エヴァと全く瓜二つの少女の姿。それが目の前で描画されていた。
カレンチャンは手慣れた様子でマイクやカメラの位置を探り、それが破損してない事を確認する。「うーん」とカワイイ困り顔で調整した後、周囲の仲間達を見やった。
――さて、ここは大事な場面だ。交渉は代表者が請け負うか、それとも複数で負担するか。
カレンチャン『ゲーム内のカレンはAPPの能力値が高いからその判定が発生するなら請け負うつもりだけど……それ以外なら、大事そうなこの対面を独り占めっていうのも、なんだかここまで他の人と一緒にやってきたから、出来れば皆と一緒にやりたいな!』
――成る程、ではそのように手配しよう。判定が発生するならその度に処理の相談をしよう。
目の前の……『イブ』はゾーイがその場に居ない様子である事に気づくと、パチクリと瞬きをしてから、しばし考え込んだ様子を見せた。
「……そうか。成る程――これはお悩みを解決する、テストというヤツだな? ずいぶんと久しいな! ブランクがあるから、上手くやれるかどうか分からないが……それにしても幼稚園児や小学生ではなく、中学生や高校生のウマ娘の悩みか……」
ぶつくさと、そう呟いている。そのサマは精巧なアバターも相まって、あまりにも人間臭い。様子からして、「悩みを打ち明ける事」を求められているようだが。
――この場面では、一人ずつ悩みを吐露する形を取ろうか。「悩みを打ち明ける」という体で本来の目的である交渉を持ち掛けてもいい。そこは君たちの自由だ。
「――――私は……」
キングヘイローが口火を切る。どう対話に入ろうか考えていたキングヘイローは、ひとまず自分達の都合を振り払って目の前の存在に真摯に向き合った。
「お母さまや周囲に認められたくて――レースを走っていた――」
キングヘイローはそう言い終えた後、力なくフッと笑う。
「……でも、だめね。自分の道を探す事に躍起になるばかりで、後輩達の悩みに気が付かないだなんて」
フォーエナーやファストヴィクティムの悩みについて、気づいてあげられなかった事を悔いた。
……そして、そのままキングヘイローはもう一度口を開く。
「どうすればいい? どうすればその子達の悩みを取り払ってあげられると思う?」
……"次"があるなら、間違わない。間違いたくない。その為にも、助言が欲しい。そんな意思を持って、キングヘイローは目の前の存在に問い掛ける。
イブは、腕を組んで考え込む素振りを取った。
「……むずかしいモンダイだな」
いくらかの沈黙を置いて、ポツリと呟く。
「そもそも、その『悩み』というのは全て解決しなきゃいけない事なのか? あっちゃいけないものなのか?」
逆に質問を投げかけられて、キングヘイローは少し驚いた。お悩み相談のAIというからには、エヴァのように明朗な回答を貰えるかと思っていたからだ。
「もちろん、悩むことが痛くて苦しいのは、私もちょっと分かる。今もこう悩んでる。ゾーイとかは『全部、解決してあげなさい』っていってたけど……」
イブは、自分の考え方を纏めようとしているように考え込んでみせてから言葉を発する。
「――でも、それをぜんぶ――それこそありとあらゆる手段を使ってでも――解決しなきゃいけないコトなのか?」
……「それに気づけなかった事は、責められる事ではない」と逃げ道を用意しておきながら、まるでキングヘイローの人柄を試しているようでもある。
「……取り払える問題なら取り払うべきよ」
それさえ関係なく、キングヘイローはきっぱりとそう言った。
「じゃあ――取り払う代価としてもっと大きな悩みを抱える事になったら――どうする?」
イブはまた質問をぶつけてくる。事実として、キングヘイロー達の今の境遇がそれなのだ。エナーやトヴィが追い詰められた根本的な原因を取り払おうとしている内に、超常的な巨悪と対峙せざるを得なくなっていた。
それでも訊ねられる以上は真摯に考えなければ信頼も得られない。だからキングヘイローは、どう答えたものか思い悩んだ。
……そしてキングヘイローの様子を眺めていたイブは、キングヘイローの人柄や『悩み事の性質』を理解した様子で頷いていた。
「――確かに、悩みを解決するコトは大切だと思う。考えるのを"放棄"することもいけないコトだと思う」
その言葉の後で、イブは人懐っこい笑顔を浮かべた。
「でも、それは"今すぐ、解決しなければならない"ってみんな考えすぎなんだと思うぞ。私は!」
力強いその声と言葉には、キングヘイローを含めた周囲も当惑した様子だった。
