(2話と同じようにHO1指定の人には少し早い時間に集まってロールプレイを開始する。今回は二話リプレイと違って1話同様にGMの介入描写多め)
――キングヘイロー。MISAGASEの社員達と談合してイブをサトノグループに譲り渡すように話をつけた件を、覚えているだろうか。
キングヘイロー『えぇ。……実のところ提案した時は、実際に通るとは思っていなかったのが正直なところだけど』
――しかし実情としては社員達からしたら「真っ当にエヴァに立ち向かってくれたイブを削除するのは……」という考えを持っていたところだな。
(※GM注釈:実卓のキングヘイロー組は社員とゾーイ両方説得しきったが、カレンチャン組との兼ね合いで社員側のみ説得した扱いとしてリプレイでは進める)
キングヘイロー『……社員さん達は、イブに対してどう思っていたのかしら』
――話の要点はそこだな。社長が病院送りにされて超常じみたAIから脅迫を受けている状態から救ってくれたのだから、キングヘイロー達含めて英雄視している。
キングヘイロー『……いざそう言われると、少し面はゆいはね』
ライスシャワー『キングさんは、イブちゃん助ける為に色々な場面で活躍してたもんね……!』
――ライスの姉さんも同じく英雄視されてる。
ライスシャワー『ふぇぇぇ!?』
――そういう理由で大がかりな提案も通ったわけだ。出来る限り最善と思える形でサトノグループに譲渡された。世間的に好評だった『お悩み相談アプリEve』の運営権をサトノグループにお願いし、なおかつ検閲プログラムを導入――昨今のAIよろしく倫理的に問題がある話題なら弾かれるとかそういうのだな――して、エヴァの再来とならないように慎重に取り扱っている。
キングヘイロー『そういえば、エヴァから重点的に寄り添ってあげるように指定された子のリストも遺されていたわね……』
――それについても無論だ。イブはエヴァの遺志を汲み取り、彼女も出来る限り迷いを持ったウマ娘達を救うように尽力している。
ライスシャワー『そっか、よかった。でも、イブちゃんも心疲れしなきゃいいけれど……』
――話はそこなんだが。『お悩み相談アプリEve』がメンテナンスに入る際に、ウマ娘がウマレーターを使っている時間帯が被っていると時々内部で見かけるようになっていた。
ライスシャワー『……えっと、つまり学園内のウマレーターまで遊びに来てる?』
――そのようだな。理事長とサトノグループの間でそういう話があったのか、はたまたイブが勝手にインターネット回線を通じて忍び込んでるのか定かではないが。今回の始まりはウマレーターで『メガドリームサポート』を利用しているところから始まる。
キングヘイロー『ある意味「劇中劇」ね。VRウマレーターの中でVRウマレーターに入るなんて……』
――マトリョーシカだな。
「久しいな! キングヘイロー! ライスシャワー!」
VR内に入った途端、イブと遭遇する。等身大で向き合っているせいか……画面で対面した時よりもこぢんまりとした印象を受ける。カレンチャンが語った『幼稚園児』という容姿の印象は、正しいのかもしれない。
「え、イブちゃん……ウマレーター内にどうして?」
ライスシャワーが驚いていると、イブは人差し指を唇にあてて「企業秘密というヤツだ」と色っぽくウインクして答えた。
「久しぶりね。イブ。元気だった?」
キングヘイローの挨拶に、イブはふんすと鼻息荒く仁王立ちをして答える。
「肯定(アファーマティヴ)だ! 今日はダーレー、ターク、バルブ相手に「手合わせ」を願おうと思っている!」
ライスシャワーとキングヘイローは顔を見合わせた。
――ちなみに二人ともメガドリームサポートを利用する形だったから、これからダーレーら三人と一緒にトレーニングを受ける予定である。
キングヘイロー『まぁ利用しに来たのだからそうよね』
ライスシャワー『じゃあ、イブちゃんを誘って一緒に会いに行こうかな』
「イブちゃん。一緒に会いにいく? これからダーレーさん達とお勉強をする予定なんだけど……」
「そいつは重畳! 是非とも、二人に同行させてもらおう!」
「それじゃあ、決まりね。ダーレーさん達に会いに行きましょうか」
イブを加えた形でキングヘイロー達はトレーニングに赴いたのだった。
「う、む、むむむ……」
ウマレーターの機能を使って『ディスカバリーツアー』……古代エジプトや古代ギリシアなど、歴史の学習に打ってつけな舞台で歴史のお勉強が行われるのだが、それについてきたイブが唸り声をあげている。
『朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。この生き物は何か?』
古代ギリシアの、フェキオン山。目の前にいるのは怪物スフィンクスが問いかけてくる。古代の伝承に伝わる化け物だ。
「ターボおばあさんや、口裂け女みたいな都市伝説みたいなものかしら。古代の時代からそういうのあったのね」
頭は人間の女で胴体はライオン。テーバイの住民達を苦しめ、旅人を捕らえては「なぞなぞ」を仕掛けて、答え間違えれば食われてしまうという。
古代ギリシアの歴史、その一つの豆知識として「謎かけスフィンクスの伝承」をウマレーターで体験しているわけだが、どうにもこうにも……。
