……ノボジャックの情報を受けてきた区画へ来た。
野良レースに使えるような長い道路が特徴的な場所だったが、その道路には屋台の仮組が何十体も置かれている様子だった。
「わー! おまつりの準備してるのかな?!」
「人がたくさんだね、ウララちゃん」
和気藹々、興味津々。そんな様子で近づく二人に対して、「よろしくおねがいしまーす」とアルバイトの人からチラシを渡される。
【カームフェスティバル 17~21時!!】
どうやら翌日に祭りが執り行われるらしい。花の金曜日であるからして、市の職員や祭りの役員など、多くの人員が駆り出されている様子だ。
ハルウララ『さっきの犯人像のお話聞きたい!』
セイウンスカイ『えーっと、GM。なんか犯人像語ると私の独演会になっちゃいそうだけど……チラシ……』
――考えを打ち明ける事は大事だ。そもそも正解かどうか分からない事だし。(GMの内心:たぶんさっきの推理力から踏まえるに正解なんだよなぁ……)
セイウンスカイ『そもそもの話さ。ノボジャックの話を信じるならば、フォーエナーは"自分の意思で警備員や寮長に隠れながら学園の外まで脱出した"ってわけで」
キングヘイロー『ノボジャックさんが私達を謀ってる可能性は?』
セイウンスカイ『たぶんない。そういう手合ならもっとこっちが罠に掛かりそうな情報をバラまいてくるし、ダイス成功で開示された複数の情報とも食い違う。味方側だけど、何か協力出来ない・したくない事情があるヒト』
ハルウララ『じゃあ、協力したくない理由って……?』
セイウンスカイ『そこはまだ分からない。でも、知人が行方不明になっても大人達に話せない事情がある。それはきっと、犯罪が関わるか、脅されてるか。そんな辺りだと思う』
ライスシャワー『だ、だったらノボジャックさんに今すぐ打ち明けるようにお願いしなきゃ……っ! ジャックさんも助けてあげないと!!』
セイウンスカイ『時期尚早。何の証拠もない。そもそも当たってるかどうかすら分からない。今問い詰めると言い逃れられて、情報の援助を断たれるかもしれない。それは普通に進めた場合より状況がまずい』
――……。
セイウンスカイ『――ひとまず、当たってるかどうかも分からない犯人像は置いておいてさ。今は足で地道に情報を集めた方がいいと思うんだ。だって、難しい判定にさっきカレンが成功してくれたんだもの。お話は最序盤。気配は順調。そう焦るこたぁ、ないって。ゆったり、まったり。釣りでもする感じにさ? ……うん、チラシの描写もう一回お願い出来る?』
【カームフェスティバル 17~21時!!】
どうやら翌日に祭りが執り行われるらしい。花の金曜日であるからして、市の職員や祭りの役員など、多くの人員が駆り出されている様子だ。
「へぇ、祭りかぁ。私も明日いこっかな~」
チラシを受け取りながら、のんきな素振りでそんな事をのたまうセウンスカイ。キングヘイローは呆れ顔でため息を吐いた。
「ちょっと、フォーエナーさんを探すのが先決でしょう?」
「でも、フォーエナーちゃんお祭りに来たりして? 大きなお祭りだから、お姉さんと一緒に……なーんて」
――……。(GM、カレンチャンとセイウンスカイの発言思い返しつつ考え込む)
【GM、唐突にシークレットのダイスを振る】
キングヘイロー『え、何今のダイス?』
カレンチャン『あ、何かイベント?』
セイウンスカイ『ん、きたか』
ハルウララ『何の音?』
ライスシャワー『ふぇ?』
キングヘイロー。INTダイスを振ってくれ。
キングヘイロー⇒100 ファンブル
――ここで出すか。実に、実にらしい。
キングヘイロー『え、すごい悪い結果になるのよねコレ?』
――ファンブルを出したら全ての判定が最悪の結果になるわけではないが、まぁ、今回は、そうだな。では描写をしよう。
「え、あ、財布すられてる!」
作業をしていた職員の一人が、そう騒ぎ始めた。それを聞いて、ウマ娘達一同もそれぞれの手持ちの財布を確認し始めた。
「……ない。ない!? ない!!」
財布が無くなってる事に気がついて鞄などをしっちゃかめっちゃかに手を突っ込んでいるキングヘイロー。――いやキミそういうロールプレイ上手いね。セイウンスカイ『素だと思うよ』
キングヘイローや職員以外にも、何人もの大人が慌てふためいてる事から複数の財布を何者かに擦り取られた様子なのが把握出来た。
「ヘッ、ノロマが!」
少し離れた距離から、そう言って走り去っていこうとするウマ娘が一人。エナーやノボジャックが話してくれた不良の情報とは似ても似つかないが、年代は近しい。中学生くらいだろう。
「お、追わなきゃ……!!」
ライスシャワーはあわあわとしながらも、いち早く追いかけようとした。
――さて、この場面では"対抗ロール"というものを行ってもらう。いわゆる、『成功度』が高い方が勝つというアレだな。そうだな、一番足が早いライスの姉さんが代表者として追う事になるだろうか?