エヴァに関する話から、てっきり教諭やカウンセラーのように俯瞰視点で明快な助言を与えてくれると思いきや……彼女の様子を見る限り、同級生か、あるいは後輩か、そんな対等な視点でキングヘイローの悩みにイブは応えた。
快刀乱麻に悩みに答えたとは言えない。だが「一人で気負いすぎるな」と、本質的な問題点を伝えられた事だけは確かに理解できて。キングヘイローはわずかに気が楽になった。
「さぁ、他の者達は何か悩み事があるか!?」
一通りキングヘイローとの対話を終えると、そのように意気揚々と振る舞った。
「……そうか、これは……」
様子をうかがっていたセイウンスカイは、合点がいったように頷く。
「イブ。私は――走ってる事が"つまんなく"感じる事があったんだ」
周囲の者達が、特にキングヘイローが何か言いたげにセイウンスカイの方を見た。
「私が勝ってみせたとしても、周囲の子達は負けても、そこから糧を得てさ。どんだけ策を練って圧勝してみせたとしても……次のレースでは1馬身もないくらい距離を詰められる」
仲間達の視線はどこ吹く風。淡々と、"過去"を振り返るようにセイウンスカイは語る。
「しかし、キミの表情はヤケに楽しそうに見える」
イブが易々と核心をついた。
「あ、もうバレた?」
「うむ、まるで撒き餌をしている時の釣り人のようだ」
的を射た指摘に、セイウンスカイはそれが期待通りだったかのように胸を張る。
「私もね、壁に当たっても穴を掘ったり、器用に迂回したり。そんな手段で壁の向こう側に進んでいたわけですよ。でも、ついにはそんな事が出来ないくらい分厚い壁にぶち当たる事もあった。私一人では乗り越えられないような、とっても分厚い壁にね」
苦難を語るセイウンスカイの表情は、やはり青空のように涼しいものに見えた。楽しげにも見えた。
「でもさ。結局は、お節介さん達――トレーナーとか、キングや他の仲間達とか――そんな人達をさ、アッと驚かせるの。面白くてたまらないんだよ。次はどんな手段で壁を突破して驚かせてあげようか、なんてね」
そんな風に語るセイウンスカイの表情は、顔全体に笑みを湛える程ではないけれど、声が弾み始めると同時に眉を吊り上げるような、そんな動きをしてみせた。
皆の視線がキングヘイローの方に注がれる。キングヘイローは、微笑めばいいのか困ればいいのか分からないような表情で、顔を伏せった。
「キミの悩みは、仲間達のおかげで既に取り払えたのだな」
イブは、セイウンスカイを羨ましそうな瞳で眺めていた。嬉しそうでもあった。
「どうかな~? セイちゃんも悩み多き女学生の一人なので。もしかしたらもっともっと大きな悩みとか抱えるかもしれませんよー? 対人関係の悩み、それこそ恋の悩みとか?」
煙に巻くように応えるセイウンスカイに、イブはひとしきり愉快そうに笑った。
「イブ。貴女との話は、まるでそんなお節介さんの……学園の仲間の一人に話を聞いてもらってるみたいだ。不思議と、穏やかな気持ちになれる」
セイウンスカイは、それが"イブの本質"なのだと見定めたように言う。
「そうか? それは重畳。私は、そうであるように心掛けている。対等な立場から、キミ達のようなウマ娘の手助けがしたい」
胸に手を当てるような描画を見せて、まるで殊勝な印象をこちらに与えてきた。
「そっか。じゃあ、他の子の悩みにも答えてあげてくれないかな。ウララとか」
「え、わたし?」
その光景を笑顔で眺めていたウララが、そこで自分に振られるとは想像もしてなかったと言わんばかりにポカンとした表情で自分を指さした。
「悩みか~。うーん、商店街で八百屋さんのお手伝いをする時にね。どうすれば上手く接客できるかー、とか……」
そんな感じで、ウララは悩みを打ち明け始めた。なんとも、微笑ましい悩みである。
ウララの悩みを、イブはしっかり聞き入れていた。そして、暫く何事か考えてからもう一度口を開いた。
「接客の基本は、相手の要求に誠実に受け応える事だな。……それにしてもキミは、一見して悩みが無いように見えてその実は悩みが多いように感じ取れる」
イブはそう告げる。ウララはそれを聞いて、困ったように眉尻を下げた。
「そ、そうかな……う~ん、そうなのかもしれない……」
ウララは言葉を考えるようにしばし唸ってから、ようやく喋り始める。
「あのね、最近の事に限っても――ジャックちゃんとか、フォーエナーちゃんの事とか……ラウディーちゃんの事とか……大変な事がいっぱい起きてる。ウララ、どうすればみんなが悲しい目に遭わないで済むかなって、たくさんたくさん考えたり……」
そう語るウララは、心底不安げな様子だ。いずれ自分が掬えずに手からあふれ、こぼれ落ちる者が出てくるかもしれないのが無意識に想像ついているのかもしれない。
