ウマ娘がTRPGを遊ぶだけのはずだった。   作:稗田之蛙

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3.薄明と可憐

 食料袋からは9センチくらいの。小人が出てきた。

 男の子か女の子かよくわからない中性的な容姿だ。

「……見つかっちゃったか」

 と、少しバツが悪そうに頭を掻く小人。

「お腹空いてるのかな? これも食べる?」

「ライスのも……お腹が空いているんだったらもっと食べていいよっ」

 ウララはキラキラとした眼で興味深そうに、ライスシャワーもつられて食糧も差し出す。

「おう! ありがとな」

 もらえるものはもらうとばかりに、遠慮なく食べ始める小人である。

「こりゃあ、随分と可愛い盗人ですなぁ」

 セイウンスカイの言葉に、食糧をポリポリと食べている小人が答えた。

「悪かったって。食糧も全部ほっぽり出して、飲まず食わずだったんだ」

 そう素直に答える小人である。逃げ出す、といった様子はなさそうだが。

 

キングヘイロー『事情を聞いてみましょうか。たぶん、次に繋がる導線でしょうし』

ハルウララ『おー!』

セイウンスカイ『お約束がわかってきたねぇ~』

 

「あら、そんな風に大慌てで? 理由を聞いてもよろしいかしら」

 落ち着いた素振りで訊ねるキングヘイロー。相手もそれに応じて、話を始めた。

「一宿一飯の恩義……ってヤツだな」

 小人は「けぷっ」と息をついてから、語り始めた。

 

 曰く、その小人は「コロボックル」というこの地域に住まう少数民族の一人であるという。

 近隣の都市国家エルムルドにおいて、近々大きな祭りが開かれるという事なので、仲間たちと一緒に観光に来ていたのらしいのだが――。

「……黒ずくめの怪しいヤツに、ミコ――他の小人達も連れ去られちまって……」

 

セイウンスカイ『ミコチもいるんだね……』

 ――まぁ元ネタの作品知っていて有利になる情報ではないのは予め言っておくが。

 

「それって、人攫いというヤツかしら?」

 小人の証言に対して、キングヘイローは合点がいった様子で訊ねた。

「人攫いといえば人攫いだな。いや、小人攫いか?」

 細かい定義は置いておこうといった態度で、小人は話題を続ける。

「あたしたち小人は、こうやって人前で出てくるのは珍しいからな」

 セイウンスカイも、キングヘイローも、ライスシャワーも、互いの顔を見合って頷いた。

 

キングヘイロー『これ、手助けすればイヴさんといずれ鉢合わせになるわよね?』

セイウンスカイ『人助けすると話が進むのは王道的なシナリオの醍醐味ですなぁ~』

 ――まぁ初心者卓だし。

ライスシャワー『じゃ、じゃあ。ライスはこの子を助けたいけれど……ライス、申し出ていいかな? 能力値判定いるかな?』

 ――そこは発言内容次第かもしれない。単に手助けを申し出るなら判定は必要ないが、言い出し難い事を訊ねるなら発生する

ライスシャワー『うぅん……じゃあ、とりあえず手助けを申し出ようかな』

 

「えっと、もしよければ……ライス達が、その小人さん達を助けるの手伝わせてもらえないかな?」

 こう言い出したのは、ライスシャワー。

 その申し出に小人は驚いた様子を見せた。

「……いいのか?」

 盗みを働いた事を思い出しているのか、バツの悪さと驚きが入り混じった表情で小人は問い返す。

「うんっ!」

 ライスシャワーは小人に手を伸ばすと、小人はぴょこんとその手に飛び乗って、身軽な身のこなしでライスシャワーの肩まで登ってきた。

「あたしの名前は『ハクメイ』。よろしくな、旅人の獣人さん達」

「あら、薄明。いい名前ね。格好よくて、男の子らしい名前ね」

 キングヘイローは何気なしにそう述べた。

 

(『HAHAHA』と発言するセイウンスカイとGM)

キングヘイロー『……何よ』

 

「あたしは女だ」

 と、ハクメイは即答した。

「!?」

 失礼な事を言った事を自覚し、青ざめた顔をするキングヘイロー。

「あと"男の子"って年じゃない。23で酒も飲める」

「……!!?」

 更に驚愕の事実で口をあんぐりと開けた。

 

「外見で決めつけるのはよくありませんなぁ~」

 ウララとライスの陰に隠れつつ、セイウンスカイはキングヘイローにそう声をかけた。

「はぁ……まぁ……エルムルドへの道は、ハクメイさんは知っているのよね? そこでご友人を探せばいいのかしら?」

「あぁ、都市への案内は任せてくれ。あたしの足だと戻るのに時間がかかるだろうし、相乗り? させてもらえば一挙両得だ」

「それじゃあ、ハクメイちゃんと一緒にレッツゴーだね!!」

 一同は、それをハクメイを受け入れて、木々の獣道を歩み出るのであった。

 