ライスシャワー『ふぇっぇぇ!!?』
――ふぇー、ではありません。……なお、スリに気づくのが遅れている為今回はライスシャワー姉さん側にペナルティダイスを一つ使う。ファンブルの効果はこれだな。
キングヘイロー『……わ、わたしが気づかなかったせいで……』
――そういう失敗も込みでゲームの楽しささ。さて、振ってもらおう。
(この辺りでダイスボッドが旧版になっている事に気がついて、クイックルールに適したダイスを使うように差し替える)
ライスシャワー:CC(-1)<=80 (1D100<=80) ボーナス・ペナルティダイス[-1] > 48, 68 > 68 > レギュラー成功
謎のウマ娘:CC<=60 (1D100<=60) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 2 > 2 > イクストリーム成功
――うへあ……いや、これはキングの失敗どうこう以前に相手のダイスが強すぎたから仕方ないな……あぁ、では。
ライスシャワー「……プッシュ……」
――ん、だがプッシュしても相手のイクストリームは再判定されない。分が悪いが、いいのか……?
ライスシャワー「プッシュします……その後、"想い"ってのを消費したら、勝てますか……?」
――それほどか。だが、この数値に打ち勝つには……それを使った方が現実的だな。ではMP-5したのち、想いステータスを消費してくれ。ちなみにMPの最大値とシナリオ開始時の初期値はPOWの5分の1だ。HPはSIZ・CON合計の10分の1。
ライスシャワー:【MP10⇒MP5】
ライスシャワー:【想い1⇒想い0】
「他人の財布を盗み取るなんて、ライス、ライス絶対許さない……ライスは……ヒーローだ!!」
「おぉ、ライスのお嬢ちゃん! がんばれ!!」
快速に逃げ切ろうとしていたスリの犯人だったが、事態に気づいた一般人がスリ犯の足元にモノを投げて、一瞬だけ相手の足元を怯ませる
「!!!?」
いきなり妨害を食らうのが予想外だったのか、ライスシャワーが追いついて捉えるには十分な隙だった。
――いやはや、早期に【必殺技】を使うとは。だがこいつは良い情報を持ってるから、英断でしたぞ。ライスの姉さん。
ライスシャワー『……え、あ。……財布盗むのが許せなくて、そこあんまり考えずにやっちゃった……』
セイウンスカイ『んー……ウララといい、優しい子はやっぱりそこらへん強みだねぇ……ところで"想い"って他人に助けられて成功に繋がる感じ?』
――まぁ、基本的にはそうだな。まだ深くは話せないが。仕組みを理解して有利になる事もなさそうだから、深く考えずに大丈夫だ。
カレンチャン『ふふふ、じゃあ善行に尽くさないとね。誰かと"想い、想われる"為に。シナリオクリアも目指さないと』
――ハハハ。
さて、ライスシャワーが不良を捕らえると一般人や他のウマ娘達も続々その場に集ってくるだろう。
やがて警察が来るはずだ。その合間、何か聞きたい事があればそれぞれ聞いておいた方がいいだろう。一般人の彼女について罵声を浴びせてくる。
「この野郎! また、この区域でスリを働きやがったな!!」
それを聞いて反応したのは、キングヘイローとセイウンスカイだ。
「え、また? って事は……」
「あぁ、こいつらグループ組んでスリをやってるんだ! 仲間内で競うついでにな! まるで遊びのように!!」
財布を盗られて怒り心頭、といったところだ。そこから普段からこういった事を繰り返していた者なのだと理解出来る。
「で、すった個数かタイムかは知らないけど、とにかく一着を取った人が総取り。あるいは多めにもらう、ってところでしょうなぁ……」
「……」
セイウンスカイのしたたかな推察に、捕まえられたウマ娘は何も話さない。しかし顔を歪ませている。その指摘は当たっているのだろう。
この者から何か聞き出そうとする場合、まずはAPP……まぁ交渉だな。それを最初に成功させる必要があるだろう。
カレンチャン『目の前でスチール缶を片手でたやすく握り潰したらボーナスダイスもらえたりする?』
――(GM、爆笑) 実にカレンチャンらしくないロールプレイだが、いや、こいつ相手にはかなり有効な手段だな。誰かを救う為に、あえてそういうロールプレイも割り切ってしまうのもありだろう。倫理的に問題がある行動や、非人道な行いというわけでもないしな。拷問で聞き出すとかはさすがにストップ入れると前もって言っておくが。
カレンチャン『じゃあ、挑戦してみまーす♪』
ハルウララ『わー、ウララもウララも!! STRなら自信あるよ!!』