キングヘイロー『答えは「人間」よね』
――まぁ有名だよな。この謎かけ。
ライスシャワー『あはは……うん。スフィンクスの伝承は詳しくなくても、この謎かけは知ってるよね』
「もう答え言っちゃっていい?」
「い、いや。まだ。待ってくれ……私が、まだ分かってない……」
さすがに有名な謎かけだからライスシャワーもキングヘイローも答えが何であるかなど分かってはいたが、一緒に体験しているイブが負けん気を出して「待った」を仕掛けている。
『ふはは、どうだ。わからねば妾が喰ってしまうぞちっこいの』
スフィンクスからそのように煽られた。まぁ、答え間違えたら本来の登場人物であるオイディプスという勇者が代わりに答えて助けてくれるらしいが。それはさておき。
「……答えは「人間」だよ。イブ」
ダーレーアラビアンが膝を曲げて屈むようにしながら、イブにこっそりと耳打ちしている。その途端、イブは実に悔しそうに表情を顰めた。
「ダーレー!」
ビシッと指さして憤怒するイブを、ダーレーアラビアンはきょとんとした表情で見つめ返した。
「わかっていたさ! なんたって、ダーレーと同じく『サポートAI』なのだからな! だからそんな答えを教えるなんて無粋な――」
案の定怒り心頭となったイブの言葉に、ダーレーアラビアンは苦笑いしながら後ろ頭を掻いている。
キングヘイローも、ライスシャワーも。バイアリータークもゴドルフィンバルブも、あまつさえスフィンクスすらもオロオロとし始めてイブを宥めるしかなかった。
「あの二人は、またあのような言い合いをしているのか……」
どうにか事が済んで別の事柄を学びに行く準備の途中。バイアリータークが呆れたように言葉をこぼした。
「また?」
ライスシャワーが不安そうに首を傾げる。
「あぁ、イブは『私だってサポートAIとしてなら三人に負けない』と息巻いて。今回のようについてくる」
それを聞いたライスシャワーは、微笑ましく思えたのかへにゃっと笑う。なんとも、前向きな事だと思えた。
「でも、イブちゃんはダーレーとはよく喧嘩になるのよね……」
ゴドルフィンは心配そうに言葉にした。事実、イブの方からギャーギャーと突っかかるのだが、ダーレーは困ったように宥めている。やがて「そうか、わかった! 私がおとなげなかったんだな!」とイブが不機嫌そうに叫んでそっぽを向いた。
「イブは、ダーレーさんとは仲が悪いの?」
キングヘイローはゴドルフィンの方に、声を潜めながら聞いてみた。
「仲が悪いというより……イブちゃんがどういう事があったか事情を知ってから、ダーレーがお節介を焼き始めたといえばいいのかしら」
ゴドルフィンは頬に手を当て、困った素振りで口にする。
バイアリータークも腕を組み、引き続き呆れたようにしていた。
「イブの言葉使いは大人びた語彙で知識面も一定あるが、精神年齢は我々より幼い。ゆえに幼稚園児や小学生のウマ娘との相談役としてなら、心許せる相手としておおいに適正があるのは認めるところではあるが……」
言いづらそうにタークは一旦区切った。キングヘイローは、なんとなく察しがついたように代弁する。
「小学生の子が頑張ってクイズ番組の問題を考えてる後ろで答えを言っちゃうようなお姉さんやお母さんみたいな感覚ね……」
「そうね、それが一番近いかも」
バイアリータークは一拍置いて、呆れた素振りのままで頷く。
「まぁ、あいつも世話焼きな性分。イブの過去を知っている以上は、放っておけないのだろう。その点においては我々も人の事は言えないが、それでもダーレーのやり方はイブと相性が悪い」
――ダーレーら三人の様子を眺めていたキングヘイローとライスシャワーはINTダイスを振ってくれ。
[キングヘイロー:CC<=60 (1D100<=60) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 69 > 69 > 失敗]
[ライスシャワー:CC<=60 (1D100<=60) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 55 > 55 > レギュラー成功]
⇒イブが過酷な経験を辿ってきた事もあって、タークもゴドルフィンも「見守る」という形で彼女を受け入れているようだ。だがダーレーだけは、放っておけずにしょっちゅう手助けをしているのであろうという事がライスシャワーには理解出来た。
「ダーレーさん。私達トレセン学園の生徒相手にはとっても上手に教えてくれてると思うんだけど……」
ライスシャワーのぼやきに、バイアリータークが頷いた。
「そこについては私も自負を持って肯定しよう。だが、しかし。イブの生い立ちは特殊だ。君達とは接するべき方法が違う」
「とはいえ、ダーレーのやり方が絶対的に正しくないかと言われれば……それも違うとは思うのよね」
ゴドルフィンは相変わらず、困った素振りでそう言いながらダーレーらの方を向いた。
「見てくれ。イブ。あれがアクロポリスだ」
「知ってるぞ! 私がキング達に教えようとしていたのに!!」
……AI達が、まだまだ仲が良くなるのは先のように思えてならなかった。