 

 ――あぁ、ちなみに。各自持ち物を確認してくれ。それぞれナイフ(1d4+db)や食糧や衣服といった必要最低限の旅の準備が整えられている。ステータスにも予め書き加えておいた。

キングヘイロー「へぇ……じゃあ一応確認してみようかしら……」

 

【キングヘイローの所持品:GM人形「知人から送りつけられたにんぎょう」】

 

キングヘイロー『なにこれ』

 ――デコイ。

キングヘイロー『なんの!?』

(GM注釈:コマ遊びで小人所持PCのコマの頭部に小人NPCを乗せる遊びをしていた際、悪ふざけでGMコマがキングヘイローの頭部に乗せられていた影響)

 

 

「この人形、髪飾りにするには重いんだけど……」

「なんで律儀に乗せ続けてるんですか……」

 ノボジャックに心配されるキングヘイロー。

「……前方注意な。そろそろだ」

 ハクメイがそう言うと、前方に現れたのは……木の壁……?

「……城壁かしら?」

 そういってこつんこつんと木の壁に振れるキングヘイロー。

 

(……GMとキングヘイロー、個別会話)

 

「!!!!!!!!!!!!!!!?」

 木の壁から離れて、全力で後方ダッシュするキングヘイロー。

「どうなされたのですか」

「毛虫でもいたんじゃない~?」

 ノボジャックがキングヘイローに訊ね、軽い様子で受け答えるセイウンスカイ。

「え、あ。皆には聞こえてないの!?」

 そのような事を言って慌てている。

「ライスには、何も……?」

「ウララも何も聞こえてないよー?」

 そのようにやり取りしていると、ハクメイはしたり顔で頷いた。

「なんだ。獣人さんはこういう手合い初めてか」

 何事か、キングヘイローの動揺の理由を知っている様子だ。

「ま、触れてみるといい」

 促されるまま、皆は木の壁に触れる。

 

[――こんにちは、ウマ娘たち。]

 

 そんな声が木の壁の向こうから聞こえてきた。

 

「ファンタジーだねぇ。触れてる間だけテレパシー出来るタイプ?」

 セイウンスカイはこの手の様式美に手慣れているのか、早々に納得した。

「ふ、ふぇぇぇ!? お、おばけっ……?!」

「おー、塗り壁の妖怪さん?」

 ライスシャワーは怖がって尻尾と耳を丸めている。ウララは珍しそうに壁に触れていた。

 キングヘイローは少し警戒しながらも、怖々とした様子で木の壁に歩み寄り、壁に再び触れる。

「あなた、誰……?」

 キングヘイローは、おそるおそる訊ねる。

 

[――私は……そうだね。『キノセイ』とでも呼んでくれ]

 

「気の所為?」

 きょとん、とした顔でそのニュアンスで発するハルウララ。

「き、木の精だと思うよウララちゃん……」

 

[――……エルムルドに向かいたいのだね?]

 

 各々は、頷く。そしてキノセイと名乗った声がこう続けた。

 

[――……ならば乗り物を用意しよう]

 

 エレベーター装置でもあったのだろうか、皆が乗れるくらいの木と葉っぱがするすると霧の中降りてきた。

 

「魔法の絨毯みたいなものかな……? ジャック。ほら、一緒に」

「え、あ、はい」

 セイウンスカイは疑う事なく、ジャックと共にそれに飛び乗る。

「わー!! ウララも乗るー!! たのしそーっ!!」

「あぁ、もう……まぁ、大丈夫なのでしょうけれど」

「あはは……」

 ウララに続いてライスシャワー、キングヘイローも躊躇しながらもそれに乗り……。

 

 

 ――――カレンチャン……発言ないけど大丈夫?

カレンチャン『あ、えっと。乗ります! 乗ります!』

 ――……ちょいとライスシャワーとキングヘイローのみのイベントの予定だったけど、まぁ、うん。カレンチャンに挟んだ方がいいだろう。うん。ちょっとHo1用のイベント入る。

 

 

 

 

 

 全員乗り込むとそのまま霧の中を上昇していきます。

 木に乗って上がっていくと、それに伴い段々霧が晴れていきます。

 霧が晴れ、高台から周囲の風景を見下ろすとそこはまるで日本の地形とは違っておりました。

 天には月が二つあり、太陽が無いのに青く、互いの顔が見えるほど明るく。

 その下に、ヒトケが全くない高原、あるいは緑の大地が広がっています。

 

「わぁ……!」

 

