セイウンスカイ『ここから先はたぶん2つの選択肢がある。路地裏に行くか。ノボジャックを問い詰めるか』
キングヘイロー『あら、選り取り見取りね』
セイウンスカイ『スリ犯はおそらく取り逃す事もあるだろうから、その時にラウディーってウマ娘に辿り着く別口がノボジャックを問い詰める事とかなんだろうね。他にも道はあるかもしれないけど、今はさておき……』
カレンチャン『……今から、踏み込んじゃう? ねぇ、GM。今の時間帯は? 私達、門限あるだろうし』
―ーあと一箇所どこかに寄るくらいの時間的余裕はある。
セイウンスカイ『……ここは四人の意見を聞きたい。セイちゃんはそれから考えます』
キングヘイロー『踏み込むべきよ。今すぐフォーエナーさんを助けられる可能性があるもの』
ライスシャワー『えっと……ライスも今すぐ踏み込みたい……喧嘩とかは、イヤだけど……』
ハルウララ『よし、やっちゃおう!』
カレンチャン『カレンは……準備とかしたいから、今はあんまりかな……戦闘とかありそうだし……』
セイウンスカイ『……うん、この場面で一番やっちゃいけないのは"一人で会おうとする事"なんだと思う。先の情報を踏まえるにね。そしてカレンの言う事ももっともだと思う。でも、三人の気持ちもよく分かる。だから、ここは分断して処理するのも一つの選択肢だと思う。無論、GMの負担は増えちゃうけど……』
――私は構わん。プレイヤーの望むままに。
セイウンスカイ『じゃあ、もしもの時の事を考えてカレンと私はこの区画の内に居て……そんで、武器? 防衛手段? になりそうなモノを集める事と、並行して情報収集とかできそうな事をしたい。それでいいかな、カレン?』
カレンチャン「うん!」
――他三人も頷いているようだし、決まったようだな。三人の方から処理しよう。
ではキングヘイロー、ライスシャワー、ハルウララの三人は路地裏を進んでいく。
路地裏は人通りが少なく、あったとしてもガラの悪い風体のニンゲンかウマ娘だ。三人とは部類がだいぶ違い、相手も奇異な目で見てくるだろう。
「こんにちはっ!」
そんな言葉を向けるハルウララ。相手は無視してどこかへ行ってしまう。普段通っている商店街などとは、だいぶ雰囲気が違いそうだ。
「んー、物々しい"ふういんき"を感じる!」
「ウララさん、"ふんいき"よ」
「"ふういんき"……」
――素で言えてない言えてない。
やがて、一軒のカフェ店に三人は関心を惹かれた。やたら盛況……というより若いウマ娘が集まっていた。高等部の子もいるだろうけど、大体の子は中等部くらいの子だね。小学生の子もいるかもしれない。
「たぶん……これが……」
キングヘイローは物怖じせず、カフェの扉を開けて中に入った。二人もそれに続く。
その行動に対して返ってきた反応は、突き刺さるような視線が一斉に注がれる事だった。
……ただハルウララだけはそうでない。むしろ、歓迎する気配すら感じる。
ハルウララ『あれ、私だけカフェの人たちの反応違うの?』
――……うむ、キミだけに対してはそうだな。
「ラウディーさんはいるかしら? フォーエナーさんをお迎えにきたの」
キングヘイローは怯える事もなく、自信ありげに腕を組んでそう言い切った。
いかにも下っ端といった様相のモノは、キングヘイローに詰め寄って脅すか何かしようとしたようだが。
「ヤメナ」
一番店の奥に居たウマ娘がそれを止めた。そちらに君達の注目も集まるだろう。
何故ならそこにいたのは君達の後輩であるフォーエナー……それに瓜二つの、髪色と服装を変えたような人物がそこに居たからだ。
「あ、よかったー! 捜したんだよ!」
そう言って親しげに近づくのはハルウララだったろうか。――フォーエナー自身に見間違えた体という事かな? よろしい、ではこういう反応が返ってくる。
「……ハルウララか。よく知ってるヨ。『負け組の星』……ワタシも、アンタだけは好き……」
他人行儀な言い方だった。声色の使い方もフォーエナーとは違う。これがフォーエナーの変装なのだとしたら、とんでもない名女優だ。
セイウンスカイ『つまりフォーエナーが入れ替わって悪事を働いているなんて可能性は低い、と。いやぁ、ウララちゃん。自然な素振りでしっかり情報を地固めしていきますねぇ……』
ハルウララ『? フォーエナーちゃんと瓜二つなウマ娘さんなら、こう言ったほうが自然かな、って』