CC<=70 (1D100<=70) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 2 > 2 > イクストリーム成功
CC<=80 (1D100<=80) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 80 > 80 > レギュラー成功
――どっちかというと脅しなんて使わなそうな二人が満面の笑みでスチール缶を握り潰してる絵面が酷い! しかも両者成功かつ、カレンチャンはイクストリーム成功か!(GM、相変わらず爆笑中)
キングヘイロー『ウララさん……現実じゃ絶対そんな事やっちゃダメよ? 相手を怖がらせるし、手も切っちゃうかもしれないし……』
ハルウララ『うん、わかった! やらないようにする!』
セイウンスカイ『忠告しなくてもウララはやらないだろうねぇ』
―ーカレンチャンは……。
カレンチャン『もちろん、やらないよ♪ だって他の人を脅すなんて、ぜんぜんカワイクないもん?』
――……ハハハ。(……たぶんSTR70振った時点で交渉手段にする事も折込済みだったんだろうな)
そのウマ娘の目の前で、ハルウララはニコニコとした顔でスチール缶を握り潰し、更にカレンチャンは、片手でスチール缶をバラバラの破片に引き裂いてみせた。
「……話さないと、次はあなたがこうなっちゃうよ?」
「なっちゃうぞー!」
その所業におそれをなしたのか、相手はひどく動揺している。これについてはボーナスダイス+2をつけていいだろう。APPダイスどうぞ。カレンチャン。
カレンチャン:(1D100<=80) ボーナス・ペナルティダイス[2] > 75, 75, 35 > 35 > ハード成功
威圧に押し負けて完全に相手は意気消沈し、うなだれて抵抗する気配はなくなった。ほとんどの事は、正直に聞き出せそうだ。
「何が聞きたい?」
キングヘイロー『……捕まえたはいいけど、何を聞けばいいの?』
セイウンスカイ『そうだね。ちょっと皆で考えてみようか』
ハルウララ『んっとね、まずフォーエナーちゃんの事!!』
ライスシャワー『あと、なんでスリなんてやってるのか……』
カレンチャン『んー、カレンはこの子が所属してるグループの事について聞きたいかな?』
――ふむふむ、今回は特に時間制限は厳しく決めてないから、思いつくまま聞いてみてくれ。キリがいいところで警察が来て、連れて行かれた事にしよう。
「フォーエナーちゃんって知ってる? ウマ娘! 中等部一年生!」
それを聞いた相手は、少しびっくりした顔をした。
「なんだ。アンタら、エナーの知り合いか? どーりで……」
口ぶりから察するに、相手もフォーエナーの知り合いだという事がうかがえる。セイウンスカイは更に追求した。
「うん、私達フォーエナーが連れ去られたから行方を捜してるんだ。だから、教えてくれたら嬉しい」
それを聞いて、相手はその物言いをバカにしたように破顔一笑。
「連れ去られた? なにをバカな事言ってやがる。アイツが"自分の意思で"戻ってきたんだよ」
「"双子のお姉ちゃん"の元に?」
セイウンスカイがそう間髪入れずに聞くと、相手はなおさら驚きながらもニヤけ顔で返してくる。
「その通りさ。憧れのトレセン学園に入学したものの、一勝も勝てずに挫折! それを優しく慰撫してやる双子の姉! そして仲間のオレ達! お前らが邁進してる勝負の世界よりも、実にお優しい事じゃあないか! えぇ!?」
その言い草はどこか挑発的だった。トレセン学園の生徒達が、挫折からのリタイアという選択をする者も、決して少なくはないのを踏まえての事だろう。
キングヘイロー『…………………………』
セイウンスカイ『うーん、少しずつ分かってきたねぇ……』
ライスシャワー『ほ、本当に双子の姉妹だったんだね。話の内容から察するに……』
セイウンスカイ『だろうね。フォーエナーの視点だと"心が折れかけて、肉親の姉に慰めてもらおうとこっそり会った"って分かりやすい動機。もしかしたらこのまま戻らないつもりかもしれない。……うん、それだけなら、まだお姉ちゃんに甘えにいっただけって話だから、平和なんだけどね?』
――……。
ハルウララ『じゃあ、次はライスちゃんが聞きたかったかなんでスリしてるか聞いちゃう?』
ライスシャワー『う、うん。何か理由がこの人達にもあるかもしれないし。病気の身内の治療費稼ぐ為、とか……!!』
「えっと、なんで、そうスリを働いたりするんですか……?」
ライスシャワーはおずおずとそう訊ねた。相手は、当然のように言い返す。
「遊ぶ金欲しさ」
「………………」
