ウマ娘がTRPGを遊ぶだけのはずだった。   作:稗田之蛙

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【EXと表記する回はリプレイではなく、モデルとなったプレイヤー達と話し合った末にプロットを決めた一つの「小説」】


EX:いつか紡がれる《無垢》な約束

学園の授業終わった夕方頃。商店街の隅っこにて。ハルウララとセイウンスカイはとある人物と待ち合わせしていた。

 その隣にノボジャックとフォーエナーを引き連れている。

「ラウディーちゃん!」

 手をぶんぶんと振りしきり、満面の笑みのハルウララ。その視線の先には……ラウディーが居た。なんとも、ハルウララに負けず劣らず幼くもゴシックな私服に袖を通していて、前の事件で関わった時とだいぶ印象が違う。紅い髪も相まってどこぞのお嬢様もかくや、という格好だった。

 ロボットのようにぎくしゃくした動きながらも、ラウディーの方もぎこちない笑みを浮かべながらハルウララの方に小さく手を振っていた。

「もしかして、ストリートファッション着飾る前はエナーより幼い子だったりする? 彼女」

「まぁ、エナーもラウディーも150センチあるから背が高い方だとは思いますがね……ゴシック趣味があったから、傍目からはお人形チックというか……」

「…………わ、わたしも……姉さんみたいな格好すれば、フラワーさんみたいに、可愛い感じには……なれますよ。スカイさん……」

 

 ……セイウンスカイが幼馴染のノボジャックや妹のエナーを両脇に侍らせているようにラウディーには映ったのだろう。目から光りが消えたような錯覚を見せる程に陰気な表情を浮かべた。

「なんだい、モテモテなところ見せつけにきたノカ……」

 いじけたように呟く。そこに、ハルウララがてってこ近寄っていった。

 いつもと同様に無邪気に尻尾をフリフリ揺らしながら。ただ、いつものように明るい調子で話しかけるような事はせず……まずはその手でラウディーの手をぎゅっと握りしめる。

「おかえりなさい」

 ますます、硬直するラウディー。頬に紅がさす。それを受けて、ノボジャックも、エナーも。続けて彼女の帰りを祝った。

「おかえり、ラウディー。あんな事しでかさないように私とエナーで監視しますから、いいですね?」

「……おかえりなさい。姉さん」

 

 

「監護が出来る環境だって認められたから戻れたんだっけ? 憎まれっ子世にはばかるってところだね」

「ま、そうダネ。幸いにして、やさしー父親と母親が私にはちゃーんといるし? 施設に閉じ込められるなんてオチは元々ありえなかったワケよ」

 ファーストフード店で言葉を交わすセイウンスカイとラウディー。お互いの多少悪ふざけした態度は相変わらずといったところか。

「……まぁ、それも『オオゴト』になる前に止めてくれたアンタ達のおかげだけどね」

 あそこに妹相手に傷害事件を起こしていたら、もっともっと判断に要する期間が長くなっていただろう。そもそも両親から絶縁状でも投げつけられていたかもしれない。

「聞けば、あの時期は家出紛いの状態だったらしいじゃない。これからはちゃんと家に帰りなよ。じゃないとおまわりさんに補導されちゃうよ。あわよくば『スリの現行犯逮捕ッス!!』って……」

 セイウンスカイはニヒヒッと笑う。ラウディーの方も、バツが悪そうに顔を顰めた。

「やめてよ。あぁいうムサいオッサン苦手。真っ向から刃向かうのバカらしくなるもん。『ワタシが黒幕☆』って言っても『隠し事せず正直に洗いざらい話すッス!!』ってバカみたいにさ……」

 ……セイウンスカイは変な笑いが出た。まさかあの刑事によって、彼女が真っ当な道に進む一助になろうとは。何が起こるかよく分からない。

「刑事さんからしたら、13歳の女の子が組織犯罪じみた真似してたのはそりゃー疑うでしょ。……実際、裏に黒幕が居たのは事実なんだしさ?」

 カマを掛けた。エヴァに入れ知恵をされていたかどうかを言っている。

「…………」

 ラウディーの方はというと、妙にしらけた顔をしながらジト目を送ってくる。

「"実際に行動に移したのはワタシだ"。というか、エナーに大怪我させようとしたのは独断だしね」

まるで何かを庇うように恫喝してくるものだから、セイウンスカイの方も思わず微笑ましく思えて笑ってしまった。ハルウララの方も……少し悲しさが混じった笑みを浮かべる。ノボジャックやエナーも同様に。

「なんだい。そんな風に笑って」

 セイウンスカイはひとしきり笑うと、気持ち伝えるべく言葉にした。

「うん。やっぱり私は、キミの事が好きだ。道を踏み外してもその根っこは、筋を通している。だからだろうね、見捨てる気になれない」

 突然の告白にますます、困惑の色を強めるラウディー。

「なんだい! 私まで毒牙にかけようったって、そうはいかないよ!!!」

 手を突っぱねるような仕草で、気色悪さをアピールする。ただ、少し頰は紅潮していた。じとーっとした目をスカイと姉に向けるエナー。眉間に人差し指と親指を当てるジャック。

「なんだかよくわからないけど、皆なかよくなれてよかったねー!」

 そして相変わらずのハルウララ。

 