キングヘイロー『そこまで深くは考えていないって事よね……』
セイウンスカイ『あはは……』
「あれ……フォーエナーちゃんじゃないの?」
そう訊ねると、相手は慇懃無礼とも取れる態度で返してきた。
「ハジメマシテ。フォーエナーのお姉チャンのラウディーデス。ヨロシクネ、ハルウララ?」
そう言って手を差し伸べてくる。ハルウララは、迷いもなくその手を握った。
「うん、これからよろしくね!」
「…………」
ハルウララの手のひらがラウディーに握り潰されるといった不穏な事もなく、ひとしきり握手が終わると相手は優しく手を離して、彼女はその場に立ち上がった。
「さて、キングヘイロー。お出迎えのところ悪いケド、『フォーエナーはここにはいない』……オカエリ願おうか?」
ハルウララに対してとは違い、刺々しい視線が返ってきた。
キングヘイロー『ちょ、ちょっと。なんで初対面で敵愾心を露わにされているの?』
ライスシャワー『ら、ライスももしかして睨まれてる……?』
――そうだね、ライスの姉さんも周囲の者達から刺々しい視線で見られてる。
セイウンスカイ『んー……ウララが好意的に接されてるから、おそらくは、たぶん……』
(※キャラメイク時にキャラクターは当人に近い設定でプレイするという話し合い済み)
セイウンスカイ『ともかく……キング達は無難に接して、突っ込んだ話はウララに聞いてもらう形がいいと思うけど、どうだろう? 実際その場にいるのはキング達だから、決定権はそちらにあるけど……』
キングヘイロー『……ちょ、ちょっと、それじゃウララさんが危険じゃ……』
ライスシャワー『ら、ライスも。ウララちゃんが危険な目に遭うのは避けたいよ……』
――……。
ハルウララ『ウララ、やるよ! フォーエナーちゃんを助ける為だし! それに、このラウディーって人もそんなに悪い人じゃない気がする!』
キングヘイロー『う、うーん……わかった。でも、危険になったらすぐその作戦中止にするからね?』
「あら、そう。じゃあ逆に聞くけど……"素直に帰してくれなさそうな雰囲気"なのは何故かしら?」
キングヘイローの言う通り、周囲の者達は敵愾心を露わにしている。一人で来ていれば、確実に不穏な事になっていただろう。
「……そうだね、"入場料"を置いてってもらおうか。土足で他人の縄張りに踏み込んでおいて、何も支払いがないってのは、ネ?」
キングヘイロー『……絶対悪い人よコレ!!!』
――ゲーム内では毅然とカッコよく振る舞えてるのに、プレイヤー会話ではそんな風に青褪めて大慌てしてるのが不思議でならん……。
セイウンスカイ『いやー、かなり焦るでしょ。敵陣ど真ん中だし』
ライスシャワー『ふ、踏み込んだのは早計だったのかなぁ……』
「入場料、って……いくら、くらいなのかな……」
そう聞かれると、ラウディーは指を一本立てた。……千円……であれば、ずいぶん"良心的な悪者"だろう。五千円か、一万円か。そういったお札を要求されている気配がする。
「う、ううう……」
カレンチャン『GMさん。APPで切り抜けたりできない? こう、ハッタリ利かせるとか……』
――うむ、面白い案だな。まずこの敵対者に取り囲まれた状況において恐れる事なく態度を示せるか、POWダイスを振ってくれ。そののち、APPダイスの判定内容を伝える。
キングヘイロー:CC<=80 (1D100<=80) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 50 > 50 > レギュラー成功
ライスシャワー:CC<=50 (1D100<=50) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 14 > 14 > ハード成功
――キングヘイローは通常通りにAPP。ライスの姉さんはボーナスダイスを一つでどうぞ。
キングヘイロー:CC<=50 (1D100<=50) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 13 > 13 > ハード成功
ライスシャワー:CC(1)<=50 (1D100<=50) ボーナス・ペナルティダイス[1] > 51, 71 > 51 > 失敗
