュッと肩を抱いて、彼女は無意識なのか理解したくない現実から逃れたい一心なのか。回答をぼやかしかけた。だが、言わなければならない。

「ライス達……その、『会社に無理矢理押し入ってサーバーを破壊しなければいけない』、って……事だよね……?」

 今までとは違った別の意味で恐ろしい想像に、涙声で言葉を途切れさせながら言うライスシャワー。

 その話を聞いたセイウンスカイもキングヘイローも、悩みを振り払ったカレンチャンさえも難しい顔で汗を垂らし、苦笑いで唸った。

 たぶん、彼女達の頭の中で陽気な洋画で主人公達が銀行強盗をするワンシーンが思い浮かんでいる事だろう。ライスシャワーの想像通りなら、自分たちがやらなければいけない事はソレに近いのだから。

 

「よし、きめたっ!」

 そんな事を考えていると、ハルウララがポンと思いついたような顔をした。

「え、ウララさんまさか本当に銀行強盗……」

「セイちゃん……そういうのはドコぞの『覆面水着団』にでも任せたいな……」

「え? なんの話?」

 キングの心配やセイウンスカイの冗談をよそに、彼女は先程の記事を示して皆に告げる。

 無理矢理破壊する事など元々考えにないような、そんなあどけない眼を爛々と輝かせながら。

 

「ゾーイさんにお話を聞きにいこう!!! エヴァのお母さんだっていうなら、きっとゾーイさんも力になってくれるはず!」

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