 ライスシャワーは、まるで絵本の中の世界に踏み込めた事を喜び、キングヘイローは「こういうのも悪くないわね」と笑顔を浮かべる。

 ……それらの横で、俯き気味に山座りの姿勢で黙り込んでいるカレンチャン。

 

[――この世界を旅立たせる前に、キミ達に訊ねたい事がある]

 

 ……その声はライスシャワー、キングヘイロー、カレンチャンにだけ聞こえた。

 

[――時に、キミ達は誰かを助けられずに後悔に至った事はあるか」

 

 ライスシャワーとキングヘイローは顔を見合わせてから、カレンチャンの方を見た。

 

「……直近の事を訊ねているのならば。後悔している、といえば。それは誰かへの侮辱になる。だからキングの選択に、後悔はない」

「……エヴァちゃんは、ライスがもっと強ければ……もっと賢ければ……って思っちゃう事は、あるかな」

 

「……」

 キングヘイローとライスシャワーはあまり時間を置かずに答えられたが、カレンチャンはしばし時間を要した。

「…………とっても、後悔してる」

 カレンチャンは、蚊の鳴くような小さな声でそう答えた。

 

[――それを注ぐ機会は君たちにもある]

 

 キノセイはそう言った。

 

[――これから始めるのは、君たちが紡ぐ物語だ。ハルウララ、セイウンスカイ、ノボジャック……そしてこの世界の者達と共に、形つくってきてくれ]

 

 VRウマレーターにおける、詩的な導入であった。三人にはそう受け取れた。

 

 

(※以下、キノセイはカレンチャンに対して個別会話)

 

[――そして、キミだけに再び訊ねよう]

 

「………………」

 カレンチャンは、耳をぴくりと動かしてキノセイのテレパシーに受け答えた。

 

[――キミが救えなかった者に対する感情を、正直に語ってほしい]

 

「……!! …………」

 カレンチャンは、長い沈黙を挟んだ。

 熟考。他の者たちはそれを急かす事はなかった。

 そしてカレンチャンも一つの答えにたどり着く。

「……正直なところを言えば、トヴィちゃんやお姉ちゃんに大怪我させた恨みもある。引きずってるのは、カレンの悲劇のヒーロー気取りなのかもしれない」

 

[――……]

 

「エヴァちゃんが諸悪の根源だったっていうのは理解してるし、自分の中に怒りの感情があるのはわかってる。だけど、それを全部ひっくるめて一番心に引っ掛かっているのは……彼女が、生みの親に、ゾーイさんに頼れないくらい孤独だったって事。最初こそは、幼いウマ娘ちゃん達の相談を一生懸命頑張ってたのに……ネジ曲がった原因だって、エヴァちゃん自身のせいじゃ絶対ないのに。そんな子を唾棄するのは、カレンの目指してる〝カワイイ〟じゃない……」

 キノセイに対して言い切るように、声を張った。

「出来る事なら、彼女も、エヴァちゃんも幸せであってほしかった。……でも、カレンの心が弱いせいで。彼女の意思を無視してでもカレンが目指す〝カワイイ〟を突き通せなかったから……そうは出来なかった。……だからせめて、イヴちゃんには幸せであってほしいから……」 

 カレンは、唇を噛む。

「……うん、だめだね。カレンが落ち込んで黙りこくってたら。イヴちゃんも遅刻して叱られちゃう一因になっちゃうね。ありがとう、キノセイさん! カレンを元気づけてくれたんだよね?」

 

[――それは、きっとキノセイだろう]

 

「うふふ……つれない返事だなぁ。でも、ごめんね。他の皆も……カレン、エヴァちゃんのためにもイブちゃんを連れ戻さなきゃ!!」

 そういって、意気揚々。笑顔を取り戻して今までの出遅れを周囲に詫び、作戦会議に加わった。周囲もほっと一息。

 

 

[――首尾よくいけば、キミの想いは、報われる機会がきっと来る]

 

「………………?」

 その言葉を聞いて、カレンチャンは心臓が高鳴るのを覚えた。

 彼女の口端は自然と上がっていたが……周囲はその反応には気が付かなかった。

 

(カレンチャンへの個別会話解除)

 

  貴方達の乗っていた大きな木の葉が、ぷつりとちぎれる音がいたしました。

[――楽しんでおいで。〝夢見る人〟]

 その木の葉はそのまま重力によって落下などせず、柔らかな風に乗る様にして空をまっすぐ進んで行きました。

[――それぞれの〝想い〟が、成就するように]

 

 そうして、まぁ木の壁が遠ざかるにつれてその姿が判然としてきます。

 それは巨木の姿を……………………

 

「デカすぎません?」

 

 ノボジャックがそう漏らす。1000mはありましょうか。

 木の壁だと思っていたそれは、現実では有り得ない様な、大輪であったのです。

 

 

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