ライスシャワー『うう、前一つの判定はすごく上手くいったのに……!?』
――まぁそういう事もある。
ライスシャワーは怯える事なく周囲を睨み返したが、それだけで事態が変わるわけでもない。特に事態を変えられるような口上は言えずにいたが、そこにキングヘイローが言葉を発した。
「あら、支払わなければ乱闘騒ぎでもするつもり? 貴方達がそれをお望みならば受けて立つけど……"指一本以上に高くつく"わよ」
……場はシンと静まり返った。キングヘイローの気丈な態度に、逆に怯えるものまでいる始末だ。
――キングのロールプレイ、すげぇカッコいいな。
セイウンスカイ『GM、大絶賛だね。でも、私もカッコいいと思っちゃう』
キングヘイロー『褒めても何も出ないわよ』
――しかしダイスで100を出したのは忘れてない。
キングヘイロー『……』
「フフ、この程度じゃ怖がらないナンテ。さっすが……天下に名高いライスシャワーサマにキングヘイローサマ」
ラウディーは怯える様子もないが、特に食ってかかってくるでもなく、取り巻きのいくらかが怯える様子を嘲笑していた。
「ワタシ達だって、みんな明日の夜には"大事なお仕事"があるんだから、コンナトコロで商売道具を傷つけられちゃ敵わない」
「……大事な仕事? 商売道具?」
キングヘイローは訝しげに訊ねるが、ラウディーは小馬鹿にしたようにヘラヘラと笑い返すだけで答えを返しては来ない。
「……喧嘩はだめだよ?」
ハルウララが不安な顔をしながら、間に割って入った。
「ウララさん……」
「ウララちゃん……そっちいったら……」
キングヘイローもライスシャワーも心配そうにうかがうが、ラウディーは『この子には手を出さない』と言わんばかりに手をひらひらさせる。
「しないサ。でも、用がないならさっさと帰ってね。ワタシ達だって、喧嘩紛いに縄張りに踏み込まれた立場なんだからサ。タダで帰してあげるだけすっごい優しい事ダト思わない?」
キングヘイローとライスシャワーは、どうにかしてフォーエナーの事を聞き出さねばならないと考え込んでいる様子だった。
ハルウララ『フォーエナーちゃんの事について、ウララが言うべきかな?』
キングヘイロー『……う、うーん。任せるけど……不穏だったら、すぐ引き返すのよ……?』
ライスシャワー『あ、危なくなったら、すぐに助けに入るからね……』
「あのね、私達。フォーエナーちゃんを捜しにきたの」
「アァ、ソノヨウダネ」
「だから、居場所を知ってたら教えてほしいな、って!」
ぐっと腕を引くような姿勢で、ハルウララは相手に訴えかける。ラウディーはわざとらしい仕草で、困った素振りを返してきた。
「ウーン、まいったネ。ここに居ないのはホントにホントウなんだよ」
「そっかー。じゃあ、何処にいるかとかは知ってる……?」
「……」
――ウララ、APP振って。
ハルウララ:CC<=50 (1D100<=50) ボーナス・ペナルティダイス[0] > 20 > 20 > ハード成功
――お見事。
ラウディーは黙り込んでウララの顔を見つめていたが、やがておどけていた口調が一瞬止み、沈んだ声でハルウララに耳打ちしてきた。
「……一度も勝てなかった事にえらく落ち込んでいたから、ひとまず見つからない場所で匿ってる。誰もが貴女みたいに"心が強い"わけじゃないんだ……今は、そっとしておいてあげて」
それが狡猾な謀りから発された言葉か、はたまた本当の言葉かは判断がつかない。
それを伝えてから、ハルウララの肩をそっと押すようにしてラウディーはそのまま立ち去るように促してきた。
「うん、分かった。もし助けが必要だったら、ウララ達やトレセン学園の方に連絡してね!」
そう言ってラウディーにぶんぶんと手を振るウララ。
セイウンスカイ『……帰り際だね。たぶん、今がキング達が一番穏当に帰れるタイミング』
キングヘイロー『う、うーん……わからなくなってきたわ……悪い、人なのよね?』
ライスシャワー『で、でもフォーエナーさんが落ち込んでるって推測は他の人が立ててた通りだし……』
カレンチャン『…………………………』
――……。(推理力高い寄りのプレイヤーが残す「…………」ほど怖いものはないな……)
ひとまず、キングヘイロー達はその場を立ち去りカレンチャン達と合流する事にした。
……さて、少し時間軸を巻き戻そう。カレンチャンとセイウンスカイのターンだ。