異世界のTSヴィラン転生者   作:欧州5大リーグ

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 この異世界は不思議なエネルギーがあって転生者がいる以外はほとんどこっちの世界と変わりません。


3 神造人間

「それじゃ、まずは基本的なことだけ教えておこうか。

 

 転生には2種類のタイプが存在するんだ。君のように神によって創り出される、完成された肉体に魂を詰め込まれて転生するタイプと、神田君のように一個体の生物としてこちらの世界に生まれるタイプの2種類だね。

 私?私の場合は前者だよ。君と同じように新たな体を得てこの世界に送り込まれたよ。

 この転生様式の違いがなぜ生まれるのか、はっきりとしたことは私にも分からない。仮説を立てれないこともなくはないが、少々強引なものになってしまうからね。

 

 さて、ここからは前者を神造転生、後者を自然転生と呼ぶことにしよう。この違いは転生後のスペックに大きく関わってくる。

 人によって差はあるが、基本的に肉体の強度や戦闘能力は神造転生の方が上回っているんだ。まあ人から生まれた体と神からうまれた体のどちらが優れているかと問うのは愚問だよね。

 ただし、じゃあ自然転生は神造転生の下位互換になってしまうのかというと、そんなに単純な話でもない。転生者の強さなんて権能の相性でいくらでも覆ってしまうものだからね。

 そう、権能だ。君は最初にこの能力のことを特典と呼んでいたが、私は権能と呼んでいるよ。

 不思議だったろう?なぜ転生したその瞬間から自分の内に秘められた力を自覚することが出来たのか。なぜその力の振るい方を理解できているのか。

 それはその権能が君の魂に刻まれた神からの祝福だからだよ。いや、呪いと言い換えてもいいかもしれない。なんせ絶対に消えることはないからね。

 君の右腕のそれも権能の一部ということだよ。邪魔かもしれないが、これからずっと付き合っていくしかない。ああでも、努力次第じゃ自由に出したり消したりできるのかもしれないね。そればっかりは私には分からないな。

 

 さあここからが本題だ。君には昨日初めて仕事をこなしてもらったわけだが、疲れはちゃんととれたかい。辛いかもしれないが、この仕事は君自身のためのものでもある。大丈夫さ、人間何事も経験と慣れだ。すぐに楽に出来るようになるさ。

 君に殺してもらいたい人間は大きく分けると二つだ。一つは我々の計画の邪魔になる人間、もう一つは私の糧となってくれる人間。あるいはその両方だね。

 

 これから仕事をしていくなかで、異能保持者と闘ってもらうこともある。昨日君が殺した彼のようにね。

 まあそれについては余り心配しなくていい。そこらの異能保持者に権能を扱える君が負けるなんてことはまずあり得ない。君の肉体のスペックならなおさらだ。実際に昨日は異能局の人間を殺せたわけだしね。

 長々と話してきたけれど、話したいことは大体話せたかな。詳しい仕事内容は神田君を通して伝えるよ。

 

 きっとこれから長い付き合いになるだろう。仲良くしていこうじゃないか」

 

 まだ数える程度しか訪れたことのない会長室でそう言ってこちらに手を伸ばし私に握手を求めてくる彼、想兼は果たして信用に足る相手だろうか。すぐ横に立っている会長に視線を向けると、無言のまま頷いた。手を取れということだろう。

 どちらにせよ、会長がこの男と手を組んでいるというのなら私に選択権はない。会長に拾われたときから会長の意志に従うと決めたのだ。

 私はゆっくりと、力強く差し出された手を握った。

 

 

 

────────────

 

 

国家魔力異能犯罪対策局

 

 それは魔力使用や異能によって発生する事件や事故を防ぐために存在する国家機関であり、国の保有する最大戦力である。

 魔力は我が国にとって重要なエネルギー源であると同時に、国の存亡を左右する危機に繋がりかねない脅威でもある。

 通常の人間一人が保有する魔力でさえ、人を殺すには十分すぎるほどのエネルギーを持つ。無防備な一般人が魔力の籠った腕で殴られでもしようものなら大けがを負ってしまう。

 そんな代物を誰でも扱えてしまうわけだから、犯罪も後を絶たない。我々はそのような犯罪を起こさせない為に日々働いているのだ。

 力を持っている人間だからこそ、それを秩序を守るために正しく使わなければならない。異能を持っている人間であればなおさらだ。人間らしく生きるというのが私のモットーだ。

 

 

 

 

 

 なんということはないただの任務のはずだった。暴漢が魔力を使って暴れているという事件に私が派遣されるというごくありふれた事態。上は私一人で十分解決可能な事案であると判断した。私もそう思っていた。

 

 局長や特殊事件対策課の連中程ではないにしても、局のなかでは私かなり強い方であるという自負があった。優れた異能を持ち、保有する魔力も潤沢、暴漢ごときに負ける要素はどこにもないと高を括っていた。

 

 私の異能は《追跡弾(ホーミング)》。掌から魔力の弾丸を射出し、対象となる相手をどこまでも追跡する能力だ。込める魔力が多ければ多いほど射出される弾丸の威力も大きくなる。例え相手が障壁の後ろに隠れたとしてもそれを打ち破るか、できなければ迂回して標的を目指す優れモノだ。

 今回の事件もこの能力を使えば、いや使うまでもなく解決できるものだろうと思っていた。

 

 

 気づくべきだったのだ、暴漢が逃げ出した先が全く人気のない路地裏だという情報の違和感に。上からの情報とはいえ、明らかに不自然なものだった。自分よりはるかに強い異能保持者がくると分かっていながら、1対1の状態で閉鎖的な空間に逃げ込むことは悪手以外の何物でもない。

 だが私は疑うことをせずに躊躇なく暴漢がいると思われる薄暗い路地裏に入っていった。

 

 

 そこにいたのは一人の少女だった。事前に受けていた情報では暴漢は体格のいい男と聞いていたが。上からの情報が間違っていたことなど今まで一度もなかったため少し驚いた。

 その少女の背丈は自分の胸程の高さしかない。ショートの白い髪がよく似合う整った可愛らしい顔立ちをしている。まさか、何かの間違いだろう。こんな中学生ほどの少女が、暴漢であるわけがない。

 

「お嬢ちゃん、私は異能局の職員だ。ここで暴漢が暴れているという通報が入っていてね。ここにいては危な────────」

 

 もう少し慎重になるべきだった。私は見落としていたのだ。彼女が右腕を体の後ろに引いて隠していたことを。

 彼女が少し体勢を落としたのが見えた瞬間、その体がブレる。次の瞬間には私の目の前に現れていた。凄まじいスピードだった。辛うじてとらえることができたのは右腕を振りかぶる姿。腕に剣が縛り付けられているという光景を処理する間もなく────腹に激痛が走る。

 噴き出す大量の血。自分の体が傾いていくのが分かる。

 

 私は咄嗟に手にありったけの魔力を込めて射出する。目の前の彼女に向って魔力弾が飛び出す。驚いて動けなかったのだろう、避けることをせずに左手で体を庇う彼女に弾が被弾するのを確認する。

 しかしできたことはそれだけだった。地面に体がぶつかるのを感じる。体の熱が急速に奪われていく。

 

 ぼやける視界の中で茫然とした表情で見つめる少女を捉えたのを最後に、私は意識を手放した。

 

 

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