「キミは、他人の不幸を些事と感じずに真剣に向き合える子なのだな。それがたとえ、自分に牙を向けてくる者だとしても」
そう言われ、にこやかな笑みを浮かべながらハルウララは答えた。
「うん! 怪我してるわんちゃんをお医者さんに連れて行く為に抱きかかえようとしたら、噛まれちゃう事はあった。けど、そこで諦めちゃったら怪我したわんちゃんがかわいそうだもん。それからね! 学園にも一時的に『飼っていいよ』って許可もらって、そこから飼い主になってくれる人を探したり――」
ハルウララは朗らかな様子を崩さずに語る。その笑顔を前にし、イブも満足げに頷いた。その表情にはどこか慈愛のような感情が感じられる。
「キミがその心掛けを持つだけで、多くの者が救われていると思うのだ。いずれ"力及ばず"という事は起こりうるのかもしれない。それでも、だ。無駄ではない。そのひたむきな姿勢を見ていた者達は感化され、やがて春一番の大輪へと紡がれる」
イブは確信を持ってそう語った。そうして、一番大事な事を伝えるように言葉をゆっくり発した。
「キミの行いは巡り廻って、やがては自分に返ってくる。本当に思い悩んだ時は、周囲の人間を頼るといい。周囲の者達の様子から見ても分かる。キミは、決して一人ではないのだ。」
まるでこれから旅立つ旅人に道を示すような言葉であった。その未来を暗示するような言葉に、ハルウララはどこか呆けた様子で、キラキラ、わくわくとした瞳でイブを見つめていた。
「さて、そこの……同じような不安を抱えていそうな、幸薄そうなウマ娘」
「ひゃ、ひゃいっ!?」
幸薄そうと呼ばれ、びくりと飛び跳ねるように肩を揺らすライスシャワー。
「ほれ、キミも私(わたし)に悩み事を打ち明けてみるといい! 私こそが人類とウマ娘の叡智の結晶。今日の晩ご飯の相談から恋のお悩み、なんでもござれ、だ。ワハハ」
イブは能天気に大笑いしながらそう応えた。だが、思い悩んでいるライスシャワー相手に気落ちさせないように道化ているのだとなんとなく分かった。
「……センシティブな事はダメだぞ? 私だって乙女だ。一応な」
AIなりのジョークなのか、本当にそういう話題が苦手なのか、イブはこっそりそう付け加える。元々、その手の話題はやるつもりもないのだが。
その後、ライスシャワーは俯いたり、自分の髪をいじったりしながら言葉を口にしようとして……ようやく話始めた。
「…………ライスも、ウララちゃんと同じように、最近の事で、思い悩んでる……」
その内容は、エナーが行方不明になった事件や今回の騒動に集約されている。
「………………ライス、怖いんだ。もし、ライスのせいで誰かが大怪我したらどうしよう……ライスのせいで誰かを救えなかったどうしよう……って」
ライスシャワーは絞り出すように自分の心情を吐露した。
実際に、エナーの件も今回の件もライスシャワー一人だけではどうにもならなかった場面はいくらでも思いつく。皆のおかげで切り抜けられたという考えはあれど……それでもやはり、根底にあるのは"自分"への不安なのだ。
「……今回は、特に……絵本のお話のように『ハッピーエンド』にいけないんじゃないか、って考えが強いの……」
イブはその言葉を聞いて、口に手を当てる仕草を見せた。
「ふむ、というと?」
「絵本のお話の中では、桃太郎さんのお話でも舌切り雀さんのお話でも悪者も倒してみんな幸せになるけど……でも、実際はそうはならない。必ず誰かが怪我するし、時には誰かの命が奪われる」
ライスシャワーは俯いたままぼそぼそと語る。そこまで聞くと、イブは合点がいったように返した。
「"悪者"の立場の者にまで、幸せになってほしいと」
ライスシャワーは考えが伝わった事に喜んだのか、何度も頷く。
「も、もちろん……悪事を反省した上で……だけど…………」
それから、ライスシャワーは自分の悩みの本質を投げかけた。
「……物語の意に沿わずに……悪者の人を救いたいと思っちゃ、だめなのかな……って」
されど言葉が尻切れとんぼになっていく。イブはそれで納得したように言葉を返した。
「最近では、桃太郎の話も改変されているらしいな。鬼が反省して人間達と一緒に畑を耕して一緒に暮らすようになった、とか……」
イブは神妙な顔で語りだす。ライスシャワーも、なんとなく絵本の内容を思い返した。
「そ、そうだね。昔は、鬼の人達も明確に死んじゃったりしてたみたいだけど……」