「決まってるだろ? ニンゲンより、オレ達は強ぇ。足も早ぇ。なら、奪うだろ。弱肉強食ってヤツさ。ま、警察にゃ婦警のウマ娘もたくさんいるから、真っ向から殴り合いなんてのは勝ち目な――」
ライスシャワーを見下すように笑っていた不良のウマ娘だったが、セリフを言い終える前に言葉を詰まらせた。
セイウンスカイ『いや、まぁ、ライスさんならショックで泣くか、凄く怒るか、でしょう。こっちから顔は見えないけど』
ハルウララ『う、う。ウララもちょっと悲しい気持ち……』
――まぁ、ライスの姉さんがどういう顔してるのか各自でご想像お願いする。
「くだらない」
話の内容に我慢しきれなかったキングヘイローが、不良のウマ娘に対してそう言い放った。
「あ゛ぁ゛?」
「くだらない、って言ったのよ。弱肉強食……強いから弱いモノを食らう? 足が速いから、腕力も強いからニンゲンからお金を奪って当然? 貴女はそう言い切るのね?」
「あぁ、それの何が間違ってるっていうんだ」
「えぇ、間違ってる。なんたって、屋台の設営を手伝ったりしてるのはボランティアでお手伝いをしている一般の方々や市の職員さん。普段は真っ当にお金を稼いでるであろうこのヒト達の方が"盗人"であるあなた達よりも立派で、誠実で――それでいて、大抵は優しい人たちよ。だから私は、そんなヒト達が『弱者』だなんて到底思わない!! むしろ、コソコソと盗みを働く貴女達こそが弱者―ーいいえ、単なる弱虫よ!!」
「!!!!!」
不良のウマ娘は、キングヘイローの物言いに何か言い返そうとしたが……何も言い返す事は出来なかった。
――おぉ、言い切った。実にらしい。いいぞ。
セイウンスカイ『分かりやすい悪役に対してこういう啖呵を切るのは醍醐味だよねぇ』
ライスシャワー『う、うう……ライスも黙り込むだけじゃなくって、キングさんみたいに言えたらなぁ……』
ハルウララ『でも、ウララはライスちゃんが頑張って不良捕まえたのすっごくカッコイイと思ったけどなぁ……』
「……本当に自分こそが強いと言い張るなら、まずは財布を盗んだ罪を贖う事。そうでないかしら?」
「……」
不良のウマ娘はこれ以上痛いところを突かれたくなかったのか、キングヘイローの言葉に口答えする事なく。うつむいた。盗った財布を全て、貴女や周囲の一般人達に差し出す。返却の意思を示しているのだろう。
「そう、それでいいのよ。……それにしても、あぁ、よかった……気に入ってたから失くしちゃったらどうしようかと……」
――財布が戻ってきて気が抜けたな。
セイウンスカイ『……うん、実にキングらしい……』
キングヘイロー『ちょっと、何よそれ』
ともかく、目撃者多数のこの状況だ。証拠品などと気にせずともいい。ひとまずそれらの財布は持ち主の手元に戻っただろう。
「よかったぁ♪ それで、カレンともう少しだけ『おはなし』いいかな?」
不良のウマ娘は、カレンに対しては引きつったような顔で向き合った。ひどく怯えてるらしい。
「な、なんだよ」
「うーん、なんでそんな風に怯えられてるのかはよく分からないけど……貴女のグループの事。もっと聞きたいな? 集団で、野良レース? スリ? をしているんでしょう?」
「ま、まぁ……そうだな……」
「だったら、そのグループについて聞かせて。普段、どこに集まってるの? リーダーは?」
「…………」
いささか迷っていたようだが、不良のウマ娘は逃げ去ろうとしていた先の、路地裏を指さした。周囲で見守ってた一般人からの補足だが、そこには裏町通りがあり、ガラの悪い連中が集う酒場や料理店など、そういう店があるらしい。
「リーダーは……その……」
ひどく怯えている。言い辛い様子だ。
カレンチャン『……カレン、やりすぎちゃった?』
セイウンスカイ『いや、会話の流れからしてたぶん違う。そのリーダーに対して、カレン以上に怯えてる』
カレンチャン『そっか。つまりスチール缶を片手で粉微塵に出来るヤツが犯人……!!』
ライスシャワー『じゃ、じゃあ絵本に出てくるような赤鬼さんみたいな大きな相手とかかなぁ?』
セイウンスカイ『ハハハ……いやまぁ、たぶんウマ娘だろうから、スチール缶くらいはイケるかもしれないけど……』
「そのリーダーっていうのは。さっき言ってた。フォーエナーのお姉さんだね?」
「!!!」
セイウンスカイがそう指摘すると、バッと顔をあげた。それは何よりも肯定に近い反応だった。
「……うん、やっぱり犯人像は思ってた通り。ありがとう。その反応で分かったよ」
「……」
――さて、聞く事が終わった場合はそろそろ警察の介入で彼女は連れて行かれるが。聞きたい事は残ってるかい?