 事態を説明すればその熱を持った感情の色はすぐに治まり、むしろ青ざめた色を見せた。

「エヴァが……死んだ……?」

 セイウンスカイ達から直前の事件の経緯を聞くと、ラウディーは短く、けれども哀しみを深く纏った声で呟いた。

 その言葉の意味を、自分の中で吞み込む時間もないまま……強がるようにカラカラと笑った。

「ハッ、い、いいキミだ。ワタシの携帯のデータまで削除したツケが回ってきたのさ」

 いつものように斜に構えようとするも、顔の引きつり具合が凄まじく……目が泳いだせいで視点が定まっていなかった。

「渡しておくものがあるんだ。これ、ラウディーの携帯のデータね」

「ハァッ!?」

 セイウンスカイからUSBメモリを差し出され、狼狽える。用意周到なノボジャックが、自分の携帯で記録媒体の中身を閲覧し始めた。

「えーっと。なになに。『エヴァ。エナーの誕生日祝いに何がいいと思う? あの子ったら、案外寂しがり屋だからぬいぐるみなんて喜――」

「あーーーあーーあーーーーー!!!!」

 大声をあげてジャックの朗読を遮るラウディー。

 一応エナーもそこに入っていたデータについては当然知っているので何も言わない。ただ、ぎこちなく笑うだけである。

 そのせいかラウディーは苦虫をかみつぶしたかのような顔をしているが、特に怒鳴ってくるでもない。

 

「ウララね。やっぱり、エヴァちゃんもラウディーちゃんも悪い子じゃないと思うんだ」

 ポツリと呟いたハルウララに、スカイもエナーもジャックも、否定はしなかった。二人を悪者として打ち捨てるには、あまりにも……。

「だからね、ラウディーちゃん。これからは、エナーちゃんやジャックちゃんを悲しませる事しちゃ、だめだよ? ウララと約束して!」

 屈託のない笑みでそんな要望をハルウララ。しかも指切りの催促をしてくるのだ。ラウディーは脱力の次は、戸惑いが来た。

「へいへい……」

 仕方ないといった雰囲気を出しながら、それでも要求を吞む。

「あ、エナーちゃんとジャックちゃんともね。あとセイちゃんとも」

「…………」

 ついでにジャックやエナー、セイウンスカイ相手にも要求を呑ませてくるハルウララ。

 そしてそれらやり取りに皆顔を見合わせると、ついに誰からともなく笑いが込み上げるしかなかった。

 

 

 

『ウララー、スカイー。そろそろ終了時間ー』

「はーい」

「あ、はーい!」

 VRウマレーターの使用終了時間が来た事をゲームマスターから告げられた二人は、ログアウトの準備に取りかかる。

『にしても、3話に向かう前に一話のNPC達の行く末を改めて見届けたいとはね』

「んー。私もじっさい三人の事好きだよー? 現実にいたらお友達になりたいかなー、くらいには」

 ゲームマスターの態度に、セイウンスカイはフッと余裕の笑みを見せる。

『そりゃあ、ゲームマスター冥利に尽きる。……とはいっても、最初の頃に言ってた通り設定や判定だけ入力して細かい言動とかはウマレーターのAIに任せてるけどな』

「えー、そうなの? 即興上手いなー、と思ってたけど。そんな事情が……」 

『実卓だったら恥ずかしくて出来る気がせん。主にエナーが言い寄るくだり』

 また掘り返されたので、セイウンスカイは不機嫌そうにぶーっとむくれていた。

 

 

「ウララ」

 ログアウトの直前、ハルウララ突然ラウディーの方から話しかけられた。

「なぁに、ラウディーちゃん?」

 ログアウトの作業を中断して、一旦振り返る。

 

「たぶん、"私"がアンタと会うのはこれで最後だ」

 ラウディーはそのような言葉を発する。

 世界観上は、これから何度だって会う機会があるはずだが……ハルウララは何も言わずに、相手の言葉を聞き続けた。

「だから、伝えておくね。……ありがとう。今の私達が迎えたのは、考えられ得る最高の結末だ」

 ハルウララはその言葉を聞いてしばしキョトンとすると、心の底から湧き出てくる感情を抑える事もなく笑顔が顔に咲いた。

「どういたしまして! ウララね、残りの事件? が終わった後も……また三人に会いにくるね!」

「……あぁ」

 元気良く、遠慮も屈託もなく言い放ったハルウララの言葉を受けると。ラウディーは……悪役ぶったでもない、自然な笑顔を見せるのであった。

 けれども少し悲しげに眉を曲げると、か弱い声音で続けた。

「もしもさ。ワタシやエナーが……ジャックも……ソッチにいたとして……心挫けそうになってたとして……」

 どんどんとか細くなっていく。けれどハルウララは、最後までその言葉を真摯に聞こうとした。

 そして何も気負う事はなかった。だから最後は相手から言葉に願うような眼差しを受けながら、ただ語り始めるのを待っているだけだった。

「……その時も、助けてくれるかな?」

 その問い掛けには、考える事は不要だと思った。

「もちろん! ウララだけじゃなくてね。セイちゃんとかキングちゃんとか、ライスちゃんやカレンちゃん! たづなさんとか、やよいちゃん――理事長ね? みんなみんな、助けてくれるよ!」

 ハルウララにとって当たり前の回答を述べてから、彼女はにこっと笑った。

 それでラウディーも、安堵したように表情を和らげた。

 

「そうだね。きっと、アンタ達と一緒の世界で生きていけるなら。全部大丈夫だ」

 

 ラウディーは、そう言ってログアウトするハルウララを見送った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 プレイヤー達とGMによるMVP投票:キングヘイローに決定。(想い1追加回復。……カレンチャン、MVPを辞退)




 フォーエナー・ラウディー初期イメージ絵。

【挿絵表示】
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