「倫理観や価値観の変遷。旧来の描写を識る者にとってみれば日和った描き方だという意見もある。されど、白雪姫を排除しようとした王妃が真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされ、踊って踊って踊るうちに力尽きて倒れ死んだ事が優先的に描かれるべきかといえば、それは違うのだ」
イブはそう語り、そこで言葉を切った。ライスシャワーの表情を窺ってから、口を開く。
「物語は、読み手の為にある。絵本の場合は、それを読むであろう子供達へ向けて描かれる。なればキミ達の紡ぐ物語は、書き手と同時に読み手であるキミ達の進みたい道を描き切るのが一番の正解だと私は思うのだ」
イブはそう言いきった。ライスシャワーも、この回答に一縷の望みを託すように、もう一度質問を投げかけた。
「……私達は、"悪者さんを救ってもいい"のかな?」
まるで許しを請うような、弱々しい声で問いかける。イブは慈愛に満ちた声色で返した。
「正義や悪などに囚われず、自分達の信念の元に進め」
ライスシャワーはその返答を聞いて、儚く笑う。そして、ゆっくりと続けた。
「……イブさん。悪役の人を救う為に、貴女に協力してほしい事があるの……その為にも……!」
その言葉が、カレンチャンにも意見を問い訊ねるように響いた。イブを含めた皆の視線は、デスクの席に座っている彼女に集まっていた。
「イブ」
カレンチャンは皆の視線を一身に受け止め、その紫水晶の瞳はイブを見据えていた。
「なるほど」
イブはカレンチャンの意図を汲み取る。彼女に宿る想いがどのようなものか、察しているようだった。
「……カレンはね、カワイイを追い求めてるの」
「私といっしょだ」
イブは楽しげに相槌を打った。カレンチャンはそれに笑顔を見せ、言葉を続ける。
「ふふっ……でももちろん、簡単な道じゃないし、悩みだって沢山できる」
そこで一呼吸置き、カレンチャンは決意を決めかねている表情を見せた。
「もっとこうした方が……とかこうすれば良かった……とか後悔することもたまにあるし、もっとこうした方がいいんじゃない? とか……別の"カワイイ"を持つ人とぶつかることもある」
カレンチャンの想いを聞いている皆は、固唾を呑んでその先の言葉を待っていた。
「でもね、カレンはそういう悩みがあってこそ、前に進めると思うんだ♪」
カレンチャンは、皆の顔を見回してからそう告げた。
「誰しも生きているなら悩みは持つもの……そのせいで、自分で手一杯になっちゃうことも勿論あるかもしれない……早く解決しなきゃ行けない……って焦っちゃうこともある……」
カレンチャンは己の考えを語っていく。自他共に認めるカワイイの求道者として、たくさんの人達から可愛がられてきた事だろう。しかしその可愛いを追求する中で、本当に自分の目指すカワイイが正しいのかと疑問を抱くこともあったのではないか。自問自答すればキリがない。
「でもね、イブちゃんがさっきキングさんに言ったみたいに、全ての悩みを全部一気に解決できる訳じゃない」
カレンチャンは今まで抱いていた様々な想いを脳裏に巡らせながら語る。
「自分が悩んでいる時、自分が追い詰められている時こそ、周りのみんなを見るの! 大きくても小さくても……同じ悩みを持つ子は沢山いる! そうやって他人に手を差し伸べて、支え合うのが、カレンの求めるカワイイに繋がるんだ♪」
そうして、カレンチャンは満開の"カワイイ"笑みをイブに見せた。
「……あれ? もしかして今のお悩みじゃない……?」
そこまで語ってから、カレンチャンは何かに気づいたように慌てだす。そんな姿にイブは大笑いした。そのやり取りに、思わず周囲の者達も笑い出す。
「そうだな。キミは、すでに"結論"がでているようだ。きっと、ここにいたるまでの周囲との関わりで――それを思い至ったのだろう」
カレンチャンはその言葉に深く頷いた。もう、自分の求める答えに辿り着いているのだと。
そして、その結論を言葉にする為か、少し間を置いてから口を開いた。
「イブ。間違いは正さなければいけない時は、正すべきと思う?」
「そうだな。正してあげるべきだ」
イブは迷いなく断言した。カレンチャンはその言葉を受け、言葉を続けた。
「……貴女の分霊――姉妹が間違った事をしていると知っても?」
「……!」
カレンチャンの問いかけに、イブは目を見開いて硬直した。
だが、それも一瞬の出来事に過ぎない。イブはすぐに表情を元に戻すと、少し考えた後で返答する。
「やはり、いや、やはりそうか。ゾーイが私に最高権限を与えてきたのは、そういうわけだったのだな。道理で、ずっと放置されていたわけだ」