セイウンスカイ『ノボジャックについても聞きたいけど、やぶ蛇かなぁ。うーん……』
キングヘイロー『なんでノボジャックさんについてこの子に聞くの? 何も関係なさそうだけど』
セイウンスカイ『いや、ノボジャックがこのグループに入ってたっていう可能性がありそうなんだよ。たぶん、グループぐるみで非行に走り始めた時期辺りで、失望して抜けちゃったとかその辺りだと思うんだけど……もしかしたらフォーエナーも一緒に』
――……。(セイちゃん、大正解……)
セイウンスカイ『で、ノボジャックからしたら。そんな非行グループのリーダーにお迎えに来てもらったのだから、フォーエナーが非行に走るのをヨシとしたように映ったのかもしれない。この一点に関しては考えすぎかもしれないけど』
キングヘイロー『……まぁ、巡り巡ってノボジャックさんに被害が及ぶかもしれないからそこはやめておきましょう。そこまで推察出来てるなら、ノボジャックさん当人に指摘する手段もあるはずだわ』
セイウンスカイ『そうだね。じゃあ、このまま――』
ハルウララ『えっと、一つだけ不良さんに安心させてあげるような事言いたいんだけど、いいかな?』
――ほう。
セイウンスカイ『……ん、言っといで!』
警察に不良のウマ娘が連れて行かれる直前、ハルウララは彼女に声をかけた。
「えっと、貴女が情報を話したって事。そのリーダーさんには絶対言わないって約束するからね!」
「…………」
相手は一瞬耳をピクリと動かして反応するが、何も言い返しては来なかった。
「私は、フォーエナーちゃんを助けたい! でも、あなたにもひどい目に遭ってほしくない! あなたが情報を漏らしたって、リーダーさんに伝わると、恨まれる可能性もある……だから、絶対リーダーさんには言わない!」
「……御人好しなこって……」
相手のウマ娘は消沈しながらも、ハルウララの純朴な言動を小馬鹿にするように言い返した。
「それじゃあね! ちゃんと『ごめんなさい』って反省してたら、きっと大人のヒトも許してくれるから……悪い事はもうダメだよ!!」
警察に連れて行かれる彼女に対して、そう言い切って手を振るウララであった。
「おい。まさか本当に、ただ単に安心させるような事言いたかっただけじゃないよな?」
パトカーに乗り込む寸前。そんな事を不良のウマ娘に聞かれる。
「……え?」
「いや、気のいい事言って情報引き出そうって魂胆なんだろ?」
「あ……そっか、そういう事もできるのかー。でも、そこまでかんがえつかなかったや! えへへ」
「…………」
「ウララは、ただ貴女に約束したかっただけ! だって、なんだか怖がってたから! そう言えば、安心してくれるかなー……って」
ウララの物言いに呆気に取られつつ、警察官に「ほら乗りなさい」と促される不良のウマ娘。
「ちょっと待ってくれ。そこの"御人好し"にもう一言だけ言いたい事がある」
不良のウマ娘は一言だけ言い残すようにして、パトカーに乗り込んだ。
「フォーエナーの姉……ラウディー姉貴はなんだかんだで喧嘩っ早いから、一人で会おうとなんかすんなよ。お前みたいなのが怪我すると、目覚めが悪い」