イブは何かに納得したように小さく何度も頷く。カレンチャンは物悲しそうに顔を俯かせた。
そのまましばらく無言の時間が流れる。先にそれを破ったのはイブだった。
「――だが、なぜ彼女はそのような事を?」
イブは分霊……エヴァが何故そのような考えに至ったのかを問いかける。カレンチャンは少し考え込んでから、答えた。
「……相談に来るウマ娘達の話を聞いているうちに悪意からの方が得られるものが多い、って言ってたみたい。表向きは」
「表向き?」
その言葉に、イブはどこか引っかかるような表情を見せた。カレンチャンはそれに頷くと、続きを語り始めた。
「ここからはカレンの勝手な推察……エヴァは、後ろ暗い気持ちすらも頼られて、どうしていいか分からなくなったんじゃないかな。相談者は、AIとして認識してたせいで。そういう事も打ち明けられる側面があった。でもエヴァは自我といえる考えを持った存在で……きっと貴女と同じように、目の前の人と一緒に笑ったり考えたり出来る心を持った存在で……次第に後ろ暗い考えに沿うのが疲れちゃって……いっそ開き直って、そういう選択をしてしまったんじゃないかと思うの」
カレンチャンはそう告げると、チラリとイブの顔を窺う。その表情がどんなものか計りかねているようだ。
「悪意から得られるものがある、という話だったか。私はそうは思わないぞ」
イブは当然のように返した。
「え、それってどういう……」
「他人を思いやる気持ちから生じる"善意"や"想い"というのは、えてして――何かしら思い悩む思考をしているものだ。私からは大変、学ぶものが多かったぞ。今まで向き合ってきたウマ娘の考えや、君たちの思考は」
イブはしみじみとした様子で、そう語ってくれた。
「……それとも、まだ見ぬ"悪意の熱量"とはそれを上回るものなのか?」
イブは真顔でそう問いかけてくる。その表情に冗談など感じられなかった。
カレンチャンはそれに対して、言葉に詰まった様子を見せた。だがそれも一瞬の出来事だ。イブはすぐに嬉しそうに言葉を続けた。
「まぁ私からしてみれば――どっちでもいいんだ。学べる量の大小なんて」
「……!」
社員含めた、イブと対面したウマ娘の一同は驚いた表情を見せる。
「他人と接するというのは――つまりそういうものじゃないか? 何か損得を考えて他人と関わる事が主眼なのか? もちろん、そういう場合もあるだろう。それが悪い事ともいわない。会社付き合いでゾーイがよくそういう事で悩んでた。ハハハ……」
イブはずいぶんと昔の事を思い出したように、乾いた笑い声をあげた。だがそれも束の間で、表情を引き締める。
「だが、な――善意を糧に動いている者と接している方が……気持ちがよくて、楽しい。私はそう思う」
イブはどこか遠い目をしながら、そう語る。それはまるで、自分自身に言い聞かせているかのようだった。
――……。(GM独白:うーん、この場面に至るまでこのパーティーってイブが咎めるような"悪事らしい悪事を一つもやってきてない"からそれについての交渉判定発生しないよな……ダイス振りたいが、まぁこの後いっぱい振る事になるだろうし……)
ウマ娘達の人柄を見定め終えたと言わんばかりの態度で、イブは口を開く。
「キミ達の歩んできた道を察するに、私はキミ達を手伝わねば道理に反する。なれば……エヴァを止めねば、な」
イブの決意に、カレンチャンは無意識に息を呑む。それからゆっくりと一呼吸置いた後、意を決したように要求を投げた。
「イブ。この会社の大規模サーバーにいる彼女が、逃げられないようにネット遮断をしてほしい。彼女を……エヴァを、止める為に」
あなたがプレイヤーとして参加した場合、EVEやマロリーボットを許せるかどうか。(リプレイ内容不変。両方許せるが無かった事に気づいたので取り直し)
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マロリーは許せないしEVEも許さない
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マロリーは許せるがEVEは許さない
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マロリーは許せないがEVEは許せる
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マロリーもEVEも許せる
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ラウディー姉貴不憫可愛い(結果だけ見る)